生さもなくば死

 マトイが災魔出現ポイントで老人を保護した。彼はマツリにその子を預け、現場からの離脱を指示した。彼女は老人を消防に引渡したが……
「うわああああぁー!」
「何!?」
 甲高い金属音が連続して、無人のポンプ車がカーブを横転した。横滑りをしながら、こちらへ向かってくる。
「逃げて!」
 声は届かない。マツリは救急隊員が全員逃げたのを確認すると、最後に後退した。救急車とポンプ車が激突して、燃料タンクが爆発すると、爆風が走った。
「きゃぁっ!!」
 アスファルトの地面が目の前に来た。倒れていた。火柱が頭上を走っている。アンチハザードスーツを着装していたから、何ともなかった。心臓が鳴っている。ゆっくり立ち上がった、脚を少しひねったかも知れない。冷却モードを選択する。
「もしもしお兄ちゃん、聞こえる?」
 何も聞こえない。不安の鐘が鳴っていた。「だめ、通信回線がオープンにならないわ」
 辺りには既に誰もいない。だが、笑い声が聞こえてきた。
「ゴーピンクめ、一巻の終わりだな」笑い声は丸焼けのポンプ車に乗り、こちらを見下ろした。「何、まだ生きている? ばかな?」
「お前は?!」
「ふん、命拾いをしたな。俺は災魔獣デストだ。ゴーピンク、今日がお前の最後だ!」
 飛び降りてきたデストは一直線に向かってくる。マツリはゆっくり飛び上がって、左足を繰り出して、右足を繰り出した。
「たあ! ファイブレイザースティックモード!」
 特殊警棒を構えて、首筋を狙う。その強固な装甲にひるんだ様子は無い。お腹をついて、わき腹を叩く。
「そんな攻撃、屁でも無いわ! リーサルウェポンアタック!」
 デストはジャンプをして、腹部の巨大な大砲を輝かせた。
「くらえ!」
「とあ!」
 寸前で避けられた。黄金の炎が巻き起こり、熱風が全身を撫でた。
「なんて破壊力なの?」
「リーサルウェポン誘導アタックだ! くらえ!」
「どこ見てるのよ!」
 素早くマツリは右へ飛び出す。大砲から飛び出た光弾はゴーピンクのいた位置を直角にターンした。逆三角のバイザーがいっぱいに光った。
「きゃあああっ!」
 スーツのあちこちが小さな爆発を繰り返す。黒煙が立ち上り、脳が揺さぶられて、三半規管が麻痺する。爆風で横転した救急車のシャフトに当たって止まる。腕が――
「お前など、俺様の敵ではない。ピエール様もひどいな。俺様でなくても、お前は倒せるんだ」
「なめないでよ!」
「まあいい、任務を手加減する気は無い。俺はな、ピエール様からゴーピンクを抹殺するように言われたんだ。今頃お前の大好きなおにいちゃんたちは俺たちの餌食だろうな」
「なんですって!」
「そういうことだ。早く俺を倒さなければ、お兄ちゃんたちと一生会えないぞ。いや、お前が倒されれば、お兄ちゃんとすぐ会えるさ。地獄でな」
 親指を下に向けて、デストは胸を張った。救急車に背中を寄せて、背後に左手を庇い、ゆっくり身体を起した。動揺しようとする心を何とか押さえつけて、胸を張った。鼓動だけはどうしようもない。だめ――じゃない! マツリ、しっかりして!
「ゴーブラスター・ハイパーモード!」
 特殊小銃を構えた。銃口に、デストは一切動揺していない。ここで下げれば、殺される。引き金を絞った。グローブが――全身がものすごい汗で濡れている。気持ち悪い。
 レーザーがデストに命中して、大爆発を起す。銃口を下げ、状況を見守る。まだだ……だけど、ものすごい疲労に硬直した筋肉が緩んだ。その瞬間、白煙の中から顔が現われた。悪魔の顔だ。
「俺は攻撃を受ければ受けるほど強くなる!」
「はっ」顔をあげるよりも先に、手が変な方向へ曲がって、ゴーブラスターが下を向いて、目の前が真っ赤になる。その銃口が右足をむいている。
「ああぁあああああっ」
 目の前で起こった爆発に、左足だけ取り残されるように全身が引っ張られた。足がなくなったかのようだ。目の前に星が浮かび、ノイズだらけのお花畑、死ぬときはこんななのかな。マツリはうすうす感じていた。
「……あ…………」
 ブーツが破けて、煤けたマツリの左足だけがむき出しになっていた。デストはゴーブラスターを放り投げると、バイザーに見える女戦士というには幼い瞳を見て、わき腹に脚を入れた。
 そのショックにわずかな意識の糸が回復して、真っ赤な痛みが全身に走った。その刹那、痙攣した。胸の鼓動が一気にまた戻ってくる。押さえつけられるようだ。
「ゴーピンク、もう終わりか。やはりものたりんな」
 デストの脚がマスクに覆い被さり、強化フレームが歪んだ。卵のように全球のヒビがあっという間に、マスクを顔から奪い去った。むき出しになったマツリの髪は全部逆立って乱れており、その目は明るい下に去らされて、動揺の色を隠せない。
「な、なんで!」
「手も足も出ないのか。かかってきてみろ」
 笑っている。マツリは父の作った戦術プログラムを失って、喉が詰まった。しかも腕が真っ赤に痛く、脚もひねっている。絶体絶命……鉄の味がした。
「お兄ちゃん――」
「兄に頼らずできんのか。さあ、かかってきてみろ。相手してやるぞ」
 現場でも戦場でもその最中で逃げ出すことなんて出来ない。頭ではわかっていても、逃げたかった。腰が床をくねりながら、後退していた。ないちゃ駄目と思っても瞼が熱い。
「おや、泣いているのか、早く向かって来い」
 デストが一歩前に出た。二歩、マツリは喉がからからになっていた。
「ゴーゴーファイブも大したことは無い」
「……くぅ」
 腰がなんとか持ち上がる。よろよろとゴーピンクは敗走を始めた。デストは笑ったまま、手出しをしなかった。
「無駄なことを」

 スーツの能力が途絶えると、外気は意外なほど冷たかった。猫背になりながら、砂利道を抜けると、素足に何かが刺さった。ドブ水に倒れ、顔が汚れた。涙があふれ出てきた。
「なんで……」
 あたりに反響したデストの気配、ゴーピンクは立ち上がった。スーツはいたるところ綻びを見せていた。自分のどうしようもない弱さに、乱れた髪が涙で頬を濡らしたまま、走っていた。そのうち、自分がどこにいるかもわからなくなった。

 インプスが辺りの建物の上からその原色の姿を見ていた。彼らが巨大な網を手にすると、背中の小型パラシュートを確認して飛び降りた。

「イーイー!」
「何!?」
 もう腰が動かなかった。網が身体を地面に押さえつけた。仰向けになって、インプスに囲まれて、ついに涙が止まらなくなった。鉄と砂の味がした。お兄ちゃん、助けて――

 インプスに捉えられたゴーピンクがデストの前に差し出される。デストは相変わらず悠々と構えていた。マツリは寒さにガタガタ震えていた。胸元で身体を抱き、アヒル座りをしていた。真っ青な顔に紫の痣がついていた。
「ゴーピンク、恐れることは無い。貴様にあるのは死だけだ」デストは首を掴んだ。マツリは顔を背けていた。「だが、もし、兄たちがまだ生きていたらどうする?」
「え……」
「兄たちは生きている。だが、もう虫の息だ」
 デストは反対の手を開いた。立体ビジョンが現われた。地面に這いつくばったゴーレッドの姿――
「お兄ちゃん!」
 マツリの唾が手にかかり、ビジョンが消えた。ゆっくりとマツリはデストを見た。
「生きているから、地獄でも会えない。感動の兄妹再会はならないな。残念だ」
 ファイブレイザーの銃口が眉間に当てられた。マツリの目に生が戻ってきた。だが、強力な怯えが暗黒として広がり始めた。銃口は凍るほど冷たい。引き金をデストを沿えている。
「どっちがいい? 死ぬこととと奴隷としていき続けること」
「…………」
 兄は生きている。だけど、早くしないと死んでしまう。だけど、もう逃げることは出来ない。だけど、いき続けることが出来れば――無言で答えたあとのデストの笑い声は耳に焼き付いてしまった。
「じゃあ、奴隷にはまずこいつらのお相手だ」
「インプス!」
 そのインプス三匹はいずれも股間を膨らませていた。
「そんな」意味を知り愕然となる。「いや」
「奴隷に選択権など無い。奴隷は奴隷として、生きるしかないのだ。お前は奴隷だから、戦闘員の相手が出来て非常に幸福なのだ。解るか? 上の階級である戦闘員と相手をすることが出来るのだ。素直にお願いしますと言え」
「…………」
「言わなければ」ファイブレーザーの冷たい銃口。「お兄ちゃんたちと会えないなあ」
「……」喉が鳴った。「お願いします」
「よし、さあ、まずお前だ。うれしいだろう」
 インプスはコクリを頷く。華奢な肩を握ると、ぐっと引き締めた。股間に感じる熱く煮えたぎった存在、インプスは背中に手を回し、異常な長さの腕で背中から股間を突き抜けて、自分のものを握って、その暖かい手でスカートを捲し上げて、スーツの上から割れ目を鷲づかみにした。
 猛熱の後に冷気がして、全身に鳥肌が立った。ゴーゴーファイブがインプスなんかに言いように弄ばれていた。涙でもうその黒い輪郭しか見えなかった。
「さあ、犯されてしまうな。うれしいだろ、うれしいだろ? 早く犯してくださいと思っているんだろう、この淫乱ゴーピンク」
 デストは耳元で叫んでいた。別のインプスが背後から抱きついて、腋の下から胸を鷲づかみにしていた。その手つきに息が漏れた。ヒップにペニスが押し当てられていて、少しすると揺れた。インプスはもっと激しくペニスを押さえつけた。液体が掛かったような感じだ。
「淫乱ゴーピンク、さあ、入れて欲しいんだろう? 欲しくないのか、欲しいんだろう、欲しいといえ!」
「お、おねがいしま、します。は、はやく」
 インプスは容易にスーツを引き千切ってしまい、その冷気にもっと大きな鳥肌が込み上げた。大事なところが敵に晒されても、ショックは思ったほどではなかった。まるで、自分が自分ではないみたいだった。
「だ、だめぇ!」
「ゴーピンク、黙るんだ。大人しく、快楽に身を委ねろ」
 デストはその秘所に触れた。
「何故、濡れていない。貴様はインプスに犯して欲しいんだろう。それならば何故、快楽に濡れていない、何故だ、何故か言え」
「こんなこと……」
 無理やりされて濡れるわけがなかった。顔は涙で光っていた。腰は抜けていたが、インプスはしっかり立ったまま押えていた。
「よし、ならば、濡らすまでだ。そして、無理やり犯すまでだ」
 デストが水溜りから泥水を掬い上げると、秘所にねじり込んだ。砂のような感覚に真っ白になる。身体に微生物のようなものが殺到する感覚、その生物の間を掻き分けて、燃え上がったインプスの男根がゴーピンクを暴き、下から上へ巽マツリを突き抜けた。頭から火花が飛ぶ。
「……っ…」
 その男根は処女膜を一瞬で消し去り、小さな音を残した。骨格が破壊されるかのような強烈な痛みに亀頭が膣を肥大させ、肉が引き千切られた。膜の内側にたまっていた血液が悲しんで、内股を伝い、地面に零れた。
「ぁぅ……」
 身体が痺れていた。インプスになすがままにされていた。こんな乱暴されるなんて嫌だった。だけど、もうされていた。
「淫乱のゴーピンク、こんな姿を見られたら、お兄ちゃんはどう思うだろうね」
「…そん……んああ」口がもたれて言葉が出ない。
「お兄ちゃんは悲しむよ、大事な嫁入り前の妹が奴隷になって、戦闘員にいたぶられて……まあここには誰もいない。もう少し、インプスを味あわせてやろう。ほら、何してる。ゴーピンクだぞ、貴様」
 インプスは言われて、ゴーピンクのベルトを握り、無理やり持ち上げると、宙に浮いた腰を揺さぶった。
「あああぁ、ああぁん」
 ほとんど無意識だった。マツリは左肩に顎をやり、インプスと密接した身体を臨んで、不自然に揺れる自分の身体の奥に突き刺さった戦闘員のペニスが自分の内部を食い荒らしている様。快感などなかった。
「く……」
 その振動が直立した自分を大きく揺らして、熱病にも似た状態になり、痺れが感覚を麻痺させ、意識を遠ざからせたが、それは意外にも早く戻ってきた。
「はあああぁ……だめぇ、インプ……ぇぇぁああ…」
 インプスが体内に熱いものをぶちまけた。それは何百万ものインプスのザーメンで、インプスはそれがあっても、ゴーピンクを揺さぶり続けた。
「どうだ、ゴーピンク。ゴーピンク。ほら、どうかいったらどうなんだ。淫乱女!」
「あぁ……だめ………だめ…………ぁ、た」
 インプスのせいで意識と身体が爆発した。そんなはずはないとかみ締めても、事実は冷たく身体を包み込んだ。涙はもう出なかった。口が渇いていた。何か飲みたかった。まだ身体は揺れていたが、既に何も解らなかった。
「ぁぁぁぁぁ」
「イったか、イったんだな、淫乱雌豚! どうだ、言ってみろ、さあ早く言わないか。ゴーピンク!」
「ぁあ」涎はもう止まらなかった。だけど、屈するつもりなどなかった。絶対、お兄ちゃんたちと再会する。こんな敵に乱暴されて、それで終わらない。終わらない、終わらない。
「これは終わりではない、始まりだ」
 そういうと、デストはオルガズムの終った身体をインプスから引き剥がすと、くるぶしを握って逆さにした。汚れた秘所を舌で拭うと、その唾を舌でその身体の奥に押し込んだ。
 頭に血が上って、意識が薄らいだ。秘所はいつしか濡れた愛蜜に熱くなっていた。でも、まだ耐えられた。だから、いつか誰かが何とかしてくれるまで、自分で何とかしようと思った。不思議と口元が綻んだ。