猛獣使いと正義の使命

「命あるところ、正義の雄叫びあり! 百獣戦隊!」
「ガオレンジャー!」
ガオレンジャー五人の名乗りが決まる。大河冴――ガオホワイトは大地を蹴りあげ、威嚇するようなポーズをオルグ――猛獣使いオルグに向けて決めた。
「なるほど、ガオレンジャーザンスかっ」
五人をにゃおれんじゃーと間違えた猛獣使いオルグはどこか間の抜けた声だった。冴は思わずずり落ちかけ、拳を握る。
「もう、バカにしないでよ!」
少女の声があたりに響き渡る。ガオスーツは冴の身体によくフィットして、その父親譲りの武道の才能にあふれた体躯を白銀に彩っている。ところどころに、ピンクや金でデザインされた装飾も、どこか愛らしく、それでいて、麗しの白虎の異名に相応しい猛々しさを秘めていた。
「行くわよっ!」
四人の屈強な仲間を差し置いて、ガオホワイトは地面を蹴り上げ、一気に走りだした。
「ファイヤーリング!」
オルグの目が光ると、突然の目の前に輪っかが現れ、炎がその輪にそって点火されていく。
「はあああァァあっ!」
冴は不審に思いながらも手を大きく開いて、威嚇のポーズをとった。
「さあ、来るザンス!」
猛獣使いオルグは声をあげながら、手にしたムチで地面を叩いた――
「はぁっん?!」
ムチがしなり地面を叩いた音は小気味いいリズムで、冴の耳に届いた――ガオスーツをまとった彼女、猛獣使いオルグの姿――頭の中が真っ白になる。目の前に火のついた輪っかがあった。
「とう!」
ガオホワイトは足を止めて、一瞬だけおすわりをすると、一気にその火の輪をくぐり反対側に抜けると、一回転を決めた。
「はぁっ!?」
冴はそのまま、そこにしゃがんで――おすわりをした。
「よーくできたザンス」
猛獣使いオルグがやってきて、その手がホワイトの頭にのせられた。
「おー、よしよし」
「ふうぅっ……くうぅううんっ」
冴は声をあげる。ネコのように気持ちよさそうに――冴の意識がぼやけていく。


「全く、ホワイト何やってんだよっ!?」
首を巡らせて気持ちよさそうに声を上げる冴――声のするほうに顔を向けた時、不意に目の前の何もかもが鮮明になっていく。
「ハッ!? え、いやだっ!?」
猛獣使いオルグに頭を撫でられる。不意に身体が燃え上がるように熱くなる。その頭を振り払い、のけぞって後ろに一回転した。
「あたし、どうしちゃったんだろうっ!?」
構えながら、立ちあがる。大河冴は猛獣使いオルグのことを見つめる。そのうちにあたりにやってくる仲間たち――
「いやあ、ホワイト、見事な火の輪くぐりだったぜ」
「まるで本物の猛獣のようだったぞっ!」
自分を褒める声に、思わずスカートの裾に手をやってから頭を欠いた。
「え、いやっ――」
どこか呑気の声に、冴はマスクの中で顔を染めた。意識ははっきりしていたのに、そのムチを叩かれると身体が勝手に動いてしまった――
「あのなあ、オルグに操られて、そんな場合じゃないだろうっ?」
ガオレッドに掴まれて見つめられる。冴は振り返って、猛獣使いオルグを見た。
「こんなのほんの序の口ザンスよっ!?」
「なんですって!? 乙女をこんな目に遭わせるなんて許しておけないわっ!」
「だれが乙女だァっ?!」
「なんですって、もう許さないんだからっ!」
冴は獣奏剣を抜く。再び仲間の間から抜けるホワイト――冴は仲間の声を振りきって猛獣使いオルグへと向かっていく。
「近づいて、そのムチを奪うことが出来れば!」
「そうはさせないザンスっ!」
冴の走りは、白虎の無駄のない筋肉の動きをそのままにしていて、白い光のようにオルグへと向かっていく。猛獣使いオルグは、その手にあるムチを大きく振るうと、そのままペチンという小気味のいい音を大地に反響させた。
「はぁんっ!」
「さあ、ガオホワイト。とまるザンスよっ!」
ギロリ、その目に力が宿る。オルグの目にサディスティックな光が宿り、闘志に燃える冴は猛々しいばかりに脚へ更に力を込めていて――
「はぁあっ?!」
そのまま、白虎そのままに四つん這いになって立ち止まる。
「よくできたでザンスよ、ガオホワイト」
「くそっ、ホワイトに一体何をしている!?」
「うるさいザンスっ、ホワイト以外のガオレンジャーはまとめてお座りザンスっ!?」
鋭い音をたててしなるムチ――
「えっ、あっ!?」
「うわっ!?」
ホワイト救援の為に動き出そうとしたレッドたち四人はたちまちそこでおすわりをしてしまう。
「さあ、ガオホワイト。この猛獣使いオルグがしっかりしつけられた猛獣にしてやるでざんすよっ!?」
「ふうぅっ!?!」
さっきと同じように、頭に手をあてられて、なでられるホワイト。
「やめろっ、ホワイトに手を出すな!」
「ホワイト!! 正気に戻れっ!?」
おすわりをしたまま声をあげる四人――さっきの冴はそれで正気を取り戻した。動けない身体を振り絞り声をあげる仲間たちの声を聞いて、ガオホワイトは――
「くうううぅっん! ふうううぅっ?」
ネコのように気持ちよさそうな声をあげて、首をふり、撫でている手に頭を押し当てる。
「さっきは効果が少なかったザンスが、二度目はそうは行かないザンスっ!」
勝ち誇るような声をあげる猛獣使いオルグ――驚愕の声をあげる仲間たち――
「ホワイト、正気に戻ってくれっ!!」
「さあ――ガオホワイト」悲痛な声を遮るオルグの声は、さっきまでの剽軽さが顔をひそめ、冷徹な『猛獣使い』の声を発していた。
――鋭い音とともに、猛獣使いオルグはムチでガオホワイトの身体を叩いた。
「はぁあっ!!」
ムチを受けて、後ろに倒れるガオホワイト――その純白のボディに、ムチによってできた黒い筋が一本走っている。
「お前は、この猛獣使いオルグの言うことをきくザンスよっ、このムチの与える痛みだけが、お前を支配するものザンスよっ!」
ムチが更に与えられ、その音は次第の大きくなっていく。
「きゃあああああぁっ!!」
「ホワイトっ!?」
誰よりも大きく声を上げるのは、ガオブルー――鮫津海の声だった。年齢も近くて、冴のことをいつも兄妹のように思ってきた彼の声だった。
「ふんっ、ガオブルー。そんなにホワイトのことが心配ザンスかっ?」
「当たり前だろう? ホワイトを元に戻せっ!?」
「それはできない相談ザンスねっ……」
猛獣使いオルグは、ガオブルーを一直線に見据えたまま、ムチを大きくしならせ、ガオホワイトを叩く。
「ああああぁぁぁっ!?」
冴の悲鳴と、仲間の呼ぶ声、それにムチの無慈悲な音だけがあたりを支配していた。
「やめろっ! オルグ!? それ以上、冴を傷つけるなっ!」
悲痛な声をあげながら、おすわりを命じられたまま、解くことができないガオブルーの姿を見て、猛獣使いオルグはその不気味な顔を歪ませていく。
「それはできない相談だと何回いえばわかるザンスか……まぁ、ことの次第では聞けないことではないザンスがねぇ……」
「事の次第? なのことだ?」
「それはザンスねっ、もし、ガオホワイトをおヌシが叩くというのなら、この猛獣使いオルグがホワイトを叩くのをやめようといっているザンスよっ」
「ざけるなっ!?」
「まったく、ヒーローたるもの言葉遣いには気をつけてほしいものザンスっ……交渉決裂ということでいいザンスかっ?」
「当たり前だ、仲間にそんなことができるかっ?」
「そうザンスか、それなら残念ザンスね……」
振るいあげられるムチ――地面をムチが叩き、少女の身体を叩くよりも随分と乾いたおとが響き渡った。
「ならばザンス、ガオブルー、ここまで歩いてきて、そこに仰向けに寝るザンスっ!」
「や、やめろっ!?」
仲間のみている前で、ガオブルーは立ち上がり、機械のような足取りで猛獣使いオルグの前にやってくると石畳の上で横になった。
「なにを企んでいるっ!?」
ムチの音がこだまする――
「次は、ガオホワイト。ガオブルーの近くに寄ってくるザンスよっ!」
冴は命令が発せられると、首を左右にふり、ネコそのままの足取りで四つん這いでガオブルーのたもとによると、ネコそのままに気だるげに首をふり、その精悍なブルーのガオスーツを見回していた。
「ホワイトっ……ホワイトっ……」
自らもオルグの手に堕ちながらも、必死に仲間のことを案じるブルーの声――ホワイトはその声にも関心なさそうに首をめぐらし――そして、その背後で無慈悲なムチの一撃が地面を叩いた。
「さあ、ガオホワイト。ガオブルーの股ぐらに鼻面を当てるザンスよっ」
「なっ……うわっ、や、やめろっ!?」
ガオホワイトはそのまま顔をガオブルーの股間に向けると、マスクの鼻をくいくいっとあてはじめた。
「そうザンスよ、もっともっとやってやるザンスよっ」
「やめろ、やめさせろっ!?」
悲鳴混じりに声に反して、ガオブルーの股間は次第に起き上がるように形をつくり、そのまま、反り返った歳相応の青年の『もっこり』が出来ていく。ガオスーツに身を包んだネオシャーマン――汚れを知らない冴の顔を守る硬質なマスクが、ガオブルーの股間をくいくいっといじっていくたび、その股間は緊張し、動けない身体はそのままただひたすら、勃起していく。
「ふひひひっ、ガオホワイトは、お前の声はきかぬ……それにしても、ガオブルー、このもっこりはどういうことザンスかっ……」
「かっ……うわぁっ……な、なんでもっ……くっ……」
「そんな苦しそうな声をあげてもっこりさせて、なんでもないわけないザンスよっ!」
ムチの一振りがまた音をたてた。
「さあ、ガオホワイト、そのもっこりを前足で掴んでしごいてやるざんすよっ」
「くうぅっ……くうぅっ……」
ガオホワイトは、手を持ち上げるとそのままブルーの腰に肘をついて、そのグローブに包まれた指先でブルーの股間のもっこりを指で撫でた。
「あああぁっ!?」
普段密着したスーツに引き締められて、少しの刺激が股間の盛り上がりがわかってしまうのが彼らガオレンジャーの共通した悩みでもあり――ネオシャーマンとはいえ、身体は何も変わらないいい年齢の青年である海の股間が白い指で包まれ、絡まれきゅっと掴まれていく。
「くぅううぅっ……にゃあぁっ?!」
つんとした匂いがスーツのなかに満ちて、それに反応したかのようなホワイトの『鳴き声』がした。海は顔をスーツの色よりも青白くしていた。身体のなかの淡い電流がそこに集まっていくかのようで――
「やめろっ、冴、やめるんだ、そんなところいじくりまわすなっ」
「オヤ、おヌシのスーツが少し濃くなってきたようザンスねっ」
猛獣使いオルグは、ブーツのつま先でガオブルーの脇腹を小突く。ホワイトの手によっていじくりまわされた股間は内側からしみだした液体によって紺へと染まっていく。それが、変身すると下着も何も身につけない海の股間が溢れ出ているものであることは明らかで、淡いアルカリ性の刺激臭がただよい溢れていく。
「くっ……ちくしょうっ、オルグめッ!!」
「遠慮することはないザンスよ。ガオレンジャーとはいえ、ただの男、敏感なところをいじられれば、勃起してしまうのは生理現象で何もおかしいことはないザンスよっ」
「だまれっ!? くそっ!!」
「ヒーローにあるまじき、言葉遣いの悪さザンスねっ……」猛獣使いオルグは不気味な笑い声をあげる。「もし、ガオホワイトが、全てが終わって正気に戻った時、そんな汚い言葉のヒーローは嫌いになってしまうかもザンスよっ」
更にな打ち鳴らされる笑い声――海は目を大きく見開いた。
「な、なんだって!?」
「変に思うことはないザンスよっ。ガオレンジャーを五人とも殺してしまうのはもったいないザンス。やがて、五人とも元に戻してやるザンスよっ……それだけのことザンスよっ」
くいっ、スーツのなかに入り込むような冴の指使いが持ち上げるように海の男根をいじり、側面から上へと指を這わせていく。
「それって、つまり――」
海は冴の姿を見た。純粋で初心な彼女が、オルグに操られたためとはいえ、自分のいましていたことに気づいたとしたら――
「何を恐れているザンスか、何も恐れることなどないザンスよっ……」
ムチの音が響く――
「さあ、ガオホワイト。マスクを取り、ガオブルーの股間をしゃぶってやるザンスよっ」
「くうっ?」
ガオホワイトは顔をあげる。肘をブルーの腰にあてたまま、顔をあげてマスクの縁を細い指でがさつにつかむと、そのまま持ち上げる。マスクは外れて空気の漏れる音がして、その中から、通気性の悪いマスクの中で汗に濡れた髪が溢れて広がった。
「ふうぅん……くうぅんっ……」
身も心も獣になった冴は、関心なさそうな表情をしながら、猛獣使いオルグの手が頭を撫でられると、気持ちよさそうに首を左右に振った。
「うううぅぅっ……」
「よーしよーし」
「ホワイト――冴っ!?」
ムチに操られているとはいえ、敵の命令でマスクを外し、なでられて気持ちよさそうにする冴の姿を、海はなおも信じられないような面持ちで見つめた。
「さあ、ガオホワイト。命令通りにするザンスよっ」
声――首を振るたびに冴の黒髪はキラキラとした汗のしずくを周りに振りまいた。顔ほ桃色に染め、汚れもしらず、おそらく男も知らないはずの冴の目線がブルーの股間にうつっていく。
「だめだっ」
声に、冴が海の事をみた。無関心層な表情――なんの色も浮かんでいない目、愛らしい少女そのものの彼女の口小さく開き、鮮やかに色づいた舌を出した。
「あぐっ!?」
その滑らかな感覚が、スーツを介して屹立した男根に迫った時、海はぎゅっと瞼を細めて動けない身体を動かそうとした――身体はびくともせず、舌が素肌に触れた時のように柔らかく、音をたてるように繊細な感覚とともになめられていく。
「はぁっ……あぁっ……やめろ、やめてくれっ……」
声は命令口調から次第に懇願の色を帯びていく。歳相応の性欲と、ネオシャーマンとしての使命の間で揺れ動く彼は、激しく動揺しながら、手を開いた閉じたりを繰り返した。
「そんなにやめてほしいザンスかぁっ??」
あざ笑うような猛獣使いオルグの声が浴びせられる。
「俺は、冴を――ガオホワイトをそんなふうにするわけにはいかないんだっ!?」
そう思わなかったかといえば嘘になる。だけど、使命がある。必死に押し隠してきた想いが破裂しそうなほどの音をたてて、海の胸を打つ。冴の歯が唇がガオスーツの上からガオブルーの股間を包み込む。
「はんっ……」
「くぁっ! っああぁぁっ!! オルグめっ、やめろっ!! やめろろおおぉっ!!」
「ふん、やってほしいならやってほしいといえばいいものザンスよ……まったく人間というのはめんどくさいものザンスねっ……」
「ああぁっ……!」
ムチが振るわれ激しい音が響く。海は瞼が千切れるほど強く目を見開き、ただ果てしなく遠くまでを見据えるように瞳孔を開いた。
「ガオホワイト、この男にまたがって、したいようにするザンスよ」
「くぅっ……くぅぅっ……」
「んはぁっ……ハアァハァッ……」
顔をあげる冴――ぬるっとした感覚がのぞかれて、荒い呼吸を繰り返す海――顔をあげてみると、ホワイトを見下ろす猛獣使いオルグと、その指示をきく冴の姿があって、白銀に輝く冴の身体がネコのようになめらかな動きで、ガオブルーにまたがった。
「なにっ……くぁあぁ!」
冴は脚を大きく開くと、そのまま脚の付け根を海の男根に這わせた。
「なにをうっ……うわぁっ……ヤメテクレっ……」
「あはぁっ……はあぁっ! にゃっ……あぁはぁっ……」
冴が身体を揺らして、ブルーの身体で乗馬でもするようにゆっくりゆっくり身体を揺らす。そうして、悩ましげな声をあげる彼女――ムダのない身体がガオスーツに強調されてそれ以上にないほどきらびやかで、眩しささえ感じる姿だった。
「ああぁっん……あぁあっ……あぁあっん……にゃぁあぁっ」
白いスーツと、湿気をもったストレートの黒髪、幼さそのままの冴はオルグの意のままに操られていく。海は涙を浮かべて、その悶える声をきいた。目を閉じても、身体へ注ぎ込まれる感覚をとめることはできず、その狂おしい声を止めることもできない。
「ああぁぁっ……くっ、冴、とめろ、とめてくれぇ……あぁっ! くっああぁあっ!!」
スーツとスーツがすれで敏感になった男根がこすれるたび、体中に電撃が注ぎ込まれるような衝撃があって、浮き上がるような感覚とともに海は大きく震えた。
「ああぁっ ダメっだ……ダメっだぁっああああぁっ! ああああっ!!」
理性の崩壊とともに真っ白になる海――大きくのけぞって、ガオホワイトに身体を擦りつけると、そのままそれがとまらずに噴き上がる快楽に包まれていく。
「はぁっ……はぁあぁっ……」
ただただ堕ちていく。海は涙を浮かべながら、力が抜けていくのを感じ、びくんびくんと身体を震わせた。
「ごめん、ごめん……冴、そんなつもりじゃないんだ……」


「ごめんなさい……」
鈍い声が鉄格子のウラ側で響いていた。海は顔をあげて、目の前にいる少女の姿を見た。
「こっちこそ……そんなつもりじゃなかったんだ……」
猛獣使いオルグの命令によってガオブルーをイカせたガオホワイトは、そのあと、おすわりをしている仲間を次々に『処理』してまわった。そうして、それらが全て終了したあと、大河冴は正気に戻された――戦場に漂う鬱蒼とした雄の臭いと、仲間のぐったりとした姿に、ガオの戦士『麗しの白虎』はパニックをおこして、そのまま失神して倒れてしまった。
「あたしさ、ガオレンジャーなんていってもさ、オルグに操られちゃうようなダメな……」
「そんなことねえよっ!」
海は顔をあげた。武器は全て取り上げられ、マスクも外されてしまった。牢屋にぶち込まれ、ガオスーツだけをまとっていた。スーツは惨状の臭いを少しもやわらげることない。四人の性処理をした冴のスーツは、少し離れた海のところでもひどい臭いを発していた。
「冴はなにも悪くなんて……」
「ぜんぶ、あたしのせいだよ……」
海は持ち上げかけた拳の行き場にこまって、そのままうなだれた。そんなことないと教えてやりたい。お前は何も悪くないと勇気づけてやりたい。同じ牢獄にありながら、海は冴との途方も無い距離を感じていた。
鉄格子の外でドアの開く音がした。こつこつと、ブーツが近づいてくる音がした。
「猛獣を自由自在に操るには、欲求を制御することが一番有効ザンス」
「ここから出せっ!」
海は鉄格子を掴み、そこにたって、猛獣使いオルグの鈍い光を放つ目を見た。
「まったく、人間というのはほとほと困ったものザンス。ちっとも、素直じゃないザンスねっ。これだけして素直にならないというのはっ……」
首を振り、猛獣使いオルグは手にしたムチの先端をたらした。持ち手だけを掴む。
「何が素直だ。お前らのオルグのしていることは――」
「お前らガオレンジャーの欲求をただ本能のままにしてやっていることだけザンスよっ!」
ムチの音は狭い石造りの監獄の中で何度も何度も響いて回っていく。びくっと震える海と冴――海は肩を落として、力なく振り返った。そこには仲間――信頼出来る仲間の大河冴がいる。
「さあ、ガオブルーとガオホワイト? あとはなにをするかわかっているザンスね……」
「もちろん、わかってるに決まっているじゃない!?」
電撃のような冴の声――海は冴を見て、そのまま視線を外せなくなって顔を歪ませた。
「ああっ、わかっている……わかっているさ……」