殺到! カタツムリの陰術

「はぁっ! やあっ!!」
 煙の立ちこめる採石場、メガピンク・今村みくはクネクネを次々になぎ倒していく。
「どんなもんですか!」
 メガピンクは声を上げて胸を張る。周りにはクネクネが倒れ、その向こうでネジレ獣カタツムリネジレが逃げていく姿が見えた。
「まてっ!!」
 その姿を見ると、みくは敵を追いかけはじめた。
「メガピンク!!」
 メガブルーが仲間の近くから離れようとするピンクの姿を認める。残り三人も声に身体を向け走り出しかけた。
「うわっ!!」
 そのとき、ピンクと他の仲間との間にクネクネがなだれ込んできて、銃剣を向けた。
「こいつらなにが目的なんだっ!!」
「メガピンクっ!!」
 戦場に仲間がこだまする。だが、その声は今村みくの耳には届かなかった。

「どこへいったのよ!?」
 カタツムリネジレは岩肌にあいた洞窟に逃げ込み、みくは躊躇なく中へと飛び込んだ。辺りを見回して、大きな殻を背負いながらヌメヌメした敵の姿を創作し始める。
「俺はここだぁっ」
「見つけたわっ! メガスナイパー!」
 メガピンクは岩肌から姿を表したネジレ獣に向けてビームを放った。
「ウワアああぁっ!!」
 激しい火花をあげながら倒れる姿をみて、ピンクはひょいっとジャンプをする。
「あたしたちからは逃げられないんだからっ!」
 倒れた敵の頭に向かって、蹴りを放つ。頭が引きちぎられるように身体から引きちぎられた。
「うわっ!」
 頭が飛び散り、あたりに粘液をばらまいて転がっていく。妙に生々しい感覚に、みくは思わず顔をしかめ、マスクに手を寄せた。
「なに、きもちわるいっ」
 どっさと殻が倒れて、中から青色の血みたいなものが流れ出てきた。敵は倒したらしい。だけど、爆発もしないし、体液は足下を流れていく。
 目の前には飛び散ったカタツムリの頭、触手らしきものが転がっている。メガピンクはしゃがんで、その一つずつに目をやった。かすかに吐き気がこみ上げてきたけれど、でも――もう敵は倒したんだし、ひょいっと前に進んだとき、視界の隅で何かが動いたように見えた。
「えっなにっ!? きゃっ!!」
 飛び散って死んだと思った触手が不意に、彼女の純白のブーツに巻き付き絡んできたのだ。

「どうなってるんだ」
 クネクネたちをケチらしたレッドらが洞窟の入り口に駆けつけると、そこには目に見えないバリアのようなものが展開しており、奥へ入るのが不可能になっていた。
「イエロー、サーチしてくれ」
「オーケー、デジカムサーチ!」
 ブラックにいわれて、メガイエローは腕を広げ頭上のデジタルカメラのマークを輝かせた。
「ダメだわっ。サーチ出来ないわ!!」
「なにどうなっているんだ」

「あうんっ!!」
 メガピンクはバランスを崩して尻餅をついた。土煙が立ち上る中、彼女は足に手をのばす。触手はところてんのように先割して細いものへとかえて、足に巻き付いてくる。
「もう、なによっ!!」
 みくは戸惑いの声をあげて、必死に振り払おうとしたのに、触手の力を強めていく。
「ああぁっ!! きゃっ!!」
 不意に気配を感じて顔をあげると、もう一本の触手が身体を起こしている。それはひどく気持ち悪い芋虫のようで――空中に躍り出て、メガピンクに貼り付いた。
 とっさのことに彼女は腰を浮かそうとするが、足に巻き付いた触手に動くことができず、バランスを崩してまたしりもちをついてしまう。
「ああああぁあぁっ!!」
 触手は大きな吸盤を広げ、ぴちゃっと音をたてて胸に付着した。ぼわっと光を放ち、細い管を繰り出してくる。
「このっ!! きもちわるいんだから!!」
 ちゃぷちゃぷと耳障りな音をたてながら動き回ろうとする触手にみくはマスクの内側で顔をしかめる。だけど、手で掴もうとするとまるで、豆腐を掴むように手が中に入ってしまい、慌てて手を引くと今度は元に戻ってしまった。
「もうっ!」
 思い切りたたくと、ぴしゃっと表面がはじけて真っ白な液体になってマスクにかかった。
「うっ、くさいっ!」
 そのとき、目の前の倒れたままになっていたカタツムリネジレの殻が鈍い音をたてて動いた。
「メガピンク、かかったなぁっ?」
「どうして、死んだはずじゃっ?」
 殻からヌメヌメした頭と後が現れる。知的動物らしさを感じさせないその姿はさっきみたままのカタツムリネジレだった。
「さっき、おまえに撃たせたのは俺の擬態だよっ。このカタツムリネジレ、おまえのような小娘に簡単にやられたりはしないっ!!」
「そんなぁっ……うっ!!」
 みくは立ち上がろうとした。戦わなきゃ、敵が卑怯な手を使ってきたけど負けるわけにはいかない――腰を浮かしかけたメガピンクは不意にめまいを感じて、再び地面に戻されてしまう。
「あぁっ……なにっ……」
 戸惑いに満ちた声をあげて、みくは身体を見回した。一面ぬるつく触手に覆われ――身体の力が――まるで穴のあいた浮き輪のように抜けていくのがわかった。
(身体に力が入らない……こいつらの仕業??)
 身体が熱くなり、息があがる。敵の作戦、そうに決まっている。みくは顔をしかめて必死に立とうとした。あたしにはブラックみたいなパワーはないし、イエローみたいな機転もきかない。だけど、負けるわけにはいかなかった。
「あぁっ……うっ……」
「まだ立ち上がる力が残っているとはな」
「あ、あたりまえじゃない!?」息を吐き出しながら、みくは声をあげた。「ネジレジアに負けるわけにはいかないのよっ!!」
「けなげな勇気だなぁっ。だが、おまえはこの俺に敗北する運命にあるのだ」
「ふざけないで!!」
 きっと他のみんなだって同じようにいうだろう。スライム状になった変な物質は鼓動をするように震えている。ぞくっぞくっという間欠するようなリズムで息づく物質に、みくは顔を赤らめ――不気味な音をたててスカートの内側に伸びてきたとき、彼女の全身から力が抜け、ぺたんと腰が地面についてしまう。
「あっ! へ、変態!!」
 スカートの外から『それ』を手で押さえつけながら、メガピンクは声をあげた。
「なんとでもいえばいいだろう」
 カタツムリネジレの殻の中から、ぬっと頭が姿を現した。そのぬめついた頭に二本の触覚がにょいっと伸びる。そして、気色悪い音とともに、伸びたそれはぼわっと光りを放つ。
「ああぁっ!!」
 光が放たれると同時に、触手が力をつけていく。みくは腰を引き、もう片方の腕を腿にあてた。身体が彼女の意志とは無関係に脱力と弛緩を繰り返し、彼女は大きく息を吐き出した。
「だめっ!!」
「なにがだめなのかねぇっ?」
 声も触手に負けないぐらい粘ついたもので、みくは激しい怒りを覚えた。首を振り、体の震えをとめようとした。でも、体が色づきズキンと震え――
「ああっ!!」
「答えてみろよ、なにがだめなのか??」
「あぁっ……」
 メガピンクは立ち上がろうとするのに、触手はぬるりぬるりと彼女をしめつける。みくは真っ赤に染めて顔をゆがめていた。
「くぅぁっ……はぁあっ!?」
 触手は彼女をぎゅっと掴んだかと思うと、次の瞬間には拘束をほどくことを繰り返す。
「ダメッ……・アアアァッ……」
 カタツムリネジレの触覚は散漫に点滅を繰り返しながら、メガピンクの目の前に掲げられる。その点滅に併せて触手が弛緩を繰り返し、みくは手を閉じたり開いたりを繰り返した。
「ああぁ……ウソッ…」
 体が電流を帯びてびくびくっと息づいていた。体中がひどく痺れて、同時にひどく敏感になっていく。
「ああ…ああぁっ……んっくぅっぁ!?」
(こんなものに……あぁっ…んっ、インストールしてるのにっ、メガスーツ着てるのにぃっ!!)
「そろそろ出来上がってきたみたいだなぁ」
 カタツムリネジレは寸胴な体をのそりのそり揺らし始めた。いくつもの突起――足に当たる部分を粘液をこぼしながら動かしている。みくはそのグロテスクな姿をみて、まだ幼さ残る瞼に涙をためた。
「こないで!!」
 強い拒否の言葉を、ネジレ獣は意にも返さなかった。代わりに差し出されたのはあの触覚で、その光が強くなった。
「うわあああっ!! ああんっ!! ああぁっ!!」
 光にあわせて、メガスーツに付着する粘液が発光をはじめた。
(体がぁっ……ネジレ獣のしわざ……ダメっ、なにこれっ、か、感じるぅぅっ!!)
 体を震わせた彼女はやがて、両手両足を投げ出して地面に仰向けになってしまう。
「あぁっ……はあはぁっんっ……ぁ」
 荒い呼吸を繰り返し、手足に激しい筋肉痛を感じた。痺れた体を動かそうとやってみるが、まったく自由になんてならなかった。
 ギュフヒヒヒッ――おぞましい鳴き声をきき、みくは全身に鳥肌を感じた。動けなくして補食されてしまう、どこかのテレビでみた食虫植物の捕食行動を思い出してしまい――
「いや!!」
 パニックは瞬く間に全身を覆い尽くし、それなのに、体は金縛りになったように動けなかった。目の前で、一対の触手だけがうねうねと光を放っていた。
「きゃあああああああぁあぁっ!!」
 自分より遙かに大きい生物にのしかかってくる。スーツごしにそのヌメヌメした感覚が流れ込んできたとき、みくは涙を流した。
「ああぁっ!! ダ、ダメェッ!! ああぁっ! うわあぁあぁっ!!」
「おとなしくしろっ!!」
 逃げようともがくみくにカタツムリの頭突きをくわえてきた。「あああぁっ!!」
 口に鉄の味を感じて、みくは力を失った。体はカタツムリに抑えられて動くことができない。
(――あたしこんな化け物にレイプされちゃうんだ)
 みくは体の中で何かが壊れる音を聞いた。心にヒビが入り、細かい破片にかえってしまう音だった。
「あははっ……あはっ!! あはははっ!!」
「チッ!! ったくガキがよぅっ、狂っちまいやがったかっ!」カタツムリネジレ前足を繰り出すと、体を傾けてメガピンクのマスクを掴んだ。
「へへへっ、狂っちまうにははやいぜ!」
「!?」
 カタツムリネジレはマスクを揺さぶる。けたけたとみくは笑っていた。口から血がでて、なま暖かさに覆い尽くされていく。ネジレ獣は不意にマスクを持ち上げると、そのまま地面にたたきつけた。
「ああっうっ!!」
 みくは声をあげた。目の前のぼけたピントが元に戻ってしまう。やだ――みくはもういやだった――マスクを持ち上げられて、首がもげるかと思うほどのショックに目の前が白と黒に染まった。
 ぱりん――乾いた音が響いた。と、据えた臭いが鼻に飛び込んできて、みくは目を細めた。急にとびこんできた生々しい感覚――マスクはヒビが入ると同時にさくら色の光になって、あっというまに消失した。
「あっ!!」
 前に耕一郎がおなじめにあったことがあった。でも、あれは特別な場合だったし――メガスーツがそんなに――ビシッ!! 平手打ちが濡れた音をたてた。
「うそっ!!」
「うそじゃねぇぜぇっ」
 粘液に覆われたネジレ獣の顔――それが顔と呼ぶとすればの顔がみくの顔面に覆い被さってきた。
「ううぐっぅっ!! ぐううっ!!」
 その粘質の表面に開いた裂け目にみくは頭ごとつっこみ、その奥から現れた触覚が口の中へねじ込まれていく。頭を上に向かされ、触手の中から液体溢れでてくる。
「うううっ!!」
(い、いきができないっ!!)顔は苦悶にゆがんでいく。
「うぐっ!!」
 急に口から吐き出されて、また地面につき戻される。
「はあっああぁっ……い、いったいなにを……」
「まずは気付けだ」
 体を覆い尽くした触手はネジレ獣本体と融合しようとしている。もとは体の一部だったところが、細胞が元に戻るようにカタツムリネジレに還っていく。
「きつけっあああぁっ!!」
 粘液はこれまでよりも強い力でみくの体を押さえつけてきた。鈍い光沢で覆われた彼女の体がびくんびくんとゆららぎ震えた。
「あぁっ……ワケ…わかんないっっ!! あぁっ!!」
 強く抑えつけられ、急に力が弱まった。粘液はみくの体を包む大きな腕のようにいったりきたりを繰り返す。意識は急に鮮明になり、なにもかもがはっきりと感じられた。悲鳴をあげるみくの声が次第にとろんとしたものへと変化して、少しずつ甘美な喘ぎ声に変化していった。
「んあっぁっ! ああぁっ!!」
「ゲヘヘヘ、それでいいんだ、メガピンクっ!!」
 きつく閉じられていた足の力が抜けて開いてしまう。粘液の海をさきほど口に押し込まれたのと同じ触手が泳いで、みくの足の付け根に達する。ピンク色に包まれた足の真ん中を思い切り押されて、みくは一瞬我を忘れた。
「メガスーツが溶けるっ!?」
 ぼーっとした暖かさが差し込まれた触手の中から溢れでてくる。その先端から熱い液体が溢れだし、スーツが少しずつ溶けていくのがわかって、みくは目を大きく見開いた。
「うああぁっ!! うあああぁあっ!!」
 メガスーツをほとんど一瞬で溶かすような液体が体に触れたら――最悪の想定をするよりもさきに、現実が襲いかかってきた。
「ああぁっ!! あついっ!! あああああぁっ!! うあああぁあぁあぁあぁあっ!!」
 カタツムリネジレはピンクの腰を持ち上げた。ねっとりとした生殖器の間から、どろどろの液状になったスーツが流れて、床に広がっていく。
「ああぁっ!! うあああぁっ!! ああぁあっ!!」
 みくはそのまま四つん這いになろうとして、だけど熱い液体を吹きかけられて、体にまともに力が入らずに腰をふるわせるばかりだった。
「ぐへへへっ、メガピンクっ、おとなしくしたらどうなんだ」
「ああぁぁっ! きゃあぁぁぁっ!!」
 ねっとりとからみついてくる声を、みくはもはやきいてはいなかった。スーツからむき出しになった足の付け根――尻の肉を思い切りたたかれ、彼女はのけぞりながら悲鳴をあげた。
「あああぁあっ!! ――んあっ!? ああぁあぁっ! うがあぁあぁあああぁっ――!!!」
 悲鳴をよそに、カタツムリネジレは生殖器を回転させねがらみくの胎内へ挿入していく。ふるえながらそれをみくは拒絶しようとしていたが、そうするたびに回転は早くなり、まるでドリルのようにねじ込まれていく。
「ああぁっ!! ふうぅっあぁ…ああぁっ!! い、いたっいっ!!」
 声が震える。その声を漏らすことすら、苦悶が用意には許可しようとしなかった。
「へへへへっ、メガピンク、俺様のものを受け入れた気分はどうだっ!!」
 声は冷徹にみくの耳に響いた。
「ああぁっダメッ!! はあぁんっ!! んんんっ!!」
 強烈な苦悶――体の裂けるような鈍い痛みに、彼女は汗を流し涙を流す――そのショックにも近い苦痛が彼女の体に一瞬の正気を呼び起こすが――
「あああぁっ……はあぁんっ!! あっあっ!!」
 回転する生殖器は彼女の胎内を征服し、びくっびくっと震えながら膣にショックを与えていく。
「あ゛ああぁっ! ああ゛あぁっあ゛!!」
 背骨がおれるほどに背中はのけぞり、苦悶の声があがる。痙攣が起こり、歪んだ表情が次第にとろけ始めた。
「はんっ!! んんんぁぁっ!! ああぁっ! い、いやぁぁっ……はぁっ…あ゛っ! ああぁ!?」
(ネジレ獣に……犯されているのに……頭がぼんやりして……ダメだよ……感じちゃう……)
 体の疼きが弱まってきたとき、みくは天に向かってかすかに笑みすら浮かべていた。
「ダメっ!!」
 彼女はそれでももがこうとしていた。カタツムリネジレの前足がのびてきて、彼女の肩を掴んで押さえつける。
「はあぁっ!! いやあぁっ!! ああぁっ! だめっ!! だめだかぁら! あぁぁっ!! うぐっ!? あぁあぁ! だめだめっ!!」
 メガピンクは激しく身をよじらせた。首をふり、戒めから必死に逃げようともがいた。しかし、カタツムリネジレはその小柄な戦士の体をしっかり押さえつけ、生殖器を子宮口へ差し入れ、押し広げていく。
「へへへっ! たしかに、おわりだなぁっ!! 正義のヒロインちゃん??」
 罵倒の言葉が聞こえたのに、みくにはその言葉が聞き取れなかった。
「ああっ!! うあぁっ! あんっああんっ! いく!イっちゃう!! ああぁっあああああ!! あああああああああああっ!!!」

「ドリルスナイパー・カスタム!」
「マルチアタックライフル!」
 残された四人は必殺武器で、バリヤを破壊して洞窟の中へ飛び込んだ。
「メガピンクっ!?」
「どこだっ!!」
 四人は洞窟を奥へとすすみ、あっと言う間に最深部――行き止まりへと到達した。
「どこいったんだ!! いったい!!」
 ブルーが焦りの声をあげる。
「ねえ、これみて!!」
 イエローが指で地面を指し示した。地面がその場所だけ黒く染まり濡れていることがわかった。そして、その場所にはピンク色のペンキのようなものが広がっていた。
「なにがあったっていうんだ」
「この場所でメガピンクは捕まり、ネジレジアにさらわれたんだ」
「縁起でもねえぇこというなよ」
 ブラックの分析にレッドが食ってかかった。
「待って! いまわたしたちに喧嘩をしている余裕なんかないじゃない」
 二人の間にイエローが入り、殴りかからんばかりの二人を仲裁する。
「メガイエローのいうとおりだ」
 ブルーがいって、レッドの肩を掴む。レッドはその腕を煩わしそうにふりほどき、距離をとった。
「どうしろっていうんだよ!!」
「それをなんとか見つけなきゃいけない」
 いつも冷静なブラックの声にも激しさが感じられた。
「どうやって?」
 ――そのとき、頭上から細い糸を垂らしながら、一匹の小さなカタツムリが降りてきた。レッドとブラックの一触即発の状況に仲裁しているメガイエローのちょうど背後にあたる場所だった。
「まずはメガシップに戻って久保田博士と相談して対応を決めるしかないだろ」
 レッドは何かを口にしかけてやめる――カタツムリはやがて、イエローの背中に到達し、そこに体を落ち着けさせた。
「それしかないわね」
 彼女は体を揺らして動き出した。カタツムリはその急な動きに刹那からだを浮かしかけたが、なんとか着地し直すことに成功し、その体をメガレンジャーのサブリーダーとして知られるメガイエローの背中に落ち着けた。
「戻ろう」
 ブラックが声をあげる。ブルーが彼を追い越し、最後尾になったイエローは首を振った。仕方ない。彼女はそう思い、仲間のあとに続いて、洞窟の出口に向かいはじめた。
 その背中で、カタツムリは触覚を伸ばして、サイリウムのように輝かせ始めた。
「うっ……なにっ?」
 城ヶ崎千里はマスクの中で目を細めた。足をとめ、急にきためまいに頭に手をやる。
「どうした? メガイエロー?」
 動きすぎたからつかれたのかな――千里はそう思った。
「大丈夫、先にいって」
 とめた足取りを再開する。彼女はそのとき息が押さえつけられるような苦しみを発したことに気づいて、瞼を見開いた。