(6)6th battle
ライブマンのリーダー・ブルードルフィンを監禁し、彼女のうら若い身体を思う様いたぶっていたボルトの首領・ビアスは、レッドファルコン以下ライブマンの攻撃によって監禁先から逃亡後、姿をくらました。
このまま放置しておいてはボルトが復活し、また地球の平和が乱されると判断したライブマンは、ビアスを見つけ次第倒すことを前提に捜索を開始。
そして数日後、監禁場所に加えて都内某所、東京の近くの海岸の3ヶ所に絞られた。
満身創痍だったブルードルフィンは、まだ外傷の治りきらない身体を押して、仲間の止めるのも聞かず捜索に志願し、結果自分は海岸線を探すこととなった。
仲間には言わなかったが、ブルードルフィンの優秀な頭脳と勘が、間違いなくそこにいると彼女に告げていた。

自らのバイクであるモトドルフィンを操縦し、目的地の海岸線へ向かう。
(いままで受けた屈辱は、自分で返さないと気が済まないのよ。ビアスだけは、私が倒す!)
その執念が、拷問でボロボロのはずのブルードルフィンを突き動かしていた。

やがて海岸に到着。 
モトドルフィンを隠し、ライブラスターを抜く。足音を殺して海岸の岩場を捜索する。

さっきレッドファルコンから連絡があり、どうやら都内某所はガセだったらしい。残るは二箇所だが、ブルーはレッドに同じルートを通るはずのイエローと合流するよう指示し、基地に待機していたコロンも合流するよう伝えた。
合流を待ってビアスを殲滅するという発想はなかった。それほど頭にきていた。

怒れるブルードルフィンは何かに導かれるかのように、ゴツゴツした岩場を駆ける。新調したライブスーツは動きも軽やか。確信はないが海岸の一番奥、大きく入り口が開いた洞穴の中へと入っていく。

奥へと入るにしたがって、人の気配がする。それも自分を蹂躙したあの邪悪な空気。
そして洞窟の一番奥から光線が、ブルードルフィン目掛けて発射された!
「危ない!」
ブルードルフィンは避けたが、最後の一発が肩口に当たる!
パアアアアン!「うわあああああーーーーーーっ!」
普通ならどういうこともないのだが、満身創痍の身には深手になってしまう。
「ぐわあああ、ううううう・・・・」
「ウハハハ、進歩がない、愚か者」洞窟の壁に反射して、うめく彼女を嗤う声が聞こえるが、今は構っておられない。
(ビアスを倒して、笑えばいい)
ブルーは起き上がり、激しい肩の痛みをこらえ、発射された方向に向かってドルフィンアローを三連発で放つ。はっきり見当はついていないが、どの辺にいるか探りを入れたかった。

「ぐおおおお!」
ドルフィンアロー見事命中!しかもかなりの効果があったようだ。
ブルードルフィンは身を隠しながらビアスへ接近した。

そして、はっきりと人影を捕らえ、(やっと見つけた!)と逸る気持ちを抑えながら「ビアス、覚悟!」とブルードルフィン、敵にライブラスターを突きつけた。

が。
そこには、子供しかいない。ビアスの衣装を着た子供がいた。
心優しきブルードルフィン、思わず狼狽してしまう。(ビアスなの?!もしそうであっても、撃てない。子供は撃てない!)
その気持ちを見透かしたかのように、子供はブルードルフィンへ光線を放つ!放たれた光線はライブスーツの胸に当たり破裂する。至近距離からの強烈な痛み!
ぱああああん。「きゃああああーーー!」
ブルードルフィン、胸を押さえてうずくまる。うずくまった彼女を子供版ビアスは笑いながら蹴り上げる。
「岬めぐみ、貴様は甘い。優しさなど戦いにおいては不要なもの。貴様はいつまでも甘ったれのままだ!ひゃははははは・・・・・」
肉体は子供だから蹴られてもどうって事はない。だがこの一言は彼女の心に深く突き刺さる。
無邪気さな外見と魔性の内面を持った子供がそこにいた。

ビアスから放たれる光線がブルードルフィンに降り注ぐ。かすっただけでスーツが焼ける。腹部に穴が開く。先ほど酷くなった深手の傷のせいでいつものように避けられず、格好の的になってしまう。
悲鳴が洞窟に響き渡り、ビアスはほくそえむ。
ばばばばばば、ぱああん。「きゃあああああ・・・・・」
どばばばばば、ぱああん。「うああああああ・・・・・」
一方的にやられるだけ。「(子供でもビアス・・・相当強いわ!)くっ・・・」
「どうした?撃てぬのか、撃てまい。私が子供だからな・・・お前に私を倒すことなぞ出来はせぬよ。ははははは・・・」

するとどうしたことか、子供だった顔が、高笑いとともに大人になり、頬がこけ顔が皺くちゃになり、やがて老人の顔つきになったではないか。
(どういうこと・・・何が起こったの?子供が大人になるなんて進化論に反してる!)
ブルードルフィンは呆然として、へたり込んだまま老人となったビアスを見上げる。彼女は狙撃のチャンスを失った。

笑えない話だが、ブルードルフィンの房事に耽りすぎた彼は、精力すべて使い果たし壮年の体は老人となってしまっていた。
いわゆる「腎虚」に加え、自らのホルモンを調節して加齢を抑えていたビアスの成長分泌液は完全に調節できなくなっていた。

ブルードルフィンはライブラスターを撃とうとした。
だが老人となったビアスは哀調の目で彼女を見つめる。見つめられて何も出来ず立ちすくむブルードルフィン。
そんな彼女を老人とは思えぬ素早さで攻撃するビアス。ブルードルフィンのスーツの上着を袈裟懸けに叩き斬る。
ずばっ。「うわああああーーーーーーーーーっ!」
ライブスーツは復元不可能なほどに深く斬られ、その傷口からは中の回路が丸見えになった。
もはや身体の調節機能が働かないから何でもありなのか。ただしその分老化は進むということをビアスは忘れている。その攻撃で腰が抜けてしまった。

スーツ上で弾ける火花、「あああああーーーーっ!」断末魔の悲鳴をあげ、よろめき倒れいくブルードルフィン。
どっ、と石だらけの地面に倒れた。痛かった。
ただし今回は深手ながらも、ごつごつした石の上に倒れたため、意識を保てた。これが功を奏した。
(私が甘かった。痛くてもう動けない。意識もどこか遠くへ行ってしまいそう・・・勇介、丈、コロン。私は最後のチャンスに賭けるわ。なにかあったらお願いね・・・)
薄れいく意識の中、ブルードルフィンは「最後のチャンス」に賭けるべく、ビアスが来るのを待った。

その頃、頼みの仲間たちも到着した。彼らもまた、ブルードルフィンが数時間前にしたように一番奥の洞窟へと向かう。

ブルードルフィンは倒れ、動かなくなった(ように見せていた)。
スーツはまだ青さを保っていた。それだけに傷が痛々しかった。
老人ビアスはまた犯そうとよろよろとブルードルフィンの上に乗り、胸をもみ愛撫し始めた。
と、そのとき。
ビアスの心臓を、なにかが貫いた。
ライブラスターの光線。
ブルードルフィンの執念だった。
人を下に見るビアスの性格からして、私の身体を犯しにくるはず・・・とブルードルフィンは考えた。ならば来るのを待てばいい。ビアスがオスの性を剥き出しにして迫ったその一瞬こそが・・・彼女にとって最後のチャンスであった。
(その前に、その性格を利用して、ライブマンの有利な場所にビアスをおびき出せば済んだ事であり、仲間もこれを提案したが、ビアスに凄まじい陵辱を受けたブルードルフィンが自分で倒すことに拘ったためこういう深手を負う羽目になった。何でも自分で決着してしまう、秀才ゆえの陥穽か)
「おのれ・・え」
ビアスもまた、ブルードルフィンの心臓を刺した。つもりだった。
実際は、腹部だったがそれでも深くはある。
ブルードルフィンはこのときとばかりに、深々と貫きライブラスターをソードバージョンに変え、よろめいたビアスの胸元を刺し、こねくりまわす。
あたりの岩場を血だらけにして、二人は転げて行く。
転がりながらブルードルフィンはビアスを刺し続ける。ソードが折れ曲がるのもかまわず心臓をさらに抉る。
やがて転倒が止まった。二人の身体が引き離される。
ブルードルフィンは言葉にならぬ叫び声を上げ、ビアスをメッタ刺しにした。
「よくも、よくも!!」
ソードはすでに折れ曲がり、鉄の棒になっていた。
憤激したブルードルフィンはそれに気付かない。
それでも刺し続ける彼女は人間ではなく阿修羅のそれだった。さっき言われた甘ちゃんではなくなっていた。
少なくともこの瞬間だけは人間をやめていた。
刺して、刺して、刺し続けた。
やがてブルードルフィンは疲れ果て、ビアスの身体から力が抜けたのに気がつき、彼を刺すのをやめた。

ビアスの瞳孔がゆっくり閉じられる。

自分の学友を悪に染め、学び舎科学アカデミアを滅ぼし、長らく自分たちを苦しめ、10日に渡って自分の女の部分に辱めを与えた悪党。

その悪党が、血みどろになって死んだ。

ビアスが死んだ。

ブルードルフィンは死んだ振りしてやしないかと首筋に手を当てる。息が止まっている。瞳孔から光も消えている。

「よかった・・・みんな、勝ったわよ・・・ビアスに勝った。」
フラフラ立っていたブルードルフィン、疲れ果てて動けなくなった。
入口のほうから仲間の声が聞こえる。近くも遠くも感じる。
死んだ学友よ、敵はとったわ。地球の平和を守ることが出来た、よかった。

わたし、つかれた。すこし、ねかせて・・・・。

全身から力が抜け、眠くなった。何かがすっと、抜けた気がした。

ブルードルフィンは駆けつけたレッドファルコンやイエローライオン、コロンに抱き起こされる。

だが、もう、目を覚ますことはなかった。岬めぐみの魂は、幽冥境へと旅立った。
傷だらけのライブスーツを仲間は、泣きながら抱いた。

そして葬儀が営まれ、ライブマンは解散した。レッドとイエローは科学の世界から芸能の世界へ入ることになった。科学アカデミアではビリを争う二人であったが、今では性格俳優として活躍している。コロンはマネージャーになった。ただし初見の人には驚かれてしまうのが玉に瑕。

ブルードルフィン、いや岬めぐみの話を少しだけ話すことにする。

岬めぐみの亡骸は、過ちを犯した学友の隣と、実家の熊本に分骨された。
遺品のひとつであるブルードルフィンに変身するライブブレスは、遺族の希望で熊本の方に形見として譲られた。

そしてライブブレスは実家の押入れにしまわれ、以来長く見つけるものがいなかった。

時がたち、近未来。
そのライブブレスを一人の少女が見つけることになる。
この先はまだ、考えていないので語ることはできない。
時がたてば、作者にアイデアが浮かんだら、また新しいブルードルフィンの話をすることになるだろう。
(6th battle,ならびにthe battle 完)