ブヒブヒ!魔法のソースの秘密

「みく、待ってて。今助けに行くから!」
 街では、ブタネジレのクレープで大食い症候群にさせられた人々の暴動が手をつけられないものになりつつあった。そして、ネジレジアは暴徒と化した人々を食べ物で釣り、クネクネたちに誘拐させはじめた。現場を目撃した城ヶ崎千里はメガイエローへインストールして、その食品工場へと脚を踏み入れた。
「みんなっ?」
 通信が通じない。マスクの耳元に手をあて、機械に背中をもたれた――やっぱり、みんなと合流すべきだったのかも――軽い後悔を抱きながら、メガイエローは機械の影から様子を伺う。
 大食い症候群に冒された人々は、この世のものとも思えぬ声をあげながら、食べ物を求めていく。彼らはクネクネが釣り竿の先にぶら下げたアンパンだけをみて、次々に地下室へ誘われていく。
「ブウブウ、早くするブウ――」
 声に、千里ははっとした。肥満体を揺らしたコック姿のブタネジレは、巨大なフォークで人々を威嚇しながら、次々に追い込んでいく。
「みくっ……!」
 千里はその人々の中に、みく――今村みくの姿を認めた。彼女もまた他の人々と同じように働き蟻のように追い込まれていく。みくを助けなきゃいけない。
「どうしたのかしら、お嬢様?」
 不意の声は、彼女の背後からで振り向いたとき、拳が飛んでくるのが見えて、とっさに手を突き出して防御する――後ろへ突き飛ばされて、機械の前から転げでた。
「シボレナ!?」
「のぞき見とはあまり趣味がよくなくてよ、メガイエロー?」
「ブウ?」
 ブタネジレとクネクネに気づかれた。影からゆっくり姿を現したネジレジアの作戦参謀シボレナは、サーベルを手に余裕のある顔を彼女に向けた。
「人々をこんな目に遭わせるのも、いい趣味じゃないんじゃない?」
 メガイエローは身体を起こす。千里は視線を向けながら相手を挑発する――
「あなたと議論するつもりなんかないわっ。ブタネジレ」
「ブウブウ、シボレナ様」
「さっさと人間どもを地下室へ連れていきなさい」
「させないっ!」
 一か八か――メガイエローはブタネジレに向けて走りだした。
「ブウブウッ!!」
 人々との間に立ちはだかるブタネジレがどんどん大きくなっていく。
「ブレードアームっ!」
 手をクロスさせてから、千里は手刀を真っ青に輝かせながら振り上げた。
「――やあ!」
 ブタネジレはその肥満体からは想像もつかないほどの動きで彼女のチョップを避けると、そのフォークをつきだしてきた。フォークは腕とぶつかり激しい音をたてる。
「ブヒヒヒ、黄色いパブリカみたいでウマそうブー」
「ふ、ふざけないでっ!」
 フォークを振り払い、攻撃に移ろうとした時、その手に黄色いものがみえ――
「野菜爆弾!」
 手の中のものはボールのように飛んできて、ぶつかる前に次々に破裂しはじめた。閃光がぱっぱっと瞬きながら視界を覆い潰していく。
「きゃああっ!」
 千里は爆風に後ろへ吹き飛ばされる。
「ブウブウ、パブリカじゃなくてレモンかもしれないブーねぇ」
 彼女は顔をあげる。爆風の間から黒い塊が現れて、マスクを正面から殴打した。鋭い音とともに殴り飛ばされるメガイエロー――
「ブウブウ!」
 振り下ろされる腕を避けると、その手の中の塊がフライパンだと分かった――
「どっちを見てるブー!?」
「あああああっ!!」
 巨大なフォークが背中を突き立てられた――激しくスパークを放ちながら彼女は地面へ倒れる――
「つ、強い……」
 ひょうきんな顔をして、身のこなしが素早かった。防戦に追い込まれていく。人々を――なによりもみくを助けなきゃと思うのに、攻撃と攻撃の間がすごく短くて――
「ブヒヒヒヒヒ」
 背中から引っこ抜かれるフォーク――燃えるような痛みを背中に感じながら、メガイエローは身体を横に転がした。身体を起こしながら回転させた。ブタネジレはフォークを振り上げ胴が開いている――とっさにキックを見舞うと、身体を引きずりながら、敵から距離をとった。そっちには囚われた人々がいる――
「ブヒヒヒヒっ! 痛いブウ。レモンなのにすばしっこいブーね。どうやって料理してやろうかブーッヒヒヒ!!」
 痛みを食いしばり、背後に敵の声を聞きながら、メガイエローは立ち上がると、煙の中を抜けた。壁際に沿って人々が並んでいる。
「みんなっ! しっかりして下さいッ!」
 人々の姿を認めて、千里は不意に立ち止まった。落ち窪んだ目はどろんと濁り、何かを探している。
「みくっ!」
 その中にみくの姿を認めて、駆け寄った。生気の無い顔――
「たべもの……おなかすいた……」
「みく、しっかりして!!」
 手を握った。視線が合った。
「みく……!?」
「グレープフルーツ……グレープフルーツが……」
 みくは千里のことをみたまま、そう言った。
「しっか――」
「ブウ! ちょこまかと逃げるなんてすばしっこいブーね」
 声に千里は振り返る。ブタネジレはとっさの蹴りも大して効いていない様子で、フォークとフライパンを振り回しながら迫ってくる。みくを背中にして、手をつきだした。
「仕方ない……みくだけでも」
「グレープフルーツだ! いっただきまーす!!」
 素っ頓狂な声のあと、メガイエローの肩に飛び込んできたのはみくの顎で、歯にメガスーツが食い込もうとしたとき、千里はとっさにそれを避けていた。
「バカな小娘! 今、その人間どもはなんでも口に入れてしまうのよ!」
 シボレナの声――みくの動きを避けたために、メガイエローはブタネジレの目の前に飛び出てしまった――千里が顔をあげると、そこには巨大なフライパンとフォークが風を切りながら迫ってくるのが見えていた。

 カチャ――カチャ――金属の触れ合う音がして、千里は目を覚ました。
「あっ……」
 左右にクネクネがいて、その無表情なフェイスが暗がりに浮かびあがっていた。
「これは……」
 気配に顔を向けると、目の前にはシボレナがいて、その暗がりの中で顔が笑って歪んだ。
「まだお眠り、メガイエロー」
 向けられたのは殺虫剤のボトルそっくりのスプレー缶で、中から霧状の液体が噴霧されて顔にかかった。
「あ……」
 顔を背けたのに、クネクネに抑えられてがくりと千里はうなだれた。その目の前にメガスーツの鮮やかな光沢が見えて、そこには何か黒い盛り上がりが見えたのに、色が褪せて視界が黒く覆いつくされていく――

* * *

「はぁぁぁっっん! あああぁっ! ああぁぁぁあんんっ! はぁ……あぁっ……ああぁん……っ!!」
 暗がりの中で、艶めかしい光を放ちながら、メガイエローはびくびくっと震えていた。
「あぁっぁっ……」
 ぼーっとした目で、千里は上を見上げていた。その目は焦点をとれておらず、脚は力なく内股を描いていて、胸から垂れた液体で、ずぶぬれに濡れて、スーツを無惨に変色させていた。
「ああぁっ! あああぁぁっ……あああぁぁぁあぁあぁっっー!!」
 震える声は次第に歪み崩れて、千里は切なく声を漏らしながら首を振る。その足下には無惨に転がるマスク、メガスナイパーに、メガスリングが転がっていた。
「あああぁっ……あぁぁあぁあああああぁあ!!」
「ごめんなさい、メガイエロー……」
「んくっぁ……み……メガピンクのせいじゃないよ……」
 千里は同じようにマスクを剥がされ、同じように『装置』にかけられた仲間――メガピンクのことを見た。二人のうちで、違っていたのはただ一つ――メガピンクに取り付けられていた『装置』が動いていない、ということだけだった。
「ごめんね……」
 ぶつぶつと声をあげるみく――二人の間に差をつけることで、仲間割れを起こさせようという策略だってことはなんとなくわかっていた。それが、シボレナの考えそうなことだった。だけど、だからこそ、そんな手には乗らない。千里は唇を噛み、意識をしっかり保とうとした。
 少しでも気を抜くと、口元がほどけて半笑いを浮かべそうになる。不快な刺激をもっと受けたいとすら思うようになってしまう。そんな快楽に流されては――それこそ、ネジレジアの思うつぼだった。
「謝らなくたっていいよ……」
 ウィンウィンの動き出す『装置』――
 千里の胸にメガスーツの上から取り付けられた装置、それは巨大なブラジャー状の器械で、天井からぶら下げられていた。それが胸に取り付けられ、動きはじめると胸を下側からえぐるように揉みあげられ、こねくりあげられ、ぴかっと光って、装置の頂点からどろっとした水飴のような液体をこぼす。それが前傾姿勢で固定されている彼女の足下に落ちて、そこに置かれた容器の中にたまる。
 その器械が動いたとき、身体はただ胸を揉まれるだけでなく、引き絞られ、悶え苦しむような感触が全身どこからともなくあふれでて、彼女は涙を流して、唇を噛んで快楽に押し流されそうになる理性をつなぎ止めなければ、全身がおかしくなってしまいそうになるのだった。
「素敵な友情だこと……」
 扉の開く音、かつかつと迫るヒールの音。シボレナの声。それすらも敏感になった千里の身体に鳥肌をもたらすには十分で、メガイエローは目を細めて、振り返った。
「シボレナ、早くこの器械をはずして!」
 後ろ手に縛られてて、怪しげな器械にかけられた彼女の前に現れたネジレジアの悪魔参謀は、嬉しくてたまらないといった表情を隠すこともなく、サーベルを手に撫でつけるような視線を向けてきた。
「メガイエロー、いえ、城ヶ崎千里さんと呼んだほうがいいかしら??」
 シボレナは質問には答えずに嬉々とした表情を向けてきた。
「そんなのどうでもいい!! 早くこの器械を――んんっ!」
 千里の口を塞ごうとするかのように、激しく動き出す器械からぼとっと粘液が落ちる。
「あなたはもっと、その器械でもっとその液体を作り出してもらった方がいいわっ、ふふふっ、まさかこんなにも作れるなんてねぇ……」
 千里の脚もとに置かれた容器は子供のおまるほどもあり、その中には透明できらきら光る液体がなみなみとたまっていた。
 その液体はスーツや、彼女の髪にも付着していて、体中が虹色の光りでてらてらと覆われ、甘ったるいにおいが漂っていた。
「これは一体……」
「これはブタネジレがおろかな人間を大食い症候群にするためにばらまく魔法のソースの原液よ……」
 千里はシボレナの顔を見上げた。シボレナは千里の頬に触れると、幼子にするようにまとわりついた髪をきれいに整え始めた。
「それって……!」
「ブタネジレの胎内でこのソースを生み出すことができない。これを生み出すことができるのは、若い女性の快楽エネルギーが燃えたときだけなのよ……人が快楽を感じたときに生じる膨大なエネルギーが、ほかの人間の食欲を猛烈にかきたてるのよ……」
 ぼとっ、また『水飴』はこぼれ落ちた。前かがみにされているメガイエローは容器の中にそれを落とさないようにしようとさんざんに体を動かしたのに、容器の中には並々と液体が溜まっていた。
 それによって与えられる猛烈な痺れは足下の力を奪い、彼女は胸を支点にぶら下がるような格好になりつつあって、その無様な格好に千里は涙ぐみそうになっていた。
 そして、シボレナがその装置のことを喜々と語りだした――
「ふふふふっ、この器械から逃れられる人間なんていないわっ。どうかしら、必死で守ろうとした人間の理性を破壊する液体を作っている気分は――?」
 シボレナは笑っている。千里は下を向いたまま、そのソースをみていた。
「最低よ……」
 体の痺れで頭がよくまとまらなかった。
「この器械のおかげで、あなたの胸も少しずつ大きくなっているみたいね……?」
 少しずつ――そんな風にいうには控えめすぎるぐらい、千里の胸は黄色く膨らんで、胸が肺を圧迫する感覚で、少し呼吸が苦しいほどだった。
「千里さん、これまでよくもこのシボレナをさんざんに苦しめてくれたわね」
 声の調子が変わって、千里はシボレナの顔をみた。憎悪に彩られたその顔は、鬼を連想させた。前にしたように、ホログラフを使って、言い逃れすることも出来ない。ネジレジアのバカみたいな作戦に落ちて、正体はバレて、今頃耕一郎たちは追いつめられているのかもしれない。
 そう思うと歯がゆくて、千里は悔しかった。
「メガピンク――今村みくさん? ふふっ、あなたのお友達には死ぬまでこの装置で、魔法のソースを作ってもらうわ。きっと、たくさん出来て楽しいことになるわよ……」
「やめてっ!! 代わりに代わりにわたしを――!!」
「ふざけないで。あなたからもたっぷり絞り尽くしてあげるわ。ただし、それはメガイエローがキモチよさに喘ぎ苦しんでイキまくったあとのこと……」
「よかったわね、メガイエロー。あなたの死に様はお仲間が見届けてくれるわ。ねぇ、いつも赤子の手をひねるように倒してきたクネクネにメガイエローが犯されて、喘いでよがって、もっともっとって激しく求めて底なしの快楽に墜ちる姿を、みくさんはみていてくれるのよ」
 その声とともに、シボレナの周りにクネクネが数体姿を現した。悪意がオーラのように漂いでてくるのがわかった。ゆっくりとまた動き始める器械の音が聞こえる。じわりじわりと動き出す電流はメガスーツなんか簡単に透過して、千里の体の中に侵入してくる。
「シボレナ、あなたって最低よ」
「そう、ほめ言葉と受け取らせてもらうわ。ありがと」
 クネクネたちは不気味な声をあげながら、メガイエローを囲んだ。魔法のソースで体中をべったり濡らして、千里は眺め回した。器械が下へ移動して、彼女はくの字になって、クネクネに脚を開かれて、頭の目の前には別のクネクネの股間があった。左右両方のクネクネは股間を痛いぐらいに跳ね上げさせられていて、器械のせいで発情させられた千里は、その男根が欲しいと思った。スーパーヒロインとして、敵の雑魚なんかのモノが欲しいと思えるなんて、あり得ないと思った。だけど、それが目の前に示されて、器械は次第に動きをはやめていく。じーっという動きとともに、脳が沸騰するようにゆるんでいくのがわかる。千里は、舌を伸ばしてクネクネにフェラチオをした。
「んふぅぅっ……んんんんっ……くん、ちゅくちゅ……」
「やめて! 千里!!」
 金切り声をあげるみく――強い電気ショックのような感覚とともに、ぼわっという音がして、器械から液体がこぼれ落ちた。それは、千里の快楽を示すバロメーターのように、水飴を落とし糸を引いた。
「んんっふぅ……はぁっんん……」
 スカートの内側に手が入れられ股間のスーツが破られる。塗れた股間ぐじゅぐじゅで気が狂いそうで、千里はむしろ欲しいとすら思った。だから、クネクネに犯されたとき、口が気持ちよさに歪んでしまい、クネクネの亀頭に歯をつきたててしまい、頭を平手打ちされた。
「ふんんんんんっ……んんんんっぁぁぁぁ……」
 じゅぶじゅぶっと水飴が流れ落ちた。みくは首を振る。千里はクネクネとシボレナが体を動かすままに体を反応させていた。
 体がとまらない。心は悔しくて悔しくて仕方ないのに、体は自分のモノではなくなってしまったみたいに、器械の刺激を受け入れてしまって――フェラしていた男根が引っこ抜かれたとき、目の前でしごきはじめるクネクネが見えた。
「はあっ……犯されてるのに……体がとまらない……」
 暑い火照り、唐突にべっとりしたものが目にかかり視界をふさぐ。それがクネクネの精液で、目に染みて涙がこぼれて手で拭おうとしたのに縛られて動けなくて、どろどろとさらに器械からソースがこぼれる。
「さあ、メガイエロー? クネクネに犯されている気分はどうかしら?」
 声が聞こえる。なにも考えられず、きかれたままに口を開いた。
「あああぁっ……ダメっ……体が疼いて、キモチよくてとまらないっ……あああぁん!!」
 ぐいぐいっと押し当てられるクネクネの男根が千里の性器をぐじょぐじょにかき乱していく。長く太い男根は、千里の膣をぐいぐい広げて、血が流れてクレヴァスを汚く汚した。
「やめて……ヤメテヨ……」
「この器械から逃れられるモノなんていないわ」
 みくの声とシボレナの声をどこかにききながら――千里はクネクネの精液を口元につけ、舌でぺろりとすくって口に含んだ。おいしくなんてなかった。だけど、口元をほころばせて、首を振るって声をあげた。
「はぁぁあぁっ……あああっ……もっともっと激しく突いて! もっともっとあああぁん! ああぁぁぁあぁっ! あああああああ!! イク、イク、イっちゃうよお!!」
 熱くねっとりとしたクネクネの精液を体に受けて、オルガズムに達したメガイエローは体をぐったりとさせて、なんとかクネクネに肩をつかまれ、脚をつかまれ倒れずに済んでいた。
 その胸に取り付けられている『装置』からは透明な水飴のような液体が止めどなくあふれでて、まるで蛇口から流れる水のようにして、下の容器に流し込んでいた。
「はぁぁんんっ……ああぁっ……」
 顔を真っ赤に腫らして、体をクネクネに押さえられながら、自慢のストレートヘアを下に垂らしながら、千里はたまっていく液体をみていた。
 それはまるで男の精液のように千里のオルガズムに反応してどぼどぼと流れ落ちていく。それよりずっと量は多く――そう、この液体によって、たくさんの人々が大食い症候群にさせられ、中枢神経を破壊され理性を奪われるという。
「あは……アハハハハッ……」
 声は途切れた。感じちゃう。それを否定することが出来ずに、液体が流れ落ちるのを止めることが出来ない。苦しい。だけど、気持ちよかった。めちゃめちゃに犯されて、神経がささくれだって、半笑いから徐々に千里は笑えてきた。
「あははははっ! あは、あははははっ!!」
「墜ちたわね……」
 シボレナは振り返って、みくをみていた。
「これで終わりだなんて思わないことね、むしろこれははじまりよ。さあ、クネクネ、まだ全人類にばらまくにはまだまだ量が足りないわっ。さっさとこの女を犯しなさい!!」
 器械によってメガイエローはまた肩を起こされた。脚をへなへなと内股させて、狂った笑いをぼそぼそとこぼす千里の横顔に、嘗てメガイエローだったヒロインの面影はすでに無く、破壊された理性が血走った目の奥でどんよりとした快楽を花開かせていく。クネクネの愛撫を素直に受け入れ、胸からはだらだらと人の理性を破壊する液体を流していた。