恐怖の肩こりオーバーホール
   
 ピンクレーサーへと変身をした八神洋子は、イエローレーサー/志乃原菜摘とともに、ボーゾック反応の現れたた工場へと急行した。
「ボーゾック!! こんなところで何をしているの?」
 無骨なマスクで愛らしい表情を隠した二人が部屋へと飛び込むと、そこにはボーゾック怪人がいた。
「カ、カーレンジャー!! な、なぜここが?!」
「ボーゾックの悪巧みなんて、あたしたちの前にはお見通しなのよ!!」
「フフフッ、悪巧みだなんて、そんな無礼な。このボーゾックいちのマッサージ師MMプヒョーは、平和を愛するボーゾックの怪人なのです!」
 ボーゾック怪人の口から出る平和という言葉に、ピンクとイエローはがくっとずっこけてしまう。
「あのねぇ」
「ボーゾックでありながら、平和を愛するってどういうことなのよ?」
「そうよ、地球を排ガスだらけにしようと企んでる悪の組織のくせに!」
「待ってください、お嬢さんがた、このMMプヒョーは、決してそんな悪事を抱いてこのチーキュウにきているわけではないのです」
 学者気取りに腕を伸ばしながら、MMプヒョーは洋子たちに向けて歩き出した。
「じゃあ、なんだっていうの?」
「このMMプヒョーの目的は、チーキュウの皆さんの肩こりを直したい、その一心なのです!!」
「はぁ?」
「肩こりって、肩がこること?」
 洋子は思わず、菜摘と顔を見合わせた。その珍妙な話し方とあわせて、怪しいボーゾックだってことは明らかだった。。
「そうなのです。チーキュウ人は激しいストレスにさらされているのです。大きい重力、過密な生活環境、わたしはそんな方々の体を癒したい、その一心でここまでやってきたのです!」
「イエローレーサー?」洋子はもう半分以上そんな語りをきいてはいなかった。
「さっさとやっちゃおうか?」
 菜摘はサイドナックルを握って持ち上げる。
「だよねぇ?」
 手を広げると、洋子の手にはバンパーボウが現れた。
「ま、まってください! カーレンジャー! これはあなたたちにも有意義な」
「ああ、もうそのつんとくる話し方すごいむかつく」
「右に同じ、いくわよ!!」
 あわてた素振りにMMプヒョーに向けて、イエローレーサーとともにピンクレーサーは走り出した。
「サイドナックル! はああっ!!」
「うぎょーっ!!ウガアアああああ!!」
 イエローの攻撃が命中して、火花を散らしながらプヒョーが倒れるのが見えた。ピンクレーサーは一度相手に接近してから、後ろに向けて飛び出そうと足を踏み出した。
「ま、まってください!!」
「待つわけないじゃない?!」
 ピンクレーサーは背中をぴんとのばして、バンパーボウをMMプヒョーに向けて構えた。
「ピンクレーサーさん! あなたは慢性の肩こりを抱えている!! それを解消したいとは思いませんか!!」
「ええっ?」
 相手の声は洋子の声より数倍おおきくて、攻撃にうつるためにいま飛び上がろうとしたピンクレーサーの足を止める効果があった。
「チャンス!!」
 MMプヒョーはきれいな反復横跳びで、バンパーボウの軸線からそれた。
「ピンクレーサー!!」イエローレーサーが武器を手にしたまま迫ってくる。洋子は手を敵に向けようとしたのに、相手の動きのほうが数段早かった。
「あなたに至福のときを教えてあげますよ」
あっという間にピンクレーサーの背後に抜けたMMプヒョーは、腕を振り上げた。洋子は思わず手で頭を覆い、迫りくる攻撃から身を守ろうとした。
「きゃっ――あんっ」
 MMプヒョーの指先がピンク色の背中をぞわりと一振りに撫でる――洋子はその手から嬌声をあげて、バンパーボウを取り落とし、前に投げ出してしまう。
「ピンクレーサーから離れなさい! この変態! ヤアッ!?」
「うわああぁっ!」
 情けない声をあげて、MMプヒョーはイエローレーサーに投げ飛ばされる。さっと、イエローはピンクの元に寄った。
「ピンクレーサー、大丈夫?」
「だ、だいじょばないよ! イエローレーサー、すんごいキモチよかった……」
「……えっ!」
 菜摘は彼女の言葉に首をかしげる。
「イエローレーサー、あなたにもチャンスです!!」
「はっ! しまっ――ああっん!!」
 前傾姿勢をとっていたイエローも、MMプヒョーに指先が迫り、首筋から腰まで一撫でにされて、甲高い声をあげてしまう。
「あ、ななんな――」
「イエローレーサー」
 ピンクがよろよろと体を起こし、今度は倒れたイエローをかばう。
「あいつの指なんなの……体の中がしびれて……」
「わかんないけど、なんか変態チックな技」
「変態チックとは失礼な! イエローレーサーさん、あなたはカーレンジャーのメカニックだ。機械を扱う仕事は常に神経を使うでしょう、体がバキバキですよ」
「うるさいわね、勝手なことを」
 イエローレーサーはなぞられたあたりをかばうように立ち上がる。二人とも一撫でされただけで、全身がしびれ、脱力感に包まれてしまい、戸惑いを隠しきれなかった。
「ピンクレーサー。あなたはカーレンジャーのアイドルだ。きれいな女性は、常に美容や健康をキープしなきゃなりません。これは体に大変な負担でしょう」
「ええ、アイドルなんてそんな別に――」
「ピンクレーサー、のせられない!」
 イエローレーサーが突っ込みを入れる。
「そ、そうよ! こんな変態チックなわざであたしたちが倒せると思わないでよ!」
 二人はこぶしを握った。
「カーレンジャーの美女二人を倒せるなんて思ってはいませんよ」
「うるさい!」
 イエローレーサーが相手の言葉を断ち切るように走り出して、ピンクも続いた。イエローは拳を相手にめり込ませ、ピンクはハイキックで吹き飛ばした。
「とどめよ! オートパニッシャー!」
 二条のビームを寸前でよけたMMプヒョーはあわて気味で、四つん這いで逃げようとする。
「待ちなさい!!」
「それはこっちのセリフです! カーレンジャー! 暴力反対!!」
「じゃあ、あんたたちボーゾックがしていることはなんだっていうのよ!」
 手に真っ赤なビームガンを手にしたまま、ピンクレーサーはイエローとともに相手への距離を詰めていく。
 洋子は銃口を相手に向けた。指をそわされたときはぞわっとして体の力が抜けてしまったけれど、戦闘力は高くない――そのとき、背中の筋が吊って、激しい痛みが噴出した。
「あっ!」
「よしっ!!」
「きゃっ!!」
 彼女の声に、MMプヒョーは体を起こし、ピンクレーサーに体当たりをした。彼女を無理にイエローレーサーのほうに追いやると、素早く二人の後ろへ回り込んでいく。
「ま、待ちなさいっ!!」
 イエローレーサーはとっさの動きに、いつもの素早さを発揮できなかった。プヒョーは両方の手を伸ばしていく。
「フィストテクニシャンアタック!!」
 MMプヒョーの指が、イエローとピンクの背中に達して、上から下へと素早く撫で上げていく。
「あああんんっ!!?」
「ふあぁあぁっ!?」
 背中をエビぞりにして、今度もまた手元から武器を落としてしまい、ざわめく感覚に思わず両腕を持ち上げて胸元に引き寄せてしまう。
「ほーれっ! ほれ!!」
 プヒョーが子供のフィンガーアートのようにその指先で、イエローレーサーとピンクレーサーの背中をなぞっていく。
「ああああっ!!」
「あああんんんっ!!」
 ぴくっぴっくっと震えながら、声をあげる二人――マスクの中で、洋子と菜摘の顔には悦楽の色が射していた。
「いやあぁっ、なんか、すごい体がほぐれるっ!!」
「ああっん! 戦わなきゃって思うのにぃっ!!」
 悲鳴をあげてがくっがくっと二人は震える。
「ほほう、チーキュウのすさまじいストレスがわかりましたねえ。カーレンジャーの美女のお二人、いま、わたしがあなたたちを苦しさから解放してあげますからねぇ」
「はあぁぁあぁっ!!」
「あんっ! ああんっ! あああぁあっ!!」
「いやあ、もっとしてぇぇっ! ああぁっ! きもちいいよぉっ!!」
 ぐりぐりと指で背中をおされると、イエローレーサーは狂ったように声をあげてのけぞる。
「ああはぁぁっ!! 戦わせてぇっぇ!!」
「ほほほっ、まずはあなたのツボというツボを癒してからですよ、ピンクレーサーさん」
 肩甲骨のしたを強く押されて、ピンクレーサーは甲高い声をあげる。
「ああああんっ! あんっ! あああぁっ!!」
 イエローレーサーとピンクレーサーの左右には、いつの間にか二対ずつワンパーが現れ、持ち上がったままの腕を抑えると、二人がその態勢を崩さないようにがっちりと固定された。
「カーレンジャーも、ツボを押されると、疲労がどっととろけだすみたいですねえぇ」
 ワンパーに体をおさえられて、MMプヒョーの声がサディスティックなものへと変わっても、イエローレーサーとピンクレーサーは尻を突き出した格好のまま、まともに動くことができず、荒い呼吸を繰り返すばかりだった。
「ああぁって……なんなの……何もかんがえられない……」
「はぁはぁっ……ああぁっ……」
 我に返った二人はワンパーの姿に気づいたけれど、体の力は思うように入らず、どうすることもできなかった。上気した体は信じられないほどの熱をもっていて、汗をかいてその汗染みがスーツの表面に浮かび上がっていた。
 豊満なラインを描く胸の表面には、乳輪がきれいな彫刻のようにその輪郭をあらわにして、ぴんと張ったスカートの間からは饐えたにおいがたちのぼり、密閉されたスーツの中で、二人の鼻にまで届いた。
(なんで……ただ、撫でられてるだけなのに……)
(濡れてる……いやっ……)
「ほっほほほほっ! どうですか、わたしのテクは?」
「テ、テク?」
「なんなのよ、これはいったい」
「これは動物のメスを意のままに従わせるテクなのです」その声は、ぞわりとする冷たさを持っていた。「あなたたち、カーレンジャーにもきくか不安でしたが、どうも杞憂のようでした」
「ふざけないでよ!!」
「口のききかたに気をつけなさい!」
 びしっ!! MMプヒョーは、ピンクレーサーの尻を思い切り平手打ちにした。
「あんっ!!」
「ピンクレーサー!!」
「あなたたちは、もはやわたしの支配に落ちたのです。エッヘン。体のあらゆる敏感になるツボがオープンハートして、このMMプヒョーの愛撫がないと生きていけない体に……」
「うそばっかりいわないでよ!!」
「イエローレーサー、これがうそだとでもいうのですか」
「そうよ、ちょっと不覚をとったけど、こんな――」
 MMプヒョーは指先をイエローレーサーのマスクに突き付けた。彼女は顔を少し後ろへのけぞらせたが、ワンパーの腕のせいでほとんど動くことができなかった。
「ほーら、あなたたちのパワーなら、このワンパーの腕を振りほどくことぐらい簡単なはずでしょう。なのに、あなたは腕を振りほどくことができない。それは、わたしがあなたの体の自由を奪ったからなのです」
「いやっ!!」
 イエローレーサーは体をよじるが、体中の筋肉が緩みきっているせいで、思うように動くことができない。MMプヒョーの指先は、マスクから首先へと延びていく。
「ああぁっ……」
「まずはこの首の後ろのツボです」
「ああぁんっ!!」
 イエローは感電を起こしたように体を震わせる。
「イエローレーサー……」
 洋子の発する声は弱弱しく、べそをかいていた。
「ピンクレーサー!」
「仲間の心配をしている場合ですか、イエローレーサー。ふふふっ、ピンクレーサーさん、あなたもちゃんとご褒美をあげますよ」
 MMプヒョーの指はまず、イエローレーサーに達した。スーツにしわがより、これまでとは違う光沢ができて、指が奥へ入り込み、菜摘の体をぐりぐりとえぐり始めた。
「はぁぁっ……ああっ……はあぁぁぁっ!!」
 指は次に洋子へ向けられた。敵にあらがおうとする感覚は、指をみた瞬間、洋子の身体の中で溶けていく。
「ああんな……ぁぁあぁん……あああっ!!」
 二人はバストをぷるんと揺らす。理性は溶かされ、二人はマスクの中で激しい汗をかいている。表情はどろっとした色づきを持って染まり、体が煮え立ちどろどろに溶けていった。
「あああああ!! ああぁあっくぅぅぅ!!」
「はああぁあぁんっ! ああああぁあっ……!!」
 ブシャッという水の音をきいて、二人はがくっと膝を折った。
(うそっ……)
(身体をいじられだだけなのに……)
 オルガズムに達し、顔を真っ赤に染めながら、洋子と菜摘は口を半開きにしていた。「おやおやっ、あなたたちの足の間から何かが染み出してきたようですねぇ……」
 MMプヒョーの声に、二人は足を内股にして隠そうとした。しかし、彼女らの尻を包むスカートは今ではすっかりずりあがり、鮮やかで明るいスーツは、時間を追うごとにそのシミを広げていった。
「いやっ、触らないでぇ」
「ああぁっ……」
 肉付きのいい尻を、MMプヒョーは指でつつきはじめる。
「ふぅん、これはどうやら、あなたたちはキモチよさのばかり潮を吹いたみたいですねぇ……」
 声は粘りけをもって、二人の耳の奥へと響いた。
 二人は互いに顔を反らせ、身体を羞恥に震えさせていた。
「恥ずかしがる必要はないんですよぉ、これがメスのサガなのですからねぇ……ほほほっ、ですが、カーレンジャー、あなたたちはわたしの手に墜ちた。その代償はきちんと払ってもらいますからねぇ」

「カーレンジャーを捕えただと?」
「あんな宇宙の温泉旅館でスカウトしたマッサージ師が、なんでカーレンジャーをとらえられるんだっ!?」
 洋子と菜摘が捕えられてから三日後のバリバリアン、ボーゾックの幹部ガイナモとゼルモダは泡を飛ばしながら、グラッチの持ってきた話について勝手な評価を並べ立てていた。
「いやあいやあ、アイツは案外使えるやつだよ」
 グラッチは意味ありげに笑い、二人を酒場から連れて出ると、先にたって進んだ。
「しかーしなぁ、MMプヒョーをスカウトしたのは、チーキュでワルをするのに疲れて、たまにはマッサージをうけてぇなーってときに、ボーゾックの専属のマッサージ師がいればいいなあって思ったからなんだぞ」
「だから、その特技をいかしたんだってばぁ」
 その時、三人の耳に動物のように激しい喘ぎ声をあげる二人の女の声がきこえた。
「あ、あれは……」
「まちがえねぇ、カーレンジャーのイエローレーサーとピンクレーサーの声だ」
「俺は信じねぇ」ゼルモダはぷいと二人に背を向けた。
「なんでなんだい」
「だってよぉ、俺ら宇宙のワルがそろいもそろって出来なかったことが、あんなマッサージ師にできるなんておもえねぇしよっ!!」
「でも、あれは紛れもねぇカーレンジャーの声だぞ」
 ゼルモダはガイナモと向き合った。「ああ、でもよぉ」
「とにかく、百聞は一見しかずって」
「なあんだ、それは?」
「見てみればわかるってことだよぉ……」
 グラッチはその寸胴な体をひょこひょこと左右に揺らしながら進んだ。ゼルモダはガイナモに半ば引っ張られるようにして、やがてある扉の前までやってきた。
「ここか」
 声はどんどん大きくなっていく。
「ここのようだな」
 グラッチがノブに手を回そうとしたとき、ゼルモダがひったくるようにノブを手に取った。
「みてやらあ、だが、嘘だったらただじゃおかねぇからな!」
「おや、総長、お久しぶりです」MMプヒョーは顔を向けるとのんきな声をあげた。
「おい、いいやあ、おひさしぶりっておめえ……」
 その後ろからゼルモダが続く。
「ひやぁっ、こりゃあ……」
 部屋には卓球台ほどのテーブルがおかれていた。その上で四つん這いに固定されているのは、憎きカーレンジャーのイエローレーサーとピンクレーサーだった。
「あはぁぁあっん!! あああぁっ!!」
「ああぁっ!! うあぁあぁぁっ!!」
 二人のマスクは剥がされ、そこには志乃原菜摘と八神洋子の顔が露出していた。
「いやあまあ、なんとカーレンジャーがチーキュの一般市民だったなんて……」
「まるで考えもしなかったぜ」
「で、これはいったいなにをしているんだい、MMプヒョーよ」
 ガイナモが喘ぎ続ける二人をみて指摘した。
「ほほほっ、よくぞきいてくださりました」
 MMプヒョーは二人の背後に回ると、そのスカートをずりあげさせた。そこにはTバック状の拘束具らしきものが取り付けられ、そのど真ん中、明らかな場所に試験管のほどの大きさの管がーー明らかな場所に差し込まれていた。
「こりゃあ……」
「これはこのカーレンジャーどものクルマジックパワーの抽出装置です」
「ああんっあぁあぁ!!」
「んんなぁっ! もっとっ! もっとぉっ!」
「クルマジック」
「パワーだと……」
 ガイナモとゼルモダはすっかり毒っ気を抜かれた声で言った。そんなボーゾックの二人にイエローとピンクは獣のように猛り狂い、身体を痙攣させながら甲高い声をあげた。
「イクッゥッ!! いくああぁああっ!!」
「ああああんっ! あああぁあ!!」
 声が最高潮にまで達すると、二人の動きは一瞬静止したようにみえた。糸がキレたように台の上に倒れ込むイエローとピンクを、幹部連中は緊迫した目線でみていた。
 そのときだった。股間に取り付けられた試験管の中を青白く輝く液体が流れだし、その管の下に取り付けられた容器にこぼれ落ちた。
「ふっぅぅん……」
「はぁん……」
 二人は脱力した子猫のようにその場で絶頂の余韻に浸っていた。ゼルモダが進み出て容器の中をみた。ガイナモがのぞき込む。
「こりゃぁ」
 青白い液体はあとからあとから流れ出した。容器へ落ちると液体はたちまち光を失い無色の粘液へと変化する。
「まずは総長に味わってもらいましょうか!」
 MMプヒョーが声をあげ、その声につられてガイナモが前へ出た。
「ええ、いやあ、ああ、そうだな。総長だしな」
「じゃあぺろりといっちゃってください!」
「指いれてもいいのか」
「どうぞどうぞ、さ、しぼりたての新鮮なやつをぐいっといっちゃってくださいっ!!」