ピンクターボ、孤独な戦い―ドスコイ勝負は卑劣な罠― その1

「ふう…すっかり遅くなっちゃった…」
生徒会資料をまとめながらピンクターボ―森川はるなは放課後の校舎を後にした。世界の平和を守るために日夜戦う少年少女…とはいえ学業だって仕事のうち。
特に生徒会長でもあるはるなは他の四人よりも長く学校にいることが多いのだ。
「はやく行かないと…力や大地達が待ってるかも」
(それに暴魔獣がまた現われてしまうかもしれないし…)
片付けもそこそこに、はるなは速歩きで校舎を後にした。



「いやああぁっ!!」
校門をくぐり、帰路に着こうとした瞬間だった。
「…何!?」
グラウンドのほうから悲鳴が上がった。それも複数…
(まさか…暴魔獣!?)
急いで声の元へと駆けていく。この時間まで部活をしているのは県大会が近い女子テニス部だけだ。
グラウンドの横にあるテニスコート…辿り着いたはるなを待っていたのは異様な光景だった。
「なに…これ…?」
倒れている女生徒達、しかしその姿は体操着やテニスウェアではない…皆あられもない下着姿だった。しかもそれだけではない。
「これって…そんな…!」
年頃の少女に相応しく、可愛らしいデザインの下着越しに股間を締め付けるように密着する黒い帯、それはかつて自分達を苦しめた暴魔のそれと同じであった。
「ぅう…ん…」
「!!しっかりして…大丈夫?」
横たわった一人の女生徒を介抱しようとはるなは彼女の身体を抱き寄せる。
悩ましげな表情で頬を赤らめ、脚を内股にして太股を擦りよせる様を見て、はるなはマワシに手を掛けた。
「いま外してあげる…」
「ぁ、ああぁん…っ!」
「!?」

とっさにマワシに手をかけると、マワシの異様な感触と彼女から零れる嬌声にはるなは思わず手を止める。
(何これ…マワシが動いてる?それに…)
「あ、あの…外さないと…」
余りにも色っぽい喘ぎ声に、戸惑いながらも声をかけると、少女は頬を赤くしながら消え入りそうな声で
「触らないで…」
と呟き、涙ながらに続ける。
「突然怪人が現われて…変な光を浴びたら服が脱げて…これを穿かされて…」
(やっぱり…!でも何で…倒したはずなのに…?)
「ぬっふっふ…相撲、とれるかぁ??」
「!!スモウボーマ!!」
背後の気配と聞き覚えのある声にはるなはとっさに身構える。
「あなた…一度倒したはずなのに!」
「ん?お主ワシのこと知ってるのか?」
「今すぐこんなことやめなさい、今なら許してあげる!」
この少し間の抜けた口調、狂暴になる前の状態なら一人でもどうにかなる…そう感じたはるなは強気な態度でスモウボーマにせまる。
「ぬぅ、やめろだと?それにお前なんなんだ?」
「そう…じゃあこれでも思い出せない!?」
右手をかざし、そのまま胸に両手を当てる。
「ターボレンジャー!」
ブレスが煌めき、眩ゆい光がはるなを包み込んだ。
目の覚めるようなピンク色のスーツ、妖精の光に導かれし者のみに許された力が辺りに迸る。
「どう?思い出した?」
ターボスーツに身を包んだはるなは、Wステッキを構えてスモウボーマに対峙する。
「ターボレンジャー…!!ぬううぅん!!」
「なっ…きゃあぁぁっ!」
次の瞬間、衝撃が身体中を襲った。車に撥ねられたような感覚とともに身体が宙を舞い、鈍い痛みが身体を走る。
「くぅっ…!」
「むうぅぅっ!!あの時の恨み、よくも…よくもぉぉ?!!」
(なんてこと…!狂暴になるなんて…でも…どうして?)
「あなたは私たちが倒したはずなのに!」
起き上がり体制を整えながら、はるなはベルトのターボレーザーに手をやる。
(接近戦ではやられてしまう…Wステッキじゃだめだわ…)
「あの日おぬし達に敗れた後、わしはレーダ様の妖術によって蘇ったのだぁ?!前よりも強くなったワシの力…身をもって教えてやろう!」
四股を踏みながらスモウボーマははるなを威嚇する。化粧マワシの破壊もなしに凶暴化するのは妖魔博士レーダの仕業だった。
「レーダが…!でもこれ以上変なことはさせないわ!」
ターボレーザーを構え、戦闘体制を整える。…が、次の瞬間だった。
「相撲を取るならマワシを締めぬかぁ?!」
「な、あっ…きゃああっ!!」
怪しい光がはるなを包み、スモウボーマの両脇から黒い帯が飛びだし、はるなの股間めがけて襲い掛かってきたのだ。
「しまった!」
(マワシが!あの時と…!)
先の戦いの記憶も虚しく、避ける暇も与えずにマワシの帯は、はるなの股間を潜り抜け、尻の方へと移動してくる。
「きゃあっ!!くぅぅっ…!」
扱くようにマワシの帯ははるなの股間…秘部をも締め付けながら尻肉の間にも帯がみっちりと食い込んでくる。
(お尻が…締め付けられる…!)
―シュルシュルッ…キュッ!!
「んうッ!!」

ついに後ろで帯を締められ、はるなも女生徒達と同じくマワシを穿かされてしまった。
「くぅっ…」
(恥ずかしい…またこの姿で戦うなんて…!)
十代の少女には恥ずかしすぎる姿、しかし先の光を浴びても服が…ターボスーツが脱がされなかったのは不幸中の幸いだった。
まだ戦うこともできるし、なにより下着姿という、今より恥ずかしい姿になることはないだけましというものだ。
「これくらいで…私が負けるなんて思わないで!」
ふたたびターボレーザーを構えたときだった。
「きゃあっ!」
バチッ!という音とともにターボレーザーははるなの手から弾け飛んでしまったのだ。
(何…今の…?)
「むっふっふ、レーダ様の力で強力になったマワシ飛ばしは、マワシを締めた者は武器を使えなくなるのだぁ?!」
「そんなっ…!今すぐこれを外しなさい!」
マワシを穿かされているうちは接近戦のみ…そう気付いたはるなはマワシを外そうと帯に手をかける。
「うっ…くぅっ…!なんてキツいの…外れない…!」
(な…なによこのマワシ…!)
マワシの前袋を引っ張りながら必死に藻掻くはるな…しかし後ろから響く下品なに気付く。
「むひひひ…お似合いじゃないか、ピンクターボ!」
「な…!?その声っ…」
声のする方を見ると、小太りの躯を揺らしながらこちらをうかがうズルテンの姿があった。
「ズルテン!コレは…あなたの…仕業なの!?」
以前と穿かされたマワシとは質感が違うのだ。股間からお尻に至るまでの帯の密着する部分に明らかな違和感がある。
無数の小さな突起物―襞ような物が着いているのだろうか、前袋を引っ張るたびにその小さな粒がはるなの秘部や尻肉を撫で上げる。
(くすぐったいし…それに…!)
「この大天才ズルテン様のアイディアでなぁ…人間の雌に締めるマワシには細工がしてあるのさ?!気持ちいいのが大好きなんだろ?人間の雌は?」
「くぅ…っ…このぉ…!」
(こんなの…許せない…!)
大声で笑うズルテンの姿に、はるなは下唇を噛む。
確かにマワシを穿かされてからの感覚は、認めたくはないが微かに快感を感じていた。
マワシが食い込み締め付けられる感覚はスーツ越しに股間や尻にもどかしい―疼きに似た感覚を送り込む。
女生徒を先程介抱したときの、あの言葉と表情の意味が今になって理解できた…いや、最悪ああなってしまうという悪い予感さえもしてしまう。
「それともう一つ…スモウボーマに投げられて尻餅をついたり、武器を使おうとすると…あ、お前一回使おうとしたよなぁ?」
ズルテンは面白そうな笑みを浮かべてはるなに目をやる。