ある朝、ゴーカイガレオン
「お、上がってる上がってる♪」
ルカは、新聞に載った自分達にかけられた賞金が上がったことに満足気に笑った
一方、
「見てこれ、女子高生連続失踪事件だって…」
「最近多発してますよね、何か、一切前触れもなく消えるって…」
「…何だか怖いですね」
ハカセ、アイム、鎧は地球の新聞を見ながら口々に言った
「ザンギャックが関わってたりして…」
「んなワケあるか」
ハカセの言葉をマーベラスが遮る
「ザンギャックが地球の女子高生を誘拐して何の得になんだよ」
「変態の怪人かもしれないですよ!?」
「馬鹿か」
鎧にジョーの冷静なツッコミが入る
「ちょーっと見せて」
と、今まで宇宙新聞を読んでいたルカが、輪に入る
「…ふーん」
一読するが、興味はないようだ
が、
「…お?」
ルカの目がある一点に止まる
「へぇ~」
そしてだらしない顔で笑うと、
「ちょっとアタシ買い物行ってくる~!」
そう言って、ガレオンから出て行った

「どうしたんでしょう…?」
アイムが首を傾げる
「あ…行方不明者を発見したら賞金1000万円だって」
ハカセが隅に小さくそう書いてあるのを見つける
「…成程」
ジョーが納得して呟いた

ルカは、街中で配られていたビラを眺めながら歩いていた
そこには、女学生たちの名前と顔写真が載っている
行方不明となったのは5人
大澤優佳、熊谷茜、平山奈菜、岡本愛美、桐生翔子
各々の顔写真を見ながら、
(なーんか人生つまんなそうな顔してるなぁ)
自由気ままにやりたいことをしているルカは、5人の顔写真にそのような感想を持った

―3時間ほど経ったが、手がかりは見つからない
(ま、適当に歩くだけで見つかったら、世話ないけど)
冷たい風が、肌を突き刺す
(冷えてきたなあ)
夕刻になりそろそろガレオンに戻ろうかと思ったその時、
「え…?」
ルカの眼前10メートルほど先を、3人の少女達が横切った
一瞬ではあったが、その顔をルカは確かに見た
楽しそうに談笑する3人は濃い化粧をしていたが、大澤優佳、熊谷茜、平山奈菜のものと似ていた
「…ちょっと待―」
慌てて声をかけようとしたルカの方に、小柄な体がぶつかる
「あ…すみません」
そういって歩き去って行くのは―
(あの子…)
間違いない
至近距離ではっきり見た
「…!」
ルカは、桐生翔子の向かった後をつけた

彼女の向かった先―そこにあったのは
(何でこんな所に…?)
一本の大きな木があるのみで、他には何もない空き地だった
桐生翔子は、その木の下、一人佇んでいる
(…しょうがないなぁ)
ルカはめんどくさげに髪をかき上げると、翔子へ近寄り、
「ねえ、アンタ…桐生翔子ちゃん、でしょ?」
極力刺激を与えないように、明るい口調で言う
「…はい」
対する翔子も満面の笑みで、こちらに対する警戒はまるでないようだった
だから、
「行方不明だってニュースになってるよ。家の人も心配してるだろうし、帰ったら?」
それは、紛れもなくルカの本心から出た言葉だ
幼いころに家族を失ったルカには、親とか感覚はよくわからない
しかし、唯一残った妹だけは、間違いなく大切な存在だった
だから、家族を失うという気持ちについてはわかっているつもりだ
しかし、
「いいんです。あんな人達」
「え?」
翔子の口から出た言葉に呆気にとられる
「どうせ私のことなんて心配していませんよ」
投げやりな口調の少女に、ルカは複雑な気持ちを抱く
(反抗期…ってヤツ?)
そして、全くもって柄じゃないと思いつつも
「ま…でもなくなったら大切だってわかるものもあるんじゃない?」
「え?」
翔子が目を見開く
「何があったかは知らないけど、さっさと家に帰った方がいいよ」
そういってその場を後にしようとした、その時
「―!?」
光弾が2人を襲った
「きゃあ!?」
瞬時に翔子を押し倒し、自分も身を翻すと臨戦態勢に入る
「ザンギャック!」
攻撃の来た方向を見る
そこにいたのは―
「御機嫌よう、ゴーカイイエロー!」
右頬に大きな傷がある怪人
「この傷の怨みを晴らしに来たわ」
その言葉に、ルカはフン、と笑い
「懲りずにやられに来た、間違いでしょ?」
「フフフ、その余裕がいつまで続くかしらね?」
ルカは背後の少女を見て思案する
このまま彼女を庇って戦うのは不利だ
だから、
「走って!」
少女を見ず、指示する
「でも…!」
「いいから!」
有無を言わさぬ口調で声を張り上げる
すると、少女はそそくさと走り出した
そして、ルカは口紅歌姫に向き合い、レンジャーキーとモバイレーツを構える
「ゴーカイチェンジ!」
瞬時に強化スーツとマスクが装着される
「ゴーカイイエロー!」
名乗り、二本のゴーカイサーベルを構える
こんなこともあろうかと、ハカセのものを拝借していたのだ
それを見て口紅歌姫は、パチパチと手を叩き
「流石は正義の味方ね」
「…フン」
その挑発を受け流す
宇宙海賊である自分がそのような柄ではないことは自覚している
「さっさと始めるよ!」
二本のサーベルを手に、走り出す

「はあっ!」
ゴーカイイエローの攻撃を、口紅歌姫は短剣で受け止める
しかし、すぐに優劣は明らかになる
「まだまだぁ!」
「ぐっ…!」
二刀流はルカの本領発揮ともいえる
全く隙のない連撃に、口紅歌姫は防戦一方だ
堪らず距離を取る
しかし
「甘いっての!」
ゴーカイイエローは、2本のサーベルを柄から出るワイヤーで射出した
「ぐぅ!…この!」
もはや勝負は一方的だといえた
ワイヤーによるトリッキーな刃の動きに、口紅歌姫は全く対応できない
「くはっ!」
そして、地に膝をつく
「おのれゴーカイイエロー!」
その怨嗟を屁でもないかのように、ルカは
「怨みを晴らす、とか言ってなかった?」
そう言うと、ゴーカイイエローはサーベルに内蔵されたシリンダーを作動させ、そこにレンジャーキーをセットする
「これで終わり!」
必殺技・ゴーカイスラッシュを放とうとする
その時、
「助けて!」
少女の声が響いた

「…え!?」
ルカの目が捉えたのは、ザンギャックの上級戦闘員・ズゴーミンに取り押さえられた桐生翔子の姿だった
(しまった…!)
ルカは小さく舌打ちをするとサーベルのシリンダーを戻した
「…よくやったわ」
口紅歌姫は戦闘員を称賛すると、ゴーカイイエローに向き直り
「さぁて、どうするのかしら、ゴーカイイエロー?」
ルカは、マスクの下で歯噛みすると
ガシャン!
2本のサーベルを地に落とした
「イイ子ね」
さらに現れたゴーミンが、サーベルを回収する
「フフフ、次はどうするの?」
「…」
ルカは、頭の後ろで腕を組むと、両の膝を地につけた
「あらあら、さっきまではあんなに元気だったのにね」
クルクルと口紅歌姫は『降伏のポーズ』を取ったゴーカイイエローの周囲を回る
今はとにかく翔子の安全を確保すべきだ
そのために、このサディストを刺激するわけにはいかない
と、
「フン!」
「か…は…!」
口紅歌姫の右足が、ゴーカイイエローの腹部を蹴り飛ばした
「はぁ…はあ…」
鳩尾を抑えようとしたその時
「誰が動いていいって言ったの?」
「…っ!」
屈辱と苦痛に耐えながら、再び『降伏のポーズ』を取る
「フフフ、イイ様ねぇ…フン!」
今度は顔面に膝蹴りを叩きこむ
「―っ!?」
硬いマスクで守られているが故にケガを負うほどではないが、ダメージは確実に受ける
おそらく、相手もこちらを傷つけない程度にいたぶるつもりだろう
そして、口紅歌姫は、ゴーカイイエローのマスクを両の手で掴むと、耳元に顔を近づけ、何かを囁いた

数分後
「なっ―!」
「言いなさい。命令よ」
口紅歌姫は『ある台詞』を言うように命じた
しかし、その言葉を口にするのは、ルカのプライドが許さない
「言えないのかしら?なら仕方ないわね、スゴーミン!」
そういうと、
「わかった!言うから…」
大きく息を吸うと
「わたくし…ゴーカイイエローことルカ・ミルフィは…宇宙で一番の…美貌を持つ口紅歌姫様のご…ご尊顔に…傷をつけるという…愚行を犯しました…」
「いいわよぉ。続けて」
サディスティックな声に鳥肌が立つ
「く…口紅歌姫様…この愚かで汚らわしい罪人を…どうかその…清く美しい心で…お、お許し…くださいませ…」
吐き気を催すような台詞をルカは強靭な精神で耐え抜き、言いきった
「フフフ…そうねえ…」
口紅歌姫はわざとらしく指をあごに当て、思案する素振りを見せた
そして、
「許すわけないでしょォオオオオオオオオオオ!!」
甲高い声を上げると『降伏のポーズ』を取っているゴーカイイエローを思い切り蹴り飛ばし、地面に倒した
「が…は…!」
「アンタ見たいな野蛮人が!この私の顔に!触れることさえ許されないのよ!」
短剣の刀身をエネルギーの鞭に変化させ、何度もゴーカイイエローに叩きつける
「この!この!この!この!このクソ猿娘ェエエエエエエエエエエエ!!!」
バチーン!と、一際大きな音が鳴ると、口紅歌姫は落ち着きを取り戻した
「はぁ…はぁ…はぁ…」
切らした息を整える
「…起きなさい」
その言葉に、ルカは無言で起き上がり、再び『降伏のポーズ』を取る
口紅歌姫はその顎をクイ、と持ち上げる
「あの娘を助けたい?」
「…」
無言の肯定を送る
「なら、貴女自身の手であの娘を“死なない程度に”痛めつけない」
「そんなこと…!」
できるはずがない
普段の態度こそ悪いが心根の優しいルカに、そんなことができるわけがなかった
「あら、できないの?仕方ないわねぇ…」
やれやれ、といったふうに首を傾げると
「スゴーミン!その娘の首をへし折りなさい!」
「…止めて!」
思わず、懇願した
「なら、わかってるでしょう?」
「…」
コクリ、と頷くと、ゴーカイイエローは起き上がり
スゴーミンに羽交い絞めにされている翔子の前に立つ
「お姉…さん…?」
信じられない、というような少女の表情
「ゴメン…」
ゴーカイイエローは、拳を振り上げ、

バキィ!
「…え?」
突如解放された桐生翔子は、驚きの声を上げた
「何!?」
口紅歌姫は思わず慄いた
「逃げて!」
ルカはそう叫んだ
―何が起こったのか
ゴーカイイエローは少女に拳を振り下ろすように見せ、その体術で瞬時にスゴーミンの拘束を解いたのだ
「つ、捕まえなさい!」
その言葉が終わる前に、今度は翔子がルカの想像を絶する行動に出た
「えい!」
「…はぁ!?」
向かってきたゴーミンの懐に飛び込み、
「お姉さん!」
ゴーカイサーベルの1本を奪い取り、放り投げた
「…無茶するんだから!」
―どこか今は亡き妹に姿を重ねながら、
それを受け取ったルカは、瞬時に翔子に襲いかからんとした3体のゴーミンを切り伏せた
もう1本のサーベルも回収し、スゴーミンをも一撃で斬り裂く
その間、わずか3秒

「そんじゃ、さっさと終わらせるよ!」
刃を怨敵・口紅歌姫に向け、啖呵を切った
「こ、この猿娘がァアアアアアアア!」
対し、口紅歌姫はがむしゃらな動きで剣を振るい、ルカに襲いかかった
「ふん!」
それを難なくいなすと、右足で敵の左腕を蹴り上げる
「なあっ!?」
短剣は弧を描き飛んで行った
「くぅうううううううううう!」
殺人ソプラノ―それを口ずさもうという動作がルカには瞬時に理解できた
だから、
「はぁ!」
お返しとばかりに思い切り、鳩尾にキックを叩きこんだ
「グガアアアアアアアアアア!」
醜い悲鳴を上げる敵に、ルカは
「派っ手にいくよぉおおおおおお!」
鬱憤をはらすように言うと、連続で斬撃を繰り出す
「ギャン!アン!ひぃん!」
高速で繰り出される攻撃に、口紅歌姫はもはや防御することさえできない
そして、
「ほらっ!」
強烈な一撃を胸部にお見舞いした
「ほらほらほら!恨みはどうしたの!?」
両腕をブンブン振り回し、敵へと近づく
「ヒ、ヒィ!」
口紅歌姫はひどくうろたえている、否―それどろこか
「た、助けて!」
もはや戦意は感じられない
「謝る!さっきのことは謝るわ!だから許してぇ!」
しかし、
「あんだけやってくれたんだから、倍返しどころじゃ済まさないよ!」
思い出すだけで反吐の出そうな台詞
あれほどの屈辱を強いた相手に、ルカは許す気などさらさらない
2本のサーベルを振り上げた
その時、
「♪~♪~♪~♪」
「がっ…!?」
どこからか、あの音色―殺人ソプラノが響いてきた

一瞬動きが止まったゴーカイイエローに口紅歌姫は
「喰らいなさい!」
光弾を叩きこんだ
「うあああああああああ!」
至近距離からの直撃を受けて大きく吹き飛び、倒れる

(どういうこと…!?)
起こっていることに理解が追いつかない
すると、
パチパチパチパチ…
拍手が鳴ったその方向を見ると
「アンタ…!?」
不気味な笑みを浮かべ、手を叩いているのは―
「流石ね。名演技だったわ、翔子」
その言葉を受け
「いいえ、お姉さま程ではありません」
この会話の意味―
そして、ガレオンでのハカセの言葉
『ザンギャックが関わってたりして…』
つまり、一連のこのやりとりは全て演技で、相手の筋書き通りだったとしたら
「…成程ね」
状況を理解したルカは、立ち上がり
「全部アタシをおびき出すための罠だったってワケ」
「ご名答」
「でもお姉さんもカッコヨカッタですよ!『逃げて!』とか言っちゃって、いかにも正義のヒロインみたいで…」
「…それはどーも」
桐生翔子のいやみを受け流す
ルカはこの状況の中でも諦めてはいない
翔子を気絶させるのに時間はかからない
その勢いで口紅歌姫にファイナルウェイブを叩きこむ
そう考え、臨戦態勢へと構えたその時―
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
4重の歌声が響き渡った
「―っ!!」
瞬間、神経を切り裂くような激痛が走る
「う…あ…ああああああああああああああああ!!」
膝をつき、耳をふさぐ
現れたのは、4人の少女―
大澤優佳、熊谷茜、平山奈菜、岡本愛美
4人は、身動きの取れないゴーカイイエローを囲むように立った
「上出来よ、4人とも」
口紅歌姫に褒められ、少女達は恍惚の表情を浮かべる
「じゃあ翔子も入って、“スペシャルゲスト”に聞かせてさしあげるのよ!」
口紅歌姫は指揮者のような動きで
「神聖悪魔聖歌団のソプラノ五重奏(クインテッド)を!」

先程の衝撃で未だ身動きの取れない女海賊を5人の少女が取り囲み
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
「♪~♪~♪~♪」
5重の音波が襲いかかった

「う…う゛あ゛ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ソプラノ五重奏に晒されたルカは、身の毛のよだつ絶叫を上げながら、激しくのたうちまわった
「あが…あ…ぎぃいあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
もはや耳を塞ぐことなど全く意味をなさない
悪魔の歌声は、ルカの脳髄に、神経に、抉るような激痛をもたらした
「ひぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
どれだけもがいても、しかし一向に音は止まない
そして、
「あ゛があああああああああああああああああああああ!!やめてえ゛えええええええええええええええええええええええええええええ!!たすげ…だずげでえ゛えええええええええええええええええええええ!!!!!」
不屈の精神を持った女海賊は、敵に助けを求めた
「おねがい゛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!ゆるじでえ゛ええええええええええええええええええ!」
それを聞いて、口紅歌姫は狂ったように笑った
「フフフフ、フフフフフフフフフフフフフフ!!最高よ!ゴーカイイエロー!!貴女醜く命乞いするザマが、最っっっ高にお似合いよ!!」
しかし、そんな嘲弄も、ルカの耳には届いていない
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
もはや意味を持った言葉を発することもできず、ルカ・ミルフィはただただ狂ったように泣き叫んだ
土の上をのたうちまわり、身体中を掻き毟る黄色い戦士は、やがて小さく痙攣しだす
そろそろ命に危険が生じる
「お止め!」
その合図とともに、聖歌団の歌はピタリと止まる
ゴーカイイエローに口紅歌姫が近付き、
「あぁわ…あ…あ…」
「ルカ・ミルフィちゃん、目覚めてからが本当の地獄の始まりよ。だから今はぐっすりと―」
何かを掴むかのように虚空に手を伸ばすその姿に向け、口からソプラノ音波を発すると、
「うッ!!」
そのうめき声を最後に、変身が解けると同時に女海賊はまるで糸の切れた操り人形のように動かなくなった
「―お休みなさい」
口紅歌姫は愛おしげに言うと、身を翻し、
「貴女達、この娘を運んで頂戴」
5人の少女へ指示する

「かしこまりました、お姉さま」
少女達は一寸の狂いもなく声を合わせると、倒れている女海賊を囲んだ
仮死状態となったルカ・ミルフィの目は丸く見開き、だらしなく半開きになった口からは涎が垂れている
またその肌は脂汗と土埃で黒々とした汚れに塗れている
「…薄汚い顔!」
大澤優佳が、吐き捨てるように言った
「本当ね。こんなメスザルがお姉さまに刃向うだなんて、信じられないわ」
熊谷茜が頭部を踏みつけるが、反応は全くない
「蛮族は身の程を知らないのよ」
平山奈菜は忌々しげにいうと、ペッと唾を女の額へと吐き出した
「…」
翔子がどこか物憂げな表情でその姿を認めている
「翔子、どうかしたの…?」
心配するような瞳で、岡本愛美が覗きこむ
「いえ、なんでもないわ。はやく“コレ”を持って戻りましょう。お姉さまを待たせるわけにはいかないもの」
朗らかに、翔子は行った
「じゃあ、私が待っていくよ。皆は先に行ってて」
「え?いいの?」
愛美の言葉に、優佳が尋ねる
「いーのいーの!ホラ、早く!」
促されるまま、4人の少女は霧の中へと歩き、消えて行った
残った岡本愛美は、
「よっと!」
女の、黒いタイツに包まれ茶色いブーツから覗く足首を握り、歩き出した
宇宙を股にかける勇猛果敢な女海賊は、10代半ばの少女に土の上を引きずられながら、共に霧の中へ消えて行った