歓喜の時間
 ロンダース・ファミリーのボス、ドルネロは悩みが有った。最近、幹部の一人のギエンの様子がおかしかった。以前からメカ生命体への手術の後遺症で破壊衝動が激しかったが、ここの所自分でもそれが抑えられない様だったのだ。30世紀の組織にいた大勢の幹部だったら既に始末している所だが、ギエンはドルネロを庇って瀕死の重症を負った。命の恩人にそんな事は出来なかった。何とかギエンを救いたかった。だがどうすれば良いのか、全く分からない。
 或る時、ドルネロはこの時代のマフィアとの取引の際に、(自称)精神課の医師だと言う胡散臭い男に出合った。
「そういう奴は、少しづつ発散させれば良いんだよ。溜めに溜めて一気に爆発されたら堪らんからなぁ。」
その男が言うには、それが一番の解決策らしい。だが、発散といってもギエンのそれは、半端では無い。ちょっと噴き出しただけでタイムレンジャーを追い払う位なのだ。本気のギエンに耐えられる物はロンダースには無かった。それこそ、タイムレンジャーぐらいしか、堪え切る事は出来ないだろう・・・・
(・・・ん!そうか!それなら一石二鳥じゃあねえか!!ギエンを救えて、しかも仕事が楽になる!これだ!)
その後のドルネロの行動は素早かった。
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 アジトに戻ったドルネロは、囚人の中から医学全般に抜群の腕を持っているが、拷問好きの医者を選びだした。死人ですら生き返られると言われたその医者は拷問で責めても、死なずに何度でも楽しめる様に腕を研いたという。名はドラクルと言った。ドクター・ドラクルはその日の内に解凍された。
「なあ、ドクター。ターゲットは5人いる。だれが良いんだろうか?ひとつ選んでくんねえか?」
「まあ、誰でも良いのだが仕事を楽にしたいなら、司令塔が良いのでは?ならばタイムピンクが良いな。」
すんなりと、ターゲットは決まった。後は計画どうりに事を進めれば、全てうまく行くはずだった。
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 ユウリは、薬品研究室の掃除をようやく終わらせた。(トュモロー・リサーチ)の仕事が多いのは誠に結構だが、ここ2~3日、5人が全員が朝から晩まで働き詰めと云うのも、タイムレンジャーとしては実に困る。万が一の時に、誰も現場に急行出来ない、では話にならない。少なくとも最低一人は、事務所に残って居ないと本来の目的が果たせない。
(今日こそは、みんなに言って置かないと!私達はタイムレンジャーなんだから!そもそも私がこんな清掃員みたいな事を・・・・)
元々捜査官だったユウリにとって、こんな(何でも屋)の様な仕事は不服だった。敵を欺く為では無く、生活の為にやっている。それが、納得出来なかった。しかも、最近自分も他のメンバーもそれが妙に板に着いて来ている。これではいつになっても、
ドルネロを逮捕するなど出来ない様な気がする。正直、ユウリは焦っていたが、手がかりは今の所は全く無かった。
帰りの準備を終え、クロノチェンジャーで竜也達に連絡を取るが、まだ作業中なのか誰も出ない。
「なんで、誰もでないのよ!コールにはちゃんと出る様に、って言ったのに!!」
廊下を歩きながら、ややヒステリー気味にユウリは言った。最近、みんな定時連絡はおろか、終了時にも通信を切ってしまっていた。
「こんな時にロンダースが出たらどうするのよ!もう・・・・」
その時、視界の片隅に金色の人影が動いた。ユウリは反射的に視界を動かしそれを確認した。ロンダースの戦闘員、ゼニットだった。
「ゼニット!なんでこんな所に・・・・まさか、ロンダースがこの研究室で何か作っている?!」
ユウリは、ゼニットを追って人気の無い工場に潜入した。そこでは、ロンダースによって、何か薬品が造られていた。ゼニットが動き回り、中央では、怪しい男が指示を出していた。そして、薬品がタンクに詰められてトラックに積み込まれて行った。
「待ちなさい、ロンダース!そこまでよ!クロノチェンジャー!ハアッ!!」
ユウリはタイムピンクに変身すると、ゼニットを片っぱしから倒して行った。全てのゼニットが倒されるのに2分も掛から無かった。
「次はアナタよ、覚悟しなさい!」
タイムピンクが言うと、クククッと男は笑い出した。すると突然、男は不気味なコートを着た様な姿に変わった。
「私の名は、ドクター・ドラクル。キミを向えに来た。一緒に来て貰おうか?まあ無理矢理にでも、来て貰うがね。」
「私がなんで貴方と行かなきゃならないの!ふざけないで!」
タイムピンクが2本 の剣、ダブルベクターを構えながら言った。
「では、仕方が無い。」
ドラクルが指を鳴らすと、タイムピンクの頭上から大量の液体が浴びせられた。それは、煙りを上げみるみる固まっていった。
「こ、これは、うあぁぁぁぁ・・・・・・・」
その液体は液体窒素、物を急激に凍らせる事が出来た。いかに30世紀の技術の粋を集めたクロノスーツでも無事では済まない。煙が収まると、タイムピンクが苦しげに胸を押さえ、白く凍り付いていた。
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 暗い部屋の真ん中に、タイムピンクが大の字に吊るされていた。身体はすっかり解凍されていたが、気を失っていた。スッとドアが開き、ギエンとドラクルが入ってきた。ドアが閉まり、自動的にロックされて完全防音の密室になった。
「さあ起きたまえ、タイムピンク。まずは薬の時間だよ。」
ドラクルはタイムピンクの胸に巨大な注射針を突き刺した。ズブッ、と音を立てタイムピンクの心臓に注射器の薬品が注入された。
「・・うっ!うぎゃぁぁぁぁぁ!ぐうっ!うぐぁぁぁぁ・・・・・・・・・・」
いきなり胸に針を刺され、心臓に注射されたショックで、タイムピンクは意識を取り戻した。その様をギエンは愉しそうに観ていた。
「タイムピンク。オマエは今日からボクのオモチャだ。ボロボロになるまで、壊してもイイそうだ。あっ、そうそう。そのスーツは全部、解析させてもらったよ。今、君の着ているのは、防御力だけのレプリカだ。じゃあ、楽しませてもらうよ。イヒヒヒヒ!」
眼と口をカタカタと鳴らし、ギエンは興奮していた。破壊衝動が抑え切れない様だ。ギエンはタイムピンクのヒジを掴んだ。
「な、何を・・・ギャアァァァァァァ!ヒジがぁ、ヒジが砕けるぅぅぅぅ!グアァァァァァ!ギャア!ベキベキベキと音を立ててヒジは握り潰され、関節が有り得ない方向に向いていた。指はピクピクと痙攣し血液が流れ出していた。
「クククッ!もっと、壊してやるッ!!もっとバラバラに!!ヒヒヒッ!!」
ギエンはすっかり、正気を失ってしまった様だ。眼と口をカタカタと鳴らし、タイムピンクの手首をグルグルとねじっている。ブチブチブチッ!と不気味な音を立て、手首の関節がねじ切れた。初めて(恐怖)という感情が湧き出して来た。未来で捜査官として、何度もギリギリの所までいったが、怖いと思った事は無かった。しかし、こいつは自分の身体を(壊そう)としている。怖かった。
「ギャアァァァァァ!手がぁ、私の手がぁぁぁ!動かないぃ、動かないよぉぉぉぉ!」
ギエンは逆の腕をチェンソーに変え、脇腹を斬り始めた。火花と血飛沫を上げながら、タイムピンクは切り刻まれていった。
「ギャアァァァァァ!やめてぇぇぇぇ!何で私がぁぁぁぁぁ?!ぎいぃぃぃぃぃ!どうしてぇぇぇぇぇ?!」
ヒザの関節を折られながら、タイムピンクはギエンに問い掛けていた。私は何故こんな目 に遭うのだろう?どうして・・・
「どうして、だって?楽しいからに決まってるだろう!イヒヒヒ!」
タイムピンクの脇腹からアームを差込み内臓を掻き混ぜながら、ギエンは言った。タイムピンクのマスクの継ぎ目からは、大量の血が流れ出していた。白く縁取られたピンクのマークの付いた両方の胸はアームで握り潰されて跡形も無くなっていた。
「ひぎぃぃぃ・・・・もう、やめてぇぇぇ・・・許してぇぇぇ・・・ぐえぇぇぇ・・・・・・」
手足の関節を総て潰され、腹部や女性として大事な胸も引き千切られてタイムピンクはもう死んだも同然だった。ギエンはタイムピンクのマスクを掴むと額とゴーグルにチェンソーを充てると切り裂き始めた。
「た、タイムピンクッ!!と、トドメだぁ!死ねぇぇぇ!」
興奮し、口調もおかしくなっていた。ギエンはタイムピンクの額の割れ目にアームを突っ込むと内蔵された制御システムや通信システムをコードごと引き摺り出した。メキメキメキッ、と音を立てて、まるでタイムピンクの脳髄が引き摺りだされる様な光景だった。
「ヒギャアァァァァァ!やめてぇぇぇぇぇ!ウギィィィィィィ!アッ!・・・アッ!・・・」
制御システムをむしり取られ、砕けたマスクの額は無惨に砕け、タイムピンンクは脳髄をむしり取れられた様な悲惨な姿に成り果てていた。額の割れ目 からは、コードが飛び出し、至る所でショートしていた。不規則に点滅して、ダメージの大きさを物語っていた。
「うあぁぁぁぁ・・・もう、やめてぇぇぇ・・・・なんでも・・・言う事・・聞くから・・・・」
タイムピンクはギエンに命乞いをした。この苦痛から逃れられるなら、なんでもしようと思った。正義よりプライドより自分の命が大事だった。
「そうか、そうか。では・・・死ねぇぇぇぇ!!」
ギエンはそう言うと腹部に付いたエネルギー装置を掴み、引き千切った。暴走したエネルギーはインナースーツまで破裂させた。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!竜也ぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇぇ!」
手足を千切られ、脳を引き摺り出され、腸をむしり取られたかの様な無惨な姿のタイムピンクは既に虫の息だった。ユウリは死を感じていた。
(・・・竜也・・・ごめんなさい・・・私・・・ここで・・・・死んじゃう・・・なにも・・・・言えなかった・・)
「さて、私の出番か。私は良い物を観させて貰ったが、もう良いかな、ギエン殿?」
それまで後ろで眺めていたドラクルが静かになったギエンに声を掛けた。ようやく興奮が収まった様子だ。
「あ、ああ。とてもスッキリした気分だ。うん。これは素晴らしい!」
タイムピンクの返り血で真っ赤に染まったギエンは落ち着いた様子で言った。いつもの興奮した感じはまったく無かった。
「さあ、生き返ってもらうぞ。タイムピンク。この薬は、さっき射ち込んだ薬と反応してどんな状態からでも元の状態に戻す事の出来る薬だ。主に拷問で口を割らせる時に使うだが、何度でも死の寸前まで責める事が出来るのだ。これを造っている所に君が来るとはね。フフフ。」
首筋に薬を打たれたタイムピンクは関節や胸などが、再生して行くようだ。だが痛みはそのままだった。痛みに耐えなんとか、声を出す。
「うっ!・・・こ、これは・・いっ・・・一体、どうゆうつもり?・・」
「君はこれから、ギエン殿のストレス発散の為に、殺され続けて貰う。毎回、死の寸前まで苦しんでズタズタになってね。大丈夫、死ぬ事は無い。
発狂する事も無い。毎回、ギエン殿に切り刻まれるだけだ。」
ドラクルは事もなげに言った。死ぬ事も出来ずに、ギエンのオモチャとして、一生苦しみ続ける・・・・・
「そんな・・・いやぁぁぁぁ・・・やめてぇぇぇ・・・・たすけてぇぇぇ・・・」
ボ ロボ ロのクロノスーツを着た、血塗れの(元・タイムレンジャーのリーダー)は身体を震わせてロンダースに懇願していた。
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ギエンは一月に一度はストレス発散の為、タイムピンクのクローンをリンチにしてロンダースを円満にしていた。一方、ユウリは、リラにリンチをされ続けた結果、発狂寸前になり圧縮冷凍刑にされて、リラのアクセサリーにされてしまうのだった。