絵本のなかの人形 中編
「つづいて、女体内部の機能について実験しましょう。それに先立って……邪魔になる表面の体毛は除去します。誰にやってもらおうかしら……」
子供たちはスプレーを奪い合うようにしてシェービングフォームを手に取ると、白い泡の塊りを手のひらに盛りあげる。指先にすくい取った冷たい泡がミキの秘花まで埋めんばかりに複数の手で塗りこまれていく。
「な、なにをするの……みんな、やめなさい!……きゃあっ!……」
「さっき言ったでしょう。あそこの毛を剃るのよ」
ヘアを剃られる――まさかそんな! 恥毛を奪われた自分の姿が浮かぶ。翳りひとつない裸身が……。
「やめて! そんなことしないで……みんな、お願い……」
腰をガクガク揺さぶって、ミキは泣き声をあげた。
「おっと、教材のくせに暴れるんじゃないわよ。こんなところに傷を作ってもいいの」
ミキはギクリとして身悶えをとめた。
泡の感触に包まれた下腹部の柔らかい皮膚に左右からメスが当てられた。羞恥にくねらせてしまいたくなる我が身を自ら金縛りにしてしまうために、ミキは拳を握りしめた。
「子供たちにあそこの毛を剃られる気分はどうかしら、ゴーグルピンク?」
真上からマズルカがミキの顔を見おろして言った。
恥辱の剃毛刑にあっている顔をじっと見つめられる。それもまた狂いそうな恥ずかしさだった。
二本のメスはミキの小さな割れ目の左右を、下から上へと這いあがる。かすかな、胸の引き裂かれるような音をたてながら、メスが動くたびに白い肌が拡がり、下腹部の隆起が美しい曲線を描いて浮かびあがっていった。泡とともにミキの成熟の印がみるみる奪い取られていく。
(しっかりするのよ、ミキ……私が挫けたら、子供たちを助けられない……)
自分への叱咤ももう弱々しかった。
ガラスと金属の触れ合う音がして、ミキの身体から剃り取られたものが、泡とともにシャーレのなかに落ちていく。
「全部、剃れました」
ミキの恥丘は、もはや一本の飾り毛もない童女のような姿をさらけだした。露わになったふくらみは小高く柔らかく、そこから肉の割れ目が縦に切れこんでいる。翳りを失ったその部分の素肌が、蒼みがかって白く美しかった。
(こんな……ああ、こんなことって……)
剥きだしにされたミキの秘肉が、男の子たちのくい入るような視線で火になった。下腹部がジワリとしびれ、秘蜜が露わにされた薄桃色を伝わって溢れていく。
(みんな、見ないで……恥ずかしい……ああ……)
呆然としてしまったミキは、秘裂をピンセットで開かれた。
「あらあら、また涎れをこぼしているわね。淫乱なおまえのほうが詳しそうだから、おまえがこの子たちに女の構造を教えてやるんだよ。そうすれば子供たちを解放してもいいわ」
(そんなことできない……)
「それじゃあ、まずここよ」
ピンセットが、その尖端でミキの花蜜の源をつついた。硬い金属の嘴がわずかに潜りこんでくる。
「くう」
(恥ずかしい……)
その羞恥が熱を帯びた肉体に、また反応を促す。
「みんなここを見て。トロッとした半透明の液体がどんどん溢れてくるわ。お姉さんどうしちゃたのかしらね」
マズルカの嘲笑が、ミキのわずかに残ったプライドを打ち壊していく。
「ほんとうにわからないの。しょうがないわね。じゃあ、この上の穴は?」
マズルカがその部分に顔を近づけると、男の子たちも左右から身を寄せて覗きこんできた。
「ここよ」
先端に蜜をまとったピンセットが、すぐ上の別な場所を指した。
「みんな、こっちは小さいから、見落とさないように注意してね。さあ、これはなにが出る穴ですか?」
(そんなこと言わせないで……)
ミキは子供のように首を振った。
「お姉さんはどっちの穴かわからないみたいね? わからないのなら、ピンセットを入れてあげましょう」
「そ、そんな……」
排尿のための器官にピンセットを挿入される――被虐のイメージにミキは背中が震えた。
「うう……オシッコです……」
「フン、ちゃんと知ってるじゃない。じゃあ、こっちの穴は?」
ピンセットがずれて最初の箇所に戻ってきた。
「……」
「じゃあ、質問を変えてあげるわ。ここはなにが入る穴ですか?」
「わかってるんでしょう? おまえの大好きなものだよ。ゴーグルピンク!」
(そんな卑猥な言葉……言えない……)
「そうか! オシッコの出るほうは困るけど、こっちの穴には入れて欲しいってわけね?」
マズルカはピンセットをゆっくり押す。金属の先端がミキのなかに潜りこんでくる。くすぐられるような快感が小石の波紋のように下腹部にひろがっていく。
「なにが入るの? えっ? よく聞こえないねぇ」
「男の人の……」
うわごとのように同じ言葉が繰り返される。
「男の? 男のなに?」
「男の人の……チ、チン……チ×ポです……ああ……」
昨日までけっして口にしたことのない言葉がこぼれた。言葉を口にしただけで身体が反応してしまう。
「マズルカ先生、これで膣中(なか)をのぞいてみたいんですが……内部の構造まで見えるんじゃないかと」
「おっ、試験管ね。さすが誠くん、勉強熱心。まあ、このぐらいの太さなら、処女膜も傷つかないか……」
誠の持ってきた試験管を片手に、マズルカはニヤリと笑う。
「それじゃ、この穴はなんというの。はっきり言いなさいよ」
試験管の先端は媚肉のひろがりを二度三度となぞっていく。
「あうっ……ゆるして……」
「謝らなくてもいいのよ。ちゃんと教えてくれないと、奥まで入れるわよ」
マズルカは試験管の先端をミキの膣に差しこみ、出し入れする。
「いやっ、やめて……ああ……そ、そこは……ヴァ、ヴァギナです……ち、膣……」
ミキは泣きながら強要された言葉を口にした。
「ヴァギナですって、格好つけちゃって……オ×コっていいなさいよ!」
流し場につけて洗いかけていた試験管である。湯につかり生あたたかく濡れているのが、そのまま、ズズズ……と入ってくる。
「あ、ああっ」
「ほう、けっこう入るものね……ウン、見える、見える。あたしも、こんなの見たの、はじめてだわ。早くみんなも見なさい」
「ウォッ! これがミキお姉さんの膣中(なか)なんですね!」
「処女膜はどこですか?」
「ピンク色のヒダがいっぱいだ!」
子供たちは、深々と突き立てられた試験管をペンライトを片手に交互にのぞきこんでくる。眼は血走って、涎れを垂らさんばかりで、ズボンの前を押さえている者もいる。
実験室のなかを見渡していたマズルカが、棒寒暖計を持ちだしてきた。
寒暖計の先端が押し当てられたのは、ミキの肛門だった。先端でゆるゆる揉むようにして、突き刺す気配を見せる。
「いやっ、変なことしないで……もう、いやあ!」
「女は三つの穴をもっているの。そうよね、ゴーグルピンク……じゃあ、ここはなんの穴ですか?」
「ひっ!……そんな……」
ミキはビクッと腰を震わせて、激しい狼狽を見せた。
マズルカはガラス棒の先をしゃぶり、たっぷり唾液を塗りたくってから、ミキのキュッと絞りこんだ、最後の肉孔にゆっくりと挿しこんでいく。
「むっ……くくく……」
あまりのことにミキは苦痛よりも羞恥で気が狂いそうだった。冷たいガラス棒に身体のなかで最も羞ずかしい部分を刺し貫かれる恥ずかしさ、おぞましさ!
「やめて……お、お尻の穴です」
ミキは泣きながら口にした。
「やめて、それ以上は……駄目、駄目よ、ああっ……」
寒暖計の先端はさらにジワジワと入ってくる。何センチ挿入されたかわからない。
「誠君、何度ある?」
「36度5分です……」
「ああ……」
(私はゴーグルピンクなのよ! 子供たちを助けられるのは私だけ、だけど……だけど、もう……)
心では抵抗していても、快楽の波間に漂う浮木のように相手の意のままになってしまう自分の身体をミキは恨んだ。
「ほんとうにいやらしい女だわ。子供の前でこんなに濡らしちゃって……可愛い顔してカマトトぶってても、からだは正直なものね」
抜き取った試験管の濡れ光る先端を、蛍光灯の白い光にかざしてマズルカが言った。
(ああ、ひどい……)
敵とはいえ同性からの残酷な言葉にミキは気が遠くなりそうになる。
「最後はここよ」
マズルカが媚肉のひろがりの頂点の女芯をピンセットでとらえた。マズルカは女芯を剥いて肉芽をさらけだそうとする。
「ああっ……そ、そこは……ああっ、ひっ……」
「ここよ、ここ……」
「……ああ……い、今いじられてるのは……ク、クリトリスですっ!」
ミキは泣きながら言った。下半身はブルブルと震えがとまらない。
「ここは特別にデリケートだから、みんなよーく見ておきなさい」
マズルカが両手にピンセットを構える。左手のピンセットがミキの女の突端を守る包皮をめくりあげた。
「あっ……」
右手のピンセットがシャーレから綿を摘んだ。オイルの染みこんだ綿がミキの小さな突起を撫であげる。
「はう!」
鋭く走った快感にミキは腰を震わせた。
「よおし、そろそろ体験学習に入りましょう。みんな筆を二本ずつ持ってきたわね」
「これから、わたしがお手本を見せます。よく見て真似しなさい」
マズルカの筆がミキの女芯をサッとなぞりあげた。
「ひっ」
わずか一掃けの動きだというのに下腹部全体が熱くしびれる。
筆先が押しつけられて、チロチロと動く。
「あ、あ、あ……」
鮮烈な快感がミキを包んで、マズルカの望み通りに身をくねらせてしまう。
快楽の中枢ともいうべき一点が、子供たちの視線を集めている。その部分はいつの間にか、潤いというには激しすぎるほどに滴らせてしまっていた。
「さあ、みんなもやってみなさい」
若い欲情は限界を超えているのだろう。もう子供たちにためらいなど微塵もなかった。四人の持つ八本の筆が、ミキの秘苑に殺到した。
「あ、きゃう!」
ミキの腰が跳ねた。愛撫などとはまったく違う感触が、ミキの柔らかい部分を隙間なく埋めて這いまわった。ザワザワと繊細な神経の末端をとろかすように筆が蠢く。脈打つ快感が全身にひろがっていく。
「いいぞ、きみたち。今度は分担してやってみなさい。春男くんと大介くんはオッパイと腋の下。リーダーの達也くんはやっぱり一番のポイントをやってちょうだい。クリトリスを集中攻撃よ。それから、誠くんはお尻の穴と、それからその上のほうの"ヴァギナ"も忘れないでね」
左右から男の子たちの筆が伸びてきた。ミキの乳首はピンと尖ったまま、愛撫を待ちわびていた。
「ああん」
二つの頂点から新たな愉悦を注ぎこまれて、ミキは激しく首を振った。
達也の筆がどこよりも敏感な一点を包んだ。
「はうっ」
誠の筆もミキの菊の蕾をさすりだす。
「うう」
(いい……)
もはや自分をごまかすことはできなかった。両方の乳首や腋の下、そして剥きだしにされた鋭敏な若芽とともに、禁断の器官まで嬲られる快感は圧倒的だった。子供たちに見られながら、女のウィークポイントをくまなく責められているという被虐感が火に油を注いで、ミキを狂わせてしまう。
(恥ずかしい……気持ちいい……恥ずかしい……)
めくるめく愉悦のなかで、その言葉だけがリフレインする。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
声を抑えるすべはなかった。ミキは大の字にひろげられた全裸を、明るい光のなかで悶えさせつづけるしかなかった。
「もうイキそうなの?」
マズルカが意地悪くたずねる。
(言わないで!)
本当に達してしまいそうなのだ。
(ああ、駄目よ、そんなの……)
ゴーグルピンクが子供たちに愛撫されて極めてしまう。このわたしが。桃園ミキが!
ミキは苦しさに首を振り、白い歯を食いしばって耐えた。
乱れきった呼吸に揺れる乳首を男の子たちの筆が容赦なく這う。くすぐられる腋の下の蕩けるような心地よさ。それらを巻きこんで渦巻くのは、やはり肉体の中心からあふれだす七色の快感だった。
(ああ! イッちゃうわ。もうイッちゃう!)
「ようし、やめなさい、みんな。ストップよ!」
ミキの肉体が高みへの最後の一歩を踏みだしかけたその瞬間、マズルカが叫んだ。子供たちがビクッとして、いっせいに筆を引いた。
「あ、いや」
ミキは思わずそう叫んでいた。頂きがまさに目の前だったのに。
「どうしたんだい、ゴーグルピンク?」
マズルカがミキの臍をくすぐった。燃えあがりきってしまった身体を一本の筆だけが嬲る。
「ひ、ひどいわ……」
「なにがひどいのかなあ」
マズルカはとぼけた顔でミキの耳たぶあたりに筆を当てる。
甘美な果実を、口にする直前に奪われてしまった成熟した身体にとって、それはまさに拷問だった。
「欲しいの? イキたいの? だったら素直にそう言うんだよ! 言わないと子供たちは解放できないねぇ……それでもいいの?」
「ああ、そんな……」
子供たちに向かってそんなことが言えるわけがない。
「十秒だけ再開します。気をつけてやるのよ。よし、はじめ!」
電荷を帯びたようにピリピリと過敏になったミキの肌に、再び子供たちの筆が躍った。
「きゃうぅ! はう!」
汗をにじませた裸身が躍った。
「三……二……一……ゼロ!、やめ!」
「いやぁ」
再びすべてが失われて、ミキは子供たちの目の前で腰を振りたてた。
(い、意地悪っ……)
ミキはマズルカを恨めしくにらんだ。
「せ、先生!」
達也が声をあげた。
「僕、もう、駄目です!」
「ぼ、僕も」
大介も叫んだ。
マズルカが洪笑した。
「無理もないわね。達也くん、あなたが代表して女体の締まり具合を体験してみなさい」
マズルカの狙いは明らかだった。子供たちに自分を犯させようというのだ!
達也はあわててズボンを脱ぐとテーブルに上がってくる。
「だ、駄目よっ、達也くん! やめなさい! やめて!」
ミキはうろたえた。
「お姉さん!」
真上を向いて突き勃っているものを焦り気味に掴んで、ミキにあてがいながら、達也は真っ赤に上気した顔で叫んだ。
「行きます!」
若いペニスがミキの秘孔を押し分ける。ぎこちなく、しかし激しく、少年はミキをえぐった。
「うっ……!!」
達也が破瓜の手応えを感じると同時にその痛みがミキの身体を駆け抜けていく。
しかし、狡猾な手管によって潤いを帯びさせられたミキの秘腔は若竹のような少年のペニスをすっぽりと包みこんでしまう。
(子供たちを守るはずのゴーグルピンクが、その子供たちに処女を奪われるなんて……)
ミキの頬を涙がつたう。
達也は無我夢中で、赤子のように乳首へ吸いつき、肩にしがみついてきた。
「はあ! はあ! はあ!」
すでに理性の歯止めを溶かされてしまった肉体は、童貞の乱暴な腰使いにもひとたまりもなく、愉悦の渦に巻きこまれていった。
少年との禁断の交わりがミキの身体を熱くする。
「ああっ……達也くん、駄目よ、ダメ……ああっ……」
ミキは呻きつづけた。達也の肉体がピクッと動いた。煮えたぎった精液が、あたかも水鉄砲のように発射される。
「ああっ、い、いいッ……」
他の男の子たちの先端から放たれたものが、胸を、腹部を、白く汚していく。ミキは四人の若い精液に彩られた裸体を悶えさせた。
後編につづく