蜘蛛の巣に掛かった蝶~5.堂々誘拐
電車から次の駅へのアナウンスが掛かる。後数分で駅に着くだろう。
しかし、今走っているところはもはや彼女自身も知らないところだった。
見知らぬ場所に誘拐されているような気がし、絶望感に襲われる。
けど、リンが元々追っていた敵はまだ乗車している。
本当にどこへ行くのだろうか、もうこの満員状態が2時間近く続き、その間ずっと想像をはるかに超えた蹂躙を味わい、男たちに完璧に捕まってしまったリンは、肉体的にも精神的にも限界だった。
しかし、そんなリンにもまだ希望があった。それは敵が居なくなった時だ。
つまり、
『今は敵がそばにいるため、周りが受けるであろう多大な犠牲を恐れ、敵にばれないように大人しくしていた。だが、もし敵が自分から離れていってしまった時が好機だ。とはいえ、頑強な手錠とピアノ線で縛られてしまってはこの拘束を解くことは出来ないだろう。だが助けを求めることは出来る。敵が自分から消えたその瞬間からリンは周りに助けを求めて精一杯抵抗するだろう。強力な粘着テープとハンカチで口を塞がれていようとも、全く声が出ないわけではない。手錠とピアノ線で縛られていても、そして急所にバイブが突っ込まれてどんなに激しく掻き回されようが、全く抵抗できないわけではない。人がいるところで抵抗すれば、周りの人は気付き、ばれてしまっては痴漢たちも逃げるしかない。こうやって自分は解放される。
そしてもう一つ、それはオーラチェンジャーの存在だ。オーラチェンジャーには発信機が着いており、仲間には自分の居場所が分かるようになっていた。最悪、仲間が助けに来てくれる!』
そう最後の2つの希望を持っていた。
と、痴漢が耳元で囁く。
痴漢「次の次の駅で降りるぞ。」
筋肉男がリンの下に落ちた小型バッグを持つ。
やっと降りる。チャンスだ。
敵がまだ降りなければ、降りたとしてもその後別の方に行って離れさえすれば、その瞬間からリンは懸命に抵抗をして助けを求める。
すると、筋肉男が再び何かをリンの目の前に晒し、リンは目を見開いた。
オーラチェンジャーだ。いつの間に取られたのか。
痴漢「知ってるぞ、これは。ホウオウレンジャーに変身する機能、通信機の機能、そして発信機の機能も持ってるんだろう。」
リン「…」
そこまで知っているとは、、完全に意外な出来事に、リンは動揺を隠せない。
その反応に気をよくする痴漢。
と、筋肉男からオーラチェンジャーを受け取り、リンの目線の高さまで上げたと思ったら、すぐに手を下げ、目を追うリン。
何とオーラチェンジャーを落としてしまった。
さらに筋肉男が足を上げ、思いっきりオーラチェンジャーを踏みつけ、破壊してしまった。
リン(あ…そ、そんな……早く、皆に知らせておけば、良かった…)
なんとも無念そうな表情を浮かべるリン。
オーラチェンジャーでまだ応援を一切呼んでいない事を後悔する。
だが男たちはすかさずリンに追い討ちを掛ける。
痴漢はどこからかデジカメを取り出し、ボタンを押していき、しばらくしてリンに見せた。
そこに写っていた物にリンは驚きおののいた。
猿轡をされていなかったら間違いなくたまらず悲鳴を上げていただろう。
その画像には、この2時間のリンの痴態が様々な角度で大量に取られていた。
顔では、軽く感じて戸惑う表情、感じさせられて声を我慢させられ必死に耐える表情、責められ感じさせられている表情、絶頂に追い込まれそうな表情と色々で、首から下の方ではもう説明できないほどたくさん、おそらく70枚近く撮られていた。
リン(い、いや! 一体いつの間に…それに誰が…ど、どうやって…)
動揺の色がどんどん濃くなってきたリン。
確かにそうだ、痴漢であるこの二人はずっと自分を辱めているだけで、カメラなんか間違いなく持っていなかった。
言いようの無い気持ち悪さがする。
すると突然、右後方から無遠慮な感じに無骨に肩を掴まれた。
肩を掴んだ際に指を一本伸ばし、彼女の首筋を撫でた、その感触にリンはビクッとし、首を思わず反らせる。
その手の主を求めて振り返ると、それは全然知らないサラリーマン風の男だった。
痴漢と筋肉男よりは多少年上そうな感じだ。そして左からも急に髪を撫でられて、驚いてその手の主を見た。それは大学生風のめがねを掛けた青年であった。
もはやどういう事か分からなかった。
混乱しているリンに、痴漢は耳元で囁く。
痴漢「この二人はカメラ係さ、お前を脅迫する質を作るためにな。つまり、最初から痴漢は4人いたってことだよ。ふふ、驚いただろ。」
リン(な、、そ、そんな事、って…どこまで狡猾なヤツら、なの…)
つまり2時間ずっと大学生とサラリーマンがリンのすぐそばにいて、二人でカメラを回しながら、リンのもがく写真、いやらしい写真のシャッターチャンスを正確に狙い済まして撮影したのだ。しかも、リンに気付かれないようにだ。
これを知り、リンは痴漢たちのあまりの周到さと狡猾さに、恐怖が大きく襲い掛かり、怒りをかき消すほどだ。
そして、次の駅に着いた。
すると、さっき知ったばかりの撮影犯二人が降りていく。
しかし自分と痴漢実行犯二人は降りない、その次の駅で降りる。
リン(何…どういう事なの、、かしら…)
よく分からない顔を浮かべるリンに痴漢はニヤニヤして彼女の耳元で囁く。
痴漢「あいつらは先に降りて、写真をPCでデータ処理してもらうのさ、何枚も複製を作れるようにな…」
リン「っ…!!」
さらに続ける痴漢。
痴漢「今は70枚だが、それが140枚、700枚、7千枚にも7万枚にも、何十万枚にもなるんだぜ、楽しみだろ。」
痴漢は本当に楽しそうに言うが、逆にリンは顔面蒼白だ。
自分のいやらしい写真が何万枚も出来上がるのだ。
リン(いや…そんなのいやよ!)
さらに痴漢は、リンの目の前に携帯を晒し、リンは驚いた。
リンの携帯だ。バッグの中に入っていたのだ、そのバッグを取られた以上、携帯をとられるのも当たり前だった。
思わず取り返そうと身体をもがかせるが、無駄だと分かるのに数秒も掛からず、鼻から深く息を吐き、落胆した。
そしてまた痴漢はそんな彼女の耳元で悪魔の囁きをする。
痴漢「いまさら取り返そうとしても遅いぜ。もう中の電話帳記録は全部写し取った。俺ら4人全員な。大人しく待ってれば、あのカメラ男から面白い画像が届くぜ、くくく」
何てことだ、自分のメルアドと電話番号が、さらには仲間や家族や友人、知り合いの連絡先まで痴漢たちに知られてしまったのだ。
そしてダメ押しとして、痴漢はリンの生徒手帳を見せびらかせた。
痴漢「留学生だったんだなお前、ご苦労なこったな、天風星リンちゃんよぉ」
リンは驚き、しかし黙って、絶望に鼻から深く息を付いた。
痴漢「住所も連絡先も全て控えさせてもらったぜ。これでお前はいつ何時でも俺たちに逆らえなくなったわけだな。いい写真を撮らせてもらったよ。顔も9、10枚ほど入ってるしな。」
リン「…っ!(そ、そんな、、もう…どうしようもないの…)」
痴漢はリンの希望を全て剥ぎ取った、絶望だった。
思い通りに彼女を陥れることが出来た痴漢は、ルンルン気分でポケットから何か出した。
リンは見て、何だと思った。幅広のマスクだ。
リン(そんなもの、、何に使うのよ…)
それでもリンは、胸が押し潰されそうな不安感を抱く。
おそらくこれも、自分を陥れるための道具なのだろう。
今度は何をされるのか、そんな事、考えたくもない。
すると、痴漢はマスクの端の紐を掴むと、それをリンに鼻から下を覆うようにかけたのだ。
突然大きなマスクを掛けられてしまったリンは少し混乱した。
このマスクはかなり幅広で、リンの小さな顔の下半分、口と鼻を覆い、口を文字通り塞がれて鼻だけでしか呼吸できないリンは、鼻をも覆うマスクが息苦しかった。
そのマスクが通常よりも薄いタイプなのが幸いだった。
痴漢「あと数分で駅に着く、そこで降りるぞ。」
そう痴漢の耳元での囁きを聞いたリンは、やっと痴漢の企みを理解した。
この広いマスクはリンの口に貼られた粘着テープの猿轡のブラインドだったのだ。
事実、この幅広のマスクは、リンの口の粘着テープを見事に隠しており、これでは満員電車から降りたところで傍目には普通の風邪を引いた人にしか見えない。
最近風邪が流行っているので、マスクをした人は珍しくない。
そして筋肉男は、自分のかばんの中から紺の少し厚手の長袖の上着を取り出した。
それを嫌がるリンに無理やり着せ、前のボタンを留めていく。
小柄なリンには少し大きく、すっぽりと簡単に着せることが出来た。
それは男性用の上着であり、小柄な女性であるリンには少し大きめで、少しぶかぶかだったが、色が濃い目の紺という事もあり、傍目からは全く気にならない。
これにより、リンの後ろ手の手錠とピアノ線を隠す。
これで、傍目からはまさかこの娘が縛られ、猿轡をされているとは思えないようにされてしまった。
リンは口惜しくてたまらない。電車が減速を始める。
筋肉男はリンのバッグを探り、切符を見つけた。
痴漢「定期じゃなくて切符で良かったぜ。」
今のリンにはこの言葉の意味が良く分からなかったが、それは後々分かることになる。
と、リンの携帯がなった。メールが来たのだ。
リンでなく痴漢が携帯を見る、そんな無遠慮な行為にリンは悔しかったが、大人しくそれを見ているしかない。
携帯を確認した痴漢は、にやっと不気味に笑い、視線をリンに向け、
リンはその気味悪さに思わず目線を逸らせた。
そのリンに携帯画面を見せた。
リン(差出人が分からない、誰?)
次に痴漢は添付ファイルを開ける。
リン「…っ!(ひぃっ!!)」
先ほど見せられたカメラ男たちのデジカメの写真の一つだった。
思わず顔を赤らめ、目を逸らせるが、
痴漢「こら。まだ終わってないんだよ。文書もあるからこっちもちゃんと見ろ。」
さらに文書も添えられていた。そこには、
『写真は気に入ってもらえたかな?
きれいに取れてるだろう?
画質には自信があるんだよ☆
もっと送ってあげたいけど、今回はこれだけにしておくよ(><)
消しても無駄だよ。
元のデータを消さない限り、何枚でも何枚でも作れるからね。
そしてその元のデータは、絶対キミの手に渡らない所に隠した。
詮索しても無駄だって事だよ。
キミが我々に逆らえばどうなるか。
直ちに、保存したキミの携帯の電話帳に記録した宛先全てにこのいやらしい写真を送る。
君の家族、友人、知り合い、そして彼氏がいたら彼氏にも知られるだろうね。
止めてほしかったら、“僕たちに服従し、命令には何でも従うこと!”
分かったね?
逆らったら、、それはさっき書いたよね(笑)
じゃあ、これからも仲良くしようね、
天風星リンちゃん、ホウオウレンジャー(^^)/~』
文章は記号を交えたふざけた書き方だが、内容はとても恐ろしいもので、リンは明らかに怯えの様子を見せる。
明らかな脅迫文書だ。
嘘でなく、本当に自分の連絡先が痴漢たちに知られてしまった事にリンは恐れおののき、絶望した。
彼女が読み終わったのを確認した痴漢は、携帯を彼女のバッグに仕舞う。
電車が駅に着こうとし、降りる準備をする痴漢二人。
と、痴漢はリンの耳元で一言、
痴漢「さっきのメール文書、分かってるな?」
と囁いた。これでもうリンは何も抵抗出来なくなってしまった。
電車が駅に着いた。。この駅は大きく、多くの人が駅に降りる。
敵はまだ降りないようだ。
本当だったらリンも降りないでこのまま敵を追跡しているはずだった。
しかし、痴漢に遭い、その痴漢に捕まり脅迫されて逆らえない状態の今、リンは口惜しくも降りるしかなかった。
扉が開く、同時にリンの股間の2つのバイブが弱振動を始めた。
ビクッと反応し、必死に声を抑えながら、恨めしいようなすがるような目を痴漢たちに向けるが、、
人が降りる。まず筋肉男が前からリンを電車から引っ張り出し、そして後ろから痴漢がつく。
筋肉男と痴漢に挟まれるようにリンは歩く。
と、リンが苦悶の、何かに耐えるような表情をする。
リンが歩くたびに彼女の股間の前後に突き刺さった二つのバイブの凸凹状のイボイボが、それぞれ尻穴と陰部の壁を擦り、もどかしい小さな、しかし確実な刺激を尻と陰部に与える。
よろよろと歩き、時折すぐ後ろの痴漢に支えられながら歩く。
その様は、傍目には具合の悪いマスクを掛けた少女に男が付き添う、そんな感じに見える。
とても、この男女の関係が痴漢・誘拐犯とその被害者の関係には見えない。
精算機で精算し、同じ順番で改札口に向かう。
前の筋肉男が改札をくぐる。
後ろのリンのすぐ後ろの痴漢は、リンと自分の分の二つの切符を手に持ち、彼女が改札口の前に来たとき、痴漢は素早く手を伸ばし彼女の切符を通して彼女を通し、すぐに自分の分の切符を通し自分が通る。
先ほど痴漢が降りる前に切符でよかった、と言っていた意味が分かった。
本当にどこまで狡猾なんだろう、同時に自分がとんでもない罠に嵌ってしまったことに、言いようの無い恐怖感で心が満たされる。
そしてフラフラなリンを痴漢は後ろからドンッと押しながら駅外へ連行する。
と、尻のバイブが弱のままうねる様な振動に変わった。
バイブのたまらない刺激に、まるで前後から男根を挿入されてピストン運動されながら歩いてるようだ。
だが厳重な猿轡を施されたリンは、声を出せず、誰にも気付かれること無く歩いていった。
と、ロータリーに着いた。
バイブの刺激はやんでいた。
すぐに黒のスモークガラスのBMLが滑り込んできた。筋肉男が後部座席のドアを開け先に入り、リンを引っ張り込み、後ろの痴漢は押し込んだ。
筋肉男はリンの口元のマスクを乱暴にはずした。
猿轡のテープが剥きだしになる。
そして無理やり着せられた男性用の上着も脱がされた。
運転手は何と先ほどのカメラ男の一人のサラリーマンだった。
と、痴漢は車の収納から黒のアイマスクを取り出すと、手早く彼女の目に当て後頭部で括り、目隠しをした。
後部座席で、縛られて身体を動かせず猿轡され目隠しをされ、その上尻と陰部にバイブを挿入されいつ動くか分からない恐怖を味わいながら、リンは筋肉男と痴漢に挟まれる形で乗せられ、連行されていく。
こうしてリンは、まだ明るさの残る夕方に堂々と誘拐されてしまった。