「お前は、もう…死んでいる…」
「なんだと!」デカイエローの言葉にエージェント・イパスが返した。
「イパス! 十件の殺人、器物損壊、スパイの罪で」五人の中心に立ったデカピンクがSPライセンスをかざす。「ジャッチメント!」
――アリエナイザーにはスペシャルポリスの要請により、宇宙最高裁判所から判決が下される――
《×》
「デリート許可!」
「セット――ディーショット! ストライク・アウト!」
デカピンクの放つレーザーが、エージェント・イパスに命中した。
「うがあああああああああああ!」
「これにて一件コンプリート」ウメコが決め台詞を言った。イパスをデリートした爆風があたりに広がり、硝煙の臭いが立ち込めた。
「あとはお風呂で、のんびりーと」
「おし、帰ろう」
「あーもう疲れちゃった」ウメコは伸びをして、首を鳴らした。「帰ろ、帰ろ!」
久しぶりのデカいヤマだったので、ボスの好意により、そのあとの半日は休暇になった。バンとホージーは反目しながら、一緒にどこかへ行った。現場で助けたOLさんといい仲のセンちゃんは、タキシードではなかったもののデートに出かけていった。
休暇でも、ジャスミンは制服のまま、デカルームでコンピューターで何かを調べていた。ウメコはといえばあそこだった。
すらっと伸びた脚を、ウメコは湯船から出してみた。泡風呂は面倒なので、《奥飛騨の湯》の入浴剤を入れていい気分になっていた。顔を火照らした彼女は現場で流した汗を綺麗にしていた。
――男の子(よいこ)たちのために特別に説明しよう。多汗症のウメコは、一日三度はお風呂に入らないと、体臭が臭ってきてしまう特別な身体の持ち主である! しかも全身を包むデカスーツは冷却機能を備えていても、装着者にとってはとても暑いのである!
「あー極楽ごくらく」
面倒だったけど、気持ちいい。変身したあとは、シャワーだけじゃなく、ちゃんと湯船に入らないと気がすまなかった。
「はあああ…」
しかも、ウメコの入浴時間はきわめて長かった。なんてったって、誰にも気兼ねすることない。
「デカレンジャー、ちょーつよいよねー、ウメオ」
「ねー、ウメノスケ」
「こんども、がんばろーねー、ウメゴロウ」
お風呂に浮かべている三匹のアヒルちゃんにウメコは微笑みかけた。そう、スペシャルポリスデカレンジャーの仕事は中々ハードだった。
宇宙警察地球署、通称デカベースは最先端の科学技術を備え、真面目に未来の科学で捜査することが出来る。そのため、世界中の警察が視察に訪れたりする。CIAだろうとMI5だろうとKGBだろうと、その技術を少しでも漏らしはしなかったけれど。
その日、ドギー・クルーガーは、エージェント・イパスのデリートに伴い、中止されていたベース内見学を再開させた。アヌビス星人が地球人よりはるかに優れていても、地球で活動する以上、色々な政治的な事柄もドギーの仕事だった。
「やあやあ、どうもお越しくださいました」
ドギーはその日、警視庁第6機動隊第9班の視察に出向いていた。
「どうも隊長の菊池です。お世話になります」
隊長がレイバンのサングラスをはずして、ドギーの握手に答えた。
「今まで延び延びになっていて、申し訳ありませんでした」
「いえいえ」
ドギーと菊池は廊下を進み、デカルームのドビラの前まで来た。
「ここがデカルームです。デカレンジャーの中枢です」
「へえ」菊池隊長は無言でピストルを抜いた。
「何のマネですか?」
「まだ解らないのか? 犬のおまわりさん?」
「???」
ドギーの目の前で、菊池は変装を解いた。
「お、お前は! トヒ・イルワ!!」
「その通り」
ドギー・クルーガーの過去の同僚にして、闇のマーケットに走った裏切り者、トヒ・イルワとその一味はピストルでドギーや、まわりのスタッフを手際よく拘束していく。
「何が目的だ?」
「スペシャルポリスへの復讐さ!」
「デカレンジャーはみな外出している」
「つべこべ言わないで、この扉を開けたらどうなんだ?」
「それはできん」トヒ・イルワが撃鉄を引く。「ほう、まあいいだろう。早くしろ」
「グウウウウ」
不満げなうなり声を上げながらドギーは、カードキーを壁のスキャナーに呼び込ませた。
「ジャスミン!」
「ボス!」
中央のデスクでなにやらしていたジャスミンが、その様子を見て、即座に立ち上がった。ジャスミンにイルワがピストルを掲げるが、彼女はデスクに身を潜めた。
「でてこい、スペシャルポリス!」
「おとなしくしなさい!」
「聞こえないのか、アマ! 両手を首の後ろにまわして、ゆっくりと立ち上がれ」
「駄目だ、ジャスミン、でるな、ウワッ」
ドギーの鼻をイルワがピストルで殴った。
「ほら、大事なボスがどうなってもいいのかな?」
ジャスミンは舌を噛む。形勢は不利だった。
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさとしろ!」
「……ケセラセラ」ジャスミンが立ち上がった。
「よーし、いい娘だ。おい、ボディーチェックだ」
「へい」首に手をまわしたイルワの部下がジャスミンの元へ走った。
「おいっ、大事に扱えよ」イルワがドギーの方へ向き直る。「で、他の奴らはどこかな?
犬」
ウメコはまだバスルームで天国にいたが、デカベースに起きた異変などには全く感知していなかった。
「あーあー」
スポンジにたっぷりと含ませた泡で全身を包んでいた。膨らんだ胸に泡をつけると、小ぶりで鮮やかなピンクの乳房がぷるんと揺れた。
「あーあーあー」
弛みの無いくびれたお腹におへそがあり、白い肌には艶がある。全身を洗いながら、いろんなことを考えて上の空だった。多汗症だと当然股間も匂ってくる。茂った若草にもしっかり泡をつけると、つんとした臭いを鼻がかぎつけて、思わず意識が元に戻った。
「くっさーい…」もうヤになっちゃう。
頬を膨らませながら、そこもよく洗った。強く擦ると火照った身体がぽわあんとした。いけない、いけない。ウメコは自分の小梅に顔を赤らめた。
「わっ!」
ウメコは突然スピーカーが発した空電にびっくりしてスポンジを奥飛騨の湯の中に落としてしまった。
「あーーー……どうしよ」
ボディーソープが渦を描きながら、オレンジ色のお湯の中へ沈んでいく。縁に手をかけて、ウメコは浴槽を覗き込んでいた。天井に突き出されたヒップがよく引き締まっていた。
「ウ、ウメ……きこえ…」
「ん? ボス」
振り返って、彼女はスピーカーを凝視した。
「逃げろ、シチュエーションB――貴様、どこと通信してやがる!」
ドスの利いた声がしたかと思うと、スピーカーが止まった。嫌な予感に髪の毛から雫が落ちた。
「ちょっと待ってよ!」
シチュエーションB――アリエナイザーによる宇宙警察施設の攻撃またはテロ行為。
スピーカーにかけより、ボタンを押す。うんともすんとも言わない。胸をかきむしる不安にシャワーを出し、冷や水のまま泡を流した。どうしようどうしよう、ずぶ濡れのまま、更衣室に飛び出して、バスタオルで適当に拭いた。
「おい、この部屋は何だ?」
眉をひそめ、ウメコが出口を見た。
「バスルーム……風呂場だ」
「おい、なんか湯気が出てるぞ」
「誰かいるかもしないな」
まずいよお――はだかのウメコは、バスタオルと銃を手にして更衣室の奥に飛び込んだ。
既にトヒ・イルワとそのアリエナイザーたちはデカベースを完全に掌握していた。デカルームで警備システムを動かし、外界と物理的に閉鎖すると、ドギーを縛り上げた。元スペシャルポリスらしく、手際がよかった。
「あ、あんたも、好きねえ……」
ジャスミンはあくまでクールに振舞おうとしたが、声は震えていた。ドギーの目の前で、手近な柱に縛り付けられた彼女を、トヒの部下が拘束した。超極細ワイヤーが黒と黄色の制服に食い込んで、スレンダーの身体の肉付きの良さを強調していた。
「じゃあ、見せてもらおう」
トヒの命令にプイレはスカートをめくりあげた。引き締まった腿の付け根にパンティが顔を出した。色は黒で、Tバックではないものの、かなり刺激的なもので、綺麗な肌がむき出しになっていた。
「さすがスペシャルポリスだ」
「いやああ!」
ジャスミンは思わず叫んだ。プイレの指がパンティの内側に指を入れ、体温を持った指が茂みに触れたのだ。
「すっぺーな!」
プイレがゲラゲラ笑った。イパスデリート後、いくらかの書類仕事を終わらせてからシャワー室に行く予定だったので、股間からは饐えた臭いがした。ウメコほどではなかったが、激しいアクションをこなすので、人の身体は臭いを放ってしまう。
彼女は唇をかんで、その様子を凝視していた。
「……ぁ…」
ドギーは眼をそらしていた。
ジャスミンの充血した茉莉花をプイレが軽く愛撫した。
「貴様、こんな下劣なことが望みだったのか!?」
「うぜーんだよ、犬」トヒが言った。「俺はお前が大嫌いだった。警察学校を出たときから、傲慢で偉そうで、正義感ぶったところがな。お前がいなければ、俺は今頃警察長官にもなれたんだ!」
「お前がアリエナイザーの世界に……」
「それがうぜーっていうんだよ? どうだ、犬。お前の子供みたいに大事なスペシャルポリスが、こんな醜態を晒け出してるのは? プイレ、手加減するこたあねえぞ。どんどんやっちまえ」
「へへへへ、ロジャー、ボス。デカレンジャーのデカいものはちょっと酸っぱいな」
プイレは人差し指と中指で茉莉花を挟むと、一瞬だけ煽動させた。
「ああぁ?」
ジャスミンは全身が緊張させた。スペシャルポリスとして、性犯罪に関わることがあっても、それは犯罪の世界での出来事で、リアルの出来事じゃない。
「一気にいってやろうか?」
「おやめなさい!」
だが、アリエナイザーが肉襞や陰毛の中にある自分の茉莉花を指で挟んでいた。爆弾をくくり付けられているようなものだった。いっそう強く、指が振動した。
「…………」
目の前がフラッシュして、大きく震えた。感じちゃ駄目、駄目、ストレートの黒髪が中空に揺れた。
ぐちゅ――鮮明さだけが響き渡った。
「エゾギボエデアエギデリゾ」
片手で制服の上からわき腹に手を這わせて、プイレが言った。惑星グロンギの言葉を、ジャスミンは即座に理解した。生暖かい息が肉隗に吹きかかり、勝手に顔が桃色に染まっていた。つぶらな瞳を閉じ、必死に唇をかんだ。冷静さが失われようとしていた……あつい。
「ひゃあああ!」
首筋に血管が浮かんで引いた。デカルームの照明が身体に痛いほど刺さってくるのを感じる。腰の力が抜けて、内股になった。
「はああぁ…」
「美人刑事も形無しだな」
大きく息を漏らして肩を上下させていた。プイレが両脚を掴む。反抗しようとしても、脚は大開きにされてしまう。肉色のクレパスが小さい音を立てていた。
「う…ぁ……」
プイレがクレパスの両斜面を指で摘んで、ぐいと広げた。口を開いた襞の内側まで冷たい風が流れ込んで、全身を悪寒させた。
「あああぁん!」
ぐちゅうぅぅ…ジャスミンの茉莉花にプイレの唇が触れて、舌が嘗めた。生暖かい宇宙人の体液に濡れた肉襞を嘗める感覚が痛いほどに感じられた。だめぇ……どくん! 心臓が大きく音を立てると、つーっと腰から力が抜けて、ジャスミンの体液が漏れた。
「グヘヘヘヘヘ」
顔を離したプイレは汁が垂れて、ゆっくりとしたスピードで床に落ちた。
「ああああ…」
「プイレは婦女暴行で手配されてる一流のレイプ犯だ。奴の手にかかって落ちない女なんていない。女だけじゃねえな、俺だってお前だって奴の手に掛かれば、同性愛に目覚めるかもしんねえぞ」
ジャスミンの脚は、小刻みに震えていた。全く慣れない悪魔の所為に顔はピンク色で、恥じて歪んでいた。まるで、敵に濡れさせられたことを自分の不覚であるように、強く唇を噛んでいた。
「さあさあ、これで終わりだと思うなよ。刑事さん」
プイレが立ち上がると、潤んだ瞳をにやけながら見つめた。手をゆっくり、相手の襟にやり、しっかり掴むと、一気に開いた。インナーのハイネックシャツは豊満な体に合せて、凹凸を作っていた。
手が胸を下から掬い上げた。カップの上からでも肉は弾力を持っていた。
更衣室のロッカーの間に、ウメコは身をひそめていた。バスタオルを身体に巻き、銃口を上に向けた。乾ききっていない髪が冷気を放っていた。
「おい、風呂はまだ熱いぞ」
「あの犬署長はここへ通信してた」
「きっとどっかにスペシャルポリスがいるぞ」
「廊下はブロックしたからどっかに隠れてるな」
どうしよお……ウメコは上を見て、いい案を思いついた。
「おい、相棒、これ見ろよ。水で出来た足跡だ」
「ここか! ??」
二人が更衣室の奥に足を踏み込んだが、そこで足跡は姿を消していた。
ウメコはその様子を見下ろしながら、微笑んだ。警察アクション映画といえば、通風ダクトに隠れてみるのが定番! とっさに思いついたにしてはいい考えだった。けれど、映画にあるようにピカピカであるはずもなく、真っ黒に煤けて埃が息巻いて、すごくうるさかった。
あーもう、せっかくお風呂に入ったのにい。内心で思いながら、この先の行動について考えた、下の二人は中々行ってくれない。しかも、身体中汚れて熱くなってきた。まーたー汗欠いちゃうじゃない!
「仕方ねえな。次を探そう、相棒」
「よし、行くか」
バタバタバタ…音を立てて二人は更衣室を出て行った様子だった。ウメコはダクトの網をはずし、下に飛び降りた。きったないバスタオルを脱ぐと、生まれたときの姿が現れた。
「やったね!」
棚の服の中に隠すように入れたSPライセンスを出すと、変身モードにセットした。
「エマージェンシー・デカレンジャー! フェイスオン!」
「ああああぁぁ……いやぁ…やめてぇ……」
いつものカツゼツの良さが顔をひそめ、舌を操る様があまりにぎこちなかった。
「はああぁぁ……」
白のハイネックは切り裂かれていた。ストレートヘアからあふれるジャスミンの香りは消えうせていた。口をぱくぱく動かし、喘いでいるかよだれをたらしているかだった。
「ああぁん…ああああぁ……」
ドギー、トヒ・イルワと彼の部下たちが見守る中で、プイレが礼紋茉莉花を狂わしていった。乱れたユニフォーム、肉感のある肌、艶っぽい香りが漂っている。狂わしい声が、明白なコントラストを放っていた。
「感じやがって、デカレンジャーってのは意外とウブなんだな」
ジャスミンだって何も知らないわけじゃない。警察学校では性犯罪についてのレッスンもあるし、女性警官はもしものときの護身術も習う。知識だけじゃなく、男の子と付き合ったことぐらいある。だが、一歩手前まで行っただけで、まだ経験が無かった。
そんな彼女だったから、プイレのような特化した「攻撃」を受けたことなんて無かった。身体はあまりに素直に反応していた。
「ひいい!」
「すっかり正直だな。正直なのはいいことだ」
髪を振り乱して、肉の中にもぐり込んだプイレの左手の指がジャスミンを震わせた。そんなはずじゃなかった。深くまで突き刺さったその焼きごての痛みを抑えるべく、愛液が漏れ出て、小さな水溜りが出来ていた。
「すまん……ジャスミン…」
「そ、それはあ…ぁ……言わな…い約束です。ボス…」
「まだ口は達者だなあ」
指がもうほとんどもぐり込んでいた。プイレは関節を折り曲げて動かした。アリエナイザーの指が肉壁を抉り擦るたびに、ジャスミンは声をあげさせられた。顎を突き出して強張っていた。
「指だけで悶絶してたら、プイレの逸物にやられた日にゃどうなるかねえ?」
トヒは面白くて仕方ないと言う様子だった。
「息子のように可愛がった奴が、こうして荒くれものの餌食になっていくのは? 胸が痛いだろう。しっかり見ておくんだぞ。どうした? 犬。俺がお前に受けた屈辱はこんなものじゃ収まらないぞ」
「く…は……ぁ…はぁぁ、ぎいいいぃ!」
プイレが深いところまで刺さった指を抜いた。愛液にまみれた指の爪を立てると突き刺した。
「ぁぁ……ひゃあ! あぁん! はああぁ!」
はじめはゆっくりだったのに、徐々にスピードがあがっていく。ジャスミンはピストン運動の甘美さにおかしくなりそうだった。こんなにも感じてしまう自分が不甲斐なかった。しかも、ボスたちの前でこんな醜態を晒していた。
「もう、やめてええ!!」
「まだまだ序の口だ」
「やだ…やだよ……だめ、そのままじゃ……ぁぁあ………」
プイレが耳元で囁いた。リズムを刻んで動き続ける指がそのうち心拍と完全に同期し、動悸の高まりと共に身体の奥底から熱が神経を切断しながら全身に広がっていく。やがて愛の園に集まったエナジーに、茉莉花の理性は否定された。
「いやああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
全員の耳にあまりに叫びが響き渡った。ジャスミンの身体から、潮がほとばしったのだった。
「……そ、そんなぁ…」
熱った身体を凍りつかせて、ジャスミンを呆然とさせた。
スペシャルポリスの女性刑事の射撃能力は他の刑事よりだいぶ優れていた。でなければ、パワーで劣った二人がデカレンジャーになることはできなかっただろうし、ウメコもそれを自慢にしていた。
しかもデカベースのこととなら、誰よりも詳しいウメコにしてみれば、難しくはあったが決して不利な戦いではなかった。
「フリーズ!」
デカルームの一つ下のフロアまで来たデカピンクは、敵の一人を後ろから捕らえることに成功していた。
「見つけたぜ…うわっ!」
腰の銃を取ろうとした奴の手をディーショットで撃った。肘鉄を食らわしてねじ伏せた。
「何してるの?」
「しらねえよ」
負傷した手を庇いながら敵はニヤッと笑った。そこでキレたウメコはディーショットの銃口を奴の眉間に押し付けた。
「警察官への挑戦は高くつくんだからね!」
「おい、警官がそんなことしちゃいけないんだぜ。なんせ、俺様には黙秘権があるし、脅されて喋った証言なんて――」
「うるさあいい! それならあんたがここで自殺したことにしちゃうんだから!!」
「どっちみち、警官ならアリエナイザーであっても、めったらやたらに殺したりしちゃいけないことぐらい知ってるよな?」
「あんたみたいな、理屈っぽい奴だいっきらい!」
素早くディーショットを分離させると、ウメコはディーナックルを相手のわき腹に落とし、ディースティックで背中を叩いた。事が終わると、相手は伸びていた。
「えーっと」ウメコは身をかがめて、所持品をあさり始めた。手りゅう弾にマガジン多数、着ているのは最新のボディーアーマーで、財布には百ドル札がたくさん。照明にかざすと偽者だとわかった。
「あー、ウメコ、聞こえるか?」
「!! ホージーさん? 今どこ?」
背中のベルト部分に留めたSPライセンスを取り出した。ホージーが通信口に出ていた。
「デカベースの外だ。機動隊も応援に来てるが、完全にロックされてて入れない。そっちは?」
「中にいるよ! 今何とか逃げてる!」
「犯人は誰だ?」
「ぜんぜん解らんない。すごく精巧な偽札を持ったアリエナイザーを倒したところ」
「そうか。ボスやジャスミンと連絡が取れない」
「こっちも無理」
「よし解った。こっちで突入するからお前は隠れてろ」
「えーっ、そんなこと出来ない!!」
「これが最善の選択だ!」
「ボスやジャスミンがピンチなのに、あたしが隠れてるなんて無理! デカルームに行くからね!」
「お、おい待て!」
「犬、桃色刑事さんの姿が見えないが」
トヒ・イルワが外を写すカメラ画像を見てきいた。
「俺は知らん」
「お前がさっき連絡を取ったのは、デカピンクじゃないのか?」
「知らんといったら知らん」
「知らぬ存ぜぬで通すなら答えてもらうまでだが」
既に、プイレは下半身の衣服を脱ぎ捨てていた。勃起したその巨大な男根は見るものに畏怖さえ抱かせるほどの直径と長さを手にしていた。
「よし、質問は簡単だ。デカピンクがこのデカベースの中にいるかいないか。どっちだ?」
「……知らん」
「俺としては答えなくても一向に構わないんだが、ちょっと部下が悲しむかもだ」
虫の息といった感じのジャスミンに一瞥くれた。プイレはその手首を取り、ライダーを思わせる黒い手袋をはずさせた。
「俺は知ってるぞ。お前は部下によくエスパーを飼ってる。エスパーさんは手から情報を得られるから、日々の暮らしに支障が無いよう、こんな手袋をはめるんだ。どうやらこの娘がそうらしいな。
で、プイレの婦女暴行は一件や二件じゃないんだな。たくさんに情報が詰まってる」
プイレがジャスミンの素手を自らの下半身に伸ばさせた。
「やめろろろろおおお!」
「犬、ギブアンドテイクなんだよ。さっきの質問に答えてろ」
「………彼女は、このデカベースの中にいる」
「よし、じゃあ褒美だ」
プイレがジャスミンの手を自らの男根に近づけていった。
「おい、約束が違うぞ」
「約束? そんなことした覚えは無い。答えなければ、彼女が悲しむかもと言ったんだ」
「このファック野郎!」
ねっとりとした感覚と一緒に全てがよみがえった。女、女、おんな――喘ぎ、叫び、あるものは抵抗し、あるものは調教され奴隷になっていた。プイレのペニスの上で自ら腰を振りピストンしていた。
『ああああ! いい!』
『いやあ!』
『もっ、もっとください!』
「んあぁ……」
ジャスミンはぐったりなってしまった。
「おや、どうやら鮮明すぎたようだ。気絶しちまった」
「ん? なんだどうした!!」
突然の停電――電気がついたときには、デカピンクがジャスミンを柱から開放していた。
「あんたは本当に許せないんだから!」
――プロフェッショナルの技を特別にリプレイしてご覧に入れよう。
デカルームの天井裏に侵入したウメコが、電力回線をオフにいれ、点検用ハッチを開けて室内に入ると、プイレの頭を脚で掴んで倒し、ジャスミンを捕縛しているワイヤーを切断し助けあげたのである――
「そうだったのか。女の分際で生意気な!」
「その言葉聞き捨てならないわ。しかもジャスミンをこんなひどいめに遭わせるなんて」
「フフフフ、何が悪い。全てはこの犬が悪いのだ。この犬がいなければ、俺は今頃――」
「なんだかよく知らないけど、あんたみたいな暗い奴だいっきらーい、自分の実力が足りなかったからじゃない。もう、あたしの怒りは空前絶後疾風怒濤なんだから!」
同僚の口調が移った様子が伺えるウメコは立ち上がると、SPライセンスを掲げると、名乗りのポーズをとった。
「デカピンク!」
「ものどもやれ、手加減無しだ」
トヒの命令に部下たちが一斉にデカピンクに群がった。ウメコは身軽にバクテンで中央のデスクに飛び上がると、ディーショットを構えた。
「シュート!」
トヒの部下が次々と火花を上げる。空中に躍り出たデカピンクのすらりと伸びた足が残りの部下を次々に屠っていく。あっという間に山になっていく様子にトヒがたじろいだ。
床に降り立ったデカピンクは、トヒを壁に追い詰めた。
「何を笑ってるの」
「そろそろ子供のお遊びは止めにしてもらおうか。刑事ならこれぐらい知ってるだろう?」
トヒが着ている服の前を開いた。粘土状のものが腰に巻かれていた。
「爆薬!?」
「そうだ、超高性能プラスティック爆弾だ。解ったら、とりあえずその銃をおろしてもらおうか」
腰に巻かれている分だけでもデカルームを灰にかえるぐらいはあった。
「そんなことをすれば、自分だって……」
「お前だってそうさ。これはデカスーツぐらい簡単に切り裂くぞ。さっさと銃をおいただろうなんだ?」
「狂ってる」
「狂ってなきゃ、こんなことしないさ。警察に復讐するなんて、はじめから死を覚悟してのことだ」
部下たちがダメージを回復させて立ち上がり始めた。二人がデカピンクをはさみ、ディーショットを取り上げた。ジャスミンもまたワイヤーを身体に巻かれていた。
立ち上がった部下の一人が、デカピンクを後ろ手にし、手錠をはめさせると床に座らせた。
「貴様ッ……」
C4爆弾の起爆スイッチを手にしたトヒ・イルワは顔を真っ赤にしていた。舌の使い方がどこかおかしく、眼をひん剥いていた。
「宇宙警察署には必ず装備されているものがあります」トヒが端末の一つに歩み寄ると、椅子をどけで舌の検査用引き戸を開けた。中から巨大なナイフのようなものが出てきた。
「アリエナイザーの凶悪犯罪の増加と慢性的な人員不足を補うため、宇宙警察はデカスーツを開発しました。デカレンジャーは今でこそ、信頼しうるシステムとなっていますが、私が在籍していたときは、まだまだ不良の多いシステムでした。そのせいで私も怪我を負いました。最も致命的なデバックは、転送システムがいくつものサーバーを利用するため、ひどく不安定だったと言うことです。つまり、変身コマンドを送信したのに変身しないとか、その逆とかです。私もだいぶそのデバックに悩まされました」
ライトを受けて、きらりを刃が光った。
「そこで、形状記憶合金デカメタルの強力な連鎖を収束衝撃波をあててナノマシンで侵食することにより、故障時、デカスーツを脱ぐことができるようこのデカナイフが開発されました」
そこまできて、不気味にトヒが笑い声を上げた。
床に四つんばいにされているデカピンクの背後からトヒが近づいた。華奢なマスクが不安げに振り返り、見上げていた。
「つまりなにをするの」
「こうするのさ」
デカナイフの先端をトヒがデカピンクのマスクに刃をおろした。バターを切るようにマスクがいとも簡単に刃が入っていく。
「大丈夫だ、普通のナイフじゃないから人体に影響は無い」
ウメコの顔が現れる程度にマスクが切り取られた。その影のコントラストの中で、彼女の顔が困惑と恐怖と敗北に彩られていた。
「お犬様は発情期になると盛りがつかなくなりますが、地球の人間様はいつも盛りがついていません」
「お、おい、やめろ!」
プイレがドギーの制服を拭い去ると、その股間を開いた。奴の手が彼の男根に伸びた。軽くさすってやるとあっという間に勃起した。
「いやー」
ウメコは既に泣きそうだった。トヒが後ろからデカピンクの顔をドギーの勃起した男根へ誘っていった。
「き、貴様ら…」
「逆らったら、ずごんだぞ。しっかりボスに奉仕してやるんだ」
トヒがウメコの頬を掴むと、口を無理やりこじ開けた。
「やめっ…ふぐぅ! んんぐううう……」
「アオウウウ…」
ウメコの瞳から涙が流れ落ちた。ドギーの男根がウメコの口の中に飛び込み、猛々しく暴れ始めた。
「しっかりしゃぶれ。言い忘れたが、ボスを逝かせられなかったら、このデカルームの監視カメラ画像を人工衛星にアップロードするからな!」
「ふぐうぅ!」
舌がドギーの男根を舐め始めた。直属の尊敬する上司にこんなことしたくはなかったし、羞恥に耐えるだけの自信はあった。
けれども、もしこの醜態を全世界全宇宙が知るところになれば――想像するに易しかった。
「んぐううあぁ…ふんぐううう……」
むき出しの男根は人のものと比べ物にならないほど巨大だった。むろんその大きさについて、ウメコの知識は貧弱だったが、そんなこと問題にならないぐらい巨大だった。
ウメコのフェラチオにドギーは眼を白黒させた。腰をがくがく震わせ、己の意思と戦っているようだった。その哀れな姿にトヒが笑った。
「正直になろうぜ、ワンちゃん。お嬢さんはしっかり飲み込むんだ」
「アアオオオオオオンン!」
「ごぼっ…んくううう…んぐあ」
きつい雄の臭いにウメコがむせた。身体中の汗腺が開いて体液が噴きだし、悪寒が武者震いのような形で全身を突き抜けた。ドギーのザーメンは人間のよりずっと粘り気を持っており、口の中に飛び散ると顔を汚し、デカスーツに滴った。
「すまん……ウメコ」
「…ボス、許してください」
「さあてと、二人とも中々セクシーだな」
縛り上げたウメコとジャスミンを交互に見やって、トヒ・イルワが言った。
「だが、俺様の復讐はこんなもんじゃすまないぜ。お前らはとりあえず、宇宙香港に向かい、マフィアの面子に売り払ってやる。プイレ行くぞ」
プイレはパトストライカーのハンドルを握って、クラッチを開放した。四人を乗せたパトストライカーはあっという間に成層圏へ達し、解除した惑星バリアーを抜けて宇宙へ出た。