罠に堕ちたピンクファイブ前編
「・・・こ、ここは・・・一体・・・?」
桂木ひかるは、辺りを見回すが、街中にもかかわらず人っ子一人いないばかりか、生き物の気配すら全くない。
仕方ないので車を降りて周囲の様子を探るが・・・やはり誰もいなかった。
「一体、どうなってるの?そういえば、あの時・・・」
この異常な町に来る直前に全く同じ顔の子供を見た事を思い出した。
普段ならば双子という事で納得するのだが、かつて南原竜太が双子を模したメカ人間に異空間に閉じ込められ、バイオマンのデータ採取に利用された事を思い出した。
「まさか・・・だとすると、ここは危険だわ。」
状況を把握したひかるは、早速テクノブレスでバイオベースに連絡しようとするが、ノイズばかりで応答が無かった。
「いけない・・・連絡がつかない。どうすれば・・・・・・そうだわ、この空間を制御している装置がどこかにあるはず、それを破壊すれば!」
ひかるは、車に戻り空間制御装置を捜す為にエンジンを始動させた。
その時、周囲の空間が突如歪み、今度は、採石場のような場所に変わっていた。
「ま、また?今度は、どこ?!」
車から降りた瞬間、車に三方から破壊光線が降り注いだ!
「きゃああああああ!!」
間一髪、飛び退くがひかるは、爆風に大きく吹き飛ばされた。
「あぅ!くっうぅ!」
「桂木ひかる!ここがお前の墓場だ!」
「メイスン?!」
新帝国ギアの幹部メイスンが、崖の上から、姿を現す。
「たっぷり可愛がってやるよ!」
ファラがファラキャットを伴い現れる。
「俺達を、相手に勝てると思うな!」
モンスターまでもが、現れた。
ギアの幹部ビッグ3が勢揃いして牙向く・・・。たった一人という現状の先に待っているのは、確実な死だった。
しかし、諦める事は、できなかった。
「ピンクファイブ!」
絶望的な状況の中、ひかるは、バイオスーツを纏いピンクファイブに変身する!
一縷の望みは、連絡が途切れた状況を訝しんだ仲間が救援に来てくれる事だけ・・・それまで、一人で戦うしかなかった・・・それが、どれだけ絶望的でも・・・。
「ファラビームストーム!」
ファラが口から火炎状のビームを放つ!
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
間一髪、直撃は避けるものの体勢を崩すピンクファイブ!
「シャァァァァァァ!」
そこに、ファラキャットが鋭い爪を閃かせ躍りかかる!
「バイオソード!」
ピンクファイブは、バイオソードを抜き、短剣モードにするとファラキャットを迎え撃つ!
ギィン!ドカッ!
ファラキャットの爪は、防げたが、次の瞬間、ピンクファイブの右側頭部にファラキャットの膝蹴りが叩き込まれる!
「あぐぅっ!」
吹き飛ぶピンクファイブ!
立ち上がろうとするピンクファイブに、今度はメイスンが放ったミサイルが襲う!
ドガァァァァァン!!
「ああぁぁぁぁぁ!!」
メイスンが放ったミサイルは、ピンクファイブの左胸を直撃して、バイオスーツを破壊した!
「あうぅ・・・くっうぅ・・・」
ピンクファイブの左胸のバイオスーツは、痛々しく裂け、スーツ内部のメカが露出して断続的に火花を散らしていた。
大ダメージを受けながらも、かろうじて立ち上がったピンクファイブに、今度は、モンスターが襲いかかる!
「喰らえ!ビッグアイアン!!」
モンスターは、右腕を刺付き鉄球のビッグアイアンに変化させて、ピンクファイブを殴りつける!
「あぁ!あぐぅっ!うぅ!きゃあ!あ、あああぁぁぁぁぁ!!」
モンスターは、ピンクファイブの頭を、腹を連打し、その度にバイオスーツが火花を散らし爆発した!
そしてピンクファイブの左胸の傷にビッグアイアンを押し付けグリグリと捩込む!
モンスターの怪力で刺付き鉄球を捩込まれる度にピンクファイブのうめき声とバイオスーツの内部メカが破壊される音と、それに伴う爆発音が辺りに響く!
「そらそら?」
「うぅ・・・くぁああ!」
「モンスター!そのままピンクファイブを羽交い締めにして、こっちに向けろ!」
ファラが、モンスターに指示を出し、モンスターがピンクファイブを羽交い締めにして、ファラの方へ向ける。
「う、あぁ・・・」
モンスターの怪力で嬲られ続けられたせいでピンクファイブは、自分で立つのが、やっとだった。
「次は、アタシの番だ!喰らえ、ファラキッス!!」
ファラの口から光線短剣ファラキッスが連射され、ピンクファイブの右胸と腹部、左足に突き刺さる!
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
ピンクファイブに突き刺さった光線短剣は、一瞬の間を置き爆発し、バイオスーツを破壊する!
「きゃあぁぁぁぁぁ!!あ、ああぁぁぁぁぁ!!」
さらに破壊されたバイオスーツは、傷痕から白煙を上げ、スーツのエネルギーがスパークし、傷痕が断続的に爆発する!
モンスターが、羽交い締めを解き、右腕を巨大カッター、ビッグカッターに変化させ、ピンクファイブの背中をX字に斬り裂く!
「あああぁぁぁぁぁ!!」
バイオスーツの背が、X字に斬り裂かれ断続的に爆発する!
さらに、斬られた勢いでゆっくりと回転しピンクファイブが正面を向くと同時に、もう一度モンスターは、斬りつける!
「きゃあ!あぁ!きゃああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
再び胸をX字に斬り裂かれたピンクファイブに、モンスターは、何度も斬りつける!
ビッグカッターが振るわれる度に、バイオスーツがピンクファイブの悲鳴とともに、火花を散らしながら斬り裂かれ、爆発していく!
「モンスター、ファラ、そろそろデカイのをお見舞いしてやろうではないか!」
「おう!」
「そうね!」
ビッグスリーが集まり、それぞれの武器にエネルギーを溜める!
「「「ビッグスリー!!!!!」」」
三人が叫ぶと重なった武器から夥しい破壊光線が放たれ、ピンクファイブを襲う!!
ドガァァァァァン!!
「きゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
破壊光線は、ピンクファイブを直撃し大爆発を起こした!!
「やったか?」
モンスターが爆心地を覗き込む。
爆煙が、もうもうと立ち込め様子を窺い知る事ができなかったが、破壊光線がピンクファイブに直撃したのは、三人共、視認していた。
「ファラキャット、ピンクファイブの死体を確認しといで!」
「ハッ!ファラ様!」
ファラキャットが爆心地に向かうと、そこには、強化スーツの全身至る所が破れ、露出した内部メカから、火花を鮮血の如く噴き出し、虫の息のピンクファイブが無残に転がっていた。
「う、うぅ・・・あぁ・・・」
全身ズタボロで、文字通りボロ雑巾に等しい状態のピンクファイブ。
ピンクとホワイトの強化スーツは、スーツの爆発による煤と爆風による泥で黒く汚れきっており、マスクにも、ひび割れや破損によって内部メカが露出していた。
「まだ、生きているとは・・・」
ファラキャットは、敵ながら、あれほどの大爆発でも生き残ったピンクファイブに驚嘆したが、虫の息のピンクファイブを小脇に抱えると、ビッグスリーの元へと戻っていった。
「ファラ様、ピンクファイブは、まだ、生きております。」
「信じられん、あれほどの爆発の中で、重傷を負ったとはいえ、まだ、生きているとは・・・」
メイスンが驚愕するが、既にピンクファイブは、ズタボロになっているのを見て、残忍な笑みを浮かべると、ファラとモンスターを見て。
「どうだ、お前達、これからファラキャットやメカクローンにピンクファイブを痛め付けさせるというのは?」
「ほう、それは良い。奴らも復讐したいだろうしね・・・どうだい、ファラキャット?」
サディスティックな笑みを浮かべたファラが、ファラキャットに尋ねる。
「はっ!ありがとうございます、ファラ様。」
頭を垂れるファラキャットにも残忍な笑みが浮かぶ。今まで、散々、煮え湯を飲まされた相手に一方的に逆襲できるとあって、興奮している様だ。
「モンスター、お前は?」
メイスンが尋ねる。
「いいだろう今まで、やっつけていた相手に逆にやられる姿を見るのも良いな!」
モンスターも楽しそうだ。
「待て!」
突如、天空より声が響く!
「ド、ドクターマン様?!」
メイスンが空を見上げる。
すると、空にドクターマンの映像が浮かび上がる。
「ピンクファイブを、お前達の好きに痛め付けるのは、構わん!が、しばらく時間を置け!以前、ブルースリーを閉じ込めた際に得られなかったデータも得たい・・・そして、最後に私が作った武器のテストを兼ねてピンクファイブに止めを刺すのだ!!」
そう言うとドクターマンの映像は消え、入れ代わりにメラージュ戦闘機が降りてきた。
搭乗していたメカクローンがビッグスリーとファラキャットに武器とパーツを渡す。
ビッグスリーには、反バイオ粒子を、それぞれの武器に付与するパーツが。
ファラキャットには、バイオロボのスーパーメーザーの様にエネルギーを纏わせる事が可能になった新たな爪を搭載したハンドユニットが与えられた。
ファラキャットの新たな爪に纏わせられるのは、バイオマンの最大の弱点、反バイオ粒子エネルギーである。
小一時間程が経過し、その間にメカクローンを集結させ、近くの窪地にズタボロのピンクファイブを寝かせ、メカクローンに十重二十重に包囲させた。
その間、メイスンとファラは、ズタボロのピンクファイブのデータを集めていた。
ボロボロな外見ではあるものの、どうやらバイオスーツには、装着者の治療とスーツを若干ながら修復する機能がある様でピンクファイブのバイタルサインも回復している様だった。
「なるほど、あの時ブルースリーが短時間で体力回復できたのは、こういうわけだったのか・・・」
ファラが、得られたデータを見ながら呟く。
「あうぅ・・・くぅ!・・・くっうぅ・・・うぁぁ・・・あ、あぁ!・・・」
ピンクファイブが、もがきながら呻き声を上げる。
これから、更なる攻撃に曝されるとも知らずに、よろめきながらも立ち上がった。
「ハッ・・・こ、これは・・・?!」
いつの間にかメカクローンに十重二十重に取り囲まれ、ビッグスリーとファラキャットの姿が無かった。
「ようやく、お目覚めか?!ピンクファイブ!!」
メイスンが崖の上から叫ぶ。
「メイスン?!」
「お前は、これからメカクローンによって、嬲り者にされるのだ!やれ!!」
メイスンの号令と同時にメカクローンがピンクファイブに殺到する!
「バイオソード!」
ピンクファイブは、ズタボロの我が身を気遣う暇も無く、メカクローンを迎え撃つ為、バイオソードを長剣モードにして戦う!
「ハッ!エイ!ヤァ!トゥ!」
満身創痍の身体と絶望的な状況の中、諦めずに剣を振るうピンクファイブ!!
メカクローンは、次々と斬り捨てられていくが、いかんせん多勢に無勢という状況に変わりなかった。
全周囲、全てが敵である。
「きゃあ!あうぅ!あぁ!あぐぅっ!うぅ!あん!あぁ!あぁん!きゃあぁぁぁぁぁ!!」
前の敵を斬り伏せると、その隙に左右からメカクローンが斬り付け、そちらに気を取られると今度は、背中を斬り裂かれる!
ピンクファイブが斬り倒すメカクローンより、徐々にピンクファイブが斬られる回数が増えていく・・・!
「あぁ!・・・くぅ!こ、このままじゃ・・・うぁぁ!・・・いつか・・・きゃあぁぁ!・・・やられる・・・!」
ピンクファイブは、バイオソードを掲げて叫ぶ!
「レーザーソード!!」
バイオソードから、閃光が全周囲に広がりメカクローンを破壊していく!
「こ、これで・・・そ、そんな・・・?!」
確かにレーザーソードの閃光は、メカクローンを薙ぎ払ったが、有効範囲外にも多数のメカクローンがいた為、全滅とはいかなかった!
「撃てぇ!」
メイスンが命じると、メカクローン達は、マシンガンを取り出しピンクファイブに向け一斉に撃った!!
「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」