ブルードルフィン・オリジナル 1 邂逅

暗い、地下室。
二人の男が何か人形のようなものを抱えて入ってきた。
男たちは憎憎しげに、鉄柵に人形を叩きつけ、唾を吐いた。人形はーーー、いや、「う・・・」と呻いた。唾を吐きかけられ反応した。が、動けない。蹴られる音が地下に響く。人形のような格好・・・全身タイツを着込んだ人間であった。叩きつけられたときの呻きと両足を揃えたような格好でぐったりとしていた所をみると、女性のようである。全身タイツの形状はイルカの顔の形をした変なマスクが頭を覆い、青の上着に白のVの字、胸に刻まれたイルカの刺繍、白いタイツに包まれた足。青いブーツ。そのタイツ、いや戦隊スーツに包まれた身体を見ると小柄で崩れていない、相当鍛えられている、いい匂いのする、うら若い女性のようだ。
男たちの一人はそんないたいけな女性を足で踏みつけにする。彼女はなぜこのような痛ましい目に遭わなければならないか。

振り返る前に、彼女がこのとき何を思っていたか、見てみることにする。

痛い・・・叩きつけられた・・・・お尻を散々触られて・・・・今度は、なに?
これは、なに?凄く硬いんだけど、金属・・・鉄?
この感触、鉄柵?逃げ(ださなきゃ)???、あれ、手と・・・足にも、何か付けられてる!逃げられない。
わたし、どうしてここにいるの?ああそうだ、潜入したら、捕まってーーーー。

「おはよう、仮面女」冷たい声がした。そうして彼女は目が覚めた。

彼女ーーーブルードルフィンの、二代目・岬恵はこうして地下室で拷問を受ける羽目になった。では、なぜそうなったか。

超獣戦隊ライブマンが解散して幾星霜。彼らが滅ぼしたビアスが率いたボルトのような組織はないが、争い収まらぬ地球の紛争地に、「科学」を悪用し金儲けを企む連中は後を絶たなかった。そんな連中に対抗し、かつてのライブマンの生き残りが仕事の折将来優秀な人材を集め、新たなライブマンを結成した。そして今は亡き盟友の岬めぐみの姪にあたる20歳の美女、岬恵。正義の為に若くして散った叔母の名前と魂を引き継ぎ、日夜悪と戦っていた。これはそんな彼女の、遭ったことは少ないけれど、強烈な印象を残した失敗の話である。

その日ブルードルフィンは、某地の、つぶれた工場の跡を探っていた。
いつものように、仲間をたよらず、一人で探していた。
その工場で「あのフグの持つ猛毒テトロドトキシンを元にした、さらに強力な毒を開発し、暴力団経由で海外に売り飛ばしている商人がいる」との垂れ込みを受け、とりあえずその現場に向かった。事実ならば見過ごせない。
なにしろテトロドトキシン自体が僅かな量で人間はおろか、象までも殺せる強力な毒素。その毒は神経の伝達機能を麻痺させ、脳と身体を分断してしまう作用を持つ。毒の裏返しというやつで今ではペインキラー(鎮痛剤)として使われている代物。
そんなものが強力になった日には、死人が沢山出る。
「そんなものが出回ってはいけない。なんとしても止めなきゃ!」亡き伯母譲りの正義感が、彼女を動かしていた。

ライブラスターを抜き、身体をかがめ、足音を殺して歩いていく。

と、その時。
「誰だ」と声がした。
(敵!)考える暇なく前蹴りが飛ぶ。バックステップで交わし、ライブラスターを撃つ。たまらず相手は倒れる。
敵が前・後ろと挟み撃ち。ブルードルフィンは素早く察知し後ろのやつに肘を打ち込み、前のやつには回し蹴り。そして倒れた二人の咽喉に容赦なく蹴りを打ち込む。
あっという間に三人倒す。物陰から隠れていたやつらが襲い掛かる。ブルードルフィンはバックして壁に背を貼り付ける。
一人対多人数の場合、背中を取られるのは極めて不利だからだ。そうしておいて次々にライブラスターを撃って行く。敵は面白いように倒れる。

やがて人の気配が無くなったのを確認し、ブルードルフィンは工場の奥にある階段を上がろうとしたが足音がしそうなのでやめ、一気にジャンプして二階に上がる。
二階には事務所らしき部屋がある。灯りはついていない。
ブルードルフィンはライブラスターをソードにしてドアの鍵を叩き切る。無鉄砲さも伯母に良く似ている。
「もう、物音もなにもないわね」苦笑して部屋に入るとそこにはフグの泳ぐ生簀、実験道具、高性能のパソコンといかにもな証拠の品が並んでいる。
(本当は悪事だけど・・・)ブルーはデータをハッキングしようとパソコンに近づく。警戒心が一瞬緩んだ。

その時。

何かがチクリ、と首筋を刺したように思えた。蚊・・・・・・(かしら)・・・・・・・・。と、思い、首筋に手を当てようとした。おかしなことに手が上がらない。何故なの、とブルードルフィンは思ったが脳味噌以外の身体の部分が(言うことを聞かないわ!)と思い当たった瞬間、気がついた。(やられた・・・毒に・・・油断したわ)睡眠から目が覚めたのに頭はぼんやりしている、それなのに意識ははっきりある。そのような不思議な気分だ。神経がやられたか・・・?

あせって逃げようと思うが力が入らないところに「勝手に入っちゃ、いけないよ」と自分を呼ぶ声がする。初老の男性のような人の声だった。(え・・・・みつかった?)よろけたところを、その男の腕に抱かれる。

男が自分の胸を官能的に揉む。(嫌・・)逃れようとした。男の腕を、払おうとした。払えない。(おかしい、腕が上がらない)息がうまく出来ない。体が痺れる。目の前のディスプレイが漫画みたいに歪んでいる。男の片手がスカートをめくり、茂みを包んでいるタイツに行く。胸と穴を楽しむようにもまれる。

「(放せ!)」言ったつもりだった。男のがら空きの腹にエルボーを入れたーーーつもりだった。言葉が出ず、セクハラを振り切れない。なされるがまま。これってもしかして、とブルードルフィンはあせりだす。(神経に作用する毒?)ようやく思い当たる。

自分の体がだんだん神経毒に犯されるのと、男に陵辱される恐怖をブルードルフィンは感じていたが何も出来ない。(なんて事・・・・くるしい。たすけて)胸が苦しく、口と鼻が空気を求めるがうまく息が出来ずもだえる。男はブルードルフィンの身体に飽きたのか、手を放した。「う・・・・はぁ・・・あ・・・・」急に支えを失い、ふらふらと身をよじりながら崩れ倒れる自分を男は冷笑している。(身体が動けば・・・こんなやつすぐ終わらせるのに)それは正常ならば、である。「く・・・かか・・・・あ・・・・」

仲間に知らせなきゃ、意識してなかったけど。(みん、ん、な、ど、く、に、やら、れ、た・・・・・)声がブルードルフィンの頭の中で反射するだけ。ふらついた先に、何かによろけて当たった。感触が人間だった。(さっきの男?私の体をよくも・・・)とブルードルフィンが思ったと同時に、「大それたことする子どもだ」男が空気の抜けた風船のようなブルードルフィンの身体を払いのける。さっきの男とは声が違う。別人だ。

どさり。床に倒れ伏す。

(・・・・・・・・・・・)力が抜けていく、暗闇になり、・・・ならなかった。

(あれ?)何故か、意識が途切れない。(う、ご、か、な、い)声が、人間の気配がはっきりと感じられる。神経を確かにやられて立てないのに。

「うちのモンが一人残らずやられるとはな・・・さあて、どうけじめを取らせるかな」今度は違う人間の声。さっき倒れる前によろけた人間だ。男で、低くドスの利いた感じの声。裏社会の人間?

(く、苦しい。はっきりと見えるのに、自分がどうなるか分かっているのに、お願い私の体。立って、逃げて)息が苦しい。動悸が治まらない。遠くで声がする。頭が何度も逃げなければと思うが身体が立つ事を忘れている。いや、神経が麻痺している。それなのに目が見える。見られているのが分かる。
「行儀の悪いガキだ。こんな所まで入りやがって・・・どうします?」
「我々の秘密を見られた以上、返すわけにはいかないね。この仮面も分かっているだろうけど」
(逃げなきゃ・・・!)逃れようとして身体がバタつく。静かにしろと目下の方がブルードルフィンを蹴り上げる。「うぐう・・・」毒の作用か、普段はどうということのない一般人のキックが重く感じられる。彼は何度も蹴り上げる。「げほっ、がほっ、ううーーー、(動ければこんなやつ瞬殺なのに!)う・・・あ・・・」自分の油断が恨めしい。
「仮面て、女なんですけどね。こいつ」蹴りながら笑っていった。
「だからこそだ。親分、好きだろう。痛めつけるの」
「いやあ、先生ほどでは」
「先生」と「親分」の乾いた会話を聞きながらブルードルフィンは戦慄していた。(このままでは殺される・・・)と。

「それじゃ、往きますか、地獄に・・・」
そして「先生」と「親分」は動けないブルードルフィンを、尻を前にして頭を背中に受けるように、難なく担ぎ上げ地下に入っていった。
むにゅ、ぐに。「ん・・(やめてーーー!)」「ふふふ・・・」その間、ヒップを撫で回される屈辱を受け続けながら階段を下りていく。

地下室。ブルードルフィンはとりあえず下ろされた。
(助けて・・・いや・・・・)ブルードルフィンは神経毒テトロトドキシンにより何も出来ず抵抗できず、物も言えないままに冷たい手枷と足枷を嵌められ、鉄柵に縛り付けられる。
(絶対、秘密を漏らさないようにしなきゃ。私は正義のために戦った叔母の血が入ってる。こんなところで負けられない)
ブルードルフィンは鉄柵に貼り付けられ痛ましい姿となりつつも、なお気丈にも正義のヒロインという自覚を捨てていない。
そんな彼女を悪党二人は眺めて、
「この女なにを思っているんでしょうね?」「仲間を守ろうとでも、思っているのだろう。」
そして「先生」は一呼吸入れて、「親分」に、はじめてくれ、と無機質に言った。
そして「親分」は道具を取り出し、それを乳首に押し付け始めた。(な、何?いやっ、くすぐったい、あ、あ、やめて、ああっ、ああん)先を細くして感じやすいようにしたバイブだった。ブルードルフィンはのけぞり、神経が麻痺して動きにくい身体を振って嫌がり始めた。「う・・・・あ・・・・・ああん・・・・・」かすかに呻き声もマスクにくぐもって漏れ始める。「先生」も半田ごての様なものを手に取り、陰唇に当て始めた。「ん・・・あ・・・・かは・・・ああっ」快感と言うより、気持ち悪い痺れがブルードルフィンの身体を駆け巡る。例えていうなら、彼女の穢れない裸体を蛇が這いずり回り、あろうことかその蛇に、強化スーツで包めない局部を責められるような、そんな感じ。
自由の利かない身体を敵に嬲られ、ブルードルフィンはただ後悔していた。

気絶した彼女を二人は許すはずも無く、次の拷問に取り掛かった。
三角木馬。それも三角の部分を丸くして股裂き出来ない代わりに苦痛を長く与えるようにしつらえてある。そして余計なことに健康サンダルの突起のような部分がポケットに当たるように名手いるではないか。苦痛の上に性的に痛みを与えるようになっている。じっくりと、長く。
気丈な彼女はここで初めて恐怖した。木馬に跨がされ、「い、痛いいいいいいい!いやああああああ・・・・・・・」神経が麻痺してすら感じる、突起物が突き刺さり股が裂かれ自分の体が真っ二つにされる問うな感覚にブルードルフィンは心底おびえた。
「ああ・・・・あひぃ・・・・いたいいい」まだ心が未成年な彼女は苦痛と恐怖と醜態を他人に見られる辛さに、心底怯えた。そして泣き出した。

「はい、もしもし、ああ、これはどうも。今捕らえている仮面女だが、最初の段階で音を上げている。意外とだらしが無い。これからゆっくり痛めつけますよ。それでは」
「親分」がどこかに連絡している。どこへ?

後ろ手縛られ、木馬に跨ぐ、痛みと恥ずかしさに苛まれる正義の味方の(はずの)女性、ブルードルフィン。
(やだ、撮らないで)みっともない姿をカメラに撮られているのを知っている。(お願いだから見ないで)仲間に見られているのを知っている。
(いやあ、もう)この上ない恥ずかしさを感じている。股から湯気が出ている。木馬がブルードルフィンの排泄物で濡れている。
ひっく、ひっく。(うえ、ええん、はずかしいよお)マスクの中でしゃくり上げる。くぐもりながらしゃくり上げる。「親分」と「先生」はそれを見て冷笑する。

二人はブルードルフィンを後ろ手縛ったまま木馬から開放した。そして罵倒しながら胸を揉み尻に突っ込みライブラスターを撃ちまくり拷問の限り。
「痛みを感じないって、便利だろ?」「先生」が乾いた声で笑う。
そして彼らはブルードルフィンの反応できない身体を荒縄で縛り始めた。「(やめて、お願いですから自由にして)ぐうーーーーううーーーーー」呻くブルーの手と足を縛りあげ海老ぞりにし完全に自由を奪い、乳房を囲むように縛り上げ辱めを与える。その上股間を痛めつけるよう跨ぐように縛り上げる。

縛り上げられ、荷物のようにコンクリートの冷たい地面に転がされた。
ぐにゅ。形のいい大きい胸が、地面につぶされて歪んだ。乳房や股間の女性が荒縄のささくれてとがった部分で痛めつけられギチギチ音を立てる。
自由もない、痛覚はないが心身に大きすぎるダメージ。ブルードルフィンの精神は崩壊してはいないが、揺るぎ始めた。「うぐっ、ひっく」マスクの中は涙である。
「先生」と「親分」は地下室に鍵をかけ席をはずす。
「こんなことなら、痛みを与える薬を注射してやればよかったですね、先生」
「なあに、私の毒は、次の日解けるはずだ。まずはゆっくりと、地獄を味わってもらおうよ」
「さっき連絡したときに聞いたんですが、ロンダース に卸している連中も、同じような女を捕らえたらしいです。合流しますか?」
「それはやらないほうがいい。万が一秘密が漏れたら目も当てられない。それになにかあれば向こうから知らせるさ。」
「・・・わかりました」少し考えて「親分」が頷く。
「それでは私はこれで。仮面女にやられたやつらの通夜や世話もしないといけないもんで、あとさっきの連中との連絡もありますし、残念ですがこの辺で失礼します。」
「そうですか、それじゃあ子分や連中によろしく頼む」
「はい、失礼します」
「先生」は車で去る「親分」を見送り、地下室に戻る。
「先生」はブルードルフィンのマスクを取った。苦痛に歪んだ知的な美人は痛みの臨界点を越え、気を失っている。その疲れ果てた顔を見下ろし、「先生」は不気味に笑った。
(貴様の伯母のせいで俺は科学アカデミアを追い出されたんだ。エリートのエデンの園を追われ、理系に理解のないこの日本でどれだけ苦労したか、恨んでも恨みきれん。岬めぐみに復讐したかったんだが、死んでしまってはな。)「まあいい、たっぷり可愛がってやるさ」
「先生」は、ブルードルフィンを蹴り上げた。「ぐ・・・」ブルードルフィンはか弱く呻く。