DIFFERENT THINGS
イエロースペースレンジャーとレッドスペースレンジャーが対峙していた。
「とう!」
レッドがまず攻勢を仕掛け、イエローがジャンプでそれを避ける。レッドのスパイラルセイバーを寸前で避け、回転しながらキックをお見舞いする。
「たあ!」
『訓練時間A終了です』
アストロメガシップ搭載人工知能ディカが無機質なアナウンスをした。
「よし、みんな、いったん休憩だ。次は一時間後だからな」
ブルースペースレンジャー・TJがマスクをはずしていった。周りの風景があっという間にホログラム・トレーニングルームの金属質な部屋に変わっていく。
「ちょっとは手加減してよね、カルロス」ピンクスペースレンジャー・キャシーがおどける。
「悪いわるい、ついな」
ブラックスペースレンジャー・カルロスが壁の棚にあったタオルを取って、キャシーに渡した。
「アシュレー、どうしたの、そんなに急いで?」
レッドスペースレンジャー・アンドロス――この中で唯一の異星人――が、イエロースペースレンジャーの背中を呼び止めてきく。
「ううん、ちょっと、自分の部屋に戻るわ。なんか疲れたみたい」
「解った。それにしてもさっきのキックすごかったよ」
「そう、ありがとう」
アシュレーは足早に部屋を出て行く。別段そのことを誰も疑問に想わなかった。
アストロメガシップ内にあるアシュリー・ハモンドの個室はブリッジから遠く離れたエンジンルームの近くメガデッキ6にあった。航行中のロケットの音がすごく煩かったから、眠れない夜はブリッジで寝ることもあったが、広くてサイバーな内装が彼女は気に入っていた。
ホログラムルームでの激しい訓練のあと、アシュレーはイエロースペースレンジャーの格好のまま、ドアの暗証キーを開けて、マスクをデスクの上に置き、ソファーに倒れこんだ。
「ああ――疲れたわ」
窓の外を星が流れていった。コロバ星系への長い旅の間、彼女はすっかりホームシックになってもいたが、信頼できる大切な仲間と共にいて、すごく楽しくもあった。タオルを取り、顔の汗を拭う。そしてふと思い、胸のペンダントをスーツの内側から取り出した。
「アンドロス……」
それは誕生日に何かものをあげる習慣の無いKO35出身のアンドロスが、彼女のバースデイにプレゼントしてくれたものだった。アシュレーはずっと大事にしていた。彼のことがアシュレーはとても好きだった。だが、その距離はどうしようもなかった。彼はKO35の人間で、アシュレーは地球人。今は戦友でも、やがて彼は旅立ってしまう、別れなくてはならない。だから、アシュレーは内なる思いを心に秘めながらも、それをずっと心に抑えていた。
「アンドロス、好きだわ。私、どうしたらいいのかしら」
それは今やアシュレーの心を大きく占めていた。訓練でレッドスペースレンジャーと組み手をするたびに、言葉を交差させるたびに、食事をするたびに、アシュレーの心はどうしようもなく高まっていた。アンドロスはその思いに気付いているのだろうか、それは、彼女には解らなかった。
ただ一つ解るのは、あたしはアンドロスを愛している。
ペンダントをスーツの外に出したまま、彼女は立ち上がった。元チアリーダーで、服飾デザインの才能も、カー・メカニックのスキルも持ち、スーパーヒロインという才色兼備のスレンダーな身体、グローブに包まれた手でブロンドのストパーに触れ、身体を這わしていく。どうしようもない想い。
スペーススーツはまるで裸の自分のよう。そしてアンドロスかけがいの無い仲間、心から想う人、その距離は近いようで遠い。レッドスペースレンジャーのボディーライン、自分。
「アンドロス――」
アシュレーの身体はその思考で止まったまま、動かなくなった。指だけがまるでアンドロスにそえられているように勝手に動いていく。訓練でかいた汗が冷えて、冷気が身体中をめぐる。まるで南極の氷のようだった。
反対に、アシュレーのハートは真っ赤に燃えていた。訓練は大変だった。長いレッドスペースレンジャーとの組み手、後ろから抑えられ突き飛ばされ、こちらからキックをしてストレートを入れた。遊びでやるバスケの試合のように、シャープに流れる二人の動き。今、へとへとに疲れている。でもまだアンドロスは目の前にいる気がした。
「うう――ぁ…」
レモン色のスーツの上から指を立てる。スカートの上に添えられた手があっという間に内側へ潜り込む。スペーススーツはあっという間にその肉襞の間へ伸びていく。そう、指がどんどん潜り込んでいく。
「!」
アシュレーは思わず腰を引いた。そのまま倒れこんだ。いけない。いけないことを、していた。指を見ると、ただのグローブ。スーツに覆われた股間は黒ずんでいた。
それを見て、はっとする。こんなことはやめて――時計を見た。三十分後には訓練は再開する。それまでに――そうだ……一人で練習をしていよう。こんなことは忘れて。
「そうだよね」
アシュレーは無理やり笑顔を作って、イエローのマスクを手にとると、頭から被った。
「!!!」
マスクを被ってイエロースペースレンジャーになった途端、アシュレーの身体を電撃が駆け抜けた。それはごくごく弱い衝撃だったはずなのに、また動けなくなった。
「うあぁ――」
背中をわずかに海老反らせて、中空にむかってあげた声は力が無かった。
股間のスーツのしみが瞬く間に広がっていく。
「なんで、なんでなの」
頭が勝手にアンドロスのことを思い浮かべて、愛液で若草を湿らせた。アシュレーの身体は立ったまま痙攣を続けていた。
「あわぁぁ……」
どさり。床に崩れて、アヒル座りをしたアシュレーは中空を視界に結べず、マスクの中で、涎を頬へ垂らしていた。アンドロス……そう、目の前にアンドロスがいる。いや、それは幻で、目の前のアンドロス以外のものがブルーとオレンジの二重になってすべてがぼやけて見える。
そして指は再び黒ずんだ股間へ伸びていく。
ズブブッ。
グローブに包まれて自分の指より太くなった人差し指が、音を立てるように肉襞の間へ入っていく。スーツは肌に密着したまま、身体の奥へ入っていく。目がまわりそうな感覚の中、アシュレーは戻ってきた感覚に、頭を下にした。
マスクのバイザーを通して、光沢あるレモン色の股間にグローブに包まれた指が入っていく。
「ああぁ……い、痛いッ――」
その声は叫びというよりは、やや篭った呟きとして漏れた。
「はあぁ――ああぁん――」
アシュレーの研ぎ澄まされた神経はスーツ以外全く無防備な身体を火照らせ、胸の乳頭を勃起させていた。その年齢とは不釣合いに豊満なバストがぶるんッと上下し、アシュレーの口から喘ぎ声が続いた。
ちょっとの血がスーツの内側から染みて表面を汚していた。
「あああッ」
アンドロスのペニスが――いや指がアンドロスの意思を持って、肉襞の内側を掻き回していた。アシュレーがなんどもやめようとするのに、襲いくるエクスタシーは彼女をただではすませなかった。
やがて、スペーススーツはいくつもの微細なクラックを作り、内側からの光に爆発するように、一瞬で縦に亀裂を走らせた。
アシュレーは意識がどんどん遠のいていくのを感じた。まるで何かの前触れのよう……
ブシュッ!
「アンドロス! あああああああぁぁ!」
潜航を開始する潜水艦のように大量の愛液が股間から迸った。
その声は相当大きかった。だが、ここはエンジンルームのすぐ近く、コロバ星系に向かってスターライトスピードで突き進むアストロメガシップのエンジン音に遮られて、部屋の外には全く届かなかった……
「グハハハハハハ! 実験は大成功だ」
宇宙一の荒くれ者であり悪魔ダーコンダは、遂に拉致に成功したイエロースペースレンジャーを液体の詰まったカプセルの中に沈めると、マスクをはずした頭につけたヘッドギアの電源を入れた。
「イエロウレンジャア、俺様の勝利だ」
ヘッドギアのスイッチを入れて暫くすると、イエロースペースレンジャーは勝手に指を股間に入れ始め、愛液を漏らし始めて、それから自慰を続けたあと、血と潮を吹いて果てた。それは全て彼女の夢でだった。アシュレーにとっては自室でのオナニーであるに違いなかったが――しかしそれがまさしくダーコンダの悪魔計画だった。
「アシュレー!!」
鎖で近くにつながれたアンドロス――ぼろぼろにされたレッドスペースレンジャー――は仲間のその惨劇を見て、叫び声を上げた。ダーコンダはほくそ笑むと彼の近くによって、半壊したマスクの顎に手をやった。
「フハハホォ、レッドレンジャア、このあとのショーを見せてやるぜ。この馬鹿女はすっかり洗脳させちまった。まっ、本当に貴様のことが好きだったのかもしれんが、そんなことはどうだっていい。こいつ、目覚めたら、お前を求めてひいひい言うぜ。さあどうなるかだな。楽しみだろう? レッドレンジャア。こんな美人だぜ」
「ダーコンダ! アシュレーを元に戻すんだ!」
「フフン! そんなことするもんか! 馬鹿かお前は?」
そう言って、ダーコンダはカプセルの液体を排水した。粘着性の液体はまだだいぶカプセルの内側やイエロースペースレンジャーの身体にまとわりついていた。それがそれぞれぶちまけられたガソリンのような、虹色の光を放ち、アシュレーの美貌もテカテカに光っていた。
「よくもこんな目に、ダーコンダ!」
「そんな啖呵いつまでも切ってろ」
やがてカプセルが開き、アシュレーの肢体がどさりと床に落ち、数段のステップを転げ落ちる。
「アシュレー!」アンドロスは叫ぶ。もとは言えば彼が悪かった。ダーコンダの急襲を受け、チャンスを逃してしまったのだった。二人は捕らえられた。アシュレーはカプセルの中で夢を見させられて洗脳されていた。アンドロスは脅えていた。
KO35の人間と地球人は見た目は同じでもDNAが根底から異なっているのだ。そう、過去に地球人の男に恋をしたKO35の女がいた。二人は愛し合い、結ばれた。その成熟したセックスは二人にとってそれから先の人生の始まりであるはずだった。しかし、結ばれてわずかな時間を経て、男は死んだ。
KO35の人々のDNAに含まれる自分達にとっては生命を支える上で重要なソースが、地球人のDNAを破壊する自殺ソースになっていた。そのことが科学者の検死結果で明らかになった。
つまり、KO35の人々の体液は、地球人にとってのエイズと同じだった。ただ、その症状はもっと劇的で、むごたらしかった。ダーコンダはKO35なら誰でも知っているそのことを利用して、アンドロスの人格を破壊し、アシュレーを自ら手を下さない汚い手で葬ろうと言うのだ。
「アンドロス……アンドロスなの……」
目覚めたアシュレーの目は虚ろだ。アンドロスを見ながら視界に捕らえていなかった。
「あたし、アンドロスのことが……」
「駄目だ、アシュレー、きちゃ駄目だ!」
「レッドレンジャア、ちょっと煩いようだな」
ガツンッ!
「うわああ!」
半壊したレッドスペースレンジャーのマスクへ背後から拳をぶち込み、破壊すると、何かのタンクにチューブで繋がったマスクを抵抗するアンドロスの口に繋げて、タンクのバルブを開いた。
「うぐぐぐぐぐッ!」
「さあ、おいで、イエロウレンジャア。お前の大好きなレッドレンジャアだよ」
猫をあやすようにダーコンダが言った。そう言いながら、レッドスペースレンジャーのスーツの股間部分をはさみのようなもので破くと、中に手をいれ、アンドロスのペニスを取り出した。
「ほら、イエロウレンジャア」
アシュレーはすっかり洗脳されてしまって、何も判断がつかなくなっていた。目の前のアンドロスが本物なのかどうかもしれなかったし、まだあの激しいオナニーの中なのかもしれなかった。
「ぐぐぐぐっぐ!」
アンドロスのぺニスはあっという間に勃起した。アシュレーは美しかったが、そうではなく、口から無理やり嗅がされている謎の薬品によって勝手になってしまうのだった。そしてあっという間に、その先端から液体がこぼれ始めた。
ダーコンダはアンドロスの鎖の戒めを破壊し、マスクを引き剥がすと猿轡をはめた。床に倒れたアンドロスに手錠を後ろ手にかけて、足枷をはめた。
「さあ、アシュレー、僕と一つになろう」
ダーコンダは突然アンドロスと同じ声色を使った。
「怖がることは無いよ、アシュレー。僕は君を愛している」
「私もよ、アンドロス」
アシュレーは横になったまま、アンドロスのいるところまでやってきた。灰色の目に眼光はなかった。彼がしきりに訴えかけても、彼女が見ているのは本物のアンドロスではなく、偽のアンドロスだった。
「ううううッ」
アシュレーはスーツをカプセルの中に満たされていた液体でてかてかに輝かせたまま、アンドロスの赤い身体を抱いた。アンドロスもその液体を身体に受けてにぶい光を放ち始めた。
「あたし達、結ばれるのね。アンドロス」
「うううッ!」
「そうだよ」と、ダーコンダ。
満面の笑みを浮かべたアシュレー、アンドロスは猿轡をはめられた口で必死にメッセージを伝えようとするが叶わなかった。伝わったところで、灰色の目をしたアシュレーにそのことが理解できるはずもなさそうだったが。
アンドロスを下にして、アシュレーは騎乗位をとった。愛液や血液以外にもベトベトした愛園が若草を湿らせていた。アンドロスは謎の薬品によって勃起したままだった。やがてアシュレーがアンドロスのペニスを握った。
「ううううううッ!」
アンドロスは必死だったが、安らかな表情のアシュレーには全く伝わっていなかった。ダーコンダはその握った腕のグローブをむしり取ると、再びペニスに戻した。
「うううううッ!」
「どうしたの、アンドロス?」
アシュレーの手の中にアンドロスの精液がいきおいよく吹き出た。オルガズムに果てた彼は戦慄した。
「知ってるのよ、あたし、アンドロスがこういうの好きだって」
そう言って、アシュレーはその手を顔に持ってきて、バランスの取れた美貌に塗りたくり、ブロンドに精液が絡まる。アシュレーは口に含まなかったものの、その口でアンドロスの猿轡を包むキッスをした。
精液まみれのアシュレーは舌を使い、丁寧にアンドロスの顔を嘗めていく。眉毛の上の傷口をとくに丹念に嘗めたが、激痛を伴うものの何ものでもなかった。
やめてくれ、お願いだから。アシュレーの身を案じるアンドロスの必死の訴えも空しく、ペニスは勃起したままだった。謎の薬品のせいというのもあったし、アシュレーに抱きしめられた結果、自らに眠っていた性欲が呼び起こされたせいでもあった。
「さあ、アシュレー、一つになろう。僕と」
ダーコンダはアンドロスの声をうまく使って彼女を誘導していく。アシュレーが再びアンドロスのペニスを掴み、自らの股間にいざなった。
「ああぁ! ――気持ちいい」
完全に湿った愛園の上でペニスが滑り、クリトリスを刺激する。アシュレーはたまらなく声をあげ喘いだ。
アンドロスは顎の力を一杯に強めた。金属製の猿轡にヒビが入り割れた。破片がいくつも彼の口の中に刺さった。
「アシュレー、駄目だ!」
「えっ……」
「煩い、レッドレンジャア!」
ダーコンダがアンドロスを殴ると、彼は簡単に意識を失った。その口から血が滴り、アシュレーの頬にこぼれた。彼女がそれを舌でなめた。そしてアシュレーはDNAの自殺コードを自らの体内に受け入れた。
「さあ、僕とこれで一つになれる。アシュレー」
「えっ、ええっ――」
アンドロスの勃起したままのペニスがイエロースペースレンジャーの破けたスーツの間アシュレーの肉襞をこじ開けて、ズブブブブッと挿入されていった。
「あああぁぁ! ――んんんんッ!」
アシュレーの喘ぎ声はやがて悲鳴に変わり、快感に酔いしれる表情は苦悶に歪んでいった。