「やめなさいッ! やめないと……っっ!」
 千里は身体を左右に揺らして抵抗した。
「どうだっていうの?」
 シボレナは冷酷無比に使い捨てメスの先端を右の胸丘に当てた。わずかに破れただけでメガスーツは風船が割れるように、切り口を広げて行き、その年齢に似合わず豊満な胸が曝露された。
「動かないでね、動くと千里ちゃんの身体に傷をつけちゃうわ」
 宿敵を侮蔑してシボレナは千里をちゃん付けした。その顔は綻んでいる。罠に嵌めて捕らえたメガイエローは今やY字の処刑台に括り付けてある。生かすも殺すもシボレナ次第、マスクを剥いで千里の正体が知れると、シボレナは興奮したようだった。
「い、今に…メガレンジャーが助けに…」
「それで……? それで構わないわ。それより千里ちゃんはいいのかしら、敵にこんなことされてるのがばれたら? 正体はもう知っているわ」
「くくっ」
 千里は喉を鳴らした。ビリリッ…思いも拠らぬ場所から音がして、スーツが破れて、冷たい外気に太腿が晒されている。手や足から冷や汗が吹き出した。全身が強張っていた。
「良い子ね、千里ちゃん」
 シボレナはそういうと顔を近づけてきた。唇が触れ合うほどの距離だ。千里は顔を背けた。むき出しになったうなじにシボレナは頬をすり寄せてきた。冷たく濡れた舌がうなじから耳元へ伸びた。
「な、なにを…ひいっ!」
 千里の形の良い耳たぶをアンドロイドは口に含んだ。湿った音が極度に淫猥な調べを奏でている。シボレナの長い周期の呼吸が濡れた耳穴の中に流れ込んでくる。目の前が真っ白になり、頬が熱くなって身体が重い。
「どこに…手を…っ……やめなさいぁ…」
 右の太腿の裂け目にシボレナは手を入れようとしている。手錠をされている腕でその腕を掴む。シボレナがようやく耳から口を離すと唾液が糸を引き、最後にした妙な熱を持った息が全身を戦慄になって駆け抜けた。
「いいのよ、千里ちゃん、私も解っているのよ」
 シボレナの真意を知って千里は言葉を失った。シボレナはメガイエローを処刑しようとしているのではなく、「身体を欲して」いるのだ。互いの身体はもう触れ合っていた。