ショック!胸が膨らんちゃう!?

「こ、これは……」
 メガイエロー/城ヶ崎千里は、手にしたメガスリングを下げ、その壁を見た。
「ああぁっ………ち、千里……千里……?」
 『それ』は喋った。
「メガピンク……! みくなの?」
 工場の殺風景な外壁の一部が、むき出しの岩盤になっていて、その中央にみく――メガピンクそっくりのレリーフが彫られていた。トルソーをつきだし、まるで陸上のゴール寸前のような、中世の船の先端に取り付けられた彫刻のような格好にされていた。
 それは動き、みくの言葉を話した――
 ネジレ反応を示した廃工場を、五人で手分けして捜索していた。メガイエローはメガピンクとともに地下室に降り、あちこち探しまわり、千里がちょっと目を離した隙にピンクが消えてしまい、探して、階段を次々降りていく間にこの場所についた。
「なんなの……一体これは」
「メガイエロー、それはあなたの仲間の末路よ……」
「シボレナ!」
 かけられる声にメガイエローは振り返った。青いコスチュームに身をつつんだネジレジアの作戦参謀シボレナと、もう一体のネジレ獣が影から姿を現して、彼女の前に立った。
「どういうことなの?!」
「ふふふっ、解らない? メガピンクは、このネジレ獣レントゲンネジラーによって石に変えられてしまったのよ……!?」
「メガピンクを石に??」
 シボレナの紹介するネジレ獣を千里はみた。カメラのフラッシュのようなものを頭の上に、蠍の針のように下げている。
「レントゲンネジラーだ!」
「ふふ、いちいち、繰り返す必要あるのかしら。メガイエロー、このレントゲンネジラーの物質変換光線を浴びればあなたたちメガピンクだってあのざまよ。残念だけど、まだ死んではいないようだけど、それももう時間の問題」
「メガピンクを返して」
「それはできない相談だわ。それとも力づくでこのレントゲンネジラーを倒してみる?」
 全体的にはヒョロっとしていて、強そうには見えなかった。もちろん、油断は出来なかった。だけど、メガピンクを置いて逃げることも出来なかった。
「望むところよ、シボレナ」
「わたしはこの勝負に手出ししないであげる。メガイエロー、あなたがこのネジレ獣を倒せれば、メガピンクは元に戻してあげるわ。だけど、もし敗れれば……言わなくてもわかっているわよね」
 メガイエローは頷いた。シボレナが後ろに下がり、レントゲンネジラーが前へ出た。
「レントゲンネジラー、メガイエローを好きになさい……」
「かしこまりました。シボレナ様」
 耳障りな声で、レントゲンネジラーは答え、メガイエローの前に立った。
「いくわよ! メガスリング!」
 メガイエローは手にしたメガスリングをレントゲンネジラーに向けた。ネジレ獣に向かって引き金を次々絞り、光線が放たれるのを見た。それから右へと滑るように跳躍すると、スルッとその背後に躍り出た。
 相手は光線を放つ。それはあのフラッシュのような部分からのハズで、その前に立たなければ、光線を浴びるはずはなかった。千里はマスクの中で首を左右にまわしながら、素早く状況を見て取った。シボレナからも離れている。レントゲンネジラーには、光弾の目眩ましがきいているように見えた軽く跳躍して、脚を向ける。
「えいっ!」
 右足蹴りをしてから、左を脚を首筋に突き立てる。そのまま、反動で後ろへそれる。目の前に倒れるレントゲンネジラー、メガイエローは地面へ降り立つと、右腕をつきだした。
「一気にとどめよ! ブレードアーム!」
 走りだしたメガイエローに、遅ればせに振り返ったレントゲンネジラーが発光体を向けた。まずい――千里はさっと身体をくねらせた。
「フラッシュビーム!」
 向かってくる光線を、メガイエローは寸前で避ける。体勢を崩し地面に落ちて転がって身体を起こす。
「意外と……素早い!?」
「メガイエロー、なかなかのスピードだなあ……」
「それはどうも……」
 くねくねと身体を起こすレントゲンネジラー、その目が醜く歪むのを見て、千里は嫌悪感を覚えた。顔を向けられたのに、胸を掻きむしるようなそんな嫌悪感を覚えさせる顔だった。
「だが……さっきの攻撃を完璧に避けられたわけではあるまい……」
「えっ……?」
 余裕の声のレントゲンネジラー。千里は身体を起こそうとした時、脚に走る激痛に思わず顔を歪めてその場に引き戻されてしまう。
「あ、脚が……!!」
 見ると、右のブーツの表面には透明な氷がびっしりとまといついていた。踝から下の感覚がなくて、ぎゅうっと外側から巻き付くような圧迫感にメガスーツを冒して身体の内側に侵食する感覚が分かって――言葉を失う。
「そう、いかにスピードある攻撃が得意なオマエでも、光のスピードにはかなうわけがあるまい……さあ、メガイエロー、このオレ様がたっぷり料理してやろうじゃないか……」
 低い声で笑うレントゲンネジラーは、彼女の攻撃にダメージをうけた様子もなく立ち上がった。右足に走る刺すような冷気に、千里は唇を噛んで足をひきずって立ち上がる。
「メガピンクを助けるまで、わたしはやられたりなんかしないわっ」
 脚からの冷気がオーロラのベールのように頭の上まで突き抜けてきて、ずきんずきんと身体の中へ広がっていくのが解る。寒いのに千里はメガスーツの内側にじっくり汗をかいて、気持ち悪さが全身を支配していく感じを覚えていた――
「その意気だ、さあ、メガイエロー、向かって来い」
「ふざけないで!」
 千里は腰がメガスナイパーを抜くと、たて続けに引き金を絞った。その光線はレントゲンネジラーの身体にあたると跳ね返り、明後日の方向へと飛んでいく。効いていない――! 千里は生唾を呑んだ。片足だけじゃ、満足に攻撃をしかけられない。そのうちに、レントゲンネジラーの姿がかき消すように消えて、目の前から見えなくなった。
「ど、どこへいったの?!」
「……ここだよ」
 声が背後で聞こえたとき、メガイエローは手首を掴まれ、メガスナイパーを引き剥がされた。相手の手に武器は落ち、その硬い銃口が彼女のパレオの上に押し当てられたとき、直ぐ目の前の距離に立っているレントゲンネジラーの姿が見えた。
「オマエよりはスピードでは劣るが、これで充分だ……!」
 レントゲンネジラーは凍り付いていない方のイエローの脚を踏みつけにすると、銃を更に押し当てた。
「ああああっ!!」
 メガスーツはメガスナイパーのイオンパルスビームを矢継ぎ早に吸収してそのたびに激しい火花をあげた。氷漬けになった右足と踏み付けにされたその左足が後ろに吹き飛ぶののを許さず、彼女は喘ぎながらびくんびくんと身体を震わせることしか出来なかった。
「きゃああっ――ああああっ!!」
 五発の発光が終わった時、レントゲンネジラーが左足から足をどけ、メガイエローはその場に倒れこんだ。メガスーツは燃えるように熱くて、じんと身体を痛みが疼いていた。許可スーツといえども、痛みをセーブしきれてはいなかった。
「ああぁっ……」
「もう終わりか?」
 声がする――
「まだよ」
 千里は反射的に返して、首を動かした。バイザーの視界のむこうにメガスナイパーを投げ捨てるレントゲンネジラーの姿があった。千里は口の中に鉄の甘い味を感じて、顔を歪めていた。煙が入り込んだのか瞼に涙がたまる。
「まだ、まだよ」
「じゃあ、お次はもっと楽しんでやろうじゃないか……」
 相手は明らかに余裕をもって戦っていた。フラッシュ――発光体は一直線に向けられていた。避けきれない。石になったメガピンクの姿が浮かんで、千里は絞めつけるような恐怖に頬を涙で濡らした。
「フラッシュビーム!」
 マスクの前で腕でクロスさせた。発光体は眩く輝くと、その光線は集束してメガイエローに落ちた。一瞬で光りはやみ、すべての音や光りは消えた。
「失敗……?」
 千里は腕の間からその姿を見た。光りは止んでいた。
「いや、成功だ、メガイエロー」
 声がする。耳障りな声だった。千里はレントゲンネジラーを見た。その不気味なほどに落ち着いた声――不意に心臓の鼓動が聞こえた。それが出し抜けに高まり――身体――胸が焼け付くような痛みに襲われてはじめて、目を見開いた。
「な、なにをしたの!!」
「それは見てのお楽しみだ……」
 頭をかき乱すような感覚は、脳から下って胸に向かった。胸が信じられないほど熱くなり、千里は息を吸い込んだ。空気は妙に甘くて、それらはすべて胸の中に吸い込まれていく――!
「む、胸が……」
「ほう、胸がどうした?」
「胸が膨らんで……いく……なんなの!」
 千里は仰向けのまま、身体を起こせなかった。胸がヘリウムガスを入れた風船のように膨らんだかと思うと、スーツにあしらわれた白帯に五色のプレートの装飾を次々に歪ませふくらませていった。
「これこそオレ様の物質変換光線の威力だ。メガイエロー、今オマエの身体には、牝牛のDNAが注ぎ込まれたのだ。つまり、オマエは胸だけ牛になろうとしているんだよ!」
「はあっ……んんっ」
 声をだそうとするのに、胸を圧迫する感覚に言葉が出なかった。メガスーツは身体にフィットするように作られているから、収縮したとしても急な身体の変化についていかず、絞めつけるような感覚が呼吸がうまく出来ず、千里は顔を真っ青に染めた。
「う、うしに……?」
「作用。これも全て、ドクターヒネラー様の地球の動物から強力なネジレ獣を創りだそうとする研究の成果。この光線が物質を石にかえるだけのつまらないものであるわけがあるまい」
 今や黄色い胸は二つの大きな山の様になっていた。胸丘が成長を終えると今度は乳首がびくんと身体の内側から糸を引いたように大きくなるのがわかった――なんなの――千里は涙を浮かべた。身体がネジレ獣の光線に支配されているその光線は、メガスーツを物ともせず、身体に入り込んでくる――
「や、やめてっ!!」
 悲痛な悲鳴がこだましてメガイエローは肩を震わせるが、胸の重みが身体を横に向けることを許さない。
「あはははははっ、メガイエロー、いいザマね!」声に千里は更に顔を歪ませた。シボレナが見ている。
 声がかけられる間にも、乳首はすりおろされるような痛みと共にその大きさを次第に増していた。千里は無我夢中で胸に手を伸ばした。そうしてスーツごしにその弾力のある肉に手を触れた時、その胸の中に走る淡い電流に目を細めた。身体は熱く、焼けただれるようだった。
「さあ、メガイエロー、そろそろ負けを認めることね……!」
 焼けただれる感覚の中で、千里はシボレナの声をきいた。すべての感覚はボロ雑巾のように一緒くたにされて、だけど、その宿敵の声に、わずかばかりの理性を取り戻した――
「いやっ、わたしは戦う!」
「……シボレナ様、いかがいたしましょうか?」
「いかがもなにもないわ、レントゲンネジラー。身も心も牝牛にしてやりなさい!」
「……とのお言葉だ!」
 レントゲンネジラーの手が伸びてくる。千里は腕を掴まれ、身体を起こされた。倒れている時は解らなかったけれど、胸はいつもの何倍にも膨らんでいて、だらんとだらしなく下へと垂れていた。スーツノ裏側でうねるようにうごめいている乳首がスーツにこすれて、汗を潤滑油に蠢いていて、息を漏らしてしまう。
「ああぁっ……ああっ……」
 肩に突き刺さるような重みに、千里は目を細めた。前かがみにされて、立たされて、手を離された。意識を集中しないと立っていることも出来なくて、熱くて火照っていた。
「あぁんっ……ああ……ま、まけない……」
 眼の前にネジレ獣の姿が見えて、メガイエローは言葉を漏らした。震える手を突き出し構えをすると、膨らんだ胸にあたってしまう。胸は信じられないほど敏感でずきんずきんとするほどだった。
「さあ、負けないんだろう?」
 目の前がかすむ。レントゲンネジラーに向かおうと右足を引きずった。その千里は、目を細めた。そこには発光体があった。
「いやっ」
「フラッシュビーム!」
 光線自体はなんの力もないのに、その光線で透過される感覚に敏感になった身体が反応し、びくんと痙攣してしまう。
「ああっ……」
 悔しかった……負けたくない。千里は顔をくちゃくちゃにした。その目の前に、レントゲンネジラーが手を差し伸べた。その手の上には紙が乗っていた。写真――一枚の写真が乗っていた。
「これが今のオマエの身体だ」
 写真にはメガイエローの姿が写っている。マスクを腕で覆ったメガイエロー――だが、そのスーツは半透明になっていて、その内側に隠された白い身体が透過して写っていた。千里の目は吸い寄せられるように見てしまう。不釣合いに醜く膨らんだ胸は、桃色に染まり――まるで牛のようだった。
 千里は涙がこぼれでてくるのを抑えられなかった。
「俺様は名前の通り、透過写真を取ることも出来る……」
 いいように弄ばれている。写真はその手からひらりと落ちて、メガイエローはレントゲンネジラーを見上げた。
「だが、この写真にはオマエの顔が写っていない……さあて、今度はオマエの顔を見せてもらおうか」
 発光体は集束した光りをメガイエローへ向けた。千里は目が眩み、次の瞬間には冷たい風を頬に受け、それから遅れて響いたパリンという乾いた音をきいた。ばらっという音とともに、足元に細かい破片が散らばるのが見えた。
「マスクが……」
 奇妙な落ち着きと共に、千里は粉々に砕けたマスクの破片を見ていた。メガレンジャーをダメージから守り、正体を隠していたマスクは粉々に砕け、目の前にはレントゲンネジラーがいて――シボレナがいる。
「レントゲンネジラー……」
「オレ様は歪んだ女の顔が大好きだ」
「変態ね……」
 レントゲンネジラーはしゃがみ込むと、千里の眼を覗き込んできた。獣の臭いが間近に感じられ、千里は涙を止めようとしたのに眼が染みた。
「さあ、いい声で啼いてみろ」
 レントゲンネジラーの手がメガスーツの胸に伸びた時、じわりとした感覚とともにスーツの表面に電流が走った。その内側でえ引き絞るような切なさがこみ上げて、どろっとしたものを感じて、千里は胸を見た。
「どうして……?」
 メガスーツの表面に浮き出た乳首はだらっと垂れている――
「物質変換光線は、オマエの身体とこの強化スーツも一体化させることが出来る……そうして、牛になったオマエのこのまっきいろな胸は」――レントゲンネジラーの指の中にある乳首はスティック糊の容器のほどのサイズになっていて、こりこりとした感触があって、それを押すと、ぴゅっと乳が吹き出て、地面を濡らした。
「嘘……!?」
「嘘なんかではない……ほら、もうと啼いてみろ」
 くっくと笑う声を漏らしながら、レントゲンネジラーは顔を近づけて、千里の唇を奪った。口づけは下側からねじ込むように始まる。
「はあぁはっ! あはぁっ!」
 千里は首を振ってそれを反抗しようとするのに、レントゲンネジラーは執拗にそれを追いかけた。その間にも、胸は揉まれしごかれ、そのたびにひゅっひゅっと乳を漏らした。
「ふぅぅぅっん! ううううっんん!!」
 レントゲンネジラーの両手が両胸にあてられたとき、その下には透明な容器が置かれ、乳はその中に溜められた。
「あはぁっ……はぁっはぁ……あああ……胸が胸があぁぁっ……」
 口づけが終わった時、千里は声をあげて頬を染めた。身体と一体化したスーツの表面に汗がしたたり、彼女は喘いで重い胸を揺らしながら、止めどなく溢れる乳をたれ流していた。
「本当に、素敵な眺めね、レントゲンネジラー?」
「有りがたき御言葉、シボレナ様」
 声がかけられたとき、千里は喉の渇きを感じて、めまいに頭をくらくらなって、首を振った。
「あああっ……ああ……」
「さあ飲め……」
 千里の目の前にはブリキ缶があって、中には白っぽい液体が満たされていた。千里はそれを見た。それがなんなのか、解ったけど解らなかった。喉が乾いて、唇が割れそうだった。千里は、頭を埋めるようにして、それを飲んだ。乳は、塩からかった。
「はぁっ……んんっあぁ……んんっ……からだがぁ……」
「どんな気持ち……」
 声がして、千里は我に帰った。きゅっと唇をつぐみ、小さく震えながら首を振った。 「これでも戦うつもりなの? メガイエロー」
 シボレナの嘲る声もどこか遠くに聞こえた。千里はシボレナを見て、手を伸ばした。口元が濡れていた。
「メガピンク、メガピンク……だけは助けてあげて……」
「ふふふっ……この後に及んで……メガレンジャー、人間てどうしてこんなにも愚かなのかしら……レントゲンネジラー?」
「はっ、シボレナ様」
「そろそろ遊びは終わりにしたいわ」
「では、メガピンクと同じ処置で宜しいでしょうか」
「そうねぇ……」
 声がして、笑い声がまたして、次の瞬間、千里はシボレナに胸ぐらを掴まれていた。
「このシボレナを散々に翻弄した小娘を、ただ苦しまずにさせることなんて、勿体無いわ」
「何を……する気つもりなの……??」
 持ちあげられ、千里はそのまま壁まで運ばれ押し当てられた。胸は膨らみ、今ではその胸は何もせずとも乳がとめどなく流れ出る様になっていた。
「はぁっ!!」
「ここでいいかしら……」シボレナは薔薇をあしらったサーベルを抜くと、それをおもむろに千里の腹部に突き刺した。鋭い音ともにサーベルは千里の肉を貫通し、背中から突き出してその壁に刺さった。
「きゃあああああああああああっぁ!!」
「メガイエロー、レントゲンネジラーの物質変換装置は命を奪うものではないわ。それであの通り、石に変えられても、メガピンクは生きている――逆を返せば、この物質変換装置の支配下にあるうちは決して死ぬことなんて許されないのよ」
「ああああああっ! あくうっ! ああ!」
 シボレナは顔を歪ませ満面の笑みを浮かべて頷いた。
「……んんっ……んん……きゃやぁ……っん……」
 口元から沸騰するように息が漏れて血が溢れでてくる。頭が変になりそうで、ありったけの力で千里はシボレナを見て、その言葉をきいた。
「あなたは、ここで、一生、腹をこの私のサーベルで引き裂かれたままその苦痛に悶え、石になって生きていくのよ……ふふっ、素敵でしょう……」
「ななん……あっ……」
「さあ、レントゲンネジラー、メガイエローに永遠の生を与えてあげなさいっ!」
「はぁっ――フラッシュビーム!」
 声を聞いた時、体中が光りで包まれた。がくんと力が抜けるのが解って、身体中に張り付くような感覚がまとわりついた。それは鋭く熱く硬くて、千里の身体はそれらにまとわりつかれながらー―メガスーツがただの岩に変わったのが解って、それから身体が生コンクリートの中に沈んでいくようにして壁へ入り込み――溶けこんでいくのが解った。
 もうもとには戻れない。何もかもが凍りつきながら、腹部を引き裂くサーベルが吹き出させる血も何もかも凍っておく。いや――いや、冷たいところはいや――灰色に染まった千里の瞼を一条の涙が零れていく。ほとんど見えなくなった眼で、千里はそれをみた。トルソーを突き出して、そこに固定されてしまったメガピンクの姿――それは、自分自身の姿とほとんど瓜二つで、すべてが固まった。

 ――シボレナは、その真っ白な石灰質の塊を撫でた。その表面はすべすべしていた。かすかにもとの色を残しているそのオブジェは、メガイエローそのままだった。
「さて……レントゲンネジラー、他のメガレンジャーを倒しにいくわよ……」
「グヒヒヒ、かしこまりました。次はどんなオブジェを作りましょうか」
「そうねえ……」
 シボレナは、メガイエローの顔を見た。苦悶に歪んだ美貌を見て、シボレナは唇を重ねた。ネジレジアの女幹部と同じく、そのオブジェの唇は冷たかった。シボレナは唇をこすりつけるようにして、その石像の唇に口紅を残した。
「クリスタルなんてどうかしら……?」
 手を離し、鮮やかな色を残した唇を見て、満足そうに頷く。レントゲンネジラーはシボレナの一歩後ろを進んだ。
 
 そして、その地下室にはニ体の石像だけがのこされた。