宇宙最速のバイク便!

 台湾、沖縄、九州と暴れまわった超ウルトラハイパーメガトン級台風23号は、本州に上陸後も全く勢いを落とさず、関東を襲った。雨はバケツをひっくり返したよりもひどく、ガソリンスタンドの洗車機の中のようだった。
「いやあ!」
 ゴロロロ…絶え間なく鳴り響く雷に、洋子は机の下で縮こまっていた。
 何とか出勤してきた自動車工場ペガサスの面子は、出社と同時に社長がから電話で帰っていいと言われたが、ひどくなる雨にどうにもならず、午後三時を回った現在でも、ぼけーっとしていた。
 蕎麦屋の出前も営業停止中だから、昼にしょうがなく実がコンビニに行くと、ずぶ濡れになって何とか買い物だけはしてきた。
「あーったく、仕事が休みになったのにさー」
 恭介が長椅子に横になって、埃取りで遊んでいた。直樹だけは、真面目になにやら図面を書いていた。意外と雷も平気なようだった。実は机に突っ伏して、鼻ちょうちんを作っていた。
 菜摘はといえば、納期の近い軽トラをジャッキアップして、エンジンに手を入れていた。すすけた頬を袖でぬぐう。
「直樹も菜摘も真面目だよなー」
「わたくしたちは休みでもやらないと、間に合わないのでございます」
「そのとおりよ。お客さんは待ってくれるわけじゃないしね」
「もういい加減にやまないの!」
 恭介の発言に、直樹と菜摘が返した。雷が建物を震わせ、稲光がぱっと放たれると、洋子が回転椅子に敷いていた座布団を頭にかぶって泣き叫んだ。
「どうも、バイク便ワンパーです」
 声がすると、入り口からバイク便の男が姿を現した。バイク便が営業している奇跡に、五人ははっと顔を上げた。
「えーっ! 何で!?」
「すんません、受け取りのサインをください」
 ぶったまげる五人を尻目にバイク便は濡れてすらいない封筒を差し出し、サインを受け取ると、豪雨の中に消えていった。さらに五人がぶったまげたのは、あて先がチーキュウの激走戦隊カ~~~~~~~~~レンジャー諸君になっていたことだった。
「マジかよ!?」
「なんででございますか?」
「信じられんわー」
「えーっ」
「ちょ、ちょっとなんで!?」
 五人が注目する中、恭介が封筒を開け、中の便箋を開くと、みみずよりも汚らしい文字で、文章が書いてあった。その文面にはこうあった。

 リーッチッチチチ、げきそうせんたいカーーーーーレンジやーの、そくん。わたすはきみたちのしょうたいをつひにしってしまったのだーリーチッチチチ。このひみつをばらされたくなかったら、カーレンジャーはですばれーにごじだ。ちずはいっしょに入ってる。リーチッチチチチ。でわごきでんよう、わたしがだれかわからないだろう。それはあったときのおたのしみだ。カーレンジャー、リーッチッチチチ。

「これってどう見ても、悪のコンサルタント」
「リッチハイカー教授、だよね?」
 菜摘と洋子の言葉に、全員が頭を振った。
「教授とかいってるくせに、下手な字やなあ」
 実はしげしげと手紙を見た。
「字の間違いも多いでございますね」
「そのとおりだ」
 恭介が二枚目の便箋を見ると、明らかに小学校社会科の教科書からコピーしたとみえるアジア全域の地図があり、関東全域を覆うような真っ黒な点がマジックで記してあり、ここがデスバレーだ、という例のみみずののったくった字が書いてあった。
「これじゃあ、どこかわからない……」
 恭介が真剣な顔になった。
「忘れてた。いやあ!」
 鳴り響く雷に今度はセダンの下に洋子はもぐりこんだ。
「で、どうするんだ」
「いいやろ。いかんでも。だってこの雨やし。これじゃあ、どこかわからへんし。だいいち、買い物行ったから、これ以上外に出るのは嫌や」
「そういうわけにも行かないのではないのでございませんか? でもわたくしはデザインの締め切りがあるので、無理でございます」
「私は絶対いやだからねー!」
 洋子はヒステリックに叫んだ。
「俺は別に行かなくていいと思う。こんな馬鹿の相手するなんてさー」
「みんな、あたしたちの正体がばれたんだよ。行かなきゃだめだって」
 菜摘に全員の視線が集まる。しまった、余計なことだった。後悔先に立たずだった。
「じゃあ、菜摘で決定だね!」
 民主主義の法則ののっとって、菜摘が行くことになってしまったのだった。

 ドラゴンクルーザーに幌をつけて、ペガサスを出たのは四時を回っていた。場所は解らなかったが、カーナビックで検索すると、いとも簡単にその場所が出て来た。着いてみると、敵の指定したデスバレーは、何だか豪勢な名前だったが、ただの採石場だった。
 豪雨はいつしか風に変わり、枝や葉っぱや看板が飛んでくる。ドラゴンクルーザーを止めると、一気に晴れ上がった空が青空を描いていた。
「激走! アクセルチェンジャー!」
 納期迫ってるのに、菜摘は馬鹿の相手をさせられることにいらいらしていた。
「リッチハイカー教授ーっ! どこ、なのよー!」
「リーッチチチ、何故私が来ると解った?」
 イエローレーサーを見下すように崖の上に姿を現した悪のコンサルタント・リッチハイカー教授は腕を組んで、手に指揮棒を持っていた。
「あんな下手な文章なら一発よ!」
「そうかッチッチ……おや、他の四人はどうした?」
「あんたなんか私一人で十分よ! でもどうして、私たちの正体が解ったの?」
「あなたたちカーーーーーレンジャーの正体はまだ解っていない」
「――はぁ?? じゃあどうしてバイク便は」
「バイク便は何でも知ってる」
「はあ?」悠々と構えるリッチハイカー教授に対して、菜摘の頭の中はクエスチョンマークだらけだった。
「バイク便に激走戦隊カーーーーーレンジャーと宛名を書いて渡せば、ちゃんと届けてくれるのだ?」
「じゃあ、バイク便が私たちの正体を知ってるっていうの?」
「バイク便はカーーーーレンジャーの中の人など知らない。カーーーーレンジャーへの荷物の届け先を知ってるだけだ。というより、お前らに中の人などおるまい」
 馬鹿だ。言ってることがさっぱり解らない。イエローレーサーは戦う前から脱力感に襲われていた。
「もう、帰るわ」
「えっ、ええーーっ! ま、待て!」
 振り返りドラゴンクルーザーに向かうイエローレーサーを追って、リッチハイカー教授は崖を飛び降りる。
「あんたみたいなのとはもう相手できないわ。納期が迫ってるのよ」
「納期とはなんだ、さてはイエローレーサーさんはノウテンキなんだな。フムフム」
「…………」
 菜摘は拳を握った。震えていた。馬鹿に付ける薬は無いとはこのことだ。相手にしてるだけ、アホらしい。
「ああもう頭に来た!」
「おっ、その意気です」
「馬鹿にするのはいい加減にしなさい! オートブラスター、バイブレード!」
 二つの武器を握ると、オートブラスターを構えた。
「シュート!」
「うがああああぁ!」
「うわああぁ、くらえ!」
 バイブレードのグリップのハンドルを握り、小型エンジンを回転させた。巻き起こる衝撃波を帯電させながら、イエローレーサーは飛び上がり、リッチハイカー教授に向かって、一直線に切りかかった。
「うがあああああぁ! なかなかやりますね、イエローレーサーさん」
 リッチハイカー教授は肩を抑えながら、息を殺していた。
「ナビックブラスター!」
 イエローレーサーはオートブラスターとカーナビックを連結させ構えた。しっかりと照準を定める。そのとき、リッチハイカー教授が指揮棒を上に向けた。
「いまさら何をやっても無駄よ!」
 引き金を握ると、瞬間、リッチハイカー教授が視界から消えた。正確には地面も消えた。
「くぅ!」
 イエローレーサーの右のブーツに何かが巻きつくと、ものすごいパワーで彼女の肢体を持ち上げた。ナビックブラスターを持った手にも何かが巻きついて、ひねってねじ取った。関節が変な方向にもってかれる痛みを身体が覚えた頃、菜摘の身体は空中を浮遊していた。
「なんなの!」
「リーッチッチチ、油断しましたね。名将というのは自ら戦いはしないものです。強力な武器に頼るのです。これは宇宙アイビーという植物です。ものすごい速度で増殖する宇宙の観賞植物です。それを私の優秀な頭で改造しました」
「くうぅ!」
 緑色の蔦が肢体を完全に固定すると、ぬらぬら動いて台を作り、イエローレーサーをその上に寝かせた。通常の何倍ものパワーを発揮するクルマジックパワーでさえ、その蔦のパワーには敵わない。
「この馬鹿! 何が優秀な頭脳よ、これじゃあ身動きが取れないじゃない!」
「何を言っているのですか、この対カーレンジャー用宇宙ポトスはあなたがたの動きを封じるためにあるのです。この植物は電撃を通すことも出来るのです、それ」
「う、ああああぁぅ!」
 指揮棒を宇宙アイビーにあてると、電撃が菜摘の身体を襲った。どっと汗が噴き出し、頭が回った。
「さあてと、イエローレーサーさん、あなたは私の元に一人で来たことで、これから一生仲間を恨むのです」
「く!」
 蔦はアクリルイエローのスーツに食い込むように巻きついていた。軽い鬱血感を覚えた。
「まずは首をもいであげましょう」
 二本の蔦がイエローのマスクを絡めた。次々にヒビが走る。菜摘の顔が一瞬で真っ青になる。
「み、身動きが……!」
「これは罰です、死になさい、イエローレーサー」
 リッチハイカー教授はカーレンジャーの中の人などいないと思っていたから、マスクを破壊すれば、首がもげてイエローレーサーは死ぬと思った。だが、マスクのヒビから光が走って、破裂すると、中からはリッチハイカー教授の目で見て、なかなかビューティフーなチーキュウの一般市民の女の子が現われたものだから、思わず指揮棒を落としてしまった。
「そ、そんなばかな。激走戦隊カーーーーレンジャーがチーキュウの一般市民だったなんて……」
「そんなことも知らないで戦ってたの?」
 菜摘はマスクが破壊されたショックに怯えながらも、精一杯に胸の鼓動を抑えていた。リッチハイカー教授が驚くのも無理は無い。ダップなんてまるで着ぐるみなのに、あれで生を受けている。シグナルマンだって中の人などいない。
「リッチチ、こうなれば、お話は面白い、リッチ」
「殺すんじゃなかったの?」
「リッチチ、それはカーーーーレンジャーがただのお人形だと思ったからリッチ。だがリチ、チーキュウの一般市民なら何でも出来る」
「何でも?」
「そう、例えば、こんなことだ」
 リッチハイカー教授は指揮棒を拾い上げると、大きく振るった。その動きと合わせて、宇宙アイビーの蔦の一本が菜摘の目の前に蛇のように姿を現した。その先には大きな果肉がついており、真っ赤に膨らんでいた。
「これ?」
「そう、これだ!」
 指揮棒を大きく下ろすと、果肉が砲丸投げの弾になった。それは菜摘の股間に命中し、中の粘着質の液を撒き散らした。
「……悪趣味ね」
「うるさいですね、小娘はこれだから困ります」
 スカートの内外に果肉がついて、イエローのスーツとのコントラストを鮮明していた。菜摘は眉間に皺を寄せていた。それはただのペンキのようなものだと思っていた。だが、理性が身体機能から音を立てて崩れていくのがそのときわかった。
「くくうぅぅ……はう! な、なに……」
「何でしょうね、なんの事だか私にはわかりません」
 身体がむずむずした。それは確かな感覚であり、くすぐったい気持ちが血管が大きくなったり小さくなったりする感覚がはっきり伝わった。そのうち胸が張りを持って、乳房がスーツの表面を浮き立った。
「はぁ――? くうぅ」
「実は、この宇宙アイビーの果肉は強力な媚薬作用があるのです」
「くう……媚薬……ううっ」
 感じる。そうとしか言えない違和感が瞬く間に菜摘の身体を占領した。
「スーツなんて、簡単にすり抜けてしまいます。これはチーキュウの一般市民にしか効かないリッチ」
「うううっ……」
「そろそろ諦めて、宇宙アイビーのオモチャになれば、効果を打ち消すワクチンを与えてあげてもいいんだリッチ」
「だ、誰が、リッチハイカーなんかに……」
 足の爪の先から背筋を抜けて、脳天まで感覚が感じられず、ただひたすらに性欲が間欠泉のように湧き出ている。疑惑は戸惑いから恐怖に変わり、触手がぐいぐいと身体をひきしぼっている。腹部に何かがある。それは大きな翼を広げて、股間に集中した。
「うぶっ……くはあああああ」
 腰に力が入らず、膣の内部で滲んだ愛液わ噴出している。
「あああぁん…かああぁん……か、感じるう!」
「そうです、その意気です。さすが威勢がいいですね。陸に打ち上げられた魚みたいですよ」
「だ、だめ、私は……負けない……」
 ひょんなことから、ダップに騙されて、月給二十万もないのに、地球を守るカーレンジャーなんてやらされてしまっているけれど、菜摘にだって、馬鹿なリッチハイカー教授に醜態を晒すのは、プライドが許せない。
「さすがヒロインです。そんじょそこらの小娘とは違います。だけどリッチ、降伏したほうが有利なときもあります。降伏するというなら、いますぐこれをやめてあげましょう」
「く! うるさい、馬鹿の相手はしてられないわ。死ぬまで私はリッチハイカーなんかに降伏は……くううぅ」
「口よりも身体は正直ですね」
 菜摘は戸惑った。ものすごい量の愛液が股間を濡らしていた。青ざめた顔が更に色を失っていく。そんなはずはない。ボーゾックなんておふざけ集団に犯されるなんて、そんなこと……
「降伏すればいいものを、それ、電撃です」
「ゃああああああああぁん!」
 じっとりと濡れた場所に指揮棒から電撃が伝わって、全身が痺れた。
「ああ、頭が回る……」
「ほら、どうしたのです、今までの闘志は」
 でも、まだ負けじゃない。このとてつもない植物から逃れられれば、もしかして、逃げられるかもしれない。それまで何度犯されるかわからない。だけど、最後に勝つのは、自分だ。菜摘は言い聞かせながら、濁流に奪われていく我が身に声を上げた。
「あうん! くうううう……と、とぶ」
 身体が揺れた。スーツを着たまま、イエローレーサーに変身したまま、志乃原菜摘は宇宙生物に強制的にオルガズムを叩き込まれた。屈辱だが、今は耐えるしかなかった。降伏するなんて、もってのほかだった。
「さあて、宇宙アイビーのオナニーショウも飽きたでしょう? 今度は私が直々に犯してあげましょう、リッチッチ」
 蔦は徐々に地面にイエローレーサーの身体を下ろした。砂利の上に四つんばいで下ろされた菜摘、迫り来るリッチハイカー教授、逃げるなら今だ。
「無駄です」
 奴の声も聞かず、四つんばいで逃げた。ドラゴンクルーザーはすぐそこにあった。
「きゃっ!」
 左のブーツをしっかり抑えた蔦は逃げようとするイエローレーサーを引きずり戻した。
 いつもなら振りほどくのは容易だっただろうが、オルガズムを迎えた直後の痺れた身体は言うことを利かなかった。うなだれた菜摘にリッチハイカーがバックから迫ると、その巨大な男根をもたげた。ペットボトルほどの大きさのある男根は、リッチハイカーの頭の悪さとは正反対にあまりに大きく見えた。
「それ!」
 電撃とよく似ていた。四つんばいになったままの菜摘はバックから挿入された。
「ああああぁ!」
 強制的に容れられたって声など上げないだろう。だが、リッチハイカーの男根はあまりに巨大で膣がギチギチ悲鳴を上げながら、拡張していくのだ。菜摘はその激痛に声が漏れたのだ。
「あああぁ! はああああぁ! ぁぁぁぁぁ!!」
 その脈動に腰が震え、八の字を描いた。
「どうですか、私のパワーは」
「くううかあぁぁ……んんんんん!」
「まあせいぜい楽しんでください」
「くううぁぁ」
 野生の動物そのままに言葉にならない声を上げながら、喘ぐ菜摘はわれを忘れて、舌を出して、よだれを流していた。蔦の媚薬によって強制的に与えられた快感はリッチハイカーの責めを何倍にも感じさせ、理性の糸が次々断ち切れて行く。
「うむぅ! ううんっ くうぁ、いやだぁ、いくうぅ」
 あふれ出る愛液によって、男根はするりと抜けたり出たりしている。激しく上下する菜摘に構わず、リッチハイカーは笑った。
「ほら、それ」
「そ、そんなのぉ……」
 その男根からあふれ出したザーメンが菜摘の性器の中に満ちると、鬱血した意識が一瞬途絶えた。大きなよだれが口元から零れ、にこやかな顔が苦痛に捻れた。
「はふぅ…………ぁ……」
 力なく砂利にうな垂れた菜摘に闘志は残っていなかったが、もはや頭の中がぐるぐるになっていた。それでも愛液が染み出てくるし、乳房は感度いっぱいになって、揉まれたくてたまらなくなっていた。
 リッチハイカー教授に犯されたことで、口が開いて、お尻でも口でもどこでも犯されれば、気持ちよくなっていた。
 私は志乃原菜摘なのに……口の中に鉄の味を感じて、彼女の意識は責めに引き戻された。
「それもっとだ。リッチッチチ!!」

 夜半過ぎになって、菜摘が帰ってこないことをあやしく思った四人が、そのデスバレーという場所に着いてみると、そこにはバッテリーの干上がったドラゴンクルーザーがおかれているだけだった。