GP-29 大翔ヲトメロ アナザーストーリー

 「きゃああっ!!!」
 砂漠に響くゴーオンシルバーの悲鳴。ハンマーバンキの凶器は何度も何度もゴーオンシルバーに振り下ろされる。
 「きゃああっ!ああぁっ…」
 ハンマーが叩きつけられる度に響くゴーオンシルバーの悲鳴が徐々に弱まる。やがてゴーオンシルバーの動きが止まった。
 「待ちなさい!」
 ゴーオンシルバーが気を失ったとき、後方から響く声。マンタンガンの光線がハンマーバンキの動きを止める。
 「美羽!」
 ゴーオンジャーもう一人の女戦士、ゴーオンイエロー。その声は明らかに恐怖と焦りを帯びている。無理もない、女戦士とは言え、本来は十代の少女。仲間が、それも同じ女戦士としてプライベートでも慕っていたゴーオンシルバー…須塔美羽が見るも無残に痛めつけられているのである。そんな仲間の姿に冷静でいられるはずもない。
 「破壊!」
 次なる獲物に気付いたハンマーバンキが、ゴーオンイエローに向かう。
 「バレットクラッシュ!」
 ゴーオンイエローの必殺技がハンマーバンキに放たれる。しかし、少女戦士の渾身の一撃は、ハンマーバンキに傷一つ付けることなく、ハンマーに叩き潰される。
 「そんな…レーシングバレットが…」
 自らの必殺技がいとも簡単に破られたショックでゴーオンイエローの動きが止まる。狂気の蛮機獣がその隙を見逃すはずがない。
 「破壊!」
 「きゃああああっ!!」
 たった一撃で数十メートル吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられるゴーオンイエロー。
 「なんて強さ…こんなの、もう耐えられない…」
 しかし、再び目を上げた先にはハンマーがあった。一瞬の間があり、そして…
 「うあああっっっ!!!」
 再び上がる少女の悲鳴。側頭部に当たったハンマーは、ゴーオンイエローのマスクを文字通り「破壊」するのに、十分な力を持っていた。また数十メートル飛ばされたゴーオンイエローの顔に、マスクは残っていない。
 「あ…うぁ…」
 マスクが破壊されたことに気付く間もなく、楼山早輝が気を失った。俯せに倒れる早輝の背中に、とどめの一撃が振り下ろされようとしたその時…
 「ご苦労でおじゃる、ハンマーバンキ。あとはわらわがその小娘共をもらうでおじゃる。」
 この凶悪蛮機獣に命令を下すことの出来る女の声。そんなことが出来るのかと疑いたくなるような色気を含んだ声。ガイアークの女幹部、害水大臣ケガレシアである。
 「ふふ、やっとこの忌々しい小娘共を捕えることが出来たでおじゃる。褒めてつかわすぞ、ハンマーバンキ。さあ、此奴らを運ぶでおじゃる。」
 ウガッツに命令を下し、ケガレシアは一足先に自らのアジトへと姿を消した。