戦慄!恐怖の人体改造

 城ヶ崎千里の頭の中を支配するものは、熱っぽい欲望、ただ一色だった。黄色い強化服に身を包み、潜在能力を発揮させた姿――メガイエロー、それが千里の呼び名だった。
『深夜の強盗・犯罪行為に注意 <犯罪多発地帯>』
 警察署のたち看板が立つ横に彼女はいた。その瞳は赤く、マスクの中は甘い息で濁っていた。夜の闇はいよいよ帳を下ろし、人々は眠りについていた。
 頭の中は教会の鐘の音のように、シボレナの言葉で染まっていた。メガイエローという名は元々、正義の象徴だった。悪の侵略者から地球を救う勇敢な女戦士、誰もがそう思い、今でもそう信じられていた。だが、彼女の姿は、人間と呼ぶにはあまりに異質だった。
 マスクと体表面にピッチリ密着した薄手の特殊繊維で覆われた彼女の身体は――悪意を持ったイエローのライバルにより、最早その原型をとどめないほどまでに改造が施されていた。
「はあはぁはぁ……」
 甘い息が立ち込める湿気、彼女は自らの性器に手を伸ばす。二本の太腿はスカートの上からでもあまりハッキリとしたラインを現していた――その付け根から伸びた一筋の肉塊が彼女が、既に人ではないことを示すいちばんの存在だった。
「あぁ…ふはぁっ……」
 白いグローブは灰色に濡れ、スーツそのものも黄土色に変色していた。肉塊は彼女の腕では包み込めないほどの大きさで、どくどくと息づいた血流はまるであたりに轟くほどだった。
「はふっ……」舌を濡らす唾液を千里は舌で拭う。彼女の頭を満たすのは、シボレナの言葉、シボレナに受けた命令というには余りに甘美な命令、だった。
「……う…うっ!!」
 メガイエローの背中は猫のように丸まり、千里は両腕で肉塊を掴むと、全身でぴくんぴくんと二、三度震えた。その手の中に感じられる粘質で熱っぽい欲望に、彼女の身体は痺れ真っ白だった。しかし、彼女はシボレナの命令を決して忘れていなかった。

 もちろん、彼女は完全に男性化したわけではなかった。メガイエローの握る欲望は、クリトリスが男性器とほぼ同じ大きさまで肥大化したものであり、亀頭に変貌したものだった。玉袋もついていたが、これは男性器と比べれば、幾分小さかった。そして、女性器はその背後に口を開いていた。スカートの中で肉塊が屹立すれば、そのスカートを自ら捲し上げていた。
 その身体は全身がぬらぬらと光を放っていた。胸は不自然なほど豊満で、風船のようだった。その中央に意外なほど小ぶりな乳房が、しかし彼女の性を物語っていた。背後から見れば、ヒップもまた不自然なほど豊満で、一見すると全体のバランスは滑稽でひどく悪くなったかもしれなかった。
 しかし、スーツは限界まで伸び身体を引き締め、バランスを崩すことは無かった。むしろ、身体のラインをあまりにはっきり示すコスチュームのデザインとあいまっていた。

「シボレナさまぁ…」
 スーツの機能が発揮されたときのエレクトーンのような音が響く。メガイエローはアスファルトの地面に倒れた。カマキリやイモリを思わせる姿だった。肉食動物のような鋭い眼光をしながら、千里は気配を感じ取った。時計が針を刻むように正確に鳴り響く足音。彼女の聴覚にその音は、空腹のライオンが、シマウマが草を食む音を聞きつけたときのようだった。
「なに? なにかいる?」
 足音の主は不信そうながら、どこか間延びをした声を発していた。千里はほとんど動物的本能ともいうべき力で、空中へ身を投げ出した。黄色い体が月光に黒光りする。短い悲鳴、声の主は鞭のように殺到する彼女を避けることはおろか、動くことすらできなかった。
「きゃあぁああぁ! 何っ、誰!」
「お・か・す……ネジレジア……のため……」
 千里の目の中に、声の主は見えた。白いスーツの女性だった。二十代ぐらいで、端整な顔立ちだった。獣の如き身のこなし、エナメルのハンドバックが空中を舞う。突然の凶悪に抵抗するまもなく動きを封じ込まれる相手の女性――
「メガレンジ――ああああぁ! 何、何をする気!!」
 千里はグローブでそのジャケットを開けられた。ぶちぶちっと音を立てて飛ぶボタン、ブラウスは濡れた安紙よりもやわらかくちぎられ、ブラジャーが現れた。白い肌――
「おか…す……」
 圧倒的な力で夜道倒され、目の前に現れた正義の象徴である姿に女性は目を白黒させていた。言葉も無く、彼女は起きる事態にパニックを通り越して、思考が停止していた。その姿は、華々しい活躍を見せていたメガレンジャーの女戦士メガイエローであり、その肢体、胸のふくらみは紛れも無い女性だった。
 しかし、女性はその異変を皮膚で感じた。反り返ったメガイエローのタイトスカートの表面にあまりに明らかな形をしたものがあった。それが彼女のスーツスカートの上にあり、肉食獣の如き鎌首をもたげていた。
「おかす……全ては……ネジレジアのためェ!!」
「アアァーーーーーーーーーーッ!」
 刃物で肉をえぐる様な衝撃だった。真っ白になった千里の頭の中にあるものは、シボレナの命令だけだった。目にも留まらぬ手つきで、女性をM字開脚の状態にすると、メガイエローはその両腿を掴んで、自らの肉塊を相手のスカートの中へぶち込んだ。その動きは、爬虫類を思わせた。
 形容し難い激痛に悶える女性の抗いを完璧に封じ込め、メガイエローは身を起こした。前傾姿勢になってその肉塊は相手女性の女性器を食い破っていく。肉と肉が出会い鍋料理のような様相で、その中へ中へと入り込んでくる。
「イイイヤァアアアアアアアアアアアッ!!」
 女性は身をよじって反抗する。だが、ネジレジアの獣と戦う女戦士の力に、彼女が勝てる見込みなど、わずかばかりも無かった。快楽など存在しない世界だった。
「あぁ…ふはぁっ……シ、シボレナ様……あたし……あぁ…たし!」
 ぱっと飛び散る熱情が液体となり、上から下へと流れた。

「ハァハァ…」
 女性は処女では無い。だが、前戯も無く突如として信じられないような力で犯され、中に出された。その強引さに出血――というより傷だった――を起こしていた。そのスカートに血の色と白濁した大量の液体が付着していた。
「はぁぁ……ネジレジア…シボレナ……」
 メガイエローは四つんばいとなり、女性と結合していた。その身体をリズムを崩すように全身で愛撫し、グローブで頬を拭っていた。
「何で…はぁぁ……何が……」
「ネジレジア…」彼女が囁くと、彗星の如き光が彼女の胸元から結合した下腹部を経て、彼女に注ぎ込まれようとした。つかのまその様に恐怖の目が見開かれ、彼女は口元をぶるぶる震わせ、顔や髪に埃がつくのを気にもとめなかった。
「こんな……」
 だが、彼女もまた精神的には動物だった。悪の帝国によって動物的本能を最大まで高められたメガイエローの身体から放散されるフェロモンに逆らうことなど、人間には不可能だったのだ。
「あぁ……ん……ああぁ…はあぁん……」
 その場が路上であり、正義のヒロインだった猛獣に犯されていることなど忘れ、彼女は強引に開脚された足を閉じるようとする動きをやめた。むしろ自ら股を大きく開く。
「ふふふ……」
 メガイエローは綻んだ。千里は腰のリズムをやめ、光を押し出すように下から上へ突き上げるような電撃のままに光を送り込んだ。
「ウッ!!」
 つかの間訪れた安息に女性の顔はみるみるまに青く染まっていく。その目に赤い色がさし、まもなくまるで何事も無かったかのように、元へと戻っていく。
「一体どうしていたの……」
 まどろんだ口調が途切れ、しっかりとした口調へ戻る女性。しかし、その口調はどこかうつろで感情が感じられなかった。
「あなたの快楽……あたしの快楽……」
 メガイエローは肉塊を胎内から引いた。あらん限りの手管で抑えていた女性を自由にし、四つんばいの身体の下にした。女性は両手両足を広げながら、呼吸していた。
「……もっと、気持ちよくなれる場所へ…行きましょう……?」
 女性の身体を起こし、メガイエローは手を伸ばした。女性は手をとり、大きく頷いた。
「はぃ…行きます……」
 女性の身体が空中に浮き、つかの間の光の中に消えた。

「千里! うまく犯ってる?」その声に振り返った。「うん、今日でもう3人目!」
 メガイエローは声の主に駆け寄り、手でハイタッチした。さっきのうつろな言葉や凶暴性を微塵も見せないしぐさだった。相手――メガピンクは指を5つ示した。
「あたしの勝ち?」
「5人? まさかぁ、みくってホント底なし…」
「何よ、千里のほうこそ、さっきの犯しっぷりすごかったじゃん!」
「見てたの!? ちょっと、もう、なんで、そんなことするのよ……」
 メガイエローは腕で彼女の頭をぽんとたたいた。
「あんなえっちな千里見てたら…私…すっごく興奮しちゃって……」
 メガピンクはその彼女の胸元に素早く入り込み、腕で抱いた。そのまま、イエローは倒れ、ピンクが上についた。
「5人も犯ったなら…あたしと遊ぶ力なんて、もう無いはずでしょ……」
「力が無くったって、こうしているだけで、もうどうかなりそうだよ…千里……」
「あたしも……みく……もう……」
 二人の身体は揺れ、肉と液の混ざり合う音がきこえていた。

 小気味いい音が続いた。直立した黄色と桃色の戦士――千里とみくの目の前に現れた足音の主は、彼女を支配するネジレジアの作戦参謀、シボレナだった。
「今日の収穫は8人」シボレナは二人の背後に続く黒いラバーに目を向けて告げた。「昨日よりも、3人も少ないじゃない? これはどういうこと?」
 空気は凍りついたかの如くその女幹部の玉座を沈ませた。
「マァ、いいわ。どうせ、あなたたち、自分たちで熱中しすぎて、肝心の任務を忘れたってところでしょ。ちょっと、お遊びが過ぎるようね……」
「シボレナ様ァ」みくは緊張した面持ちで口を開いた。
「何?」
「それには訳が…今日の戦闘員候補は……」
「訳なんていらないわ。ふふん。人間ネジレ獣化計画は順調だわ。それもこれも、メガイエロー、メガピンク、あなたたちのおかげだわ。私の忠実な僕の子猫ちゃん……」
「シボレナ様」千里の声はみくとは対照的にはっきりとしていた。
「今度は何?」
「今日の人間たちが、いかに優れているか、お見せします」
 シボレナはしばしメガイエローを見た。やがて頷いた。
「やってお見せ」
 メガイエローとメガピンクが左右にわかれ、立てひざをついた。それと同時に、二人の背後に並んでいた黒いラバースーツの人間――男性体形もあれば、女性体形もあり、背格好/体つきも全てばらばらだった。その人間ら8人が横に一列になり、シボレナの前に立った。身体はばらばらでも、機械のように正確な動きで全員が右腕を斜め上へと突き出した。
「ネジレジアに栄光をッ! ネジレジアに真の栄光を!」
 やはり、8人は協調のとれた――というより、ほぼ機械のような動きで、シボレナの足元へひざまづいた。その感情の無い殺気に、シボレナは不意を打たれたような顔をした。
「シボレナ様、なんなりとご命令下さい」と、ラバー人間たちは言った。
 やがて、起こっている出来事に納得したシボレナは満足そうに頷く。そして、左右に控える黄色と桃色の忠実なる僕へと微笑みかけた。
 わずか2週間の間に、シボレナは正義のスーパーヒロインを2人も手の中に収め、完璧な悪へと染め上げることに成功した。だが、洗脳された日の朝、千里でさえ、はじめはその事実さえ知ることが無かった。

 その朝の陽光は、憂鬱な光だった。そのせいで、カーテンの間から入り込む光が、本物の日光のようにはじめは感じられなかった。
「うあぁ……」
 どてらを着たままベッドで横になっていた城ヶ崎千里は長い欠伸を立てた。いつもと変わらない朝、いつもと変わらない部屋、端整とれた顔立ちもノンメイクで、眠気に取り付かれるしばしの間は、昼の顔とは大違いだった。
「ここは……家…だよね……」
 不意に襲った違和感があった。身体中に感じる激しい運動のあとのような疲れを残していた。規則正しく生活する癖を、千里は中学時代のテニス部活動で身につけた。朝、7時からの朝練に彼女は率先して参加し、参加するには早く起きる必要があった。
「あれ…なんだっけ……昨日は……」
 モーターを動かすような音、強い耳鳴りを感じた。ともあれ彼女は時計を見た。時計の針は当然、今の時間を指している。瞬きを1回すると、鮮明になった視野の中で、その時間が明らかに、彼女がおきなければならない時間を、一周過ぎていることが解った。
「えっ……」

「珍しいなぁ、千里が遅刻なんて」
 健太が話しかけてきた。彼は遅刻の常習犯であり、千里は模範生徒の代表格だった。
「だって、仕方ないじゃない。たまには」
「そういう心持はいかんな。遅刻なんて絶対しちゃいけない」
 耕一郎がどこで聞きつけたのは教室のむこうからやってくる。
「もう…」千里は言いかけてやめた。モラルについて書かれた本をそのまま人間化にした耕一郎に何を言っても、遅刻した非がこちらにある以上、無駄だった。
「でもさぁ、昨日のネジレ獣との戦い、激しかったからなぁ」
「戦い?」千里は眉をひそめた。「きのう?」
「なんだよ、千里、まだ寝ぼけてるのかよ?」
「ううん、もう目パッチリ」
「じゃあ、覚えてるだろ」健太は言い、輪の中に入ってきたみくをみた。
「すごかったよ、ホント。あたし千里見直したもん」
「見直す?」
「オマエ、本当に覚えてないのか」傲慢そうな口調で耕一郎が言った。
「さっぱり、何も」
「ほら、放課後、ネジレ獣が出現したって連絡を受けて、俺たちが出動した」健太が言った。「んで、戦闘になったんだけど、俺とか瞬が怪我して――」
「そういえば、瞬はぁ?」
「おい、千里。瞬は昨日の怪我で入院中だろ」
「でえ、耕一郎もみくも敵に引き剥がされたけど、千里のとっさの動きで形成逆転。敵を敗退させて、千里がみんなを助けたんじゃないか? 本当に何も覚えていないのか?」

 あ、思い出した――機転で切り返し、薄ら寒さに部室を足早に出た。家路に就き、疑念で頭がいっぱいになる中で、千里は気付いたときには部屋にいた。鳥肌が潮が引くように立った――部室を出たのは覚えているが、部屋に入るまでの記憶が無かった。
「なにが起こってるの……」
 リボンは机の上に投げ出され、首筋のシャツは第二ボタンまで開かれていた。千里は首筋に違和感を覚えて指で触れた。何事も無かった。指はおりてきて、カラーに触れた。そのまま、ジャケットの筋をなぞり、臍のあたり――腰、腿、足の関節、足の裏側、生殖器、どこにも異常はない。そんなこと、整体師とかでなくても解った。
 だが、全身を覆う違和感はまるで、黒いベールのように彼女の身体を包み込んでいた。そのベールは朝から消えない疲労感にも似ていた。その感覚が彼女の頭を休息へと誘った。眠りは彼女にとって深かった。だが、その瞼の裏で瞳はせわしなく動き、鼻はぴくぴく動き、口は何かを発しようとしていた。

 ――メガイエローを包み込むスーツの要所で表面の生地がはがされ、内側にあるシステム回路を見せていた。その姿はまるで空港の格納庫で整備を受ける747だった。マスクをはがされ、彼女の身体は台の上で捕縛されていた。だが、彼女が反抗することは無かった。
「その機能を最大まで引き出すために、スーツは神経系と密接にリンクしているな――久保田め、これでは私の計画と相違ないではないか」
 ドクターヒネラーはメガイエローの反対側に控える忠実なる僕――シボレナへ笑いかけた。その顔はすごみがあった。
「どういうことでしょうか、ヒネラー様?」
「つまりだ、メガレンジャーのシステムは人間の能力を最大限に発揮させるために脳や神経とリンクしている。このリンクを断ち切る超音波を照射すれば、こやつらの息の根はとめたも同然なのだ」
 千里はその一部始終を見ていた。だが、言葉を発することも無く、観察しているだけだった。
「ということは、ヒネラー様」シボレナはメガイエローの表面を腕でなぞった。光はまだ衰えていなかった。「メガレンジャーを操ることも……?」
「勿論だ。メガレンジャーの中枢コンピューターを書き換えれば、装着者の脳を書き換えたも同然なのだ――無論、変身していなければ効果は無いかもしれないが」
「それでも、結構です。いえ、そちらのほうがより――」
 学者的な所見に取り付かれていたヒネラーははっとして、シボレナへ顔を向けた。
「シボレナ、何かを考えているな」
「はい、ドクターヒネラー」シボレナは微笑みかけた。その顔は、小ぶりで端整あり、ヒネラーのすごみを何倍も濃縮した感があった――

「ハッ……夢……夢…かぁ……」
 全身汗まみれで千里は起き上がった。制服を半脱ぎしたあのままの状態で彼女は寝ていた。時間は深夜、部屋で制服のまま寝たことは、これがはじめてだった。無言でバスルームへ向かった。苛立ったような手つきで服を脱ぎ捨て、下着をはずしシャワーの下へ立つ。
「夢……だよね…悪い、悪夢…」
 熱い液体が冷えた芯を暖めたが、彼女の胸の中に潜む違和感は少しも流れてくれなかった。
 それ以来、彼女は悪夢に取り付かれた。敵の幻影、手術を受けた幻影、自分の姿が変えさせられた幻影、そのいくつもの幻は白昼夢のように彼女の頭を満たす。あの戦い以来、城ヶ崎千里は一目置かれるようになった。だが、千里は思う。そんな出来事は無かった。
 鏡の前に立ち、一糸乱れぬ白い素肌の千里。シャワーの水が滴り落ちている。乳白色のタイル壁とのコントラストがはっきりとしていた。
 

 その疑問が消散する瞬間は、案外早く訪れた。INETから連絡を受け、いつものように出動した。だが、仲間と合流するのが送れそうだった。そういうときは、変身して駆けつける。いつものように、彼女は建物の影に隠れると、デジタイザーに暗証番号を入力し、ボイスロックを解除するため、声をあげた。
「インストール! メガレ……ンジャァー……」
 変身が終了するかしないかのタイミングで、千里はその場に崩れ落ちていた。全身が黄色く淡い光に満ちていた。何かがおかしい。動悸を重ねる彼女の目の前は真っ赤だった。スーツが身体を締め付けるような感じ、嘔吐するような感じ、胃がフリスビーのようにかき回される感じ。
 身体の中にいくつもの風船が現れるようだった。その中には水素が詰められ、今にも発火しような危うさを抱えていた。
 現実、彼女の身体は膨らんでいた。胸はこれまでよりも何倍も大きく、太腿や二の腕、ヒップもまた冷静ではなかった。その身体が大きくなるに従い、彼女の身体は軽くなっていく。メガイエローを包む淡い光のベールが何枚も上から下へと走り、波動の流れを伝えている。
「はぁあああ…何がおこってるの……」
 強烈な痛みが下腹部に走り、千里は芋虫のようにヒップを突き出し、マスクに包まれた頭を地面にこすり付けた。ぱっと埃が舞う。咳き込む余裕も無く、突き出されたヒップの内側に走る感覚に腕を伸ばした。
「何が……ねえぇ、教えて……」
 切なげな響きを持っていた。メガイエローは風に倒されるように横転した。その部位に肥大化は、どこよりも激しかった。元より身体に密着しているメガスーツに、全身でそのような余裕を許す余裕は無かった。たちまちにあちこちが掻き毟ったように皺だらけになる。
「あひぃ!!」
 猫背になったメガイエローを突如として襲う雷鳴が彼女をもんごり打たせ、逆巻く感情に海老のように背筋が反り返った。

 生暖かい風がビルの隙間を駆け抜けた。そのわずかな隙間にうごめく影は、ひょっとすると、芋虫か何かにも見えたかもしれない。だが、その身体が光沢を帯びた黄色であり、幾何学的な模様が施されていた。彼女は、自らのクリトリスが異様に肥大化し変形した亀頭状の肉塊を握り、愛撫を繰り返していた。
「メガイエロー、何してる、まだこないのか!」
 彼女の腕から機械を通して声が聞こえた。
「あふっ…はっ……」
 彼女――メガイエロー・城ヶ崎千里は愛撫をついて出る口を塞ぎ、手元に手をやった。
「もう直ぐ…だから」
 それだけ言うが早いかスイッチを切ってしまう。
「もう直ぐ……い……い…イくう!」
 ぶるぶると痙攣した千里はうつ伏せの姿勢から、仰向けになり、手足で大の字を描いた。彼女の冷たい視界にビルとビルが映り、その狭い空の中に星の屑がぱっと散らばっている。その感覚――快楽は、城ヶ崎千里にとって全くの未経験のものだった。
 ぶるんぶるん、その肉塊はまるで反抗するかのように震え、彼女の身体を揺さぶった。心臓を揺さぶる鼓動に、千里は息苦しさを覚える。呼吸を繰り返しながら、煮えたぎった体液が身体のどこからとも無く湧き出て、排出された。
 たったそれだけだった。