- 黒い死の要塞!!恥辱まみれのモモレンジャー 逃亡編1 -
(もしもし、もしもし、こちらペギー…ゴレンジャールーム、応答してください。もしもし、もしもし…)
廃倉庫のような建物が何胸も立ち並ぶとある要塞の敷地内。高さ5、6mぐらいの建物と建物の間に人間の大人が擦れ違えるかどうかという細い通路が碁盤目状に何本も走っている。
その廃倉庫間の細い通路、建物の壁を背に左腕にハメていたブレスレット型の通信機に向かって囁くように、だが必死に何かに呼びかけている若い女の姿があった。ゴレンジャーの紅一点、モモレンジャーことペギー松山である。
(…もしもし、もしもし…もしもし、こちらペギー。ゴレンジャールーム、お願い!応答して……ダメ…か。やっぱり外との連絡は完全に取れないわね。…はぁ…)
ドサッ。
そう呟いて大きくため息をつき、ペギーは背中からもたれかかるようにして後ろの壁に身体を預けていく。壁にもたれかかる彼女のその表情からはこれまでの苦闘の疲労と、思い通りに事が運ばない焦燥感が色濃く見えていた。
昨日から続く黒十字軍との戦いの中、数々の苦闘と恥辱にまみれてきたゴレンジャーの紅一点、桃色をシンボルカラーとする女戦士、モモレンジャーことペギー松山。
その戦いのさなか、頼れる仲間たちや能力を次々に奪い取られていくペギー。敵の秘密要塞で孤立無援となり窮地に追い詰められていく中、彼女はヤツらがこの要塞のB地区と呼んでいた場所に命からがら逃げてきたのである。
そこでペギーは一縷の望みを抱き、再度ゴレンジャールームとの通信を試みるのだが…その結果は彼女にとって芳しくないものだった。
やっぱり…外からの助けは期待できないわね。…でもわたしはもう簡単にあきらめたりはしないわ!…よし。外からの応援が期待できないなら…。
心の中でそう呟くと、彼女は再び身体を起こし、何か意を決したようにとある行動を取ろうとする。
(…お願い。今度こそ上手く転換…転換して……ゴー!!…あぁぅ!?…ぐ、ぐぅ!?…っ…はぁ、はぁ、はぁ…)
寄りかかっていた壁から身を起こしたペギーは、先ほど叶わなかったモモレンジャーへの転換を祈るような気持ちで再び試みるのだが…やはりそれは今回も叶わない。
彼女の身体には先ほどと同じような強烈なしびれが走ったのだ。そしてその激痛にペギーはバランスを失い、膝から崩れ落ちてしまいそうになる。だがあらかじめこうなる事への準備と覚悟をしていた彼女はバランスを失いながらもアスファルトの地面に膝をつく事だけは何とか踏みとどまった。
それでも、例えこの事態があらかじめ予想していた事だとしても改めて突きつけられた絶望的な現実にペギーが受けた精神的なショックは大きい。
う、ううぅ…や、やっぱり…やっぱり転換もできない…モモレンジャーにもなれないわ。はぁ…。
ドサッ。
打つ手打つ手からことごとくいい結果を得る事ができず色濃い疲労感を漂わせるペギーは、背中から壁へ力無く崩れ落ちるように再びもたれかかっていく。
「はぁ…はぁ……はぁ…」
ペギーはうつろを見上げながら瞼を閉じ、乱れた呼吸を落ち着かせるように右手を白いマフラーで覆い隠していた左胸に当てている。
ようやく手にする事ができた一息つける時間。これまでの戦いの事、これからの自分の事。それらに思いを巡らせながら彼女は物思いにふけっていた。
そ、それにしても…ヤツらが…黒十字軍がここまで徹底的にわたし一人に狙いを定めてくるなんて…。
これまでも黒十字軍が彼女を集中的に狙ってきた事はあった。それはペギー=モモレンジャーがキック爆弾を作り出すという、ゴレンジャー最大の必殺技、ゴレンジャーストームの要になっていたからである。
ゴレンジャーの戦力を効率よく削り取るため、ヤツらが彼女に狙いを定めてくることはある意味必然とも言えた。だがペギーは今回ヤツらが自分に向けてきた刃(やいば)はそれまでの自分を狙ってきたものとは明らかに異質なものを感じていた。それは…。
だ、だけど…だけど今回の黒十字軍はこれまでわたしに攻撃を集めてきた時とは明らかに違うわ。ま、まさかヤツらがこんな形で…こんな形でわたしを追い詰めてくるなんて…。
今回の戦いで彼女に対して黒十字軍が仕掛けてきた数々の恥辱責め。“女”の自分に対してこれまでとは明らかに違う、ことごとく卑猥な視線を浴びせてくる敵たち。それまでの苦闘を思い返していたペギーの美貌が恥じらいからみるみる桜色に染まっていく。
わ、わたしは…わたしはこれまで男の人に負けないように必死に戦ってきたわ。それはこれからも同じつもりよ。でも…でもこんな形で“女”を意識させられるなんて…。
ギュッ。
乱れた呼吸と心を落ち着かせるように左胸を押さえていたペギーの右手。ふくよかなバスとに巻かれていた白いマフラーに添えられていた彼女の右手。その右手が何かにしがみつくように白いマフラーをギュッと握り締める。
白いロングブーツに健康的な色気を漂わせていた肉付きのいい太腿、目にまぶしいほど鮮やかな黄色いホットパンツ。
そしてそのほとんどを露出していた上半身の柔肌にペギーのふくよかな乳房を申し訳程度に覆い隠していた白いマフラー。まるでビキニの水着を着ているような、およそ戦闘するような格好にはとても見えない半裸状態のペギー。
だがそもそも彼女は最初からこのような格好をしていたわけではなかった。
この秘密要塞での黒十字軍との戦いの中、ペギーへ降りかかる数々の恥辱。この戦いでのヤツらは彼女を肉体的にダメージを負わせようとするわけではなく、徹底して“女”を意識させるように、性的に彼女を責め続けてきた。
そのせいか、今もペギーには肉体的に外傷を負わされていた形跡はほとんど見られない。その代わり、彼女は身に着けていた衣服をボロボロに剥かれ半裸状態にさせられてしまう。その上、ペギーは心理面から、戦士としてではなく、あくまで一人の“女”として、内面からじわりじわり、真綿で絞め上げられるように追い詰められていたのである。
でも…でもわたしはこんな事には絶対に負けない!死んでしまったみんなのためにも…負けられない!負けてたまるもんですか!
ギュッ!
今や志半ばに倒されてしまったアオレンジャーの形見でもある、白いマフラーを握り緊めるペギーの右手に更に力がこもる。
…外との連絡も取れない、転換もできない、そしてもう隠し持っていた物も含めて武器も何一つないわ。…でもここから逃げる事ぐらいはまだできるはずよ!
気持ちの整理をつけたペギーは、閉じていた瞼を開け左胸に当てていた右手をそこからゆっくりと放し、意を決したように身体を起こす。そして…。
…生きていさえすれば、生きていさえすれば…反撃のチャンスは必ずくるはずよ。わたしは…わたしは何としても生きてここから脱出してみせるわ!
そんな、改めて決意をにじませるペギーが行動を起こそうとしていたその時…。
ムギュッ。
(!?…な、何っ!?)
まるで気持ちの整理をつけて動き出そうとしていたペギーの出鼻をくじくように彼女の量胸と股間を何者かが握りつぶしてきたのだ。
ムギュムギュ、ムギュムギュ…調子づくその何者かはペギーの性感を更に弄び続ける。
(ぁ、ゃ!?く、くっ!?…な、何!?い、一体誰?誰なの!…!?)
突然降りかかってきた胸や股間への違和感にペギーが弄ばれる己の性感の方を見てみると…彼女の後ろの方から回されている何者かの二つの手が自分の両胸を揉みほぐし、股下から通されている手が気分よさげに股間をまさぐっている。しかもその手の先に見える腕はゾルダー兵のような黒い腕をしているのだ。
く、くっ!?ゾ、ゾルダー!?いつの間に??
「と、といや!」
ガシィッ!
性感を何の前触れもなく弄ばれてしまい、困惑するペギーの恥じらいの肘鉄が後ろにいると思われたゾルダーに炸裂した…はずだったのだが…。
「!っ…ったぁ~!…っ」
ゾルダーのドテッ腹に会心の肘鉄を叩き込んだはずのペギー。しかしその彼女の左腕の肘は何か硬いものを強打したように強烈な激痛に襲われてしまう。
「ぐ、ぐっ!?な、何で……!?えっ!?」
思いもかけない激痛に見舞われてしまい、不振に思ったペギーが後ろの方を振り返ってみると…驚くべき事に彼女の胸や股間を弄ぶ黒い腕は腕だけがコンクリートの壁から生えているのだ。そして廃倉庫の壁からニョキニョキと出ているその腕はペギーの艶やかな肢体を気持ち良さそうに弄んでいる。
「な、な!?ウ、ウソでしょ!?か、壁から腕が生えてる??」
自分の身体を弄ぶ腕が思いもよらない所から出ている事に驚愕の表情を浮かべているペギー。しかしそんな彼女にその腕は更に牙を剥く。
ぐいぃ。
「ぁ!?き、きゃぁ!?」
ペギーの両胸を揉みほぐしていたその両手は更に彼女をそのまま壁へ引き寄せていく。
ドンッ。
「はぅっ!…ぐ、ぐっ!?ぁ、ゃ…ぁ、ぁんっ…」
まるで両胸に取り付けられた拘束具によってペギーは身体を壁に押し付けられてしまうー。
「ぐ、ぐっ!?な、何すんのよ!…こ、このっ、は、離せっ!離しなさい!」
自分の両胸を揉みほぐしているゾルダーと思われる黒い腕の両手を、ペギーは自身の両手で何とか引き剥がそうとしているのだが…。
ガシィッ。
「ぁ、あっ!?し、しまっ…!?」
だがその時、彼女の脇の下からニョキニョキと出てきた別の二つの手が…その手は自身の胸に取り付いていた手を何とかして引き剥がそうとしていたペギーの両手の更に上から覆いかぶさるように、彼女の手を抑え付けにかかってきた。
身体だけでなく、両手の自由も得体の知れない敵にガッチリと封じ込まれてしまい、ペギーは次第にあせりの色を濃くしていく。
「…いたぞ!あそこだ!へへへっ、へへへへっ…」
そこへ遠くから下卑た笑い声が聞こえてくる。それはニタニタといやらしい笑みを浮かべてペギーへじりっ、じりっと近づいてくる二人のゾルダー兵だった。
!?…さ、さっきのゾルダーたち?…く、くっ!?も、もう見つかってしまうなんて…は、早くここから逃げなきゃ…早く…ぅ、くぅ…。
しかしそんなあせるペギーの思いとは裏腹に、彼女は身動きの取れない身体を相変わらずジタバタともがかせるだけだ。そして二人のゾルダーたちがいやらしい笑みを浮かべてペギーの目の前へとやってきた。
「へへっ…よぉ、久しぶりだなぁ?モ~モちゃん♪…へへへっ、へへへへへへっ…」「あれぇ??…何だ?ひょっとして両手が使えないのかなぁ?…そうか。さっき日輪仮面様が呼び寄せた黒十字忍段とかいうヤツらが上手くやってくれてるみてえだなぁ?へへへっ、へへへへっ」
く、黒十字忍段??何なのそいつらは?…ひ、ひょっとしてそれがこの壁から生えてきてる腕の招待なの??
おぼろげながらも自分を拘束する手の正体が何となく分かってきたペギー。しかし今更そのような事が分かっても彼女にはどうすることもできないのだ。
「へへっ…そいつはいいや。じゃあ今モモちゃんに何してもモモちゃんはオレたちに手は出せないってわけだ、へへへっ、へへへへっ」
「へへへっ…よし。早速日輪仮面様に連絡を…」「おい!待てよ」
二人のゾルダーの内の一人が仲間の応援を呼ぼうとしていたその時、もう一人のゾルダーがそれを止めようとした。更にそのゾルダーはこう続ける。
「…せっかく目の前にこんな美味そうなご馳走があるんだ。みんなを呼ぶ前にオレたちだけでちょっとつまみ食いしねぇか?それぐらいしても別にバチはあたらねぇだろ?へへへっ、へへへへへへっ」
!?…そう言いながらゾルダーの一人はペギーの下あごを掴み、いやらしい笑みを浮かべ、涎をたらさんばかりにその美貌をニタニタと覗き込んでいる。
ぐ、ぐっ!?…下あごを掴まれてしまったペギーは抵抗の意思を示すかのように、目の前にいるそのゾルダーを射るような眼光で鋭く睨みつけている。しかしそのようなマネをしても目の前にいる欲望丸出しの雑兵たちにはまるで効果はない。もちろんその事はペギーも十分理解していた。
だが両手や身体の自由を封じこまれ、ロクに身動きが取れない今の彼女にはこれが精一杯の抵抗なのだ。思うように反撃行動がとれないペギー。見た目平静を装っているように見えても、彼女は心の内で相当の苦虫をつぶしているに違いない。
「へへっ、それもそうだなぁ…それにいっそ、オレたちでこのムチムチボディを独り占めしちまうか?へへへっ、へへへへへへっ」
「ゃ!?ぐ、ぐっ…な、何すん…」
!…そ、そうだわ。コイツらはわたしにいやらしいことをする事しか考えてないはず。だったらそれを利用すればこの状況から上手く脱出する事も…。
自身の左太腿をゾルダーの一人にいやらしい手つきで触られながら、この状況からの脱出を必死に考えているペギー。
…で、でも…でもそのためには…そのためには……な、何でわたしがコイツらのために…こんなヤツらのためにそんなこと…。
だがそのためには完全に恥じらいを捨て、“違う自分”を演じなければならない。しかし戦士とはいえ、まだそのような経験も免疫もない、年端もいかない娘のペギーである。そのように淫らな事をしている自分を思い浮かべるペギーは、あまりの恥ずかしさにみるみる赤面していく。
それでもペギーが戦いの中に身をおく女戦士を名乗る以上、そのような未熟な意識は捨て、戦士として常に最善を尽くす行動をとらなければならない。その事は彼女も頭では十分過ぎるほど理解していた。だがペギーの意識の中に残る“女”としての半端なプライドが彼女が“戦士”に徹する事を邪魔する。
「へへへっ…それもそうだよな。オレたちが最初に見つけたんだ。それぐらいは役得だよなぁ…へへへっ、へへへへっ…」
!…ぐ、ぐっ!?でももうためらっている時間はないわ!やるしか…やるしかない。わたしはまだ死ぬわけには…こんなヤツらに犯されるわけにはいかないのよ!
徐々に迫りくる、すぐにでも自分を犯したくてたまらないといった様子のゾルダーたちを目の当たりにし、そんな力強い意思を胸にペギーは“違う自分”を演じる覚悟を決める。そして…。
「…ねぇ、そこの素敵なゾルダーさん♪…そんなにわたしの太腿を触りたいのかしら?あなたそれならいっそ、わたしの自慢の太腿でそのお顔を挟まれてみたいとは思わない?」
「へ?…も、もちろんそうだけどよぉ…それにしてもモモちゃん、一体急にどうしちまったんだ?」
突然色気づいた態度を見せ始めたペギーを訝しそうに見ている彼女の太腿を触っているゾルダー。
「あら?別にどうもしてなくてよ♪…ま、あえて言うならどうせあなたたちと楽しく遊ぶならわたしも楽しく遊びたいと思っただけかしら?ほらっ、早くわたしの“ここ”にお顔を挟んできたらどぉ?」
妖艶な雰囲気をたっぷりと漂わせ、そのように言ってくるペギー。そんな彼女は目の前で涎を垂らさんばかりに自分をニタニタと見つめてくるゾルダーたちをまるで誘惑するように肉付のいい自分の両脚をゆっくりと開脚していく。
「へへっ…そうかぁ。ようやくオレたちと楽しく遊ぶ気になってくれたのかぁ。それじゃお言葉に甘えて…へへへっ、へへへへへへっ」
ペギーの太腿と戯れていたゾルダーは、自分の顔を“これでもか”とだらしなくゆるませ、“オトコ”を誘うように広げられていた彼女の股の間に顔を挟み込んでいく。
「う~ん、この感触♪…実にきもつぃいいぜぇ。そうだ♪…ついでにこのプリプリしたお尻も触っちゃおうかな~、へへへっ、へへへへへへっ」
!?…く、くっ!?コ、コイツ、調子に乗って……でも我慢、我慢よ。今はまだ反撃のチャンスじゃないわ。その機会がきたらこんなヤツらなんか…。
自ら進んでこのような行為を行っているとはいえ、淫らに弄ばれていく自分にはやはり次第に不快感を覚えていくペギー。それでも女戦士としてプロフェッショナルに徹している以上、ペギーもそんな心の中の葛藤はもちろんおくびにも出さない。
「う~ん、う~ん♪…へへへへっ…」
「おい、おまえ!モモちゃんはまだ一応敵なんだぜ。あんまり油断するな…」
ペギーの太腿に気持ちよさそうに顔を押し付けているゾルダーに対して、それを見ていたもう一人のゾルダーはさすがにそれではマズイと思ったのか、少し抑えるように忠告をしてくる。
「あら?そちらのゾルダーさんはまだそんな事言ってるのかしら?そんな事言って、あなたもわたしの身体と淫らな事して遊びたいんでしょ?…ウフフフッ♪」
そんな、まだある程度警戒を解かないゾルダーに対してペギーは挑発的な態度と視線で更に迫っていく。ペギーもこのようなマネをする事は初めてのはずだが…生まれ持ってのその艶のある甘い声と持ち前の美貌、そしてド迫力のその肢体で迫られては大概のオトコはたじたじだ。
「!?…お、おぅょ。ま、まぁ一応そうだけどな、へへへっ、へへへへへへっ」
「そうでしょ?…ねぇ?あなたもわたしの“ここ”に顔をうずめてみたいとか思ってるんじゃなくて?ウフフフッ♪」
そう挑発的に言い放つペギーは自分の女性らしくふくらみ、丸みを帯びた胸元にチラリと視線を送り、目の前でうろたえているゾルダーに更に迫っていく。
「ねぇ?どうなのぉ?素敵なゾ・ル・ダー・さん♪…ウフフフッ」
「お、おぅ。そ、それじゃあ遠慮なくいかせてもらうかな…へへへっ、へへへへへへっ」
そんな、右目で色っぽくウインクをしてくるペギーに誘われるがまま、そのゾルダーは彼女の胸元に己の顔を近づけていく。だがペギーの両胸は先ほどから彼女の手を押さえつけていた黒十字忍団によって覆い隠されている。
よってその黒十字忍団の手をどけない限り、そのゾルダーは彼女の胸元に顔をうずめる事はできない。しかしそれがまさにペギーの狙いだったのだ。
「あら?あなた、このままじゃこの手が邪魔でわたしの胸元に顔をうずめる事はできなくてよ♪…ねぇ、わたしの胸に飛び込む前にこの手をどかした方がいいんじゃないかしら?」
やさしく、だが妖艶に微笑みながらそう言ってくるペギー。しかし甘い色香の中に巧妙な策を秘め、そのように誘惑してくる彼女は心無しか、一瞬だけニヤリと口元をゆるませていた。
「お、おぅ…!?…いや!ダメだダメだ!だいたいモモちゃんはまだオレたちの敵なんだぞ!せっかく封じてある敵の手を自由にするわけねぇだろ?…そうか、分かったぞ!そうやってそのエロい身体からムンムン発散してるお色気フェロモンでオレたちをたらしこんでどうせオレたちから逃げようって腹積もりなんだろ?そうはいかねぇよ、残念だったな…もっともオレたちはさっきからモモちゃんのムチムチボディにノックアウトされてんだけどな、へへへっ、へへへへへへっ」
くっ!?…な、何よ!コイツ、ゾルダーのクセに何でこんなに慎重なわけ?で、でもまだこの“お色気作戦”を止めるわけには…。
表向き、顔にはおくびにも出さないが、自らの羞恥心をかなぐり捨てて始めたこの捨て身の作戦が手詰まりを起こし始めた事に内心あせり始めているペギー。しかし、開脚していた彼女の両太腿の間へ一足お先に顔を挟みこんでいたゾルダーが、そんなペギーへ助け舟を出すようにこんな事を言ってきた。
「…おいっ、おまえもいつまでもそんな堅いこと言ってないでモモちゃんの言うとおりにしてみろよ。このムチムチした身体、気持ちいいぞぉ~、へへへっ、へへへへへっ」
「お、おい、おまえな……ま、それもそうか。それにこれだけヤル気になってくれてるんだからちょっとぐらい大丈夫だよな?へへへっ、へへへへへへっ」
!?ふ、ふぅ…もう一人のゾルダーが本物のおバカさんでホントに助かったわ。でもこれで何とかなりそうね…。
破綻しかけていた自らの計画が、そんなゾルダーたちの卑猥なやりとりで息を吹き返してくれた事に安堵するペギー。もちろんペギーはそんな心の中は臆面にも出さないのだが…そして彼女は更に話を進めようとする。
「そうよ、その通りよ♪…このゾルダーさんも気持ちよさそうにわたしの太腿で遊んでるでしょ?だから何もかも忘れてあなたもわたしの胸に飛び込んできたらどうかしら?ウフフフッ♪」
「あ、あぁ。それじゃ早速そうさせてもらうかなぁ?…おい、黒十字忍団、モモちゃんから手を放してやれ、へへへっ、へへへへへへっ」
己の性欲丸出しのゾルダーはペギーの思惑通り、彼女の身体、胸や股間を黒十字忍団の手からまんまと開放してしまう。
ウフフッ♪…まんまとわたしの思惑通りだわ。でも反撃するのはまだ早いわね…よしっ、それじゃ仕上げといこうかしら?ウフフフッ。
黒十字忍団の束縛から解放され、両手の自由を取り戻したペギーは内心ほくそ笑みながら左右の手を高等部に回す。そして己のふくよかなバスとを誇示するように胸を張り、挑発的な態度でこう宣言するのだ。
「…ほら、両腕は後ろで組んだわ。これでわたしがもう抵抗する意思がないって事がわかったでしょ?…さぁ!何も遠慮する事はないわ!思い切りわたしの胸に飛び込んできてよくってよ♪」
「へへっ、それじゃお言葉に甘えて…へへへっ、へへへへへへっ」
自分のふくよかなバスとを突き出すように胸を張っているペギー。そんな挑発的な態度をとっている彼女の誘われるがまま、先ほどまで彼女を疑いの目で見ていた目の前のゾルダーはペギーの胸元へ抱きつくように飛びかかり…。
ポフッ。
その柔らかな感触を楽しむようにゾルダーは顔を勢いよくうずめてきた。そして己の両腕は彼女の背中に回し、抱きしめるような格好になっている。
「へへへっ、これがモモちゃんのおっぱいかぁ…う~ん、たまんねぇなぁ、へへへへっ、ふへへへへへっ」
くっ!?こ、この変態ゾルダー…だ、だけどコイツらは確実に骨抜きになっていってるわ。でももう少し…もう少しだけ…。
己の作戦で自ら望んだ事とはいえ、自分の身体が淫らに弄ばれ続ける事にペギーが嫌な思いをしていないわけがない。だが彼女はまだヤツらの隙を我慢強くうかがっている。
しかしそんなペギーの胸の内をよそに彼女の胸元に顔をうずめていたゾルダーは更に暴走し続ける。
「へへへっ…オレ、実はモモちゃんのこのポヨポよしたおっぱいでパフパフをやってみたかったんだよなぁ。なぁ別にいいだろぉ?というかやらせてもらうぜ、へへへっ、へへへへへへっ」
「!?…な!?ち、ち、ちょっ、ま、待ってよ…!?ぁ、ぁんっ、あんっ…」
ポフッ、ポフッ、ポフッ…。
そんな卑猥な言葉と共にペギーの胸元に顔をうずめていたゾルダーは、彼女の身体をゆっさゆっさとゆらしてペギーのふくよかな胸を何度も何度も自分の顔に押し当てている。
「へっへぇ~このポヨポよした感触…くぅ~たまんねぇ~…やっぱ最高だぜぇ、へへへっ、ふへへへへへっ」
「ち、ちょっ…ま、まだ心の準備が…ぁ、あっ、あんっ…」
「へへっ…さっきまで堅いこと言ってた割にはおまえ、随分上手いことやってるみたいじゃねぇか?オレも負けてられねぇなぁ?へへへへへっ」
ペギーの身体をゆっさゆっさと揺らし、彼女のふくよかな胸元に己の顔を何度も何度も押し当てているゾルダー。そして、自分の頭上で行われているそんな行為に触発されるようにペギーの肉付のいい太腿に挟まれていたゾルダーもこれまでとは異なる行動をとろうとしている。
「!?…ぁ、ぁんっ…な、何すんの!?ち、ちょっ…す、少しは手加減して…ぁ、ゃんっ…」
「へへっ…今更何言ってんだよ。オレたちと楽しく遊びたいんじゃなかったのかい?モ~モちゃん♪…だったらこれぐらいしても別にいいだろぉ?このぐらい絡み合った方がお互い楽しくていいんじゃねぇかぁ?へへへっ、へへへへへへっ」
己の顔をペギーの肉付のいい脚に挟み込んでいたゾルダーは、そんな卑猥な言葉と共に彼女の肢体へ更に毒牙を剥く。
そのゾルダーは太腿に挟まれていた顔を上にずらしていき、そのまま顔を黄色いホットパンツに包まれたペギーの股間へ何度も何度も押し付けている。しかも左手は相変わらず迫力抜群の彼女の大きなお尻をいやらしい手つきで撫で回しているのだ。
ぁ、ぁぁ…ぁぁ…も、もう…ダメ。幾らお芝居とはいえ…こ、こんなヤツらの好き放題にされるなんてこれ以上…これ以上耐えられない!もう耐えられないわ!
ペギーの肢体に次々と襲い掛かるゾルダーたちの毒牙。それが戦士に徹しきれない彼女の薄い化けの皮を少しずつ、一枚一枚剥いでいき、ペギーが完全に捨て去ることができないでいた“普通の年頃の娘”の顔を少しずつ露わにしていく。そんな彼女の精神はいつ切れてもおかしくない状態だった。
「へへっ…そういえばモモちゃんのプヨプよしたこのおっぱいを隠しているこの白い布もいっそとっちまおうぜ?…そうすればオレはモモちゃんの生パイへ本当に顔をうずめられるんだ。つまりオレもモモちゃんも超ハッピーになれるってわけだ、最高だとは思わねぇか?へへへっ、へへへへへへっ」
ペギーの胸元に顔をうずめていたゾルダーは更に暴走し続ける。ヤツは彼女の背中にある、バスとを覆い隠すように巻かれていた白いマフラーの結び目に手を掛け、それをスルスルとほどこうとしていた。
そして固結びされていた結び目がただの変態と化したゾルダーによって、今まさにほどかれようとしていたその時…。
「そうら、そろそろモモちゃんの生パイとご対面だ。へへへっ、へへへへっ」
「ぐ、ぐっ!?あ、あんまり…調子に乗るんじゃ…ないわよ!……たあっ!!」
「へっ?…!?ぐへぇっ!」
ガンッ!!
その時、己の欲望に身を任せてペギーをむさぼる事に夢中になっていた雑兵の不意をつくように、強烈な衝撃がゾルダーの脳天目掛けて降りかかってきた。ペギーが自身の両手の拳を合わせ、目の前のゾルダー目掛けて両腕をハンマーのように振り下ろしてきたのだ。
突然頭上から強烈な一撃を叩き込まれてしまったゾルダーは、当然のように自分の下でペギーの太腿や股間の感触を楽しんでいたゾルダーを巻き込むように倒れ掛かっていく。
「う、うわっ!?…お、おいっ、おまえ!?いきなり倒れてきて…一体どうしたんだよ?」
突然仲間のゾルダーが自分に力無くもたれかかってきた事に驚きの声を上げるもう一人のゾルダー。当然その雑兵は今自分の頭上で何が起こっているのか、先ほどまで自分たちと戦闘する意思を放棄しているような態度を見せていたペギーが突然反撃してきた事など知る由もなかった。
そんな目の前にいるゾルダーたちの混乱をよそにペギーは反撃行動を着々と進めていく。ペギーは先ほど彼女に脳天に強烈な一撃を叩き込まれ、力無く倒れ掛かっていたゾルダーをすかさず起こしにかかる。
そこから起こしたゾルダーの胸倉を左手でグイィと掴み、目の前でまだ意識がもうろうとしている下級戦闘員の顔をキッと睨み付ける。そしてペギーは残る右手を目の前のゾルダーの左頬に添え、これまでのうっぷんを晴らすかのようにこう叫んだのだ。
「…よくも今まで好き放題やってくれたわね!麗若き乙女の身体をこれだけ弄んでくれたんだからせいぜい満足したでしょ!!?……さぁ!立ちなさい!今度はわたしの番よ!!…ハイッ!」
バシィッ!
その強烈な打撃音と共にペギーの平手打ちがゾルダーの顔面に炸裂した。
「う、うぐぅっ!?…い、痛ててててて……モ、モモちゃん?一体どうしたん…ぶへぇっ!」
「問答無用!これでも食らいなさい!…ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!…」
バシィッ!バシィッ!バシィッ!バシィッ!…。
一発、二発、三発…いや十数発に及ぶペギーの平手打ちがゾルダーの顔面を引っぱたいていく。いわゆる往復ビンタだ。
「これでトドメよ!…といや!」
バシィィィ!
「ぐへぇぇぇっ!」
最後にゾルダーの顔面目掛けてそれまでで一番強烈な平手打ちが炸裂し、そのゾルダーは意識を失いながら広報にある廃倉庫の壁に飛ばされていく。
「フンッ!わたしがあんたたちみたいなのと遊ぶために本気であんな事していたと思って?…所詮はあんたたちを騙すためのしば…きゃぁ!?」
彼女の胸元に顔を押し当てていたゾルダーを平手打ちでノックアウトし、無残にも意識を失っていた雑兵にペギーが勝ち誇っていたその時…。
ガッ!…ドンッ!
いきなりペギーは喉元を何者かに掴まれ、そのまま後方の壁に勢いよく叩きつけられてしまう。そしてそれはようやく状況を理解した、もう一人のゾルダーが右手で彼女の細い首に喉輪を仕掛けてきたためだった。
「…こんのアマァ~、よくもやってくれやがったな!…やっぱりてめぇは犯す前に自由に動けないようにしとく必要があるみてぇだな!まずはそのかわいい顔を“コイツ”でズタズタに切り刻んでやるぜ!…死ねぇぇぇ!」
チャッ。
すっかりペギーの策と女の色香に騙されてしまったゾルダーはもう既に怒りでブチ切れている。そして怒り心頭のその雑兵は左手にサバイバルナイフのような物を構え、それを手に今にもペギーに襲い掛かろうとしていた。
ぐ、ぐぅ!?…ま、まだよ!まだこれくらいで…!
「う、ううぅ……や、やあっ!」
今持てる精一杯の力を振り絞り、ペギーは喉元に押し付けられていたゾルダーの腕を左へ跳ね飛ばした。
「うわぁ!?…く、くそっ…こ、このアマぁ~…」
「やあぁ!」
ガシィッ!
「ぐふぅっ!」
そして腕を跳ね除けられ、無防備な体勢になっていたゾルダーのみぞおち目掛けてペギーは渾身の膝蹴りを叩き込む。
「…ぐ、ぐっ!?…こ、こんのアマァ~もう許さねぇ!…うわぁ!?」
みぞおちに強烈な膝蹴りをもらい、苦痛に顔をゆがめてその場にうずくまってしまうゾルダー。しかしその下級戦闘員にはそんな時間も与えてはもらえない。痛みでその場に崩れ落ちる間もなく、そのゾルダーはすぐさま立たされてしまう。
「うわぁ!?…ま、前が…前が見えない…!?どうなってんだ??」
しかもそのゾルダーは目の前を突然黄色いものに覆われてしまい、視界を奪われてしまう。突然視野が奪われ混乱するゾルダーは目の前に手をたどたどしく差し出して自分の視界を奪っている“黄色いもの”が何であるか確かめようとしている。
「く、くそっ…それにしても何なんだ?この黄色いのは?それに妙に感触のいいものに挟まれているような…?」
「!…どこ触ってんのよ!この変態ゾルダー!!」
「えっ??どこ触ってるって…も、もしかして?…ひ、ひょっとしてこの黄色いの…そうか!…へへへっ、へへへへっ」
自分の視覚を奪っているもの、そして己の顔が何に挟まれているのか何となく理解したゾルダーの表情がだんだんニヤけていき、興奮して気持ちが高ぶり股間をムクムクとふくらませていく。
そのゾルダーの想像通り、彼の目の前には黄色いホットパンツに包まれたペギーの股間があった。と同時にそのゾルダーは顔をペギーの肉付のいい太腿に挟み込まれている。
ゾルダーのみぞおちに膝蹴りを叩き込んだペギーはその雑兵をすかさず起こしにかかり、そのままそのゾルダーの顔にまたがるようにヤツに跳びついたのである。
そして、先ほどペギーが大きな声を上げたのは、彼女のまたがるゾルダーのたどたどしく動かしていた手がホットパンツに包まれた彼女の大きなヒップに触れたからだった。
「…とってもスケベなあんたには、わたしのとっておきの大技をプレゼントしてあげるわ!…いいわね!いくわよ!…といやぁ!」
「へへへへっ…!?な、何だ??うわああぁ!?」
肩越しにゾルダーにまたがっていたペギーは、その掛け声と共に重心を後ろに預けていく。そしてゾルダーの顔に挟んでいた両脚に更に力を込め、廃倉庫の壁を避けるように身体を右にひねりながら後方に勢いよく倒れ掛かっていく。ペギーの言うとっておきの大技、いわゆる変形のフラン権シュタイナーだ。
「ぐへぇぇっ!」
ドスンッ!
ペギーの肉付のいい脚に挟み込まれていたそのゾルダーは、彼女の強靭な脚力で地面から引っこ抜かれるように大きく弧を描いて投げ飛ばされ、顔から勢いよく地面に叩きつけられてしまう。
「う…う、うぐぅ…う、ううぅ…」
顔から勢いよく叩きつけられ、うつぶせのような状態で地面に転がされているそのゾルダーは、アスファルトの地面を掴むようなしぐさを見せ、何とかして起き上がろうとしている。
しかしペギーが渾身の力で繰り出した大技によるダメージはかなり大きいらしく、そのゾルダーは既に虫の息だ。
「…どうかしら?わたしのとっておきの技のお味は?…それにしてもとってもいい格好よ、素敵なゾ・ル・ダー・さん♪」
脚に挟み込んでいたゾルダーを地面に勢いよく叩き付けたペギーは、その雑兵の顔に挟み込んでいた肉付のいい脚を器用に抜き取ってその場にスクッと立ち上がる。そして彼女は眼下に転がるゾルダーを見下ろすように眺め、勝利を確信したように今度は本心からの笑みを浮かべていた。
「う、ううぅ…ぐ、ぐはっ……さ、さすがだ…か、かわいい顔してても…だ、だてにモモレンジャー…やってるわけじゃねぇんだよな…?」
「当然よ!だいたいあんた、今更何言ってるのかしら?」
息も絶え絶えのそのゾルダーは、勝ち誇った笑みを浮かべているペギーの方をよろよろと見上げている。そして彼女の方を見上げているそのゾルダーは、何かペギーの変化に気づいたのかニヤリと口元をゆるませていた。
「へへっ…な、なぁに…ちょっとした確認だよ。で、でも…どうせモモちゃんにやられるんなら…あんな“おいしい”技にやられるなんて…オレは幸せモンだな…」
「フンッ!このゾルダー、もう死にそうなのに…一体どこまでいやらしいのかしら?まったくあきれちゃうわね」
己の命が残りわずかだと言うのに相も変わらず卑猥な事を言っているゾルダー。そんな眼下に転がる死に損ないの様子をペギーはあきれるように眺めていた。
「へへっ…それに…死ぬ前にもう一度…モモちゃんのその見事な生パイを…お、拝めるなんてよ…へへへっ、へへへへへへっ…」
「え??…ぁ!?ゃ、やっ!?…な、何で!?」
うつぶせに転がされているゾルダーに指摘されたペギーは、いつの間にかはだけている自分の胸元を見てみるみる赤面していく。そして彼女はたまらず左腕ではだけた胸元をあわてて隠すようなしぐさを見せる。
彼女のバスとを覆い隠すように巻かれていたはずの白いマフラーは、いつの間にかそこから外れてどこかになくなってしまっていた。ということは当然のようにペギーはふくよかな乳房をはだけさせ、その事に気付かず動き回っていたのである。
先ほど胸元に抱きつかれていたゾルダーに、ペギーは背中にあった白いマフラーの結び目をゆるめられていたのだ。その後、ゾルダーたちを倒すために激しく動き回った拍子に、ペギーの胸元からそこを覆い隠していた白い布がいつの間にか外れてしまい、彼女は知らない間に前をはだけさせてしまっていたのである。
「へへっ…ま、まさかくたばる前に…そんなおいしいモンを…も、もう一度拝める…なんてな……へへへっ、へへへへっ……ぐふぅっ!?」
ガンッ!
自分の命が残りわずかと分かっているにも関わらず、ペギーのはだけた胸元を見てニヤついているゾルダー。しかしペギーはその不届きな雑兵を黙らせるようにそのゾルダーの後頭部をブーツの靴底で思い切り踏みつけた。
「ったく…くだらない事言ってないでさっさと死んどきなさいよ!この…変態ゾルダー!」
不届きなゾルダーを思い切り踏みつけ、うつぶせに転がる死体に向かって吐き捨てるようにそう言い放つペギー。しかしそんな強気な態度とは裏腹に動揺の色が隠せないペギーの顔はすっかりほてってしまっている。彼女の凛々しくも美しい、整ったその顔立ちは紅潮し、頬はすっかり桜色に染まっていた。
そしてゾルダーにトドメを刺したペギーは近くに落ちていた白いマフラーを拾い上げ、はだけた胸元を覆い隠すように再びそれを巻きつけていく。
そ、それにしても…黒十字軍にこんな…こんな一面があったなんて…。
自身の胸回りに巻きつけた白いマフラーの結び目を背中に作りながら、ペギーは女の自分が男ばかりの戦場へ出ていく事の意味を改めて考えていた。
戦いに敗れ、捕虜となってしまった兵士に待っているのは凄惨な拷問である。ただし女兵士には多少の陵辱も待ち受けているのかもしれない。中世ヨーロッパ最大の女性英雄、ジャンヌ・ダルクの悲劇的な最期、他にも戦いに身を投じた女たちにまつわる様々な話…過去の戦いの歴史をよく調べていなくてもそのぐらいの事はペギーにも何となく想像はついた。
だが彼女を待ち受けていた“現実”はそんな甘い想像を遥かに凌駕する、残酷でかつ過酷なものだった。
これまでペギーは体力的に劣る女の身でありながら、戦いという厳しい環境に身を投じた事に少しも後悔はしていない。むしろ、そのようなハンデを人一倍の努力で克服し、爆弾処理と武器開発のエキスパートというゴレンジャーでも特異な地位を確立してきた自分に誇りすら持っていた。
しかし今、彼女は女の身でありながら男ばかりの戦場に出てきた事、何より自分が男ではなく女に生まれてきた事を初めて後悔しているのかもしれない。幾ら人一倍の努力で男女間の差を埋めようとしても、男と女の間には違いが厳然として横たわっている。それが“敵の目”から見れば尚更なのだ。その事を今、ペギーは嫌というほど思い知らされていた。
でも…でもこんな事に…こんな事にわたしは決して負けない!わたしが自ら選んだ道…こんな事に負けて…負けてたまるもんですか!
それでもペギーの闘志が揺らぐ事はない。確かに精神的に脆い一面のある彼女がこの戦いで受けた恥辱の数々に激しい動揺の色を見せていた事も事実だ。だがペギーが女の身でありながら戦場に赴く限りこの問題は常について回る事なのである。
何よりペギーに正義と平和を愛し、悪を憎む心がある限り、ペギーが黒十字軍に勇気を持って敢然と立ち向かうゴレンジャーの一員である限り、彼女は戦い続ける。そしてこの世から巨悪が滅びぬ限り、ペギーの、モモレンジャーの戦いは果てしなく続くのである。
「いたぞ!あの女だ!」「だがすぐ殺すなよ!じわじわ追い詰めてひっ捕らえるんだ!」
!?…だ、誰!?他のゾルダーたち!?…い、今の騒ぎで見つかってしまったの…!?
ペギーの後方から男の野太い声が聞こえてくる。それに気付いたペギーが振り返った視線の先には…追っ手と思われる2、3人のゾルダーたちの姿があった。
だがペギーの目に映る今の追っ手の姿はまだ豆粒のように小さい。しかしここは敵の基地である。例え今は追っ手が2、3人の雑兵ゾルダーだけであるとしても増援がどこから現れるのか分からないのだ。
そうなれば今度は彼女がたちまち窮地に追い詰められていく。敵の秘密基地で孤立無援であり、救援を呼ぶ連絡も取れない以上、今のペギーにはひたすら逃げる選択肢しかなかったのである。
…と、とにかく逃げなきゃ……今戦ってもジリ貧に追い詰められていくだけだわ。それにあんなヤツらに…あんなヤツらに捕まってたまるもんですか!
ダッ!
ペギーは踵(きびす)を返してその追っ手が現れた反対の方向へ懸命に駆け出した。しかし今の彼女には行くあても、どの方向へ向かえばいいのかでさえも分からないのだ。かくしてペギーは敵の姿を見つけてはなるべく遠ざかるように、ひたすら逃げ回るしかなかったのである…。
- 以下 黒い死の要塞!!恥辱まみれのモモレンジャー 逃亡編2へ続く -