最後のシノビチェンジ
ウエンディーヌ「今度こそ決着をつけましょうね!」
フラビージョ「そうよ。そうよ。この前はハリケンブルーに逃げられちゃってさ」
ウ「今度は大丈夫よ。1週間後忍山で勝負よ。ちゃ~んと用意してあるから安心しなさい」
フ「わかったわよ。でも本当に大丈夫なんでしょうね?」
ウ「ちゃ~んとハリケンブルーをおびき出す手配は整ってるし、今度こそ絶対に逃げられないわよ」
フ「その言葉期待しているわよ。今度こそ宇宙一のくノ一が決まるわけね!」
ウ「そう言うこと」
『瞬は預かったわよ。返してほしかったら1週間後の14時に一人で忍山へ来なさい。仲間を呼んだら瞬の命は無いわよ ウエンディーヌ』
脅迫状を受けっとた七海は一人忍山に向っていた。仲間には何も伝えてない。最愛の瞬を戦いに巻き込んでしまった自念の念かもしれない。自分を捕らえようとしているウエンディーヌの罠であることは分かっていた。でも、「瞬を助けたい。瞬にだけは迷惑をかけたくない」ただその気持ちだけが七海を動かしていた。
14時10分前、七海は忍山に到着した。辺りを見まわし、人影が無いことを確かめてから、
七海「忍風・シノビチェンジ」
七海はささやく様に言い、腕につけているシノビメダルをまわした。
七海の体にインナースーツさらにその上にシノビスーツとマスクが転送され、七海はハリケンブルーに変身した。
ハリケンブルーは意を決して飛び出していった。
ハリケンブルー「ウエンディーヌ!どこにいるの!約束どおり一人で来たわよ!瞬を返して!」
ハリケンブルーは怒鳴った。一瞬の静寂をおいて、
ウ「よく来たわね」
ウエンディーヌの声と共に、ウエンディーヌとフラビージョが崖の上に姿をあらわした。
ハ「フラビージョまで! 瞬は、瞬はどこなの?」
ウ「心配しなくても大丈夫よ。瞬はあそこよ」
指差す方を見ると瞬が十字架に貼り付けにされていた。
ハ「瞬っ!」
ウ「ちょっと待ちなさい。あなたの相手は、私たちよ」
フ「そうよ。今度こそ決着つけさせてもらうわよ」
ハ「決着ってなによ」
ウ「忘れたの?宇宙一のくノ一を決めるのよ」
ハ「それが私にどういう関係があるのよ」
フ「当たり前じゃない。あなたを倒した方が宇宙一のくノ一になるのよ!」
ハ「ばからしい。なんでそんなことに私が付き合わなきゃならないのよ」
ウ「あ~ら、そんなこと言っていいのかしら。瞬がどうなってもかまわないの?」
ハ「……じゃ~、どうしたらいいのよ」
ウ「あなたと勝負がしたいのよ。でも、この前みたいに逃げられちゃったら困るのよね。だからこういうのはどうかしら?これから日没までの間私達と勝負よ。日没まで逃げ切れたらあなたの勝ちにしてあげるわ。ただし、あなたが逃げられるのはこの忍山の中だけ。それにあなたの持っている武器はそこに置いていってもらうわよ。あなたは逃げるだけ。攻撃できるのは私達だけね。あなたが私達に攻撃したり、忍山の外に逃げたらそこにいる瞬の命は無いと思いなさい。どう?この勝負」
ハ「その勝負、断ったら…」
フ「分かっているくせに。瞬を殺すだけよ」
ハリケンブルーには圧倒的に不利な勝負だったが、忍山には岩石やら木々などが多くあり、逃げ切れるかもしれない。
ウ「さぁあ、どうするの?受けるの受けないの?」
ハ「その勝負、私が勝ったら瞬を助けてくれる?」
ウ「あたりまえじゃない。私達を信用しないさい。今は私達はジャカンジャとは関係ないんだから」
ハ「分かったわ。その勝負受けて立とうじゃないの!その代わり、絶対に瞬は助けてよ」
フ「OK!」
ウ「それじゃ、早速勝負をはじめましょうか?まず初めにあなたの背中にあるハヤテ丸とジャイロ手裏剣をそこに置いてちょうだい」
ハ「分かったわよ…」
ハリケンブルーは正直言って怖かった。自分から攻撃は出来ない。ただ逃げ回るだけで果たしてうまく行くのだろうか。しかしハリケンブルーとしての俊敏性、これまで一緒に戦ってきたシノビスーツの性能を信じて、ハリケンブルーは背中からハヤテ丸を外し足元に置いた。
フ「ジャイロ手裏剣もね」
腕に装着されているシノビメダルに裏に隠されているジャイロ手裏剣も全て外し足元に置いた。
ウ「よ~し、準備は整ったわね。勝負よ!」
声と同じにウエンディーヌとフラビージョがこちらに向って来た。
ハリケンブルーは逃げた。
『なるべく深手を負わないようにしよう』
ハリケンブルーができることははその程度しかなかった。
フ「ブンブンブン…まずは私から。えいっ」
蜂のように飛行していたフラビージョは、逃げるハリケンブルーの背中に向けて蜂針を打った。
ハ「ヤー」
ハリケンブルーはまるでフラビージョの攻撃を知っていたかのように、ジャンプして蜂針を交わした。
フ「やるわね~ これでどうだ」
ハリケンブルーが着地する寸前を狙ってまたも蜂針を打った。
さすがにかわしきれず、蜂針の何本かがハリケンブルーの背中に刺さった。
フ「やった~ あっっ」
蜂針が刺さったと思った背中は、ハリケンブルーが変わり身の術を使った人形だった。
ハ「あまいわね」
ウ「フフフ、いつまであの身軽さが続くかしらね」
フ「むかつく!今度はこれだ!」
フラビージョは両腕を大きく伸ばし、袖の辺りから大きな針を取り出した。
フ「蜂忍法8の字殺法 ぶ~ん」
フラビージョは蜂の様に飛び、ハリケンブルーの周りを8の字形に飛び回った。前回も受けた技だが、ハリケンブルーはフラビージョの飛行を目で追うしかなかった。
フ「そっれ」
バーン
ハ「うわぁ」
ハリケンブルーの背中から火花があがった。いきなり背中に軽い衝撃を受けた。思わぬところからの攻撃、さらに初めてダメージを受けてしまったことに、たじろいだ。
フラビージョはそこを見逃さず、今度は正面から攻撃を仕掛けてきた。
バーン、バーン
ハ「うっ、う」
ハリケンブルーの体正面からも何度か火花があがった。もちろんこの程度の攻撃ではシノビスーツは破られず、攻撃もしのいでくれるが、ある程度の衝撃は装着者の七海にも伝わってくる。
その後、前から後ろから何度か攻撃を受けたが、さほどダメージを受けず、
ハ「この程度の攻撃なら、忍風木の葉隠れ」
ハリケンブルーは体制を立て直し、地面に消えた。
フ「むむっ、どこに隠れた!」
フラビージョは飛行を止めハリケンブルーを探した。
ウ「もう~、フラビージョったらだらしないんだから」
ウ「今度は私が相手よ! そこだ!へび忍法まやかしの術」
ウエンディーヌが作り出した巨大な影絵がハリケンブルーの隠れている岩場に向って飛んで行き、ハリケンブルーに向って行きを吹きかけた。
ハ「キャーー」
ハリケンブルーの体から火花があがった。
ウ「まだまだっ」
ウエンディーヌの影絵は、何度も息を吹きかけた。その度に風を受けたシノビスーツが爆発を起こした。
未だシノビスーツは外見上特に目立った傷はないが、バイザーの表示がシノビスーツの耐久度が徐々に低下し始めていることを示していた。
ハ「クっ」
ハリケンブルーは高くジャンプをし、その場を離れ様としたが、待ってましたとばかりウエンディーヌの影絵が息を吹きかけた。
ハ「しまった!」
空中では態勢を立て直すことも出来ず、ハリケンブルーは息をもろに受けてしまった。
シノビスーツは激しく爆発を起こした。
そのままの態勢で地面に叩きつけられたハリケンブルーは、あまりの痛さにのたうち回った。シノビスーツが衝撃のほとんどを吸収してくれるが、七海の体にも衝撃が加わっていた。
フ「やった~」
フラビージョは手をたたきながらのたうち回るハリケンブルーのそばにやってきた。
ウ「たいしたことないわね~」
ウエンディーヌも近づいてきた。
ハ「やばい、逃げなきゃ…」
ハリケンブルーは二人の姿を見つけ逃げようとするが、体が思うように動かない。
フ「はいっ、まだおねんねには早いわよ。起きてね!」
フラビージョがハリケンブルーの両脇に手を入れ無理矢理立たせた。
フ「ウエンディーヌ、どうぞ!」
ウ「ありがとう、じゃぁお言葉に甘えていただくわ」
ウエンディーヌは拳を作ると、正確にハリケンブルーのミゾ打ちに何発か食らわせた。
ハ「グフッ、ガッ」
シノビスーツがあるとは言え、装着者の七海のダメージは大きく、マスクの中に唾を吐き出し苦しんだ。
ハリケンブルーの体は後ろへ逃げ様とするが、フラビージョにがっちりガードされていてウエンディーヌの拳の力を逃がすことができず、全て自らの体で受けてしまった。
フ「うわぁ~、楽しそう。私のにもやらせて!」
ウ「いいわよ」
ウエンディーヌはだらりとしたハリケンブルーを受け取り、ハリケンブルーの体を思いっきり伸ばした。
ウ「さぁ、どうぞ」
フ「いくわよ」
ハ「ガフッ、ゴフッ」
ウエンディーヌほど正確ではなかったが、フラビージョの拳も見事にハリケンブルーこと七海の溝打ちヒットしていた。
ハリケンブルーは自らの力では立っていられず、ウエンディーヌにもたれかかった。
ウ「いや、なに甘えてるのよ!」
ウエンディーヌは支えていた手を離した。
ドサッと言う感じでハリケンブルーは倒れ、腹部を抱えて苦しんだ。
ウ「なんか、期待はずれ。もっと強いと思ったのに」
フ「そうよね。こんなやつ倒しても宇宙一のくノ一にはなれないよ~」
二人は苦しんでいるハリケンブルーを見下ろした。
ウ「それじゃ、もう一度チャンスをあげるわ。私達は少し休んでいるから、もう一度逃げて御覧なさい」
フ「日の入りまでにまた来るわ」
ウ「それじゃ、行きましょ」
ウエンディーヌとフラビージョは霧の中に消えていった。
ハリケンブルーはしばらく身動きが取れなかったが、体中の痛みが引いてくるのと同時に冷静さを取り戻してきた。
ハ『少し油断したわ。今度はそうはいかないから』
ハリケンスーツのダメージが少ないことを確認し、防御のとりやすい場所を探した。
その後、ウエンディーヌやフラビージョが単発的に攻撃を仕掛けてきた。ハリケンブルーがウエンディーヌやフラビージョより1枚も2枚も上手なのは分かっていたが、多勢に武勢1対2であり、さらに攻撃を仕掛けることもできず、ただ受身しかできない状況下ではハリケンブルーが圧倒的に不利だった。
一方からの攻撃を避けると、逃げた先には必ずもう一方からの攻撃が待っていた。逃げの態勢からではろくな防御もできず、もろに攻撃を受けてしまっていた。
さすがのシノビスーツも度重なる攻撃により、ダメージが多くなってきた。
いたるところ表面が黒く焦げ、防御力が落ちていた。それよりも、七海の体力も限界に達しており、得意の素早さも失われつつあった。
しかし、何とか時間稼ぎは成功しており、日の出まで1時間を切った。
ハ『なんとか逃げ切れるかもしれない』
ハリケンブルーがそう思ってきた、ちょうどその時だった。
またもウエンディーヌやフラビージョが姿をあらわした。
ウ「そろそろ決着をつけましょうか」
フ「宇宙一のくノ一を決めましょう」
ハリケンブルーは一歩引いて身構えた。そのハリケンブルーの目には信じられない光景が映っていた。
ウ「今度はこれを使わせてもらうわよ」
ウエンディーヌの手にはハリケンブルーのハヤテ丸が握られていた。
フ「自分の武器の威力を味わうといいわ」
ハ「く…」
ウ「いや~」
突然、ウエンディーヌが斬りつけてきた。
ハリケンブルーは身をかわし、すんでのところでハヤテ丸から逃げたが、明らかに体が重かった。
ウ「うまく逃げたわね。それじゃ、これはどうかしら」
またウエンディーヌは斬りかかってきた。さっきと同じようにハリケンブルーは身をかわしたが、ウエンディーヌはその動きを予想していたかのように、身をかわした方へ横方向に斬りつけた。
バジュ~ン
ハリケンブルーの腹部が激しく爆発した。ハヤテ丸の剣先がハリケンブルーの腹部をかすめたのだ。
ハ「かすめただけなのに、こんなに威力があるなんて…」
爆発の煙が引いた自分の腹部を見たハリケンブルーは驚愕した。
斬られた部分のシノビスーツはどす黒くこげ、一部スーツ内部が顔をのぞかせていた。もちろん七海にも大きなダメージが襲っていた。
ハ『まともに食らったやばい』
いくらシノビスーツでも、ハヤテ丸の攻撃力には勝てなかった。
ウ「すごい威力ね。うずうずしてきちゃう。次いくわよ」
ウエンディーヌはさらにハヤテ丸を振り回してきた。
先ほどのダメージは予想以上にひどく、ハリケンブルーの動きを鈍くしていた。ハヤテ丸を避けようとするのだが、思うように体が動かない。
バジュ~ン
ハ「キャーー」
今度は胸部がやられた。今度も剣先がかすっただけだったが、シノビスーツのダメージは大きく、七海の大きな胸にも激痛が走る。
ハ『やばい、どうしたらいいの』
冷静に考えるのだが、どうすることもできない。
ウ「まだまだっ」
ハリケンブルーは何度もハヤテ丸の餌食になった。その度にシノビスーツは激しく爆発を起こし破れ、七海にも衝撃を与えた。
幸いにも直撃は受けずに済んでいた。実はウエンディーヌが手加減していたのだ。しかし、シノビスーツの耐久度が急激に落ちてきたため、七海の受けるダメージが次第に大きくなっていった。
全身を何箇所も切り刻まれていった。
七海の意識は薄れ、立っているのもやっとの状態になってきた。
ウ「あらら、無残な姿ね~。フラビージョ、約束どおり次はあなたの番よ」
フ「やった~。ウエンディーヌの攻撃でやられちゃうんじゃないかと心配したわよ」
ウエンディーヌはハヤテ丸をフラビージョに渡した。
フ「今度は私よ! 射モード」
フラビージョはハヤテ丸のもうひとつの機能、ガンモードを使おうとしていた。
フ「発射!!」
ズバー
ハ「キャー」
ハヤテ丸から発射された弾丸は、ハリケンブルーの右太ももを直撃していた。
直撃を受けた個所は激しく爆発し、シノビスーツは焼けただれ、七海にも激痛を与えていた。ハリケンブルーは倒れ、右足を抱えてのたうち回った。
ハ『痛い……こんな威力があるの…』
フ「うわぁ、すごい威力! どう?自分の武器のお味は?」
ウ「ほら、いつまで寝てるのよ」
ウエンディーヌは苦しむハリケンブルーを強引に立たせ、その場を離れた。
フ「それじゃ、いくわよ!」
ズバー、ズバー、ズバー、ズバー
フラビージョは、ハヤテ丸を連射した。弾丸は全てハリケンブルーに命中した。
ハリケンブルーは一気に爆発の炎と煙に包まれた。
右胸、左胸、右わき腹、股間、左足… いたるところに命中し、シノビスーツは激しく連続して爆発を起こした。
煙が晴れると、そこには無残な姿になったハリケンブルーが立っていた。
シノビスーツは原型が分からないほど、激しく破損し、光輝いていたブルー色はほとんど残っておらず全身どす黒くこげていた。しかもマスクにも1発命中していたようで、右半分がひしゃげ、バイザーも蜘蛛の巣状にヒビが入っていた。
しかし、幸いにもインナーまでは被害が及んでおらず、ところどころインナーの白が顔を出しているだけだった。
ハ「う…ぅ」
ドサ
ハリケンブルーは力無くうつぶせに倒れた。
フ「どう?私の腕は」
とフラビージョが全く動かないハリケンブルーに話しかけた。
フ「あれ?気絶しちゃったのかな?もしかしてもう死んじゃったの?」
フラビージョはハリケンブルーをゆすったが、何の反応もなかった。
ウ「あらら、つまらないわね~。でも安心しなさいまだ死んではないわよ。ほら起きなさい!」
ウエンディーヌはハリケンブルーのマスクをけった。
ハ「うっ…」
七海は気絶から目がさめたが、体中が痛い。手足が自由に動かなかった。
ウ「ほら、逃げなくていいの?」
ハ「逃げなきゃ…」
ハリケンブルーは最後の力を振り絞って立ちあがった。しかし体を動かすたびに七海に激痛が襲い、シノビスーツから火花が散った。
ウ「そうでなきゃ!楽しめないからね」
ハリケンブルーは重い体を引きずるように二人から離れようと歩きだした。
フ「そうは行かないわよ」
いきなりフラビージョが両手を広げハリケンブルーの行く手を阻んだ。
ウ「そうよ!こっちを見なさい!」
ハリケンブルーが顔を後ろに向けたちょうどその時、
ウ「疾風流剣技・激流斬」
ウエンディーヌがハリケンブルーの必殺技、激流斬をしかけてきた。
ウエンディーヌは比較的ダメージの少ないハリケンブルーの背中を縦に激流斬した。
ドガッ~
バジュバジュバジュ
さすがハリケンブルーの必殺技、今までとは比較にならないほど激しく広範囲に断続的にハリケンブルーの背中が爆発した。爆発の勢いでハリケンブルーはフラビージョの方に飛ばされた。
フ「おっと」
フラビージョは背中が断続的に爆発しているハリケンブルーを受け止めた。
七海は背中から襲った激痛によりまたも気絶した。今回は痛みのレベルは今まで受けたものとは全く違っていた。それもそのはず、激流斬の攻撃力はすさまじく、ほとんど無傷であったはずのシノビスーツでさえ、これまでの切り口とは全く違い剣先が通過した首筋から臀部まで10cm程度の幅で完全に切り刻まれ、ダメージはスーツのみで吸収しきれずにインナーにまで達していた。しかし、インナースーツはシノビスーツほど耐久力は無く、インナースーツも破られ、七海の素肌表面もかすり傷程度に傷つけていた。
もし、ダメージの大きい正面で激流斬を食らっていたら、シノビスーツと共に装着者の七海の体も切り刻まれていたかもしれない。
激流斬の衝撃でヒビの入ったバイザーがついに砕け散った。
フ「もうぼろぼろね。激流斬の攻撃力はすごいわね~。バイザーまで無くなっちゃってさ。どんな顔しているのかな?」
フラビージョは砕け散ったバイザーからのぞいている七海の寝顔をのぞいた。
額からは血が流れていた。
フ「あら、かわいい顔しているじゃないの。この子」
ウ「どおれ?ホントね。でもまだ生きてるわよ、この子」
フ「そうか、じゃ最後の必殺技使っちゃう?」
ウ「そうね。私達の勝負にも決着をつけましょう」
フラビージョはハリケンブルーを担いで広場に向った。そこには十字架が一本立っており、まるで処刑場のようであった。
フラビージョは手際よく気絶して動けないハリケンブルーをその十字架に縛り付けた。
フ「いい加減目を覚ましなさい!」
フラビージョはハリケンブルーにいや七海に砕け散ったバイザーの隙間から秘伝の気付け薬をかがせた。
ハ「ううぅ…」
七海は目を覚ましたが、全身を襲う激痛と、身動きの取れない手足、そして信じられない視界に我が目を疑った。
ハ「あっ、バイザーが…」
ウ「やっと目を覚ましたわね」
フ「どうやら、この勝負私達の勝ちね」
ウ「バイザーどころか、シノビスーツももうぼろぼろよ」
既にシノビスーツが全く機能していないことは装着者の七海が一番よく知っていた。
ハ「まだ勝負はついていないわ。ほらもう少しで日没よ」
ハリケンブルーは強がってみたが、絶望的な状況だった。
ウ「それじゃ、これが最後の攻撃にしましょう。もしあなたがこの攻撃に耐えられたらあなたの勝ちにしてあげる」
とウエンディーヌはハリケンブルーのハリケンガジェット、ソニックメガホンを取り出した。
ハ「まさか、ソニックメガホンまで奪われていたなんて…」
フ「しかも、これもあるのよ」
フラビージョがレッドとイエローのハリケンガジェット、ドライガン、クイックハンマーも取り出した。
ハ「どうしてドライガン、クイックハンマーまで…」
ウ「これを合体させてね」
ハリケンガジェットを合体させソニックガジェットを完成させた。
フ「この攻撃を受けたらどうなると思う?」
ウ「そのシノビスーツじゃまず助からないわね」
ハ『まともなシノビスーツでも分からないのに、この体でソニックガジェットを受けたらまず助からない。どうしたらいいの…助けて 瞬』
事実、まともなシノビスーツであっても、無事でいられるかどうか分からない破壊力のあるソニックガジェット。今の耐久力がほとんど残っていないハリケンブルーが受けたら助かる見こみは全く無かった。
フ「試してみましょうか」
ハ「待って、このシノビスーツじゃ絶えられないよ。お願いもう…」
ウ「やってみなきゃ分からないわよ。自分のシノビスーツを信じなさい。行くわよ」
逃げたくても十字架に磔にされたハリケンブルー。
ウ「ロールアップ」
ウエンディーヌの掛け声と共に、超音波エネルギー弾がハリケンブルーに向って飛び出した。
ハ「いやぁー」
七海は自分に向ってくる光り輝くエネルギー弾を走馬灯のように眺めた。数秒のできごとだが、七海は数分に感じた。
ついに超音波エネルギー弾がハリケンブルーを包み込んだ。
バジュ、ドバ、ボーン
それ単体ではほとんど攻撃力の無い超音波エネルギー弾でさえ、今のシノビスーツでは絶えることができず、いたるところで爆発を始めていた。
ハリケンブルーを包み込んだ超音波エネルギー弾が上空に浮かび上がっていった。
そして、ついにそのときはやってきた。
ピキッ
超音波エネルギー弾が一瞬輝いたかと思うと、一気に大爆発を起こした。
その爆発のエネルギーに全く耐えることができなかったシノビスーツ。ハリケンブルーは爆死した。
爆発が収まると、地面にはぐちゃぐちゃに変形したハリケンブルーのマスクと、切れ切れになったシノビスーツの切れ端が落ちていた。