絶望!囚われの十字架

 メガレンジャーの四人――メガブラック、メガブルー、メガイエロー、メガピンクは、その山の中の廃工場の前に着くと、お互いに顔を見合わせた。
「レッドの反応はこの中からよ」
「なんだか、不気味なところね」
 やがて、ブラックがその先陣を切って前へ出た。
「早くメガレッドを助け出して、この場所から出よう」
 彼らはうなずきあい、一人ずつその奥へと足を踏み入れていった。室内は薄暗く、ところどころ破れた屋根の隙間から差し込む日の光によって、かろうじての明るさだけが確保されていた。四人のスーツは体表面を鮮やかに際だたせていた。
 突然街に現れたギレールの挑発に乗って、メガレッドが姿消してから数時間が経過している。ネジレ次元にとばされたらしいレッドの反応は消失し、彼らは仕方なくデジ研で待機することしかできなかった。久保田博士からの連絡があったのが、つい二十分前。
 普段は冷静な瞬や軽挙妄動を戒める耕一郎ですら、仲間の安否に気が気でない思いを抱いていた。四人は工場のなかを次第に大きくなるレッドの反応に向けて、一直線に進んでいった。
 罠かもしれない。久保田博士が口をとがらせてそう警告していたが、それでも四人はあえてこの場所に飛び込まなければならなかった。
 工場は、かつて石灰石の採石に用いられたらしく、いたるところからベルトコンベアが張り出していた。なにもかもが真っ白で、粉っぽい。危険や立入禁止の表示が、まるでこの先の危険を暗示しているようだった。
「ここよ」
 メガキャプチャーを行き先に掲げていたメガピンクがそう声をあげる。ほっそりとした身体に桃色のスーツを張り付かせ、気がはやっている。汗が脇や腰に浮かび上がり、スーツをわずかに黒ずませていた。
 そんなふうになっているのはピンク――みくだけではなかった。傍らに立つメガイエロー/城ヶ崎千里もまたうなじから首筋にかけてを汗でぐっしょりぬらし、素肌と触れていないスカートとそれ以外の部分は明らかに色が異なって見えた。
 ブラックやブルーも、例外ではない。彼らの股間の逸物は汗で張り付くスーツの表面に浮かび上がっていた――四人の姿はいつも以上の緊張を表していたが、明らかにそれではない何かをまといつかせていた。
 ギレールの発した霧を浴びたせいか。少し頭痛がする。いつもの遠藤耕一郎や城ヶ崎千里だったら、そう感じたことをすなわち異変だととらえたかもしれない。
 だけど、そのとき四人は仲間を失い冷静ではなかった。メガキャプチャーの先には鋼鉄製の扉があり、反応はその内側から最大の感度を締めていた。
「鍵がかかってる」
 ノブをつかんでブルーががちゃがちゃ回した。その尻肉がスーツの上でぱっくり二つに割れているのをみて、イエローは顔を背けた――ブラックがメガスナイパーを抜き、数発連射する――扉が開き、いっそう薄暗い部屋が大きく口をあけた。
 そこは広い部屋だった。ちょっとしたホールほども広さで、奥のほうに何かがあった。
「何か見えるわ」
「あれは十字架じゃないか」
 四人は部屋に飛び込むと一列に広がった。その部屋の一番奥には十字架が四つ並んでいた。彼らはその前に立ち、その二メートルほどの十字架をそれぞれに見上げた。
 シルバーで磨きあげられた金属でできた十字架は、その薄汚れた部屋で、一種の美しさを放っていた。
「これって」
「わたしたちの」
「墓ってことかよ」
 その金属の表面には、アルファベットで彼らのコードネーム――メガブラック、メガブルー、メガイエロー、メガピンクの名が刻まれていた。
「その通りだ」
「ギレール!!」
 四人は声のする方向に一斉に振り返った。はいってきた入り口から悠然とした足取りで入ってきたのはネジレジアの幹部ギレールで――その手には、真っ赤なカラーのマスクが握られていた。
「バカなガキどもだ。仲間を見捨てて逃げれば、死ぬことがなかったものを、クックック」
 ギレールはバカにしたように笑い声をあげると、いまにも飛びかかろうとしている彼らの前に手にしたマスクを放り投げた。
「メガレッドをどこへやった!?」
「そのマスクが答えじゃないか? メガブラック、いや遠藤耕一郎クン」
 不意に発した言葉に四人はいっせいに凍り付いた。
「な、なんのことだ」
「とぼけるなんて、成績優秀なキミらしくないな」
 粗暴な言葉遣いに最大級に皮肉がのって、ギレールの口調は脂がのっていた。ギレールは虚をつかれた四人を一人ずつなめるように眺め回すと、短い笑い声をあげる。
「並樹瞬、城ヶ崎千里、今村みく――さんざん、手をやかせてくれたメガレンジャーがこんなガキだったとは、このギレールにとって、一生の不覚だ」
「ふざけるな!!」
「そうよ!」
「わたしたち、そんな名前じゃないし!」
 声をあげる彼らを嘲り、ギレールはゆっくりと剣を抜く。一歩前にでたメガブラックはメガロッドを大きく掲げる。
「やめておけ、貴様らの戦闘パターンは、メガレッドのデータを取り出して、完全に分析させてもらった」
「そんなものでおれたちが倒せるかッ!」
 啖呵を切ったメガブラックがギレールに挑みかかる。ギレールは剣を後ろ手に持ち、あいた手をブラックに向ける。その手のひらから光りの渦が飛び出た。
「ウワッ!!」
 一瞬で吹き飛ばされるブラックをみて、ブルー、イエロー、ピンクが一斉に動きはじめた。ギレールは迫ってきたブルーの腹部に二度殴打を決めた。身体はくの字に曲がって空中に浮かび、激しい爆発を起こす。
「ああああああっ!!」
 ギレールはそのまま冷静な面立ちで振り返ると、左右から迫るイエローとピンクのマスクを鷲掴みにした。
「きゃっ!」
「あああっ!」
 声があがると同時にギレールの拳は激しい電撃を帯びて、青白い光りが飛び出ると、イエローとピンクの体表面に光りの渦が触手を伸ばしていく。
「あああああああああああああっ!!」
「きゃああああああああああぁああ!!」
 光りが消えたようにそのスーツが光沢を失い、激しく煤けたスーツはあちこち裂け目を作った。マスクにはあちこちヒビが走っている。頭から手がはなされてもとっさに動くことができない二人の肩を、ギレールは再びつかみなおす。
「きゃああああああっ!」
「あああ! ああああっ!!」
 腕を広げてそのままイエローとピンクの身体を正面から思い切りたたきつける。力任せに衝突した二人のメガスーツは激しい火花を放ち、その発光はヒビだらけのバイザーの内側を一瞬照らし出す。
「あああああぁっ!」
「きゃああぁああっ!!」
 数度にわたって激突させられたイエローとピンクの肩から手がはなされると、二人はそのまま床へ倒れ込んだ。
「所詮おまえらなど、わたしの敵ではない。メガレッドを一撃を葬ったこのわたしのなぁっ」
「メ、メガレッドは」
「まだ死んではいない。もう虫の息ではあるがな」
 面白がるようにギレールは声をあげた。猛禽のような鋭い目で仲間の身を案じるメガブラックの袂へ寄ると、その腹部を思い切り踏みつけにした。
「メガレッドもあっけなかったが、おまえたちガキどもはもっとあっけない!!」
「うわあぁっ!!やめろっ!!!」
「言葉づかいがなってないようだなッ!!」
 ギレールはそういうと、そのマスクを掴んで、メガブラックを持ち上げると、そのまま壁際へとつれていった。むき出しのコンクリートにそのマスクを押しつけると、耕一郎がつぎにどうされるか十分に自覚できるまでそうさせててから、マスクを思い切り壁に激突させた。
「うわあああああぁっ!」
 複合金属で出来たマスクがコンクリートと接触しても即座に壊れることがない。だが、その力任せの動きはそのマスクの中で耕一郎に脳しんとうを起こすに十分だった。
「うわっ! ぎぁあっ!! ぐあああっ!!」
 その悲鳴が次第に狼狽したものに変わる。ぐったりと地面に肘をつき、彼が気を失ったことがわかるが、ギレールは気絶したメガブラックの身体を無理矢理引き戻し、二度三度とコンクリートにうち付け、その壁面に亀裂を作った。
「ブラック!!」
「やめて!!」
 仲間の悲痛な訴えは無視され、そのまま何十回かの殴打が加えられる――マスクに走るヒビがたえがたいほど広がり、最後に真っ赤にはれた遠藤耕一郎の顔がさらされたとき、あたりには激しい土埃とアンモニア臭が立ちこめていた。
「もう、やめてくれ……おねがいだ……」
 絞り出されるように飛び出た声は弱々しく、抵抗する力を失っていた。
「命乞いなど情けない」
 ギレールを胸ぐらを掴み、生気の抜けたメガレンジャーのリーダーの素顔を眺めて嘲笑を加えた。
 彼が手を放つと、部屋の奥に配置された十字架の一つから触手状のケーブルが伸び、メガブラックの手足を拘束した。
「なんだ……」
 譫言のようにつぶやく彼はそのまま十字架に引き寄せられ、そのまま磔にされる。
「まずは一人」
「ブラック!」
「メガブラック!」
 悲痛な声をあげる三人のほうをギレールが向く。激しいダメージを追い、立ち上がろうともがく彼らをみて、ネジレジアの幹部は嘲笑を隠そうともしない。
「おまえたちを倒すのは赤子を手をひねるようなもの」
「うるさいっ!」
 よろよろと立ち上がるブルーは肩を捕まれてしまう。ギレールはブルーを自分のほうへ引き寄せながら、その腹部に二度、三度を肘を打ち込む。
「うわああああああぁっ!」
「メガブルー!!」
 ギレールはブルーを己の身体から引きはがすと、その股間へつま先を打ち込む。瞬の身体はくの字に折れ、そのまま後ろへとばされメガイエローと衝突する。
「きゃっ!!」
 ブルーとイエロー二人まとめて絡まりながら地面へ倒れてしまう。
「クックック!!」
「もう許さない!」
 ギレールは右側から迫るメガピンクへ視線をやる。ピンクはなんとか構えをとって、立っていたものの、スーツはあちこち裂けめができており、バイザーは一部はがれて、みくの白い肌が露わになっていた。
「もう許さないだと? おまえたちに許しをこうようなことをした覚えはない」
 ギレールは大股で彼女に迫る。小さな手で拳を握った彼女は、その先を敵の体皮にうちつける。
「えいっ! えいっ!! このこのっぉ!!」
「どうした、まったく効き目がないぞ!!!」
 攻撃されるままにしているギレール。連続して繰り出されるメガピンクのパンチは、ギレールの外皮で打ち消され、ほとんどダメージを与えられていなかった。
「なんでぇっ!! きゃっ!!」
 マスクを鷲掴みにされ、声をあげるみく。ギレールはメガピンクに自分のほうを向けさせる。
「メガピンクよ、このわたしの攻撃にマスクが壊れているではないか」
「うぐぐうっ!!!」
 ギレールは声をあげながら、今度は彼女の首を掴む。ぎちぎちと持ち上げるに従い、彼女は足をばた着かせる。
「く、くびがしまるっ!!」
「その通り」
 宙へ持ち上げられ、ピンクは激しく抵抗するが、ギレールにはなんのダメージも与えられていなかった。
「あっ……」
 気絶すると同時にギレールは力の限り、メガピンクを突き飛ばし、地面へ投げた。
「ああああぁっ!!!」
「ただでは殺しはしないぞっ!! メガレンジャー!!」
 ギレールの足がピンクの腹部へめり込む。意識をさまし、激しい声を漏らすメガピンク――
「きゃあああああああぁっ! あああああっ!!」
 足がどけられると、敵のつま先はみくのわき腹をこづく。そこにできあがった裂け目にめり込むように二度、三度と蹴りが繰り返され、そのたびに痛みにさいなまれるみくの悲痛なうめきが漏れる。
「いやああぁぁっ!!」
 悶絶する痛みに気絶することすら許されない。光沢に包まれた身体が力を失おうとするたびに、ギレールはその力を調整し、彼女がそのまま意識を失うことがないように力を込めていた。
 すると、彼女の身体が桃色の鈍い光りを放ちはじめた。
「あああああああっ!! あああああああっ!」
 音とともにスーツの表面で光りがはじけたかと思うと、マスクが消失し、そこにはポニーテールの愛らしい今村みくの素顔――気の抜けた彼女の素顔がさらされていた。
「今村みく、貴様のことをスーツが拒絶しはじめたようだな……」
 ギレールはみくの腕を掴み、無理矢理に彼女を立たせた。激しく汗を吹き出したみくの身体にメガスーツはぴったりと張り付き、胸の起伏や尻のラインが露わになっていた。スカートは大きく裂け、足の付け根は小刻みに震えていた。
「やめてやめてぇ……」
「他愛もないわ」
 その声をきっかけにするように、メガピンクの背後で彼女の名前の刻まれた十字架が光りを放ち、ぬらぬらとした触手が背後からがっちりとみくの肢体を掴む。
「やだ!!やだやだやだっ!!」
 最後の力をしぼってその触手に反抗するみくだったが、ものの数秒で身体は無理に十字架へと引き寄せられ、ブラックとともに磔にされてしまう。
「これで二人目だ」
「俺たちをとらえてどうするつりだ!!」
「そうよ!!」
 メガブルーとメガイエローがギレールの前に立つ。ギレールは黄色く濁った目を、残った二人の戦士に向けた。
「我がネジレジアに抵抗するものは排除する。人類が二度と反抗することのないよう、念入りにな」ギレールは嘲り、二人の戦士に向けて構えをとった。
「わたしたちは……ううっ!!」
 そのときだった。ブルーとイエローは突然胸を抑えて肘をついて倒れると、もがき声をあげはじめた。
「ああっ、なんだく、くるしいっ!」
「効力を発揮し始めたようだな」
「うわぁあっ」
 背後で、ブラックとピンクもまたあわせて声をあげる。
「え、いやぁっ!!」
「ギレール、いったいなにをしたんだ!!」
「レッドを誘拐する前に貴様等に浴びせたガス、あれは猛毒だ。やや効くのに時間がかかったようだが、これで終わりだ」
 ギレールは構えをとき、地面に立て膝をついてもがき苦しむブルーとイエローに近づいていく。
「おまえたち、体調がおかしいとは思わなかったか」
「なんだと?」
「身体が熱い。火照る。そんな表情があっただろう」
 ギレールがブルーの肩を掴む。引き締まったボディーは汗にまみれていくつもの斑点を描いていた。
「メガブルー、みてみろ。貴様の股間を」
「なにをするんだっ!!」
 ギレールはブルーの股間に手をやった。その手の中で、細身の彼の肉体とは不釣り合いなはどグロテスクな性器がスーツの内側から浮かび盛り上がっていく。
「メガブルー……」
 目の前で、勃起していく彼の性器、漂いでる臭いが鼻をかすめてイエローは声を失う。
「やめろ!!やめるんだ!!」
 激しく混乱の声をあげるメガブルー。ビンビンになった彼の性器をみてから、ギレールはイエローへ視線を転じる。
「ギレール! よくもこんな卑怯なまねを!!」
「メガイエロー? 貴様とて、乳首は立ち、股間からは淫汁を流しているなあ」
 イエローは言葉にさっと胸に手をやり内股になった。
「それは……」
「なってないなどとはいわせん」
「メガイエロー、逃げてぇ!!」
 メガピンクの声が室内に響く。ギレールは十字架のほうを身やるとゆっくりと頷いた。触手の一本が十字架から伸びて、彼女の正面にでると、鞭のようにしなってその身体をうちつけた。
「きゃあぁあっ!!」
「メガイエロー、逃げれば仲間の命はない」
 その言葉は彼女の動きを封じるのに十分だった。ギレールは手を掲げると、その手のひらに青白い光りの玉を作った。
「うわあぁぁぁっ!!」
 ギレールはその球をブルーの股間へ持っていく。
「メガブルー! きゃっ!!」
 とっさにかけよろうとしたメガイエローへ向けてギレールの蹴りが放たれた。くの字に折れた彼女の身体は、くるくる回転しながら吹き飛ばされてしまう。うめき声をあげながら、悶えるイエロ――ー
「あぁっ……ああぁ……」
「うわああぁあぁっ!!」
 激しい音が聞こえて顔をあげた千里の視線の先で、ギレールに捕まれたブルーの身体は激しい煙をあげていた。
「メガブルー!!」
 煙が消えると、ブルーのスーツは股間を中心に腹部のあたりまで黒く焼け焦げていた。その姿にいつもの鮮やかなブルーの面影はなく、敵の手の中でがくがくと震える無様な戦士の姿があった――
「こんなスーツ、ぼろ布と一緒だ」
「やめてぇっ!!」
「メガイエロー、仲間が恥を晒す様をみるが良い!!」
 ギレールはそう宣言すると、触手を一本メガブルーの股間に向けて放った。激しくのたうつ触手の先端がまるで、イソギンチャクのように開き、彼の亀頭を包み込んでしまう。
「くあぁぁあっ!!」
「良いざまだ! メガブルー。どうだネジレジアの極上の触手で無様に犯される気分は!!」
「さ、さいあくだぜっ……」
 声をふるわせながらなんとか余裕を見せようとする瞬――その異常な光景に目を背けようとするのにそうすることができない。胸に手をあて、上下する灰を意識していた。ぐじゅぐじゅとメガブルーの股間が抽送される音が響く。
 ブルーは腰に手をやる。そこにはホルスターがあり、メガスナイパーがささっていた。千里は思わず息をのんだ。
「そうか、まだこのわたしに逆らおうとする意思もあるみたいだからなぁ」
 ギレールはおもむろにホルスターにあてられた手を掴むと、その手の中にある銃をブルーの腕ごと持ち上げて目の前に持ってきた。
「メガレンジャーの武器で、貴様のマスクを破壊してやるっ」
「たすけ、なきゃっ……」
 ギチギチと見せつけるようにゆっくりと、ギレールはブルーのこめかみにメガスナイパーを持っていく。立ち上がろうともがく千里。動こうとする意思と、その動きはつり合うことを放棄したみたいで、うまく動くことができない。
「あぁっん……」
「ボロ負けだぜっ」
 いつもの声に千里ははっとそのマスクをみた。ギレールによって発射されるビームの激しい光りと音がブルーのマスクに激突して爆発を起こす。
「メガブルー……瞬っ」
 煙のなかから、ブルーのマスクが破片となり地面に飛び散っていく。せき込み目に涙をうかべた千里の目の前に、瞬の姿が現れる。そのとき、触手は激しくブルーの股間を飲み込みながらぐいっと上を向いた。そこにある怜悧な瞬の表情が歪み、真っ赤に染まっていく。
「いやっ……そんなっ!!」
 どくどくとイソギンチャクは激しいけいれんをして、瞬の身体から力が抜ける。ギレールの笑い声がどこか遠くで聞こえた。イソギンチャクが拭い去られた彼の股間は濡れて光沢を放っていた――そして、メガブルーもまた他の仲間と同じように十字架から伸びた触手に絡めとられていく。メガイエローはその様をただ呆然と眺めることしかできなかった。
「さあて、これで最後の一人だな。メガイエロー?」
 千里は唇をかみながら立ち上がる。マスクの内側で顔をしかめ、涙を浮かべていた。ギレールは悠然としてその場に立っている。
「貴様が命乞いをするというなら、命だけは助けてやらないことはないぞ」
 満身創痍の千里に嘲りの言葉が投げられる。まがりかけた彼女の背すじがその言葉にぴんと伸びた。
「わたしは、命乞いなんてしないっ――あああぁぁあっ!!」
 彼女の高らかな宣言が終わるより前に、ギレールの目から放たれたビームは彼女の胸部に爆発を起こした。
「ならば仕方ない」
 空中でくるくるまわるその身体を捕まえて、ギレールはそのまま彼女を壁ぎわへと追いやった。冷たいコンクリートに彼女の胸を押しつけぎちぎちと力をかけていく。
「ううあぁっくあああっ……はなし、はなせッ!」
「他愛もない女だッ!」
 背中に冷たい感覚を覚えて、彼女は後ろ目をやった。ギレールの手に握られたサーベルがマスクの表面に反射して青白い光りをみせた。
「きゃあああぁぁっ!!」
 その剣の一振りによって、背中から尻にかけてのスーツが一撃のうちに破断され、激しい火花を身体の内外にうけて、彼女はえびそりになりながら、顔を歪めた。
「あぁあっ!!」
 突き飛ばされ、壁沿いに押し出されてしまう。背中に焼けるような痛みを感じながら、千里は振り返った。
「この剣をもってすれば、メガスーツを裂くことなどたやすい」
 ギレールは一歩前にでると、千里の目の前からかき消すようなスピードで走り出し、メガイエローの目前に立った。
「きゃぁああっ!!」
 剣の次の一振りで、スーツの肩から腰にかけてざっくりとした裂け目ができてしまう。
「ああぁっ……なんて早さなのっ」
 呆然と声をあげることしかできないメガイエロ――ーギレールは無言でその腕を掴む。手を離そうともがく彼女の目の前にその剣が差し出された。
「ああぁっっ!! あああああああぁっ!!」
 ギレールは剣をおもむろに腰にもどすと、今度はその拳を千里の腹部へ二度、三度と殴打を加える。そのたびに激しいスパークが飛び散り、彼女の顔がゆがむ。
「あああっ」
「もはや武器などいらぬ」
 そういって、ギレールはスーツの裂けていないほうの胸丘を鷲掴みにしてもみくだす。
「いやぁっ!!」
 声をあげて千里は手を伸ばすが、ギレールの腕を退けることはできない。敵に陵辱される屈辱に顔を真っ赤にして首を振る――ギレールはやがて手を離すと、千里の背中を再び壁に押しつけた。
「こんなことされたって……わたしは……」
 声は震えを帯びてしまう。冷酷無比なギレールの動きは、戦いというより家畜を処理していうかのような無慈悲な動きを持っていた。
「このわたしの手で乳首を興奮させてからなおそんな口が聞けるか」
 そういって、ギレールは反対の手でスカートごと股間をわしづかみにする。
「だめっ!!」
 その力づくの動きは、愛撫するとかそんなものじゃなくて、千里はその腕でギレールが身体をバラバラにしてしまう予感に囚われてしまう。
「やめてぇえ!!」
「そうだ、その声で泣けわめけっ!! ハッハッハッ!!」
「きゃあぁぁぁあっ!!」
 腕が離されたのもつかの間、次にギレールの肘がイエローの股間に命中し、彼女は腹部を抑えたまま背中をえびぞりにして痛みに耐えていた。
「どうした声がとまっているぞ」
「あぁぁあっ」
 ギレールはスーツの裂け目を左右に掴み、力付くで押し広げていく。スーツの下から吹き出すように広がったのは、諸星学園高校の制服で、はだけたブレザーとブラウスが、鮮やかで精悍なスーツと混ざりあっていた。
「えぇっ、どうして……」
「スーツが一部解除されてしまったようだなっ」
 ギレールはブラウスを引きちぎると、そこに現れたレモンイエローのブラジャーの上から千里の胸を再び掴んだ。
「い、いやいやっ……」
 女子高生の姿として、そしてメガレンジャーの女戦士として犯されている光景が目の前に広がり、千里はただ涙を流すことしかできない。その腕は力づくに彼女の肉体を弄び、震えながら首を降り続ける彼女の身体に淡い光りが帯びはじめたとき、千里はさらなる涙をこぼした。
「マスクが……」
 スーツが半ば以上機能を失い、マスクが消滅してしまう。その小さなマスクの中に納められていた千里のストレートヘアが左右の肩に広がり、汗と涙でいっぱいになって、口元からは涎を垂らした千里が、真っ赤な目をギレールに向けた。
「これで……」
 声をあげようとする千里の頭をギレールが掴み、ぐりぐりと上下左右に動かした。「いやっ、いやっ!!」
 彼女の場合、十字架は正面にあった。ギレールの背後にあるその十字架が鈍い光りとともに真っ白な触手を伸ばしてくる。ギレールは退き、彼女の肢体にそれは絡んできた。
「あぁっ……」
 手足が空中に浮き上がる。彼女は目を細めて、それから数秒後に背中に押しつけられる十字架の感覚にはっと目を見開いた。
「これでメガレンジャーも全滅だな! ハハッッハハッハアハッ!!」
 ギレールは十字架によりながら、声をあげた。その声は狭い室内でいくつにも反響して響き、どこまでも続いていくようだった。

「ああぅっ…・・」
「く、はずれない……」
「もう……」
「みんな、大丈夫か」
 リーダーの声は鈍かった。ギレールによって十字架に囚われた四人はいずれもマスクをはがされ、スーツを破壊されていた。そのパワーのほとんどを失い、顔は一応にひきつり、恐怖に彩られている。
「なんとかね」
 イエローは顎をひいて正面から顔を背けて、そう呟いた。
「ああ」
 憮然としたブルーは、半ば以上スーツが吹き飛び、素肌を見せていた。その肌もスーツを消滅させるほどの熱にいぶされ、真っ赤に爛れていた。
「でも、わたしたち、このままネジレジアに」
「縁起でもないこというな!!」
 みくの弱気に、耕一郎は声をあらげる。その言葉に泣き出してしまうみく――四人の間に流れる空気は決して楽観できるものではなかった。そして、ギレールが、消えたときと同じように突如として現れたとき、四人は一応に顔を強ばらせた。
「クックック、メガレンジャーの雑魚ども、気分はどうかな」
「さっさと解放しろ!!」
「そうよ!」
「無能な豚ほどよく叫ぶとはまさにこのことだ」
 ギレールが言葉をきると、その直後にその背後にクネクネが現れ、四人それぞれの前に立った。四人はそれぞれ銃剣をもち、それをメガレンジャーの四人に見せつけるように掲げた。
「圧倒的な戦力を前にして、未だそんな口がたたけるとは、ほとほと人間というものはバカなものだな」
 ギレールはクネクネたちにうなずいた。いつもメガレンジャーの圧倒的な力の前に破れる戦闘員たちは意気揚々と銃剣をふるい、怖じ気付き涙を浮かべた四人に大股で近づくと、その剣先を次々に彼彼女らのスーツにあてはじめた。
「きゃああぁっ!!」
「あああああっ!」
「やめてぇぇって!!」
「うわあぁあっ!!」
 今や磔にされあらがう手段を失ったブラック、ブルー、イエロー、ピンクは、クネクネたちにとってはただの標的でしかない。クネクネたちはその体の表面にフィットしているスーツだけを標的に燦然と輝く剣先を当てて切りつけることを繰り返す。
 まるで体に貼られた爆竹が破裂するように四人の体は次々に火花を散らした。その真っ赤に燃えるスパークは、スーツの裂け目やマスクをはがされた顔に降り注いでいく。
「あああああぁあっ!!」
「あああああああぁ!!」
 スーツの機能が停止しても、複合素材でできた生地そのものの耐久力が四人の体に損傷を負わせるのを阻止しようとした。実際、クネクネたちの銃剣はメガスーツを破壊することはできなかった。しかし、それでも、耐久力の落ちたスーツは次々にほころびをつくり、自らの体が切り刻まれていくかのような恐怖にあおられ、千里、みく、瞬、耕一郎は声をあげつづけた。
「ああああぁっ・・・あぁああっ」
「はぁあぁぁぁっ」
 暴虐の嵐がすんだとき、自らの悲鳴に呼吸を乱した四人は荒い呼吸に肩を上下させていた。それぞれのスーツはさっきにもまして光沢を失い、細いタイヤ跡のような無惨なあとを、スーツのそこかしこに焼き付けていた。
「無断なものだ」
 ギレールの嘲笑に、四人は頭をぐったりと下げていた。ちりちりという痛みが全身を苛み、ともすれば涙がとめどなくあふれそうになるのを必死にくい止めていた。
 ブルーとブラックは歯を食いしばり。スーツからたちのぼる白煙が顔を歪めていた。イエローはきれいだったストレートの黒髪の先端が火花に焼け焦げ、度重なる暴力で乱れてしまっていた。もっとも明るい色の彼女のスーツは激しい傷跡がもっとも生々しくうつっており、汗と――いつしか流してしまった失禁により、その色を黄土色に変色させていた。
 ピンクは、完全に涙をこぼしており、スーツの裂け目からほとんどでてしまっている胸丘が小刻みに震えながら、その痛みと恐怖を物語っていた。
「メガレッドが助けてくれる……メガレッドが……」
「バカめ、メガレッドはとうにこのギレールが……」
「うそよ!」みくの声は、ギレールを一瞬そちらにむけるだけの力を持っていた。「じゃあ、メガレッドはどこにいったのよ!! メガレッドを、健太をここにつれてきて!!」
 髪を振り乱し、半ば狂気に駆られた声で叫ぶ彼女を仲間はみやった。ギレールは濁った目を少女にそそぎ、それから笑い声をあげた。
「よかろう。メガレッドをおまえらに見せてやろう。だが、メガレッドは既にネジレジア本国に転送しており、呼び戻すには少しの時間がかかる」
 ギレールは手をかざした。誰もいない空間に光りが宿りその中から真っ赤な体が姿を表した。
「レッド!」
「メガレッド!!」
「そうではない」
 ギレールは笑った。四人の目がそそがれる先にいるのは、まぎれもないメガレッドだった。だが、その様子がおかしい。胸のパネルはすべて紫色で、ベルトのバックルも、MではなくNとなっている――
「これは、わたしが作り出したメガレッドの戦闘力防御力をまねたクローンだ」
「クローン!?」
「なんで、そんなものが必要なのよ……」
「このクローンを使って、レッドが仮に生きていたとしても、倒す方法があることを証明しようではないか」
 ギレールがそのクローンレッドの肩をたたく。レッドは頷く。固唾をのんで状況を見守る四人の目の前に、再びクネクネが立つ。無言の見つめあいがつづく。
「なにを」
「メガレンジャーよ、己の武器を差し出すのだ」
 ギレールの声にクネクネは腕を四人の目の前に伸ばす。激しい発光が宿り、その腕のなかに、メガロッド、メガトマホーク、メガスリング、メガキャプチャーが現れた。
「うそっ!!」
「かえせ!! かえすんだ!」
 十字架のうえでもがく四人に向けて、クネクネたちは武器を見せつける。唇を噛んでされるがままにしかならない現状に四人は顔をしかめる。
 武器はゆっくりとその胸元へ突きつけられる。光りが宿り、四人のスーツはそれぞれぼやけた光りに覆われる。
「うっぁっ!」
「あああぁっ」
「なにっ」
「ギ、ギレール、なにをするんだ!!」
「デジタルパワーを、おまえたちの武器に吸収させているのだ!」
「なんですって!!」
「その武器は、スーツと一緒に用いることで本来の何倍ものをパワーを発揮する。つまりその武器はスーツのエネルギーを吸収する機能があるということだ」
「なんてやつだ」
「ああぁっ!!」
 四人ともに苦しげに身をよじらせていた。特にピンクとイエローは胸をつきだし、うなり声をあげながら身をくねらせている。
「いやぁあっ力が抜ける……」
「しびれてくるッ……!」
 光りが途切れてエネルギー吸収が終わったとき、スーツはますます白煙を立ち上らせていた。四人はがくっと十字架にぶらさがるような体勢になり、苦しげな表情を隠すことも出来ずにただそこにいることしかできなかった。
「さあて、クネクネども、このクローンにメガレンジャーどもの武器をぶつけるのだ」
 クローンレッドはゆっくりとクネクネと対峙した。四人はかすみ視界の向こうにその様を見せつけられていた。激しいのどの乾きを感じ、ちくちくとした痛みは次第に強くなっていく。そんな目前で、クネクネたちは手にした武器を激しく発光させながら、次々にクローンレッドへ切りかかりはじめた。
 メガロッドの先端でクローンレッドは持ち上げられ突き飛ばされる。メガトマホークが目にも留まらぬ早さでレッドの体を引き裂いていく。色とりどりの光弾がメガスリングから飛び出してはいくつもの爆発が起きる。とどめにメガキャプチャーの特殊音波を浴びて耳をふさいでクローンレッドは苦しげに突っ伏した。
「さあて、仕上げだ」
 クネクネたちは一カ所に集まると、手にした武器を一カ所に集めた。
「マルチアタックライフルだ……」
 瞬の呆然とした口調に、ほかの三人が目をギョッとさせた。クネクネたちはまるで四人の生き写しのような動きを見せていた。その動きに彼らはそれぞれ自らを重ね合わせてみてしまい、その先にいる敵の作り出したクローンに、仲間の姿をみてしまった。
「やめて!!」
「レッドを殺さないで!!」
 訴えが聞き入れられるはず等あろうはずもなかった。マルチアタックライフルは大量のデジタルパワーを吸収し、激しく発光しながその照準を苦しみながら突っ伏するレッドに向けられていた。飛び散る光りの渦、爆発的に広がる光りと煙――黒煙が彼らの十字架も包み込み、顔を背けた彼らの目の前に差し出されたのは、黒く焦げたこなごなの破片だった。
「イヤッ……」
「そんなっ…・・」
「だまされるな……」
 耕一郎の声は弱気で、かえって彼らの絶望を色濃くする効果しか抱かなかった。この悪趣味なショーが彼らの敗北をいっそう色濃いものにし、沈痛な空気が重苦しくあたりに立ちこめていた。
「どうだ、これでたとえレッドがおまえたちを助けにこようとも、希望などないのだ」
「こんなのうそよ……」
 メガピンクは顔を背けて、そう呟く。ギレールの目がその横顔に注がれている。
「うそなどではない。ただし、おまえたちがネジレジアに降伏するというなら」
「黙れ!! こんな茶番で俺たちをだまそうたって、うぐっ!!」
 ブラックの声が途切れた。ギレールは触手をブラックに向けると、その先端でブラックの逸物をくわえこませたのだ。
「うああぁっ!! なにをするっ!!」
「デジタルパワーの次は生体エネルギーを吸収しようというのだ」
「ブラック!!」
 声をあげるイエローの頬に平手打ちにすると、ギレールはそのむき出しの胸に手を触れた。
「やめて……こんなことしてなんになるのよっ」
「メガレンジャーが懇願する姿をみたいのだよ」
 顔立ちの整った千里の表情にかげりが現れた。ギレールは触手をその目の前に掲げると、ゆっくりと下半身へ伸ばしていく。行われる事態に目を見開き体をよじろうとする彼女の腰にギレールの腕が添えられる。
「はぁあっ!! ああぁっ!! いやいやイヤアアァアアァアッ!!」
 ぐじゅぐじゅ音をたてながら、触手は千里の胎内へ入っていく。彼女の体の倍以上もあるその触手に蹂躙されて無惨な血がその鮮やかなスーツの表面を震えながら伝っていく。
「ああぁあっ!! ああぁあっ!!」
「陵辱されてしまえば、メガレンジャーも所詮は人間だ」
「ああぁあっ……はぁぁっ……はうっ!!!」
 悲痛な声をあげながら髪を振り乱す千里の頬をギレールは平打ちにする。一瞬で平常に引き戻されて、大きく見開いた目で相手の目を直視する千里の目に涙が堰を切って流れ始める。それと同時にイエローの体が妖しく光りを放ち始める。その光りは静電気のように彼女を包み込むと、触手を介してギレールに向かって注がれていくように見えた。
「あああっ……体の力がぬける……」
 譫言のように声をあげる彼女――触手に突き上げられるたびにあがる声が次第に艶っぽくなり、磔にされながら艶めかしく体をふるわせ始める。
「あああぁあっ……いやっだめぇ……」
 ぴくんぴくんと、触手の上で飛び跳ねる千里にいつもの精悍な面もちはなく、横に並ぶ仲間の絡みつくような視線と、激しく出し入れを繰り返す触手の力に、千里は顔を真っ赤に染めていた。
「あぁあっっ!!」
 ビクッと身をよじらせ、身体を強ばらせる千里――
「イクッイクァッ――いっちゃううぁ! あぁあぁあぁああああアアッ!!」
 触手は激しく千里を突き立て続けている。絶頂の余韻にひたった千里の横顔は無抵抗で半開きにして、濡れた髪を頬にはりつかせていた。
「うわぁあぁあっ! うあああ!!」
 メガブラックは背中をえびそりにして、逸物をくわえた触手によって快楽をそそぎ込まれて、何度も体を痙攣させていった。まじめで理性の塊だったリーダーの頬には紅がさして、すっかり力が抜けてしまっていることを示していた。
「メガピンク、メガブルー、どうだ、これでも無益な抵抗を続けるというのか」
 ギレールの声に、ピンクとブルーは顔を背けていた。生体エネルギーを吸い取られ、既に耕一郎と千里は虫の息で、健太のネジレジアに既に囚われているらしい。これ以上勝ち目があるとは思えなかった。それでも、ネジレジアに降伏を申し出ることはできない。激しいせめぎあいが二人を苛んだ。
「オレたちは負けるわけにいかないんだ」
 ブルーの言葉は、ブラック以上に力のないものだった。その言葉にピンクも頷く。
「そうか、メガブルー、メガピンク。その言葉を後悔するがいい」
 二人の目の前にギレールが取り出したのは、大蛇のような触手だった。それは左右の片側がイソギンチャクのようになっていて、反対側がきのこのようになっている。
 どんな道具なのはそのグロテスクな外見と今までの流れからいってあまりに明らかで、みくはあ何度目かのべそをかき、瞬は唇を強く噛んだ。
「いや!!!嫌あぁっ!!ああぁああっ!!!」
「くっ……」
 触手は二人の予想通り、それぞれの股間に挿入されそれと同時にブラックとイエローの例に漏れず体が発光をはじめた。
「その触手はおまえたちのエネルギーで、相手を苛む作用をもっている。すなわち、ブルーが快楽を感じれば、それだけピンクからエネルギーが吸い出され、ピンクが快楽に包まれれば、ブルーはますます力を失うのだ」
「なんだとっ」
「そんなぁっ!!」
 度重なる残虐さと異常な事態を迎え、二人は目を細めたり大きく見開いたりを繰り返していた。喘ぎ声を繰り返す。イソギンチャクはブルーの逸物に激しく吸いつき吸い出すことを繰り返す。
「あああっあああぁあっ!!」
 ピンクの胎内に入り込んだ触手は膣の中で大きくなったり小さくなったりを繰り返しながら奥へ入っていく。その先端が子宮口に達したとき、震えるような痛みに顔をしかめたみくは十字架にしきりに頭をぶつけることを繰り返す。
「あぁだめっ、痛いよっやめて瞬――こんなのいやっ」
 熱にうなされたように声をあげるみく――その光りは触手の中の吸収され、ブルーに達すると倍にする光りがかえされる。
「うわぁああぁっ」
「ああああぁあっ!!」
「言ったそばからあっと言う間ではないか」
 ギレールの嘲りを二人がきいている余裕などなかった。触手は二人の胎内に入り込む前の倍の太さになり、光りの渦は左右の端部をいったりきたりを繰り返しながら、激しく脈動していた。
「あああぁあああああぁっ!! ああああああぁあっ!! イ、イクウッ!!」
 それは普段おとなしい彼女からは想像ができないほどの激しい声だった。重なるように響くブルーの悲痛な声に比べても何倍も大きくほとばしる光りの渦もずっと大きいものだった。びくんと二人は体をえびぞりにして、十字架に身を横たえる。息はしていたがその生の息吹はずっと弱々しかった。

 それから、四人の戦士は十字架から逃げだすことも出来ず、その拘束にただ身をゆだねることしかできなかった。恥辱の生々しい感覚は四人をそれぞれの心を別々の角度から苛み、そうして晒されている時間は、永遠のように長く感じられた。
 四人はエネルギーのあらかた――スーツと体の両方を吸い出され、戦うことも出来ない状態で、まといつく汗と精液、愛液に塗れて小さく震えていた。
 ギレールはいったん部屋から出ていき、しばらく立ってから戻ってきた。背後にクネクネが引く一台の台車を従えていた。それは――十字架にされたメガレッドがのっていた。
「レッド」
「健太」
 マスクは剥がされ連続した攻撃を受けたのかスーツは真っ黒に焼け焦げ、そしてやはり四人と同じようにレイプされたであろう股間を露出させていた。意識を失い、死んでいるのか生きているのかすら定かではなかった。
 四人の間に沈痛な空気が立ちこめた。レッドだけが、目の前にいないレッドだけが頼みの綱だった。敗北を舐めさせられた彼彼女らはいつしか無意識にレッドが助けにくることを望んでいたのだ。
 だが、そんな奇跡は起こらなかったのだ。
 涙を流し、血を流し、メガブラック、メガブルー、メガイエロー、メガピンクの四人はやがて行われるであろう処刑を前にして、ただ磔にされていることしか出来なかった。
「さて……」