ガレオン船での豪快な一夜

「鎧? ちょっとツラよこして」
「はい?」ルカ・ミルフィの言葉に、伊狩鎧は顔をあげた。
 海賊船ゴーカイガレオンは空を穏やかに進むその日の夜だった。鎧の視線先には、ルカともう一人このガレオン船の仲間であるアイム・ド・ファミーユが立っていた。
「はいって、わからんなかった? ツラよこしなって言ってるのよ」
「ルカさん、もしかして、『ツラ貸せ』って言いたかったんですか?」
「はあ? どっちでも一緒じゃん」

 宇宙から来た仲間は地球の言葉を普通に話す。けれど時たま、変な言葉遣いが混ざる。特にルカはそうで――『本当はルカ、もっときれいな言葉遣いなのに、日本のヤクザ映画で言葉を覚えたみたいで』って、ハカセが前に苦笑していたことを思い出した。
「ルカさん――わたくしも、それはツラ貸してだと思います」
「もう、アイムまで……あのね、わたしはそういう細かいことに拘らないネコねの」
 ネコじゃなくてタチですよねーと口にしかけて、鎧はぐっと言葉を飲み込む。この期に及んでツッコミを入れたら、ルカはもっと怒ってしまうだろう。
「いいですよ、ツラをよこします。なんですか」
「ここじゃなくて、部屋を用意しましたので……」
「部屋?」
 そういえば、マーベラスたちがいない。部屋を見回して鎧は今更のように気づいた。ここ数日新たな敵も謎もなくて、余裕があった。遠くからエンジンの動く音がごとごととかすかに響いている。
「船倉のね」
「船倉って、もしかしてぼくなにかやりました?」
 鎧はこの船に入り浸っている割に、いつもの場所ぐらいしか足を運んだことがなかった。海賊船で船倉といえば、食料の保管か罪人や人質の収容に使う場所だ
「そういうことじゃなくて」
「来るの? 来ないの?」
「わかりました、行かせていただきます。ちょっと待ってください。お手洗いに」
「さっさとする! 先行ってるからね」
 ほらアイム、言いながらルカはくるりと背を向けた。

 なんだったんだろう。鎧は用を済ませると、船倉に続くラッタルを降りた。一層、そしてもう一層降りると、もうそこは最下層だった。
大きいのか小さいのかいまいちわかりづらい、この船はそんなところがあった。中世風の装飾が施されている上層と違って、このあたりは露骨に船であることを示している。隔壁扉、むき出しのパイプやバルブが並び、斧やロープが備え付けられている。クリーム色の壁からは、つんとペンキの臭いまでしていた。
「こっちか……」
 廊下をしばらく進むと、ドアが開けっぱなしの部屋があり、話し声が聞こえた。
「ルカさん、アイムさん、きましたよ。まあそりゃボクだってヒマでしたけど、なんですか突然……えっ」
 部屋の照明が落とされた。話し声が聞こえたはずなのに、人の気配はしない。
「いや、どういうことですか」
 一歩二歩と進むと、少し室内に目が慣れる。木箱が並んでいた。キリル文字っぽい見たことのない文字のラベルが貼られてる。ワインかなんかだろうか。「ルカさん?」
 背後に気配を覚えるのとドアが閉められるのはほぼ同時だった。
「ちょっと、なんですか、なにかのドッキリ?」
 気配は消えて、部屋は完全に暗闇になる。窓とかはない。こんなところで閉じ込められたら、ジョーさんが晩酌にワインを取りに行こうとか思わない限り、三日ぐらいは閉じ込められてしまうだろう。
「やばいっ! えっえっ!!」
 ドアに歩み寄ろうとする鎧を今度は背後から掴みかかってきた。首にまいたストールを掴まれた! 対応するよりも先に首が締まり、持ち上げられる。縄が一瞬で胴にかかる。暗闇のなかで、誰かに捕まえられようとしている。鎧は対応しようとなんとかもがくが、対応はそれよりも早く彼をからめとってくる。
「もう、ルカさんでしょ、こんなことするの??」
 答えはない。まさかザンギャック!? でも、それならもっと先にすることがあるはずだとか思って、長い時間のように感じられる一瞬が過ぎて、照明が灯された。
「うっ!」
 目の前に差し出される光に鎧は目を細めた。
「正解!! まあ、わたしたち以外にいないよね」
「ルカさん、アイムさん、なんですかこれ?」
 目の前に立つルカとアイムの顔を認めて、彼は声をあげた。歩み寄ろうとすると、身体に縄が結び付けられているのに気付いた。その縄は部屋の四隅から伸びていて、彼を少しも動けないように固定していた。
「え、ゴーカイチェンジしてる? なんで?」
 二人はゴーカイスーツを身に着けていた。マスクは外していて、ややあってから鎧はそのマスクが近くの樽の上に置かれてるのを認めた。
「さっさと捕まえるにはさ、チェンジしてさっさと済ませるのが一番ベターじゃん?」
「アイムさん」鎧は、ルカのいまいちに説明になっていない言葉に業を煮やして、もう一人のほうに目を向けた。
「手荒な真似をして申し訳ありませんでした。でも、ルカさんが、こうするよりほかないというので」
「こうするよりほかにないって、もう二人の説明が俺にはさっぱりわからないです」
「鎧って度胸があるように見えて、こういうときはねずみみたいに逃げそうだったからって」
 そういって、手の中にあるボタンのついた機械を示した。
「これ、リモコン」
「なんのですか」
「積み荷用のクレーンのリモコン」 「もうだから、ちゃんと説明してくだ――うわ! うわあああぁっ!!」
 リモコンをルカが押すと、頭上のウインチが音を立ててチェーンを巻きあげ始めた。ウインチは左右二台あった。そのチェーンは床にだらりと落ちていて、その先は鎧の左右それぞれの腕につながれた手錠につながっていて、彼の身体はYの字に固定された。
「説明ならするって」
「こんな拷問みたいなことしてですか?」
 鎧はもはや半泣きだった。急に仲間に船倉にとらわれたかと思ったら、今度は磔だ。
「まずは状況を整理しないと」
「整理って」
「もうちょっと黙っといてくれる? ちゃんと説明するからさ」ルカは笑って言って、アイムに頷きかける。
床にはちょうど足を通せる金具があって、アイムは膝をついて、彼の足をそこに通そうとした。アイムを蹴るわけにもいかず、鎧は言われた通りにするしかなかった。
「申し訳ありません」アイムはもう一度そういった。

 それから彼はゴーカイセルラーを取り上げられた。アイムがセルラーにシルバーのレンジャーキーを指し、ルカがボタンを押すと、彼の身体にゴーカイスーツが着用される。二人と同じように、マスクは外され、樽の上に置かれた。
 それらが終わるまでは一分もなかったと思ったけれど、鎧はもはや半泣きどころかマジ泣きしそうな勢いだった。
 地球を助けてくれるはずの仲間は実は、ひどい人食いの習慣かなんかがあってで、そこにのこのこ入っていった伊狩鎧は食われてしまうんじゃないか。これがその準備で、これから巨大なカブトガニみたいなのが顔にぶちゅっと――
「できた。」
 ルカはあっけらかんと言った。ルカの顔の皮膚をめくったら緑色のカメレオンが出てくるんじゃないとか考えだしたら、もうどうしようもない気分だった。
「命だけは勘弁してください。田舎のばあちゃんが悲しみ――」
「なにわけわかんないこといってんのよ」
 ルカはすぐ目の前に立っていて、アイムも近づいてきて、すぐ目の前に立った。マジで血を吸われるまであと数秒――
「だって、このままじゃ俺――うっっん??????」
 鎧は不意にアイムの指先が顎に触れられるのがわかった。彼女の顔がすぐ目の前にある。もはや地球人の彼にできることなんて――それにしても、アイムさんってカワイイな、俺もこんな彼女がいれば――鎧の雑念を振り払うように、アイムの反対の手が鎧の背中に回されると、その唇がぎゅっと彼の唇に吸い付いてきた。
「うぐっぐっっ!!」
 口から? まあ、もう死ぬなら、死ぬ前にアイムさんのキスできるんだったら、死んでもいや――ダメだっ――雑念がいっぱいになった鎧が大きく瞼を開こうとすると、顎が引かれ、アイムの目を閉じた顔がいっぱいになった。唇が四十五度の角度で彼と交わっていて、唇のぷにぷにとする感覚に、一瞬意識が跳びかける。
「うっ、うはっうはあぁあぁっあ! すげえっ、こんなんだったら、もう人食いでもなんでも、うううっ!!」
 キスが終わると、彼は空気を数回吸い込んで、意識を取り戻そうとする。
 はあはあと冷たい空気を吸い込もうとすると、再び唇がふさがれる。その相手はゴーカイイエロー――ルカその人で、鎧はルカの呼吸——風邪かなって思うぐらい熱くねばつく呼吸が喉から肺に流れ込むにしたがって、下半身がギンギンになるのを抑えられなくて、前のめりになりかけて、唇にルカの歯がぶつかって――人間の歯より少し鋭い彼女の歯に唇が切れて、血が出ても、しばらく気づかないほどだった。
「あ、ごめん血がでちゃった」
 アイムがタオルを渡してきて、ルカがいつもの少しがさつさで唇をぬぐわれる。鎧は、二人の女性にキスされて、いやだから――人食い宇宙人には最後に獲物とキスする習慣があるなら、もう食われてもいいっすとか思ったり――
「人食い宇宙人、なにそれ」
「え、いや、あれ口に出しちゃってました? お二人がこうやってしばりつけたのは、食糧庫みたいだし、実はゴーカイジャーの皆さんが人食い宇宙人で、ぼくは今日獲物になるのかなーって」
「えっ?」
「まあ」
 アイムとルカはお互いを見回して、けらけら笑い始めた。もう、さっさと食われるなら、まだ死の決心を決めてる今のうちにしてほしいのに、そんなふうはみじんもなくて、彼女らは笑い続けた。

『あいつの欲求不満をなんとかしてやってくれ』といったのは、キャプテン・マーベラスだったらしい。いつもの鎧のテンションの高さを欲求不満と判断した彼はルカとアイムにその任を与えた。
「だから、あたしらがあんたを抜いてあげるためにここに連れてきたの」
「はあ?」
 鎧は首をかしげる。「だから、あれよ、下半身のやつの」
「セックスのお相手です」
 アイムの口からセックスという単語が、シックスとかサックスとか、ソウルぐらいの流暢さで出てくるだけで、鎧は心臓がどきんと鳴った。
「はあ、じゃあ、ぼくの性的な欲求を満たすためにお二人が」
「そう」
「はい」
「いや、そんなのだめですよ、だ、だってですよ!!」
「ほら、やっぱこいつこんな感じになっちゃうじゃん」
 ルカが肩を落として、アイムが少し困った顔をした。
 鎧はそれから手短に伝えようとした。セックスというのは愛が伴うこと、お互いが合意しないといけないこと、ゴムをつけなきゃいけないこと、ましてや神聖なスーツを着た状態でなんて――説明は大体五分を要した。
「えっと、地球の方と宇宙の方では、性的なものの考え方に少し隔たりがあるように思います」
 ルカは面倒くさそうな態度のまま一歩後ろに引き、アイムは宇宙人にとっては性行為には広く普遍的で、恥ずかしがるようなものではないこと。
 公衆の面前ではしなくても、それ以外では奨励されること。一夫多妻制という制度をとっているのは、たぶん全宇宙で地球だけであろうこと。
「はあ……いや、そのなに。宇宙ってすごいんですね……」
「だから、わたしたちがこうやってあんたのことを抜こうと思ったの」ルカは近寄ってきて、そのまま無造作に鎧の逸物を掴んだ。
「うっ……でも、地球人としての考えを速攻捨てるなんてことは、ちょっとウッッ!!」
 ぎゅっとルカの手に力が入り、彼の亀頭が押しつぶされ、鎧は全身に電撃が走ったように顔を歪ませる。ゴーカイスーツに身を包んでいるから、直に触れているみたいで、しかもルカの腕っぷしはだいぶ強くて――いやあ、勘弁。
「そんなものさっさと捨てなって」
「捨てます、はい捨てさせていただきます」
 彼がいうと、手が退けられる。いやあマジヤバイ。鎧は頭のなかで頭を抱えた。拒否するとちんちんを引っこ抜かれるかもしれない。受け入れればちんちんをしごいてくれる。
 奇妙な状況はいつも唐突に現れ、自分に判断を促してくるのだ。
「じゃあいい? もう、わたしこんなの乗り気じゃないんだから。地球の人間臭いし、ムードないし」
 ほかの星には性行為になると体から香水のような匂いを放つ宇宙人がいるみたいなことをアイムが話す。話しながら、彼女もまた鎧の股間に手をやった。ルカのするよりもずっと優しい触り方だった。
いやあ、マジ、それアイムさんじゃないすか。いうよりも早く、柔らかくマッサージをされるようにスーツの上から、アイムの手がゆっくり添えられる。慣れた手つきにショックを覚えるよりも早く、気持ちよさで優り、身体を密着されて、鎧は思いきり鼻息を漏らした。
「ううぉお、あああぁっ……」
「どういう喘ぎ声もらしてんの――」
「しっ!」アイムがルカをむいていう。
「鎧さん、ゆっくりしごきますからね」
 いやしごくとかその顔で――「んあっ?!」
 視線の先にはゴーカイピンクのグローブが黒いスーツに包まれたゴーカイシルバーの股間に充てられているのが見えて――
「痛かったですか?」
「いいんだって、アイム。ちょっとキツいぐらいが鎧って好きなんだから」
「では……!」
「いや、ではって、うわっ!!」
 ぎゅっとシルバーの股間が掴まれて、バナナのような形をした男性器があっという間に硬くなって、はっきりした形を作る。アイムの手がそれをつまんで、それから上へもっていくようにして、その手のひらでゆっくりなでつけ始めた。
「アイム……あんたもよっぽど鬼畜だよねぇ」
 ルカはさっきまでアイムのことをわかってないっていうふうに言っていたけれど、笑顔を浮かべたまま鎧の股間が勃起していき、ゆっくりとしごきはじめるに至って、むしろ少し関心したふうに言った。
「そんなこと……あるかもしれませんね」
「アイムさんって、いつもそうなんすか……」
「そうではありませんでしたか?」
 いつもの板のついた丁寧言葉一つでも、鎧は胸が締め付けられるような感覚を味わった。これは卑怯だ。卑怯というよりほかない。今更、アイムが言葉遣いを変えるはずもないし、いつも――二人を女性としてハッキリ意識したわけではないから、一層強烈で……
「ああぁっ……」
「鎧ってさ、ほんと、女みたいな声だよね」
「女みたいって……」
 ルカが近づいてきて、舌を見せつけるようにちろちろ広げる。彼女の人間基準でいえば左右に大きい。包み込むような舌を見せつけられ、鎧はさっきのキスを思い出した。吸いたい。
「なに、なんか言いたいことあるの」
「ルカさんは、なにしてくれるんですか」
「甘えんじゃないわよ」
 冷たくいってからニコっと笑みがとんできて、次の瞬間には唇が押し当てられる。
 ああ、快感。
 鎧は身体がどろどろに蕩けていくような感覚を味わった。上唇がルカの唇に吸われ、押し開かれるように舌が入ってくる。あの広いタンが口のなかを埋め尽くすようで――
「どんどん固くなってます……」
 そりゃそうでしょ……鎧はパツパツのスーツに包まれた股間をアイムに強まったり弱まったり刺激を与えられて、頭の中がエロいこといっぱいになってしまう。いや、このシチュエーションなら最後までいけるわけでしょ、でも――こんなん最後まで耐えられるわけないっしょ――!!
「んんっ……んぁっ……」
 唇が離れたとき、ルカの唇から唾液がつーっと糸を引くのが見えた。
 彼女のちょっと勝気な表情はそのままでだけど、どこかほんのり紅を映していて、そうゴーカイスーツはまるで裸の身体にボディーペイントのように見えるのだ。豊満なイエローとスレンダーだけどはっきりしているピンク。
「これが……これが宇宙最大のお宝ってやつですね」
「ふふふっ……」
「バカじゃないの」
 言い方にはとげがなくて、ルカの手は腰から後ろに回されて鎧の尻をわしづかみにする。
「あ、そこいい」
「鎧って尻フェチなの……」
「いやそういうわけじゃなくて……」
「でも、いじめられて感じるドエムでしょ」
「いや違うんです。アイムさん、そろそろやめてください」
「やめる……やめていいんですか」
 すりすりすりっ……
「いや、やめないでください。っていうか、いいんすか」
「だーめっ……」
 ルカの指先が尻から腰、腿伝いに股間へとやってくる。アイムの手と絡んで、鎧の身体の表面を滑っていく。布地がすれてきゅっきゅっという音がする。
「だめに決まってるでしょ」
 ルカがぐっと低い音程の言葉を投げかけてくる。彼の男根はアイムの手でスーツの表面にコーティングされたバナナのように浮かび上がっている。ルカはアイムの手からそれを受け取ると、亀頭のすぐ下側を救い上げるように掴み――ぎゅっと力を入れた。
「うほっ!!」
「ゴリラ?」
「うほうほおおっ!!」
 鎧は思わず上げた声を詰まらせた。汗がわっと全身でスーツを濡らす。亀頭の下側下側をルカの細い指が絡めつき、彼の身体の暴発を抑え込むようにぎゅっと掴んだ。
「ねえ、スーツの力をマックスで使ったら、どうなっちゃうかな」
「鬼畜はルカさんじゃないですか」
「わたしはそういうキャラなの……ねえ、鎧、どう思う」
「き、きちくっ……でも、そのまま掴んどいてください。うわあっ……だめ、緩めないで」
 びくんびくん鎧の身体が震える。その震えは全身に広がろうとしているのに、ルカの指がそれを抑えている。イキたいのにイケないその感覚が、さらに鎧の理性を溶かそうとしている。
「緩めないでって指示する気??」
「緩めないでください、ルカさん」
「ルカさん??」
 顔が近づく。顔に息がかかる。かすかなニコチンに似た匂い。
「ルカさまっ!!」
 アイムが身体を起こす。ジャケットをもしたゴーカイスーツの内側黒いインナーの胸はすごくいい形をしている。お嬢様の丁寧さとどエロな身体付き――見ているだけで、鎧はどうかなりそうだった。触りたい。手は上に結び付けられている。
「わたしのことは?」アイムの言葉からも甘い息遣いが届いて、それで顔がすぐ近くにあることがわかった。
「アイムさま!! うわあ、二人とももうやめてください。これ強烈すぎます」
「そうなんだっ……」
 ルカは反対の手で鎧の男根のさらに下側二つの玉袋から上へ向かって伸びる筋をぐぐっと押し付けていく。柔らかく的確で無慈悲な指使いだ。 「うお、強烈……うおおおおっ」
「大いなる力が覚醒しちゃいそう?」
「なんで、そんなエロいんすか、もうなにも考えられないっすううおおおっ……」
 ぎゅっ!! ルカの力がさらに強くなる。勃起して硬くなった男根はほとんどくの字に折れ曲がり、そのままだと使えなくなりそうなほどのテンションがかかって、胸をかきむしられるような感覚――だしぬけに鎧の下唇にアイムの唇が重なり、歯が甘噛みしてくる。
 歯のエナメル質の冷たい感じ。その間を割って入ってくるアイムの少し細い舌――アイムの手が彼の胸板にあてられる。
「もう、だめっす。うわああ、ルカさま、アイムさま、もうイカせてください!!」
 彼は叫び声をあげた。アイムの唇を首振って退けて、ルカから腰を振ろうとするが、綱が食い込んできて、彼はわけわかんなくなってもう一度叫び声をあげた。
「仕方ないなあ……じゃあ、いいよ……」
「うおおおっ!! うおおおおおおおっ!!」
痛みが最高潮まで達して、思考が白く塗りつぶされて、それから空白の時間が続き、どくんどくんと脈打つ感覚と、スーツに貼りつくおもらしに似た生暖かい感覚、すべてが戻ってくるまで、かなりの時間がかかった。
 かすんだ視界が戻ってきたとき、縄はほどかれていて、彼は冷たい床に転がされていた。

「いや、マジで……」
「大いなる力ってヤツかな?」
「きっとそうですわ」
 鎧は顔を上げる。彼の温和な表情がほころぶ。そこに立っているのはゴーカイイエローとゴーカイピンクだった。二人は邪心を感じさせない表情で笑っている。
「きっとそうだと思います」
 鎧はもう土下座でもしたい気持ちだった。彼の目の前にいるのは豪快な宇宙人で、かなり荒々しい手管で、彼を篭絡しようとしていた。いや、篭絡していただいているといったほうが正しいだろうか。彼は考えた。
「お二人はいつもそんな感じ……」
「えっなにが?」
「お二人はいつもそんな息の合った」
「わたしたちの戦い方、みたことない?」
「いやあります」
「じゃあわかるでしょ」
 ゴーカイイエローは歩み寄ってくると、鎧を足蹴にした。彼は自らのなかにあるヒーローとはこうあるべきものみたいなものが、ガラガラ音を立てて崩れていくのを感じた。でも――それでも、身体を起こそうとすると、ルカは覆いかぶさってきた。
 太ももが視界いっぱいに広がり、それからジャケットが見えて、その間から除く胸丘へと続く。勝気でキリリとしたルカの表情が見えて、身体が覆いかぶさって腕で突き飛ばされるように床に戻され、唇を乱暴に吸われた。
「ふうぅっ……」
 情けない声をだす鎧に対して、べちゃべちゃと唾液の音を迸らせながら、ルカの腕が鎧に伸びていく。彼の手は抗いかけることすらできずに引き戻され、ぎゅっとその手を握った。
 ルカさんの手大きい。彼女は人間だったけれど、人間という規格にはちょっと当てはまらない。鎧はでも人間がされるように――手が離れると、そのまま逸物を下側からわしづかみにするように掴まれた。
「んぐっ……ああ゛あぁっ……」
「なに、金玉掴まれて痛いの?」
 余裕の表情が憎たらしい。彼女の指先が亀頭を挟み込むと、左右にぐいぐいと振り回し始めた。「ああぁっ…いや、さすがにそこ、うへぇっ……!?」
「鎧さんって、面白い声を出す方ですね」
 頭のすぐ横にゴーカイピンクが立っている。地面にねじ伏せられた状態で見るピンクは巨人のようで、そのスーツが作る凹凸がまるで銅像のようで、でも肉が作り出すラインを持っていて――上から見下ろされて、スカートのなかが見えて、ちらりちらりと彼を扇動してくる。
 足が――スーツに包まれた黒い脚は太く見えて、それがものすごくエロかった。
「ほら、さっきイッたばっかりなのに、もう立ち始めてるじゃん」
 くすりと受け入れるような笑みの間にどこかこばかにする調子が混ざっている。もうどっちでもいい。スカートの中身に目を奪われそうになると、ルカの顔が割り込んできてキスをされた。
「いやそれはううっ!」
 ベロを使って、それが蛇のように口のなかでのたうって、ずーずーと音をたてる。
 ザンギャックが宇宙人を使った売春宿を作っているという情報をきいたことがある――もしそんなところがあれば――地球の男たちはたちまちに戦意を喪失してしまう――だろう……と思った。
「ひゃっ……らっぉ」
「アイムのほうばっか見ちゃダメ」
「だって、アイムさんオレのほうを」
 それがそういう遊びなんだと、わかった。この二人はどれだけいじめ好きなんだ。鎧は抵抗する気力もすっかり失っていた。
「いいから」
 ルカは金玉から手を退けると、亀頭にさらに指をからませていく。スーツをまるで身体をコーティングするようにスーツの形を身体に合わせて変形させていく。心臓の鼓動が二度、三度と早鐘のように脈動して震えて、血が上る。
「ここ、めっちゃ弱いね」
「宇宙の男どもはち、違うんですか……」
 思わず口をとがらせたような話かたになった。顔が熱い。すぐそこにある顔が、面白いことをいうように笑う。
「もっとカツオ」
「それをいうなっらま、マグロぉぉぉっっ! うおおおっ~!!」
 ルカの手は最新鋭のエンジンのように鎧の亀頭を掴んだまま、前へ後ろへとやる。腰が浮いて押さえつけられて、でも何かの気分のせいなのか、抱き起されて、四つん這いになって目を細めた。
「はあ……マグロじゃないと、こんなのやってらんないっすよ……」
「こんなのってなによ」
 ルカは彼の下側に滑り込み、抱き合うような恰好だ。
「こんな様の」
「ふふっ」
彼に覆いかぶさってくるのはアイムの声だ。「こんな様なんて、言葉遣いはないんじゃありませんか」
アイムは左右からあ彼の腰のあたりに手をやり、もみほぐすようにゆっくりと掴んだ。
「じゃあ、こんなのっ……ああぁあっ……おおおっ!!」
 ルカのピストンは緩急をつけて、唐突にやってきて止まる。ほとんど強制的に高ぶらされて、それで終わる。冷や水をかけられたように瞬間理性が戻り、それが動きかけると同時にまたピストンがはじまる。
「地球の男って、ほんと腫れものみたいで面白い」
「そ、それは宇宙の男が、これを真に受けてたら死んじゃうからですよ……」
「ねえ、アイム、わたしたちで地球の男どもはみんな征服できちゃうんじゃない」
「ダメですよ」アイムの手は腰からベルト尻へと降りていく。尻肉をむにっと押しつぶされて、はえっぁと声を出してしまう。「わたくしたちは、ザンギャックではないんですから」
 そういって、アイムは手を振り上げ、鎧の尻を思いきりたたく。
「ひいいぃいぃっん!! ひいぃいいっん!!」
 とっさに鎧は喉奥から馬の鳴き声をまねてしまう。ぺちんぺちんという音が、間が抜けた感じとともに部屋に広がっていく。
「アイム、それなかなか面白いよ」
「ああぁああ!! ああぁっやべっすやべっすっああ!!」
「たぶん、地球の方というより、鎧さんが面白いんじゃないでしょうか」
 アイムさん……マジ鬼畜……マジサイコー……鎧は内心で恍惚な思いを漏らす。腰を持ち上げようとすると、ルカがしごいてきて、腰を下げるとアイムの尻打ちが降りてくる。彼は壊れたエレベーターのように腰をあげては下げることを繰り返す。
「だねえ……こんなにバカにされてんのに、もっとやってて顔してるしさ……アイム、鎧の肩を掴んで身体を起こして」
「はいっ」
 ルカの言う通りにアイムは動いた。はあはあと息を漏らす鎧。ルカの手が離れると、どくどくと脈打つこん棒は焼け爛れた鋼鉄のようにビンビンで、それ自体が生きているみたいにびくびくと蠢動を繰り返す。
「もう、なんも考えられないっす……」
 呟いた彼にルカとアイム短い笑い声が聞こえる。見える視界はすべてがネオンを帯びているみたいに感じられた。その視界のなかでネオンをまといつかせたルカが、ゴーカイスーツに包まれた足を広げて、M字のようにする。
 スカートをずり上げ、真っ黒が股間に指をあてて、ゆっくり解きほぐすようにしていく。スーツはその身体の構造そのままに変化していく。濡れた股間が、筋を描き、グロテスクなぐらい明確な形を描く。くぱあ、音が聞こえそうなほど芸術的でかつ下品なルカの女性器が開かれる。
 鎧は肩をアイムに抑えられ、中腰で前傾姿勢にさせられていた。
「ちょっとは、考えられますか」と、アイムの声。
「えっ……」
「目の前にルカさんが、足を広げています……おま×こはいつでも、鎧さんを受け入れられるそうです」
「いや」
「なにが嫌なの」ここまできても、ルカは挑発的な声色を崩していない。「ごちそうさまでしょ」
「それは……」
鎧は身体のなかにネオンが入ってくる感じを覚えた。全能感とも呼べる感覚は全身に満ちていく。
「それは?」
「それは違います」口の中がひどく乾いた。「それは、ごちそうさまじゃなくて、いただきますです!!」
 アイムの手を払い、ルカに覆いかぶさる。ルカはいつもの目線のままだったけれど、目の奥にはとろんとしたものをたたえていた。海賊のマークが目の前に見えていた。鎧はその中心に顔を沈めた。汗を吸ったスーツはひどいにおいだった。ルカとアイムじゃにおいの系統が違う。これも由来の違いなのだろうか。
 でも鎧にはそんなことどうでもよかった。蜘蛛のように手足を伸ばすルカ、彼女の手首をつかむ。彼女は逃げるように左右に動かした。汗がうなじを伝って落ちる。目を見開いた。手を離し逸物を掴むと、ルカのこれまたひどいにおいのする女性器にむけてあて、ぐずりぐずりとその中へと挿れていった。
「いただきます」
 ルカの声が聞こえる。生暖かい感覚はスーツを巻き込みながら、奥へと広がっていく。ルカは笑っている。彼女はいつもの怒ってるか笑ってるだった。
「くあぁっ……」
 鎧はリードを取ろうとしたのに、その下の口に文字通り口のように咥えられる感覚に声をあげた。彼が思わずのけぞりそうになる感覚はさらに強く、全身を電流のように突いた。
「なに、挿れてすぐいっちゃうの」
彼女は腰を持ち上げて、身体を動かすように促してきた。それに応えるように鎧は腰を振る。二度、三度——イソギンチャク――を連想させた。肉の壁が擦れて絡みついてくるようで、その入り口はぎゅっとすぼまっていく。
「こんなの反則ですよ……おおおっ!!」
「ほら、ダメ、もっとわたしを楽しませてよ……」
 彼はルカと抱き合っていた。スーツを着ているのに感覚は裸体と全くおんなじなのだ。汗が絡み合い、混ざり合う。彼女の冷たい体液が彼の身体に付着してべたつく。鎧はなんとか腰を振ろうとする。そのたびに脳天を爆発させるような電流が身体に広がっていく。
「うあぁっ……うへぇっあぁ!! あああっ!!」
 鎧が力を弱めようとすると、ルカが腰を突き上げてくる。ぐいぐいっと、まるでスクリュードライバーで身体に穴をあけられるそんな感覚の突きが何度もこみ上げてくる。
「マジ……もう限界っすっ……」
「ダメ、まだ早い」
 ルカの星の生き物は『あそこ』の筋肉が異常に発達している、宇宙生物についての本を書こうという先生がいたら、鎧は率先してその情報を提供するつもりだった。陰唇の内径が狭まり、彼の男根は文字通り掴まれた。
「遅いも早いも……死んじゃいますよ、こんなの……」
「地球人だって、そんな簡単に死なないでしょ……ほら、もっと奥突いて。わたし、奥が感じるの」
 指示とともに陰唇の戒めが緩む。ある種の恐怖が彼の身体をわしづかみにする。指示に従わないと、この人はやるに違いない……海賊に常識なんて通じない。
「わかりましたよ」彼はもう一度腰をあげ、男根を奥へと入れた。狭まった肉が掻き分けられて、奥へと入っていく。
「あっ……そう、そこ、もっと……」
 ぎゅっとルカの手が伸びて、鎧のジャケットを掴む。それじゃあまるで喧嘩みたいだったけれど、その動きがよっぽどお気に召したようで――鎧は息を荒げながら、さらにもう一度腰を揺らした。
「ほら、もっと……あぁっ……」
 ルカの身体の力が抜けるのがわかる。彼女は鎧に身体を持たせかけてきて、するすると腕が背中に回されてぴたっと密着する。熱い体温が共有されて、彼が腰を前後にすると、ルカも返答するように二度前後にする。
「はあああっ」
 肉が溶けて、境目はあるのにぐっちゃぐちゃになっていくようで、熱い汗が滴り、理性が溶けていくのがわかった。
「ああぁっ」
声は鎧が発していて、ネオンはさらに強くなっていく。熱い、どうしようもない熱があって、身体に絡みついてくる。鎧は息を漏らし首を振って、口を半開きにした。
「やっぱ、ヘタレかな……」
「そんなふうにいったらかわいそうですよ」
 ルカに責めるよう言われ、そうしていたのに、でも、そのまま彼が突かれていた。肉がぐちょぐちょと音を立ててそれがどんどん早くなっていく。 「うわっ……ああぁっはぁ」
「鎧、もう限界っぽいね――ねえ、一緒にイこうよ……」
「一緒に……はぁっ……んんんっ……うわ!!」
ルカが言って、あのぎゅっとすぼめられる感覚に襲われたとき、彼は再び感電してしまう。彼女がぎゅっと手を握ってくる。
「ほら、いっしょだよ……」
「へはぁっ……んんっあぁあ……」
 情けない声を出して、顔を真っ赤に染める鎧――ルカの甘ったるい顔、その匂いが鼻孔のなかいっぱいに広がっていく。もう、なにも考えられない―—オレ。幸せすぎる。
「いっや、そんなに……あぁイ、イキます!!」
 頭のなか、真っ白で、フラッシュが二度三度明滅する。誰も止められない。からだは動かせなくて――イッた。そう実感できるまで少しの時間があった。

「はあんっ……ねえ、それマジ、ない」
 真っ白な感覚が広がって、そのまま塗りつぶされたようになって――口を半開きにして意識が戻ってきて、瞼を開けたとき、ささやきかけてくるようなルカの声がした。
「なにがです……」
「イクときに、イキますみたいに報告する人って、マジない」
 いつもの言い方だったけど、語尾はなんとなく優しげだった。頬をピンクに染めて上気したルカは呼吸を整えながらも、ゆっくりと身体を動かしながら、甘えるように身体を寄せてくる。
「だって、仕方ないじゃないですか」
「ルカさんのほうばっかり見ちゃダメですよ」
 背中に体重がかかって、前のめりに倒れそうになるのをなんとか踏ん張った。アイムの細い身体でものしかかるとそれなりの重さがあった。
「アイムさん、いや、でももうオレ……」
「なに、もうおしまいだってでも言いたいの」
 ルカの声はさっきよりも、いつもの感じに近かった。
「いや、さすがに……」
「でも、まだわたくしは満足してませんわ」
 アイムの指――グローブのごつごつした指が彼の後ろ――側の孔を探り当てると、その上で『の』を描くようにうごいた。二度、三度と周り、それから、敏感なままの股間と孔の間にゆっくり降りていき――身体の内側を走る腺をマッサージするように揉み解し始めた。
「あ、そこ……いや、でも、オレ……」
 魔法、だ。魔法でしかない、鎧はそう確信した。指は再び戻り尻肉の隙間をなでつけるように滑り、前へ後ろへ行くことを繰り返す。
「ああ……」
「鎧ったらもう形無しだね……」
「そ、そんなこと、うわっ……!!」
 スーツごと巻き込んで、肛門に指が入る。身体が排泄と誤解して指を外に押し出そうと動いて、反対に加えこむ格好になって、電流を帯びたように――アイムの指が身体のなかに入っている! 鎧は意識が跳びそうになった。
「うわっ!! 尻のなかに!!」
「ダメでしたか……」
「いや、でも、痛っ……」
「こっちははじめてのようですわね」
 お嬢様言葉で責めてくる、鎧は狂喜しそうだった。
しぼんだ股間は再び宇宙にも舞い踊らんばかりで血管を脈動させる。どくどく、汗が全身から噴き出して、痛みは再び重低音のような波にからめとられるようだ。
「アイムの本番はここからだからね」
 ルカは彼の下から抜け出して、上半身起こしていた。アイムは右側へ降りてくると、彼の肛門を弄りまわしながら、縋り付いてきて、顔をぎゅっと近づけてきた。
 なんてカワイイ顔だ。オレは、この人にお尻を――
「鎧さん……」
「はいっ……うぐっうぐっ!!」
 開きかけた彼の口に羊羹のような物体が押し込まれる。見るとそれをしているのはルカで、押し込まれたのは羊羹じゃなくて、ゴーカイセルラーだ。
「そろそろ、つまんなくなってきたしさあ……」
 彼の視界の見えないところからレンジャーキーが一つ現れセルラーに差し込まれる。カギがセルラーのなかで滑る。尻から指が抜けて――
「さあ、ほらチェンジして」
「ほーはい……ごーはいへんじ!!」
 セルラーが差し込まれたレンジャーキーの戦隊名を告げる。マスクに覆われたちまちに暗転する視界。汗だくの身体からスーツが拭い去られ、乾いたスーツが押し付けられ、密着していく。
「これは……オレ」
 素早く四つん這いから身体を起こして赤ちゃんすわりにさせられる。狭まる視界の奥から――いいにおいがして、頭がくらくらして、バイザーの向こうの手を見ると、シルバーでキラキラに輝いている。
「これって――!!」
「ほら、『あれ』やってみてよ!」
「え、いや」
「キラキラ世界……キラキラ世界! ゴーオンシルバーッ! って、これ!」
 鎧は、自らの身体に密着したゴーオンスーツの――メタリックシルバーの輝きを目にして、次の瞬間には声をあげていた。

「よーく、できました」
 アイムの声。鎧の手をとって、それを地面におろさせる。
「いやなにやってるんすか、二人とも。これって、ゴーオンシルバーで。オレはゴーカイシルバーで、ゴーオンシルバーって元は女の子じゃないすか」
「もともなにも、そのスーツまんま女の子だよ」
 ルカがいう先には、スカートが見えた。このスーツは男性向けにカスタマイズをされているわけでもなんでもなくて、須塔美羽が着用していたスーツそのままで――全身が完膚なきまでに覆われているにも関わらず、鎧は猛烈な羞恥心が沸き上がるのを感じた。
「いや、なにしてんすか。オレ、違いますよ」
 アイムがぺろりとスカートをめくり上げる。股間に女の子ヒーローにはあるまじき股間の疼きがあって、アイムの指先が滑り、すぐさまギンギンの硬さを作り出していく。
「なにがですか、鎧さん」
「ダメだよ、アイム、いまはシルバーって呼んであげて」
「わかりました、シルバーさん!」
 えっ、ちょっと待てちょっと待てオレ!!
 そのとき、鎧はスーツの内側に残る化粧と汗の匂いをまともに受けた。シルバーはシルバーでも女の子シルバーになってしまって、身体がでも、別に女の子になったわけじゃない。でもこれってめっちゃ――女の子!!
 後ろから抱き着いてきたアイムの指が、ギンギンの彼の性器をつかんできてしごかれる。もう片方の指がしたから持ち上げられ、後ろの孔に入っていく。
「うあぁっ! あああっ!! ちょっと――ふぅぅっん、んんッ!!」
 首を後ろに回され、アイムの顔がそこにあって、唇がマスクの顔に重ねられる。アイムはボタニカルな香りで、それがマスク越しでもかなりキツく――ミントに似ていて、頭がくらっときた。
「アイムさん、オレさっきいったばっかっすよ」
「それが何か関係あるんですか?」
「いやっ」
 どうとでもなれ。いまザンギャックが現れたらまともに戦えないな。彼はそんなことを思いながら、首を伸ばした。マスクをなめられているだけなのに、顔をなめられているそんな感じだ。
 汗がこみあげて、スーツが肌に貼りつく。熱かった。サウナスーツでも着ている感じだ。アイムは尻穴で指を左右に動かして、しごいてを繰り返す。腰が浮いて、空を飛びそうで、四つん這いにさせられて、熱かった。
 もう何も考えられない。
 鎧は息をつぎながら、首を振った。二人がとんでもなくエロくて、鎧はただ翻弄されるしかなかった。
 四つん這いから顔向けにされて、ゴーカイピンクがまたがってきたとき――アイムが、そのきれいな背筋をなまめかしくくねらせている姿をみながら、鎧はただマグロになるより他なかった。

「おう、元気そうだな?」
 翌朝、鎧が目覚めると、マーベラスは先に待ち構えるように、コーヒーを飲んでいた。
「そのコーヒー、アイムさんに入れさせたんですか?」
 あくびを噛み殺しながら、鎧はきいた。俺様カルチャーの前では、男女平等もなにもあったものではない――
「おいしいコーヒーぐらい自分で淹れられなきゃ、一流の海賊とはいえねえよ。飲むか」
 ありがとうございます。彼はマーベラスからマグを受け取った。
「それにしても、マーベラスさん、ひどいですよ。あんな……」
 部下二人を差し向けるなんて。彼は言いかけて、キャプテンに顔を向けた。
「なんのことだ?」
「えっ?」
 最初鎧は、マーベラスがとぼけてると思って、またまた~と肩をたたきそうになった。だけど、そのすごみはある顔の奥に、彼に対する『?』という表情が見て取れた。彼は、口を半開きにさせたまま、口ごもってしまった。
「いや、あー、その」
「俺がアイムに何かさせたか」
「おはようございます」
 アイムのあとにルカがついて部屋に入ってきた。
「わたくしのことですか?」
「ああ、俺が、お前ら二人になにかさせたらしいんだ」
 鎧は三人を見まわした。いつもなら、マーベラスのおとぼけかと思っただろう。しかし、そのとき、アイムとルカの目線がにらみつけるような感じで、マーベラスは『こいつが何を言っているのかわからない』といった感じだったから、ただ困惑してしまった。
「えっと、いや、あー。なんで、昨日、アイムさんに食料の買い出しに行かせたのかなとか、そんなことを思ってしまったんですよ、ハッハッハ」
 鎧はマグを手にして立ち上がる。なんだそんなことか、マーベラスの声がする。
「買い出しなら洗い場に、当番が書いてあるだろ、知らねえのか」
 アイムとルカが笑顔をたたえたまま、鎧のところへやってくる。笑う彼に、脇腹に軽いパンチが与えられる。
 ええ、マジ――鎧は、二人の投げかけてくる視線に顔をひきつらせた。
 それがマジなら――昨日の話って、全部デタラメだったって、コト??