- ストーカー 狙われた桃色の女戦士 前編 -
「やあっ!とおっ!…ええぇぇい!!」一面緑の芝生に覆われたとある大きな公園…デンジピンクとなった桃井あきらが公園内で暴れまわるダストラー兵たちを止めるべく、独り彼らと戦っていた。
流麗なデンジスティックの舞、しなやかな肢体から繰り出される華麗な蹴り、合気道を応用したデンジサンダー投げ…躍動するピンクの肢体から次々と繰り出される技がダストラーたちを蹴散らしていく。
「やああああっ!」
そして最後に残ったダストラーの顔面に右の回し蹴りを食らわせるあきら。それをモロに食らい後ろへ吹き飛んでいくダストラー兵。
「ふぅ…終わった終わった…これくらいなら軽いもんね」
両手をパン、パンッと払い、息一つ切らさず周りの様子を余裕の姿で見渡しているあきら。びいぃぃん。そして周囲に誰もいない事を確認すると彼女は“デンジピンク”の変身を解く。
そこからピンクの上着にミニスカート、しろのロングブーツという出で立ちの“桃井あきら”の姿が現れる。
見た目ごく普通の若い女性に見えるあきらだが、こう見えても彼女は異次元からの侵略者“ベーダー一族”と戦っているれっきとした電子戦隊の紅一点、桃色の女戦士“デンジピンク”だった。
彼女は一日の任務を終えアスレチッククラブからの帰宅途中、ダストラーの一段が暴れまわっている現場に出くわし周りにいた人たちを避難させながらダストラーたちと戦っていたところだった。
「う、ううぅうん…余計な時間を取られちゃったわね…さぁ、帰りましょ」
身体全体で伸びをしてその場所から離れようとするあきら。パシャパシャ…静かな公園の端でかすかに響き渡るカメラのシャッター音…そんなあきらの様子を数十メートル離れた物陰からずっと観察していた男がいた。
「うう~ん、あきらちゃん♪…やっぱりあきらちゃんはいいなぁ…」
しばらくの間、あきらを物陰から眺めていた160cmぐらいの小太りの男、白いポロシャツにダークブルーのジーパン、黒縁メガネに青いバンダナ、ボサボサの頭髪、無精髭という30歳くらいの“青山”という男が呟く。
「全身ピッチピチのスーツに包まれた謎多き桃色の戦士デンジピンク、その正体は…モデル並みの身体と美貌を誇る元テニス選手“桃井あきら”だもんね…うう~ん、この響き、たまらないなぁ…」
そう言い自作改造した超望遠カメラを構える青山のファインダー越しにはこちらを振り返っているあきらの姿が映っていた。
(わ、わわわっ…き、気づかれちゃったかな!?)
手にしていたカメラをあわてて顔の前から離し、物影へ完全に身を隠す青山。そしてあきらは彼がいる物陰を不信な目つきでじーっと見つめている。
(…気のせいかしら、さっきから何か視線を感じるのよね…特にあそこから見られてるような気がするんだけど…)
尚もその物陰に不信な気配を感じ取り睨み続けているあきら。
(…デンジピンクになって“デンジスコープ”でちゃんと確認するって方法もあるけど…特に嫌な事は起きそうにないし…まぁいいわ)
しばらくして何もないことを確認すると、あきらは踵(きびす)を返して自宅への帰路へとついていった…。
(ふ、ふぅ…危ない危ない…どうやら気づかれなかったみたいだな…)
家路へと向かうあきらの後ろ姿を見つめながら青山はホッと胸を撫で下ろす。
(それにしても…あきらちゃん家に帰るのかな?…よぉーし、今日は思い切ってあきらちゃんの家まで尾行してみよう♪)
そう思い立つと青山は己の存在に気づかれないように遠巻きにあきらの後を尾行し始めた。
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…十数分後、あきらは閑静な住宅街の路地にいた。彼女は何か嫌な視線を感じ、時々後ろを振り返りながら歩いていた。
(…おかしい?やっぱり誰かに見られてるわ…一体誰なの?)
しかしあきらが何度後ろを振り返ってもその嫌な視線を浴びせてくる主を見つける事はできなかった。
(うふふっ…そう簡単には見つからないよ、あきらちゃん♪…えへへへっ)
そのあきらに妙な嫌悪感を感じさせていた張本人、青山は彼女から見失わない程度の距離をとり、路上の物陰を巧みに利用しながら彼女の後を尾行していた。
だが、あきらも青山の姿は見つけられなくても彼が浴びせてくる視線で“何者か”に尾行されていることは何となく気づいていた。
(やっぱり誰かにつけられてる、間違いないわ…でもベーダーならこんな回りくどい事はしてこないはず…もしかしてストーカー?……そういえばこの先に入り組んだ路地があるわね…よぉし、そこでそいつを巻いて正体をつきつめる、そして懲らしめてやるわ)
そう思うとあきらは、いきなりその入り組んだ路地に向かって駆け出した。
(わわわっ、あきらちゃんいきなり何で走り出したんだ?…とにかく見失わないようにぼくも追いかけなきゃ)
あきらを遠巻きに眺めていた青山も、その彼女をあわてて追いかけていった。
…入り組んだ路地裏を全力疾走するあきら。その彼女に必死でついていこうとする青山。
だがあきらは歴戦の女戦死、しかも元テニスプレイヤーである。そんな鍛えられた彼女の脚力に普段運動などロクにしていない青山がついていけるわけもなく、やがて彼はその狭い路地であきらを見失ってしまった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」(くっそう、見失っちゃった…あきらちゃん、どこに行っちゃったんだ…?)
両手を自分の膝についてぜぇぜぇと大きく息をし、辺りをキョロキョロと見回している青山。
「ちょっとあなた!…さっきからわたしの後ろをずっとつけてたみたいだけどどういうつもり!!?」
そこで青山の後ろの方から凛とした若い女性の声が…そこには前で両腕を組み仁王立ちし、鋭い視線で彼を睨みつけているあきらの姿があった。
「えっ??…あ、あの…そ、その…」(わわわ、あきらちゃんがこんな近くに!?…あきらちゃんがぼくに話しかけてる!?)
あまりの驚きととまどいと喜びと…色んな感情が錯綜していた青山は物凄い形相で睨みつけてくるあきらに対し上手く言葉が出てこない。
「…ちょっと!!あなたどうなの?聞いてる!!?」
そんなあきらは組んでいた両腕を下ろし、物凄い迫力で青山にズンズンと迫っていく。
「…あ、あ、あの…その…あ、あの…」(わわわっ、あきらちゃんがこっちに近づいてくる!!?…そうだ!こんなに近くにあきらちゃんがいるならバンダナに仕込まれてる小型カメラを起動させておかなきゃ)
震える右手で青山はバンダナを何気なく触り、それに仕込まれていた小型の隠しカメラを起動させる。もちろんあきらはそんな事にはまったく気づいていない。
「…あなた、ちょっと何とか答えなさいよ!!ねぇ!?」
やがて青山の目の前まで来たあきらの彼を問い詰める声はだんだんと怒気を帯びたものになってくる。青山よりやや身長のあるあきらは彼を見下ろしているせいか彼に余計に迫力を感じさせていた。
(わわわっ、あきらちゃんがこんな近くに…どうしよ、どうしよ…)「えっと…あの…その……わ、わああああっ!!」
その青山はそのあきらの迫力に耐えられなくなったからか、何を思ったのか両手を突き出して彼女の胸元目掛けて突進していく…。
(やった!何かよく分かんないけどあきらちゃんのおっぱいに触れそう、えへへへっ♪…!?…えっ??)
「やっ、ええぇぇい!!」
そして今まさに彼の両手がその胸のふくらみへ触れようとした瞬間…あきらは突進してくる青山の腕を横へヒラリとかわし、その彼の突進する力を利用してあきらの得意な合気道の投げ技へと持っていく。堅いアスファルトの上にうつぶせに叩きつけられる青山。
「ぐふぅっ!……っ…!…う、ううぅ」
そしてそのうつぶせに転がされている青山の背中にあきらは身体全体でのしかかり両腕でその短く太めの首を絞めにかかる。
「…ちょっと!!あなたどさくさにまぎれてどこ触ろうとしてるのよ、この変態男…ねぇ、何とか答えなさいよ!!」
ギュウッ、ギュウッ…見た目よりも遥かに力強いあきらのヘッドロックは青山の意識を徐々に奪っていく。
「ぅぅ…ぁぁ…ぁぁ…」(く、苦しい…でも…でもあきらちゃんの顔がすぐ後ろに…それに…それにぼくの背中にあきらちゃんの胸が…推定Dカップのふくよかな胸が…)
青山は呼吸困難からか顔を真っ赤にし全身をバタバタさせ、あきらのその首絞めから何とか脱出しようと試みている。しかし彼はその小太りの体をもだえさせているだけだった。
だが首を絞められている彼の表情は苦しそうな中にも恍惚でどこか幸せを感じてるような表情をしていた。
(ああ…ぼく…ぼく、しあわせ…このまま…死んでも…い…い…)
息苦しさからか、恍惚な表情で悶絶していた青山の動きがだんだんと弱々しくなっていく。
(!?何なのコイツ?…わたしに首絞められて苦しそうなのにむしろ喜んでる?…でもこのまま落としちゃうのもマズイし…ふぅ、しょうがないわね)
そう思うとあきらは青山の首を絞めていた腕をゆるませ彼の足元付近にスクッと立ち上がる。彼女の首絞めから開放された青山は、あきらの方へ膝立ちになり必死にむせ返っている。
「う…う…ケホッ、ケホッ…な、何で…!…ひ、ひっ?」
あきらは左手でむせ返っていた青山の胸ぐらを掴み、彼をグイッと吊り上げる。その青山は地面からわずかにつま先を浮かされたような状態で彼女に持ち上げられていた。
「…ちょっとあなた!さっきから何なのよ!…もっとハッキリしゃべりなさいよ!!ねぇ??」
「あ、あ、あの…その、その…え、えっと…」(わわわっ…あきらちゃんの顔がこんなに近くに!?…それにしても起こったあきらちゃんの顔もいいなぁ♪)
持ち上げた青山を物凄い形相で睨みつけているあきら。その彼女の顔は彼から50cmぐらい前にあった。
自らの立場が極めて悪い状況に置かれているにも関わらず、青山はそのあきらの怒りの形相をニヤニヤしながら眺めている。
(!そうだ…バンダナの小型カメラが回っているんだった…せっかくだからもっといろいろなところを見て置かなきゃ…ムフフフフッ)
そう思うと青山は、目線をあきらの顔から桃色の上着に覆われたふくよかな胸元へチラリと視線を落とす。そのふくらみをマジマジと見つめている彼。
(…うわぁ、あきらちゃんのおっぱいだぁ…あきらちゃんの胸がこんな近くに、ムフフフフッ)
でれーっと鼻を伸ばしさらに顔がだらしなくゆるんでくる青山。しかし彼女も彼のそんな淫らな視線に気づいたようだ。
「ちょっとあなた!わたしにストーカーみたいなことしてどういうつもりなの!?…!…あなたさっきからどこ見てんのよ!いやらしいわね、この変態男!!」
ビュッ!あきらの強烈な右の平手打ちが青山の左の頬に炸裂する。パシィッ!その乾いた音と共に彼の黒いメガネが勢いよく吹き飛ぶ。
「ぶっ…っ、ってぇ…うわぁっ!!」
ドサッ!!右の頬を張られた青山はそのまま背中からアスファルトの地面に叩きつけられる。う、ううっ…彼は尻持ちの状態で吹き飛ばされたメガネを手探りで懸命に探している。
そして青山が右に飛ばされたメガネを見つけだし自分の目元へそれを掛けた瞬間…グイッ…彼の首に皮製のヒモでぶらさがっていたカメラをあきらに引き抜かれそうになる。
「…これでわたしの写真をいっぱい撮ってたのね!…ちょっとこれ貸しなさい!」
「わわわっ、これはダメ!これだけは絶対にダメ!!」
先程までハッキリものをしゃべらなかった(しゃべれなかった)青山が初めて明確な言葉を、反抗の意思を示す。
青山の首からぶらさがっていたカメラを彼から奪い取ろうとするあきら。自分のカメラにしがみつき必死でそれを阻止しようとする青山。
「ぐっ、このっ…よこし…なさい!」
「ヤダ!それだけは絶対にヤダ!!」
あきらと青山、カメラの本体を通じてお互いの綱引きのような状態になっていた。
ギリギリギリ…しかしあきらも非力とは言ってもそれは“デンジマンの中では”という注釈がつく。一般人の青山からすれば物凄いパワーであった。彼は徐々にその力に耐えられなくなっていく…。
(く、くぅ…あきら…ちゃん…すごい…力…さすが…正義のヒロイン…ってマズイ、マズイよ…わ、わあああぁっ)
ブチンッ。そして青山の首に引っかかっていたカメラのヒモが引きちぎられ、その本体ごと青山からもぎ取られてしまう。しかし彼女も勢い余ってそのカメラごと後ろへ尻持ちをついてしまった。尻持ちをついたあきらは大またを開いて転んでしまったため、彼女のそのミニスカートの中は丸見えである。
「きゃっ!?…っ…」
「わぁーっ、ぼ、ぼくの…ぼくのカメラがぁ…」(でも…でも、おかげであきらちゃんのパンチらがこんなにモロに拝めるなんて…あぁ、ぼくし・あ・わ・せ♪)
鼻の下をでれーっと伸ばし“この世で最高の宝物を見つけた”というような至福の表情であきらの股間を見つめ続けている青山。
(!はっ!?…ゃ)バッ!…あきらもそんな彼の視線に気づいたのか、頬をやや朱に染め上げあわてて自身の前を左手で隠しすぐにスクッと立ち上がる。
カチャッ…ビイィィィ!…そしてあきらはそのカメラからフィルムのネガを取り出し、それを思いっきり引き伸ばす。
「わああああぁぁぁ!!…ぼ、ぼくの写真が、努力の結晶がぁ…」(ああっ…ぼ、ぼくのあきらちゃんが、あきらちゃんがあぁ…う、ううぅ)
カメラを奪われそれに入っていたネガを台無しにされさすがにうなだれている青山。そんな彼の元へ、あきらはつかつかと迫ってくる。
(う、ううぅ、ぼくの写真が…せっかく集めたぼくのあきらちゃんが…ヒドイ、ヒドすぎるよ…)「…えっ!?まだなに…ひ、ひっ!?」
迫ってきたあきらは再び青山の胸ぐらをグイッと掴み、先程と同じような体勢で睨みつける。
「…あなたさっきわたしのスカートの中じーっと覗いてたでしょう?…ええっ!!?」
「め、滅相もない…見てません、見てないですぅ」
先程までよりも物凄い形相で青山を睨みつけているあきら。ぶんぶんとかぶりを振りその彼女の質問を必死で否定している彼。
「…ふぅ~ん…じゃあわたしの下着の色なんてあなたに聞いてもわかんないわよねぇ…変態男・さ・ん?♪」
目を細め冷ややかな表情で青山を問い詰めるあきら。それに対し彼はそんなあきらの撫で声な問われ方に思わず本当の事がポロッと出てしまう。
「…え、えっと…薄いピンクかな?…それも見せパ…ぶっ!!」
バシィッ!!再びあきらの右の平手打ちが青山の左の頬へ炸裂する。また飛ばされる彼の黒縁メガネ…今度は先程よりもいい音が…。
「…やっぱり見てたのね…この!変態男!!」
「うわあぁっ!」
ドシンッ!!あきらは彼を背中から思い切り地面に叩きつける。う、ううぅ…ロクに受身も取る事ができず、その痛みに相当こたえたのか、ただひたすら苦痛にもだえている青山。
「…今回はこれくらいにしといてあげるけど…今度こんな事やってたらその時は…いいわね!!?」
前で両腕を組み、仁王立ちで青山の眼前に立って鬼の形相で彼を睨みつけているあきら。さすがにその迫力にタジタジの青山。
「わ、わわっ…わわわっ…」
「ねぇ、どうなのよ!!?答えなさいよ!!!」
その怒気を帯びた青山を問い詰めるあきらの声はだんだんと激しいものになっていく。
「わ、わわっ…分かりました…しません、もうしません…本当にゴメンなさい」(こ、怖い、怖いよぉ…でも怒ったあきらちゃんもやっぱりい・い…♪)
口ではあきらへ素直に謝罪している青山。だが心の底では遭いも変わらず懲りてないらしい。彼女もそんな青山の反省してない内面に何となく気づいていたようだ。
(ふぅ、どうだか?…でもこれ以上痛めつけるのもかわいそうだし…まぁいいわ)
謝罪の言葉を述べている青山を肩をすくめて半ばあきれるように見つめているあきら。だがこれ以上懲らしめてもしょうがないと感じていた彼女はクルリと踵(きびす)を返してその場を立ち去っていった…。
「…ふぅ、行っちゃった…っ~…それよりもあきらちゃんのビンタ効いたなぁ…それにしても…今日はいろんな事があったなぁ」
あきらに張られた頬を左手で押さえながら青山はこの日起きた彼女との出来事を思い返していた。
「あきらちゃんと身体を触れ合う事もできたし、あのかわいくて凛々しい顔も間近で見る事もできたし…何よりあんな形でモロニパンチらも♪…ムフフ、ムフフフフフフッ」
一連のあきらとの出来事を思い出しているうちに…彼の表情は徐々にニヤけそのゆるんだ顔からは気色悪い笑いがもれてくる。彼女に奪われたカメラを拾い上げそれをじっと見つめている青山。
(さてと…今日はぼくも帰ろうかな?…!そうだ、撮った写真はダメになっちゃったけど“バンダナの小型カメラ”があるんだった。家に帰ってそれを見返してみよう…今日はあんなに近くであきらちゃんといろんなことがあったからなぁ…あんなことやこんなこともあったし…それを考えるとあんだけ痛い目に遭った甲斐があったのかもなぁ…ムフフ、ムフフフフフッ)
じーっとカメラを見つめていた青山はまた気味悪く笑う。そんな彼もまたその場を離れていった…。
そんな彼の様子を遠くから眺めている男がいた。あきらたちデンジマンの宿敵、ベーダー一族の幹部“ヘドラー将軍”である。
(あの男桃井あきらに相当熱を上げているのか?…どうやら“デンジピンク”抹殺に使えそうだな、グフフフフッ)
青山が立ち去る様子を見ながらヘドラーはほくそ笑んだ。そして彼もまたいずこかへと姿を消していった…。
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ガチャ…青山は彼が澄んでいる6畳一間・1Kのボロアパートの自分の部屋に戻ってきた。
畳の部屋の端々にはカップメンやコンビニ弁当の残骸があちこちに散らかっており部屋の中央にはしわくちゃの布団が何日も敷きっぱなしにされている。
そして部屋壁のあちこちにはあきらの写真、自作したポスターやカレンダーが張られている…デンジピンクとして戦っているあきらの姿、いつものピンクの衣装の姿、そしてどこで撮ったのか桃色の水着姿のあきらの写真まで飾られていた。
「…ふぅ、今日も疲れたなぁ、それにかなり痛い目にも遭ったし…でもおかげでぼくの知らないあきらちゃんがいっぱい見れたんだからなぁ、ムフフフッ…!そうだ、早速バンダナのカメラに収めたあきらちゃんとご対面しよう。本当にいろんなショットを取れたもんなぁ…ムフフ、ムフフフフフッ♪」
そう呟くと青山は早速バンダナのカメラに収まっている映像を見るべくビデオをセットし、食い入るようにモニターに見入る。彼が見つめるそのモニターには怒りの形相のあきらの顔が映し出されていた。
▼…ちょっとあなた!さっきから何なのよ!…もっとハッキリしゃべりなさいよ!!ねぇ??▼
「うわあぁ、あきらちゃんの怒った顔だ、こんなにアップで撮れてたんだ、感激だぁ!…うう~、やっぱいいなぁ…あっ!?あきらちゃんのおっぱいのどアップだぁ!…しかも実は微妙に揺れてるじゃないかぁ!!?…くぅぅ、あんなに痛い目に遭ってよかった…」
青山はカメラの映像に食い入るように見入っていたため周りの事は全然見えてない。どこからともなくヘドラー将軍が現れていたことも…
「グフフフッ、だいぶお楽しみのところ失礼するよ…それにしても随分と根暗な趣味だな…フフフフッ」
「そうさ、どうせぼくは根暗なオタクだよ…って…わ、わわわっ、だ、誰だ!おまえは!?それ以前に人の家に勝手に入ってきて何なんだっ一体!?……ひ、ひっ!?」
ヘドラーは自分の左手で驚いている青山のアゴを掴み自分の方へクイッと向かせる。そんなヘドラーの行為におびえる青山。
「フフフッ…おまえ、どうやら桃井あきらに相当ぞっこんのようだな…どうだ?もっと“あの女”を好きにしてみたいと思わないか?…グフフフフッ」
あぐらをかいておびえている青山にそんな事を問いかけるヘドラー。彼はやや顔を赤らめこう切り返す。
「えっ??…あ、あの…その……そりゃあ、もちろんぼくもあきらちゃんともっと色んな事したいけど…ぼくみたいなヤツにそんなことができるわけないじゃないか!」
「フフフッ、おまえの力だけではな…ただ我らベーダーが協力してやるというのであれば話は別だ」
「えっ??どういう…い、っつつ、わあああぁぁぁ!」
すると突然青山に強烈な頭痛が走る。自身の頭部を両手で押さえ出す青山…そして彼の頭の中から突然何者かの声が聞こえてくる…。
【フフフッ…ゴキゲンいかがかな?オタク君、お初にお目にかかる】
「うわっ!?…あ、頭の中から声が??…だ、誰だ!?一体?」
【フフフッ、我が名は“ニンポウラー”。君の頭脳に巣食わせてもらってこうして君に話しかけている…フフフフッ】
「なっ…そ、そんな…もし本当にそうだとしても人の体に何勝手に入ってきてるん…わ、わわっ?て、手が勝手に…?」
すると青山の右手が独りでに動き出し、いきなり彼の股間をムンズと思い切り鷲掴みにする。その事についてヘドラーが誇らしげに説明する。
「フフフッ、驚いているようだな…それはおまえの頭に住み着いた我らがベーダー怪物ニンポウラーがおまえの体を操ってそのようにしたのだ…フフフフッ」
「なっ…何でそんな事するん…」
「まぁ聞け…そのニンポウラーの能力を使ってあの女、桃井あきらの身体を操っておまえの思いのままにしてやろうというのだ。どうだ?悪い話ではないだろう?…フフフフッ」
「…本当にそんな事ができるのかい?」
自分の体が乗っ取られていることにとまどいを見せる青山…だがそのヘドラーの提案に対してはまんざら悪い気もしてないようだ。
「フフフッ、それはおまえの体で実際に証明してるではないか?…それにそのニンポウラーは以前“あの女”の身体に入り込んだ事があるのだ…どうだ?これでわかっただろう?」
「で、でも…何でおまえたちはぼくにこんな事をしてくれるんだい?」
まだイマイチヘドラーを信用しきれていない青山がそんな風に将軍に問いかける。
「フフフフッ、我らベーダーは“あの女”には随分煮え湯を飲まされてきてるからな…できる限り屈辱的な方法で抹殺したいのだ…それにおまえのような人間にいいように弄ばれるのは正義のヒロインを気取ってきたあの女には耐えられない事だろう?フフフッ、フフフフフッ」
「……そうだね、ムフッ、ムフフッ、ムフフフフッ」
怪しくニヤついた表情を浮かべる青山からは不気味な笑い声がもれてくる。
「どうだ?おまえのアイドル、桃井あきらがおまえの自由にできるのだ。悪い話ではないと思うのだがな…?」
「…本当にぼくのあきらちゃんを好きにできるんだね?…いいよ、その離し乗ってあげようじゃないか、ウフフフフッ」
「よし、契約成立だ…それでは明日午後5時街外れの公園の入り口に来い…そこからは我らベーダーがおまえを導いてやろう…フフフフッ」
そう言うとヘドラーは青山に入り込んでいたニンポウラーと共に何処かへ去ってしまった…。
「…ふぅ、何だったんだ今のは?…でも本当にあきらちゃんが明日好きにできるんだ…そしたらあんなことやこんなことも…ウフ、ウフフフ、ウフフフフフフッ…」
怪しくニヤついた青山の顔からは再び不気味な笑いがもれてくる。彼が見つめるモニターには腕組をして仁王立ちし、怒りの形相で睨みつけているあきらが写っていた。
▼…今回はこれくらいにしといてあげるけど…今度こんな事やってたらその時は…いいわね!!?▼
「明日また君に会えそうだよあきらちゃん…でも今度はそんな怖い顔じゃなくてもっと違うあきらちゃんが見れたらいいな…ウフ不、ウフフフフッ…」
女戦士として、デンジマンとしての凛々しい姿を見せ付けている画面の中のあきら。そんな彼女を見て青山が不気味な笑みを浮かべながらそう呟いた…。
-続く-