絵本のなかの人形 後編
声をあげたのかどうかは覚えていなかった。一時的に失神していたのかもしれない。気がついたときには、絶頂とともに流れ出た処女喪失の証しをスポイトで採取されていた。
「いっぱい採れたよ!」
春男が声をあげて、蜜に混じった血の滴を試験管に垂らした。
ミキはマズルカの狡猾な手管によって羞恥と官能の炎に焼かれ、全身から力という力がすべて絞りだされた感じで、うつろな瞳を宙に向けていた。
大開脚された両脚と腰はやっとおろされていたが、死人のようにグッタリとなったミキには、もう抵抗する気力も身悶えする元気もない。
(あかねちゃんはどうしたんだろう……)
ミキは子供たちの中にあかねの姿がないことに気づいた。
「あッ! あッ、いやぁ~~!」
突然、火がついたような悲鳴が聞こえてきた。耳を覆わねば、胸が張り裂けてしまいそうな激しい悲鳴だった。
「あかねちゃん?……」
身体を無理に起こすと、足もとのむこう側にあかねが寝かされているのがみえた。あかねの開かれた脚の間にマズルカが取りついている。だが、手足を括られたミキにはどうすることもできない。全身を空しくもがかせるばかりなのだ。
稚さの残る身体に太い異物を呑ませるべく、マズルカはあかねの繊細な粘膜に潤滑の粘液を塗りこめながら、バイブを強引に押し込めていく。
「あッ! いや!」
「ほら、入ったわ! よく覚えておきな。どんな太さのものでも呑めるように女の身体はできてるんだよ!」
まだ若草のような飾り毛に囲まれた肉壁を貫いて赤いバイブが食い込む光景を、男の子たちは我がちに覗き込もうとする。
無慈悲な貫通と同時に、あかねは気が失せたようにぐったりとし果ててしまう。
「さて、今度はお姉さんの番ね」
ニタリと笑ったマズルカの手には黒いバイブが握られている。マズルカの鬱屈した情欲には際限がなかった。
「このバイブは二本で一対となっていて、コードでつながっているんだ。これでおまえの大好きなあかねちゃんとふたり仲良く繋いであげるわ!」
「ま、待って、お願い! そんなこと……そんなことしないでッ!」
ミキの目の前に黒いバイブがヌッと突きつけられる。太さは先ほどの試験管の比ではない。おまけに表面にゴツゴツした疣がついている。妖しげな粘液が塗りつけられているのか、ヌラヌラと光る黒い色がことさら不気味だった。
「お姉ちゃ……ん……!」
足もとのむこうから訴えるように響いてくるあかねの悲痛な声が、ミキの心臓にグサリと突き刺さる。
「私はどうなってもいい!……せ、せめてあかねちゃんは許して!……お願いッ!」
マズルカはかまわずバイブを押し込んだ。
「あうう!」
「ヌプッという感じで入ってしまったわ、フフフ、いやらしい女ね」
マズルカの手でバイブが身体の奥で一回転させられ、さらに奥深くねじ込まれるとミキの眼尻から絶望の涙が糸を引くのだった。
ふたりの美少女がコードで結ばれた二本のバイブで繋げられた光景は、淫らきわまりないものだった。
「さあ、これから性感テストよ!」
ニンマリ笑ったマズルカが、ふたりを繋いだバイブのスイッチを入れる。バイブに音はない。同時に淫らな音で蠢動が始まることを期待していた少年たちの予想はあっさり裏切られる。
「最初はこれでいいの、微妙な線で調整がされていて、まだふたりともあそこが緊張している証拠よ! さあみんなふたりが気分を出せるように、身体をほぐしてあげましょう」
男の子たちは、待ってましたとばかり、ベッドの上の美少女たちに絡みついてゆく。
「いやッ!」
「お姉ちゃん! 怖い!」
ベッド上のふたりは、さながら野卑なハイエナの群れにたかられた美しい獲物だった。ふたりの美しい裸身が見えなくなるほどに四人の少年が覆いかぶさっている。ミキの微乳には左右から達也と大介、あかねの可憐な堅い乳房は春男と誠に分担が分けられる。
「ああ、いやぁ!」
「いやッ、いやよう!」
ふたりの紅唇から絶望の悲鳴が同時に上がった。チュバ、チュバ!と露骨に乳首を吸い上げる淫靡な唾音が一斉に始まった。あかねのグミの実のようなピンク色の尖りをしゃぶり上げる春男が歓喜の声を上げる。
「お姉ちゃんのオッパイよりあかねの方が大きいかも……」
「でも、乳首はミキお姉さんのほうが大きいな……」
誠のするどい観察がミキを辱める。
「いやだ、放してぇ!」
ぐったりし果てていたあかねが、身体を弓なりに反らせて跳ねまわる。
あかねのあまりに激しい悲鳴が誠の唇で塞がれる。
「あッ、うむう!」
「お姉さんも気持ちよくなりたいでしょう?」
達也の唇に捕らえられたミキの乳首が、舌でしゃぶられる。もう一方にはふくらみごと吸い立てるような大介の舌戯が加えられる。
「あ、あかねちゃん!」
ふたりの男の子の舌にしゃぶり尽くされながらも、ミキはうわごとのように叫びつづける。
「お姉ちゃん、あかねのことなんかもう忘れちゃったら、ほら、ほら、身体の方が正直だよ。もう乳首もピンピンに立ってきてるよ」
大介は嬉々としている。
「恥ずかしがることはないよ、さっき僕のを入れられたときは気持ちよさそうにしてたじゃない。あかねがいるのがわかって、いまさら格好つけても遅いよ、お姉さん!」
「い、いやぁ!」
「咥え心地はどう? ほら、ほら!」
マズルカがミキの身体に突き立てられたバイブの柄を指でトントン叩く。
「あッ! やめて!」
ミキの眉間にたちまち深い皺が寄せられる。達也と大介の指が同時にバイブに裂かれた果肉の合わせ目に及んでくる。隠された敏感な女の突起をいやらしい指が探り出し、無理矢理に起こそうとするのだ。
「こっちもしこってきたみたいだ」
最も敏感な女芽をコネコネとこじられると、どうこらえても腰の奥にざわめきが起きる。
「ああ、お願い!」
あかねちゃんがいる。あかねちゃんに聞かれてしまう。そんな正気がミキに脂汗を噴かせる。だが、それも沸きあがる官能には持ち堪えられないのだ。汗を噴き、もじもじとうねり始めたミキの尻臀の動きに、頃はよしとばかり、マズルカの手がバイブを掴む。じんわりと一度回された途端、閃きのようなものがミキの背骨から脳天に駆け抜ける。
「ああ、ひい!」
その時だった。
「いやぁ!」
あかねが鋭い悲鳴を放つ。押さえ込んだ誠と春男の体を思いきり跳ね上げるようにして、あかねが身体を弓なりにのけぞらせる。
「キュルルル!」
あかねの胎内でバイブが急に唸りをあげたのだ。ミキの身体の反応が、はじめてあかねの身体に伝えられた瞬間だった。
手を休めた男の子たちの眼は一斉にミキの方に向けられる。見れば、ミキの足の裏が微妙に収縮を繰り返している。
「とうとう始まったようだね! フフフ、これはわがデスダークが開発した女ふたりを責める道具でね、片方の身体の反応がもう片方に戻ってくるしかけになってるんだ。片方があそこを締めれば、片方が蠢く。締め合い始めたら、どうなるかしら、フフフ……」
「いやぁ! 止めてぇ!」
堪えいるようなあかねの悲鳴だった。
「あかねちゃん、あたしたちを恨むのは筋違いだよ。仲良しのお姉ちゃんが、あそこをキュッと締めてきただけなんだから」
あかねの眸がカッと瞠かれる。身体の奥にまで挿入されたバイブが唸りを止めないのだ。
「あんなお姉ちゃんだとは思わなかったでしょう? ちょっと触られただけで、すっかりひとりで気持ちよくなっちゃってるのよ」
その嬲り言葉がミキに向けられていることははっきりとしている。
「ああ、やめて、これを取って!」
何も耳に入らぬのか、あかねは気が狂ったように身悶えするだけだった。
「やめてって、お姉ちゃんに言ってみたら……」
「やめてぇ! ああ、お姉ちゃん!」
あかねは苦しみのあまり、おうむ返しに声を立てる。
その声がミキに届かぬはずもない。
あかねの言葉は自分に投げつけられているとしか思えない。ミキの羞辱はもう限界を超えていた。無理やりかきたてられたはしたない反応が、あかねの純な身体にそのまま伝わってしまうとは! いかに狡猾な手管に操られたとはいえ、その淫らな反応がいたいけな少女の身まで責め立ててしまうとは!
「力を入れちゃあ駄目よ。あかねちゃんを苦しめるばかりよ」
マズルカがからかうように言う。
「私はどんなことをされてもかまわないわ! でもあかねちゃんだけは放してあげて……お願い! お願いだから……」
悲痛きわまりない、叫びが上がる。どうすることもできないミキは半狂乱に追い込まれていた。
「あかねちゃん、許して!」
ミキが絶叫したその時だった。
「うッ!」
ミキの大きな瞳が開く。今度はミキの身体の奥で不意にバイブが唸りをあげたのだ。今度はミキの眉がキュウと寄せられる。
「ううッ!」
声を立てまいと、ミキは必死に歯を食いしばる。ミキの全身から脂汗が噴き出す。あかねはおそらく自分の身体が起こしてしまった反応を知らないのだろう。だが、あかねも女の身なのだ。ミキが送った恥ずかしい反応があかねの胎内のバイブの動きとなり、引き金となってしまったにちがいない。少女の最後のプライドを守るためにもどうしても、今、悲鳴を聞かせることはできない。
「へぇ、あかねちゃんも負けてないわね!」
唸り出したミキのバイブの音を聞きつけたマズルカがニンマリと笑う。
「ああ、やめてぇ!」
あかねがまた啼く。声こそこらえたものの、ミキの部分はバイブをキュウと締めつけてしまっていたのだ。
「ねえ、ねえ、どうすればいいの!」
押さえても押さえても、波のように押し寄せる情感の息吹きに、どうしてよいかわからなくなってくる。訴えるようなミキの眼差しは、もう深い官能に彩られていた。
「ああ……」
いつの間にか、あかねの瞳孔もほんのり開き、瞳には暈がかかったようになっている。美しい顔も上気を隠せず、真っ赤に染まってきている。なぜ自分がこんな目に合わされたのか訝るようなつぶらな瞳、弱い訴えを繰り返す紅唇が可憐だった。
「意外に、あかねちゃんももう濡れ始めているのかしら?」
「バイブの根元までネットリさせてるよ!」
あかねの肉壁に溢れる女蜜を確かめた春男がさも嬉しそうに言う。
ふたりの向き合った尻臀は、脚を括ったロープがきしむほど、あからさまにブルブルと痙攣している。
「あ、あかねちゃん! 許して! ……ああぁ……もう、いやあッ」
「ああん、助けて! お姉ちゃ……ん……!」
おぼろげになった意識の果てで、助けを求めるあかねの声を遠く聞きながら、ミキは絶頂のなかで意識を失っていった。これから本当の淫獄に堕ちてゆくことも知らずに……
「絵本のなかの人形」End 「赤い奔流」につづく