ラージ・ヒル

 新型マッスルギアを装備したアリエナイザーの出現に対して、デカレンジャー五人はスワットモードで緊急出動したものの、その恐るべきパワーは予想以上で後退を余儀なくされていた。しかし、アリエナイザー・シャドウ星人アトミは大量のアーナロイドでその退路を塞ぐという力技に出た。
 デカレンジャーに手を焼いたアブレラが、超安価でアーナロイドを卸していたのだ。仕方なく分散して街中へ散った五人だったが、人間に扮装したアーナロイドが街じゅうに放たれていて、連絡をとることも容易にできなかった。

 ジャスミンの頬は薄汚れ、髪は汚れていた。駅前のファーストフード二階の女子トイレ個室、遠くから見ても目立つ宇宙警察のジャケットの袖を脱いだ。その瞬間顔をしかめる。インナーの長袖シャツ、左腕に黒い染みができていた。
「くっ」
 簡単に畳んで、紙袋に入れた。ポケットから備品のスイスアーミーを取り出すと、シャツの袖を破り捨てた。血が固まっている。腕を伸ばし、手のひらを空いて開く。折れてはいない。紙袋の中にビニール袋があり、ドラックストアーの値札をつけた消毒アルコールと包帯がある。
「痛っ……ううぁ」
 アルコールが染みて疵口が傷む。唇を噛んで感覚を無視すると、器用に右手を使い、包帯を巻き、きつく締めると結び目を中に入れしっかりとしめる。訓練センターで反射的にできるようになるまで叩き込まれたことだった。
 SPDとエンブレムの入ったインナーのまま歩くことはできない。ジャケットを入れた紙袋の中に、スカートまで隠れる安物の上着があり――SPライセンスの変装モードを使えば、無線電波をアトミに追跡され、位置を知られる。不必要な危険を冒すつもりはなかった――薄い色の入ったサングラスがある。顔は見られるかもしれないが、追われている者は濃いサングラスをかけるという先入観から逃れることができる。
「ナンセンス」
 なに食わない顔で個室を出ると、席においたチーズバーガーセットをゴミ箱へ持っていって、そのまま捨てた。足早に階段を下り、ありがとうございましたーの声を背に町へ出た。
デカベースに戻れればいいが、デカベースや宇宙警察の施設に近づくにつれて、アーナロイドの数は多くなる。おまけに日本警察の設置された街角監視カメラの送受信電波を敵が傍受しているらしいということが明らかになって、まともなルートを見つけるのは一苦労だった。
 いまや誰もが信頼することは難しかった。

 シャドウ星人アトミは駅前のファーストフードショップを出てくる後姿を見つけると、ゆっくり後を追った。追跡というわけではなく、普通に歩くという風を装い、三十メートルほどの距離をとった。
 シャドウ星はその名前とは反対に、恒星三個に囲まれた惑星で夜というものがない。
 昼を生きるシャドウ星人には影を見る力があった。光の作る微妙な濃淡を、においの違いを感じ取るようにして探知することができるのだ。
 服を着ても、影の濃淡を隠すことはできない。人間には到底理解することができないことだったが、シャドウ星人には容易なことだった。デカレンジャーの一人――デカイエローは変装していたが、彼女の左腕に打撃を与えたときに覚えた特徴的なボディーラインをアトミの前で誤魔化すことは出来ない。
 人間体アトミは携帯電話を取り出すと、携帯メールを打ってアーナロイドのコンピューターに直接指令を下しはじめた。デカイエローはデカベースへ戻ろうとするはずだから、その進路上にアーナロイドを配置することで、進路を思惑するところへ誘おうというのだ。
 アーナロイド大量安価購入には裏取引があった。デカレンジャーの一人を捕獲して、アブレラに引き渡すというものだった。

 ジャスミンは異変を感じて、ディーシューターを握った。デカベースへのアプローチ上にはやはりアーナロイドとわかる影があり、スペシャルポリスを探している。それを回避することで、進路はどんどんデカベースから離れていき、風俗街を越え住宅街へやってきてしまったのだった。
 木製のアパートが並び、掃除されていない通りにはごみが並んでいる。路地に入り、L字路を曲がると暗い。その暗い場所に影がある。ひきつった笑い、ディーシューターを上げ顔を寄せ構えた。
「名を名乗れ!」
「ふふふふふ、ようやく来ましたね。デカイエロー」
「コウモリ君!」
「むむ、そのあだ名は私にふさわしくありませんね。もっと格好いい名前をつけなさい」
 エージェントアブレラはそういって、翼を広げて威嚇するような格好をした。ジャスミンが威嚇にディーシューターの引き金を絞る。身軽に攻撃を受け流し、アブレラは笑う。
「次、撃ったら、脳髄が飛び散るぞ」
 ジャスミンは気配を感じて後ろを見た。イーガロイドが二体、アブレラの背後に三体、合計五体。その強力な敵兵力を前に、ジャスミンは微笑をこぼした。
「イガイガ君の大集合」
「ほほー、いい獲物だ」
「ふん、俺たちの手にかかるまでもない」
「あなたにこれが倒せるかな」アブレラはジャンプすると、背後の街灯の上に飛び乗った。途端に照明の灯がつき、イーガロイドとジャスミンの姿を照らし出した。影が消え、イーガロイドたちの鋭利な武器が光を放つ。
「なるようになる! エマージェンシー・SWATモード!」
 イーガロイドの動体視力に勝るような動きでSPライセンスを取り出したジャスミンはスーツ転送ボタンを押すと、空中に飛び出した。ライトの中で一回転した彼女の体をデカベースから転送されたスーツが体表面に定着する。マスクが装着され、側面のパトランプが五センチほど外側に飛び出して、中の赤外線探知装置を露出させる。同時に強固なチョッキや手足を防護し、さらに強化するためのアーマーが装着され、ディーリボルバーが手元に現れる。
「ふっ!」
 変身が完了しないうちから駆け出したデカイエローは、横に倒れながら、ディーリボルバーの引き金を絞った。エネルギーボトムが左右に稼動して、エネルギー弾が打ち出されると、イーガロイド二体がスパークを上げ相次いで倒れた。
「えい!」
 ジャスミンはコンピューターを特殊サーチモードに移行させ、足元の確保しながら、巧みに一体のイーガロイドの背後に回りこんだ。無傷の二体がビームを発射する前に、こちらのディーリボルバーのレーザーを送り込むと、寸胴に振り返る手前のイーガロイドの顔へと一撃を加える。
 五体がしばし麻痺している間に、街灯を見上げた。アブレラが……いない!? そこにいたはずの影を追い求めて、ジャスミンはあたりを見回した。見回した瞬間背後から迫るイーガロイドの影を認めると、その銃身で一撃を加えた。
「たあぁっ!」
 イーガロイドのリカバーは異常に早かった。ジャスミンはアーマーやディーリボルバーを上手に使いながら対処を続けたが、突然ディーリボルバーに何か蛇のようなものが巻きついてきて、手からするすると離れていく。突然のことに重心を崩したデカイエローの背後から、鈍器と化したイーガロイドの右腕が迫る。
「あああっ!」
 チョッキの下側ノーマルスーツに覆われた部分を突いた打撃に火花があがり、デカイエローの体がアスファルトの地面へ落ちていく。そこにイーガロイドの足があり、それが鋭角に彼女に向かって上昇してきて、右側のサーチ装置と激突する。
「うわあああああああああああああああ!」
目の中に星が浮かび、耳元をコードがするする抜けていく感じがした。その打撃に左側へ回転をしたデカイエローの体があり、反対側へマスクからはずれたサーチ装置が落ちて、LEDの輝きが消えた。
「ううっ!」
 仰向けに倒れる際に左腕の傷口が開き、頭の中が真っ白になった。イーガロイド五体はデカイエローを見下すと、三体がその武器を構えて、二体が左右の肩をつかんで無理やり立たせた。傷口の痛みはこれまでの最高に達し、左右に逃れようとうごめいたが、それはあっけなく阻止され、地面に降り立ったアブレラが目の前にいて、ディーリボルバーを握っていた。
「これは、高く売れますねえ」
「ココウモ…あああっ!」
 イーガロイドのビームが胸に命中して、スーツに4の字を作る白い部分が黒く汚れた。
「コウモリ君なんて名前じゃありません!」
 ヒステリックにアブレラは叫んだ。どうやら負けたらしい。でも、ジャスミンは何とかなると思った。「……ケ、ケセラ、セラ……ああ」
 デカスーツの表面に赤黒い染みが現れた。出欠に真っ白になる意識の中、その向こうにいるアブレラの姿をジャスミンは強くにらみつけた。
「生意気な小娘です!」
 イーガロイドにアブレラは連行を命じた。

 それは簡易日焼けマシンのようなポッド型の物体だった。イーガロイドはアブレラに小間使いにされるのを渋々といった様子で従っていた。ポッドを操作すると、中にベッドのようなものがあった。無抵抗のデカイエローを中に入れた。
 アラームが鳴り、ゆっくり蓋が閉まっていく。
 暗闇の中に青色のライトがぱっと輝いた。不安に思ったが、傷が痛み何を考えることも出来ない。ただ流されるままにされるしかない憤りに涙がにじむ。
「うっ!」
 スイッチが入れられたのか、電撃がスーツを難なく突破して、汗にまみれた素肌に注ぎ込まれていく。はじめはまるで電気風呂に入ったときのような感じだったが、やがて皮膚にナイフがあてられた感じがして、目玉をもぎ取るような痛みにマスクに触れたが、マスクが外れることはもちろんなかった。
「あああああああああぁっ! ああああああぁっ!」
 次に大きな痛みは股間だった。ジャスミンはデカスーツの上からそこを手で押さえた。まるで皮膚が燃え上がっているみたいだった。その陰核をスーツの上から押さえ、膣口に栓をするように手をあてがった。
「いやあぁあああああっ! ああああああああああああっ!」
 手のあてがいがずれて、陰核を覆う包皮がずる向けになり、濡れた陰核がびくびく震えながら、性感とも傷みともつかないものにもう何も考えられなくなって、尿道をずるずるっと音を立てて液体が流れ込んでくる。
「あはっふっはあぁ……漏れちゃ……った」
 尿が黄色いスーツの裏側を流れていく。ジャスミンはその屈辱に顔が青ざめるのをなんとなく意識していた。アブレラに捕らえられ、変身したままスーツの中に排泄していた。不意に体が分裂したような感じを覚えた。
 アンモニア臭がして、ずる剥けの陰核をうつろな手でいじっていた。
「あっ……」
 いつしか電撃はやんでいたが、ジャスミンが気づくことはなかった。陰核をこねくりまわりしている彼女の手つきは、半ば勝手にそれをもてあそぶ。尿の中でそれがぴくぴくしているのがわかり、信じられなかったがそれは事実だった。
「ああ……ああぁん!」
 デカイエローの腰がゆっくりとその中をうねり始めた。雌の匂いがポッドの中に立ちこめ、ジャスミンは自慰に没頭し恥じめた。
「あああぁ……イ、イク……」
 短い息遣いのあと、ジャスミンは股間を大きく開かせると、下半身をわなわなと震わせた。けだるさの産湯の中、それでもジャスミンは陰核にあてる手をあてたままにしていた。スーツの表面が黒ずみ、汚れているのがわかり、グローブの表面に体の中の液体が付着しているのがわかる。
「いは……イクゥ!」
 一回目からわずか数十秒で短くつぶやいたジャスミンは、終わるとともに激しく息をかえしていた。呼吸をゆっくり整えながら、院核の包皮を元に戻そうと指を操ったけれど、スーツの厚みが邪魔しているのか、うまく元に戻すことが出来なかった。
「ひ……は……え……」
 そのことに熱中していると、いつの間にか開いたポッドの向こうにアブレラが笑っている。
「醜態ですねえ……」
「あ、あぶれら……たしけてぇ……」
「おやおや、懇願ですか。このレーザー手術装置がキモチいいとは意外でしたね。ああ、そうだ。このレーザー装置を女性が使うと、誤ってクリトリスの皮を切除してしまうんだった……いやあ、本当はスーツを引きちぎるためのものだったんですけどねぇ」
 変体チックな笑いをアブレラが浮かべると、イーガロイドに命じて牢屋へ連れて行かせた。連行される間、次の刑が執行される間、ジャスミンは狂ったようにオナニーを続けた。その狂おしさはやがて、手を当てることなしに、ずる剥けになった陰核とスーツが尿や愛液を受けてこすりあって、身をよじるだけで、そこから生み出す快感は、永久機関のように蠢いて、ジャスミンの心と体を狂おしく揺さぶった。

 アトミをデリートしたデカレンジャーは行方不明のジャスミンの捜索を続けていた。そこにデカイエローがD地区にいるとの垂れ込み電話が入り、デカレンジャーはD地区に急行した。そこには広大な廃車置場があった。
「マイガッ」
「ナンセンス……」
「やだ……うそっ」
 ウメコは変身を解くと、男どもに見ないように促した。シーツを転送させると、ジャスミンの肩にかぶせた。そして、狂ったように動く手を押さえつけた。
「らめ……らめぇ……」
「ジャスミン、しっかりして!」
 ウメコの頬に涙が伝う。あらゆる装備をアブレラに奪われたジャスミンは、全裸にされて朽ちた乗用車の後部シートで狂ったように手を膣と陰核にあてがい悶え続けていた。