侍戦士シンケンピンク
第二幕「破廉恥撮物帳」
≪1≫
時計の針が、午後6時を指している。
そういえば昨日のこの時間帯は、クーラーの効いた涼しい部屋で趣味の料理に興じていた。
だが、今日の白石茉子――否、シンケンピンクは……
「違うよ。もっと恥ずかしそうに脚を広げるんだよっ」
大介によってクーラーが消された蒸し暑い部屋の中、自分が「料理」されていた。
彼のオカズに使われるかもしれない、写真を撮られることによって。
「こっ…こんな感じ?」
今、シンケンピンクはフローリングの床に体育座りの姿勢で腰を下ろしつつ、股をゆっくりと広げていた。
徐々にミニスカートがめくれ、黒いタイツに包まれたデリケートゾーンが露になる。
ぱしゃり、ぱしゃぱしゃ……。
その様子を、こと細かく撮影する大介。
「……んんっ」
まだ精通さえ知らないだろう少年に破廉恥なポーズを強要される、正義のヒロイン。
その環境が、ひどく、卑猥だった。
「ああっ…………」
じっとりと蒸し暑い部屋の中にいるためだろうか。
内もも、胸部、首筋――彼女の全身を包むシンケンピンクの装束に、若干汗が滲んでいる。
――すごい…匂い……
以前、一度だけ近所のディスカウントショップのアダルトコーナーで購入したボディストッキング。
あれを身につけて男性と「こと」に挑んだ時並みに、シンケンピンクは自らの体臭のキツさに……
……そしてなにより、この状況に少しばかり興奮している自分自身に戸惑っていた。
「シンケンピンクぅ」
「ん? ど、どうしたの?」
「シンケンピンクって汗っかきなんだね。すっごいクサい……」
「そっ、そんな……!」
確かに自分は代謝の良い方だと思う。
幼い頃から侍としての訓練を積んできたため、日頃身体を酷使することが多かったからだ。
――だ、だけど…クサいなんて! そんな、ひどい……。
ふと、恥ずかしげもなく左右へ広げた内太ももを見やる。
黒いタイツに覆われた太ももには、まるで失禁したかのような汗がじっとりと浮かび、彼女の体に張り付いている。
大介もその太ももに卑猥な視線を向け、「ぐふふふふふ」と奇声を上げている。
「く、臭いの、ボク、好きなんだぁ」
「えっ…?」
「茉子先生は優しくて、シンケンピンクは強くて、ボクの言う通りエッチな格好してお股を広げてくれて……
……臭くて……だ、だ、だ、大好き…だよ」
大好き。
そんな安直なセリフを自分に言ってくれた人は、これまで一人もいなかった。
そのことが、シンケンピンク=茉子は嬉しかった。
例え相手が、異常なまでの変態○学生だったとしても……。
≪2≫
「ねえ、大ちゃん」
「……うん」
シンケンピンクはゆっくりとその場に立ち上がった。
そして、腰を必要以上に捻らせながら、彼に背中を向けた。
大介の視界のど真ん中に、ぴたりとヒップに張り付くピンクのミニスカートが入る。
そして……
「ほらっ」
……彼女は両手でスカートの裾をぐいっと持ち上げた。
瞬間、艶やかな漆黒のタイツに包まれた彼女のヒップが露になった。
割れ目までがくっきりと覗えるその尻の表面は、暑さによって蒸れたのだろう……
汗がヒップ全体に滲み、やけに卑猥に見える。
「撮っているだけじゃつまらないんじゃない?」
「えっ…?」
「ほら、近づいて…よく見てごらん。大ちゃんのだーいすきな、シンケンピンクの……」
「はぁはぁ」
自分でも意外なほど官能的な声で、茉子は言葉を続ける。
「お・し・りっ♪」
「……うっ、うんっ」
携帯電話をその場に置き、大介はシンケンピンクに近づいて……
「はうっ!!」
……その桃尻に、顔をうずめた。
「いやんっ」
彼の鼻腔をくすぐる、甘酸っぱい汗と愛液の香り。
耐え切れず、大介は恐る恐る舌を出す。
ちろりとヒップの割れ目に舌を這わせてみる……。
微かな刺激。続いて甘酸っぱさと、女性の体が放つ独特の生臭い汗の匂いが大介の舌に伝わってくる。
……いやらしい、味だった。
――茉子先生は、本当にエッチな人なんだ。
だから園長先生のお○んちんを舐めちゃったりしちゃうんだ……。
ホントはボクに盗撮されてたことも知ってたのかもしれないなぁ。
エッチなのはいけないんだ。大人なのに…女の人なのに……こんなにエッチなことをしちゃうのはいけないんだ。
茉子先生はいけない、エッチな女の人――
そんなことを、彼は頭の中で思っていた。
と、その時――。
「あんっ♪ こ、こらっ……」
甘い声色での戒め。
茉子は大介の顔からヒップを引き剥がし、少しばかり距離を置いた。
汗を全身にびっしょりと滲ませた身体で、シンケンピンクは彼の対面に立った。
彼女は小さな胸を両手で寄せ、形の良い谷間を作り、身体を左右に捻らせながら……
「あ~んっ、もうっ♪ えっちぃぃ~~」
やけに艶っぽい…官能的な声をあげてみた。
「……ッ!!」
その時。
大介の心に巣くっていた〈何か〉が爆発した。
その爆発は、彼自身でさえ信じられないほどの早さで、彼の体にまで影響を与えていたのだ。
≪3≫
「えっ……?」
シンケンピンクは我が目を疑った。
大介に異変が起きたのだ。
真ん丸い肌色の体が膨張し、赤黒く変色していく……。
皮膚は硬質な鎧のようなものへと変化し「はぁはぁ」という声が、いつの間にか野獣の咆哮のようなものへと変わっていく。
彼が変身を遂げた姿は、外道衆の下層兵・ナナシに酷似していた。
「な、ど…どうして……?」
「ウゥゥゥッ!!」
大介……否、ナナシがその問いに答えるわけもなく、シンケンピンクの肩を両手で鷲づかみ、そのままフローリングの床に押し倒す。
「いやっ……ちょっ! いやぁっ!」
シンケンピンクの必死の抵抗も空しく、ナナシは不慣れな手つきでピンクの小粒な胸に手を伸ばす。
「きゃっ!」
むにゅむにゅむにゅむにゅ……。
まるで何かを値踏みするように、ゆっくりと彼女の胸を揉みしだくナナシ。
「んんっ…やっ・やめ……やめてっ♪」
茉子の抵抗の声も、徐々に色気を帯びてきてしまう。
――なっ……どうして……こんなことにっ!?
突如としてナナシへ変身を遂げた少年。
性欲の化け物に蹂躙される自分……。
なぜ、こんなことになったのだろう――?
茉子は……否、シンケンピンクはただただ自分の不甲斐なさを呪った。
「グゥゥゥゥ」
「あっ、あぁっ……!」
ナナシはシンケンピンクに馬乗りになった体勢のまま、ゆっくりと彼女の乳房から手をどけた。
そして……
「や、やめっ…そこはっ!」
じっとりと愛液が漏れている秘部を、ねちねちと触られる。
ナナシの股関節からは男性器のような「捧」が一直線にいきり立っていた……。
「だ、だめぇぇッ!!」
≪4≫
グチョッ…グチュグチュグチュ……。
「んんっ!!」
不慣れな手つきで、それでも必死に秘部を攻め立てるナナシ。
「だ、ダメ…だってっ……言ってるのにぃ」
そうだ……ダメなのだ。
自分は保育士だ。侍だ。そして、シンケンピンクだ。
そんな自分が、こともあろうに守るべきはずの人間の少年に――少年が変身を遂げたナナシに犯されるなど、有り得ない。
不条理だ。あまりに非・現実的だ。
――で、でもっ……!
「ガゥ・・グゥゥゥッ!!」
「き、気持ち……いいっ……!」
近頃そっち方面は全くのご無沙汰で、男性と「こと」に挑む機会など皆無であった。
「誰か」に身体を弄ばれるのが、こんなに気持ちいいなんて……。
「ま、待って。ちょっと待って……大ちゃんっ!」
シンケンピンクは、自分に馬乗りになっているナナシに「待て」のポーズを取った。
「ウゥゥ・・・」
まるで餌をお預けされた犬のように、ナナシは手の動きを止めた。
だが、彼の体は小刻みに震えている。
――この子、欲しがってる。あたしを…あたしの体を……!
その様子が、なぜだか茉子は微笑ましかった。
「はぁ…はぁ……」
息が上がってきた。
心臓の鼓動が耳に喧しいほど鳴り響く。
自分が○学生の頃――初めてSEXをした時から、変わらぬ体のクセである。
……茉子は、今、「イキ」たくてしょうがなかった。
そのためには、このパンストのように肌に纏わりつく邪魔な衣服を……せめてその一部だけでも脱がなければ。
「……ショドウフォン」
シンケンピンクは腰に装備しているショドウフォンを取り出し、己の秘部にあてた。
そして、ゆっくりとある文字を書き始める。
その文字とは――「剥」。
真っ黒いタイツに包まれた、細身の下半身……
その一部、即ち秘部だけがぱっくりと姿を見せた。
「はぁ…はぁ……ここにぃっ、オ○ンチン入れてもいいよっ♪」
「ウガアアアアッ!!」
刹那、まるで盛りのついた犬のように挿入を始めるナナシ。
ぐちょり…グチュグチュグチュグチュ。
程なくして、「それ」はやって来た。
ドクッ……!
『ああっ……!』
ドクドクドクドクッ・・・ブチュジュルッ!!
激しく熱い「それ」が、茉子の膣内に入り込んだのだ。
「あああぁぁぁっっ♪」
思わず漏れでてしまう喘ぎ声。
背筋にぞくりと悪寒が走るほど背徳的で……そして、気持ちよかった。
だが、まだだ。
――私、まだ……イってないし!
「……うぅぅぅ」
「ねぇーえぇ……もう一回入れてごらん? 気持ちいいんだよぉ」
例え姿は怪物でも、相手はまだ○学生……おそらく、精通だってさっきが始めてのはずだ。
一度や二度イったぐらいじゃ、満足できないはず。
オ○ニー覚えたてのサルの如く肥大化した性欲……
……何度も何度も自分はこの子に犯される。
それも、シンケンピンクの格好をしたまま。
――それ、ちょっと……いいかも♪
そんなことを茉子が思った、その瞬間。
「……あ、あれっ?」
唐突にナナシはまん丸に太った少年……大介へと姿を戻した。
「えっ? あ……あれっ?」
大介は何が起きたのか分からない、といった様子で辺りをきょろきょろ見回し……
「茉子先生。ボク、お家に帰らなきゃ……」
……リュックを背負い、出口に歩みを進める。
「あ、大ちゃんっ!」
目の前のシンケンピンクの姿が見えないのだろうか? 大介はそのまま彼女の家を後にした。
「あ、ちょっ……ちょっとぉっ!!」
茉子はシンケンピンクの姿のまま、誰もいなくなった部屋の中で一人叫んだ。
「…………」
恐らく、あの子は何者か――恐らくは外道衆――の術で、一時的にナナシへと変身させられたはず。
……もしや一度絶頂を迎えたため、精気が抜けて元通りの体に戻った…ということか?
邪気と性欲には強い関係がある――なんて一文を、前に志葉家の屋敷の資料で見たことがあったが……。
「そ、そんなぁ……」
――この火照った身体、どう落とし前をつければいいのだろう。
刺激が欲しい。
甘く、強く、官能的な……そんなエクスタシーが欲しい。
とてもじゃないが、今夜はオ○ニーだけで我慢できそうもない。
「ああっ……もうっ!」
シンケンピンクは黙って変身を解いた。
と、その時――どんどんどんっと、茉子の自宅のドアを叩く音が。
「えっ……?」
一体、誰が来たのだろう?
不信感と一縷の期待を胸に抱き、ドアを開けた先の向こうにいた人物とは――?