- 捕獲されたヒロインたち 白と桃のビューティペア -

「はぁ…はぁ…」「はぁ…はぁ…はぁ…」
薄暗い、霧深い森の奥深く…その森の中に二人の若い女の荒い呼吸が響いていた。
「はぁ、はぁ…」
一人の女の名は桃井あきら。そのモデルのような抜群のプロポーションを誇る身体を鮮やかな桃色の衣装で包み、丈が極端に短いピンクのミニスカート、濃茶のパンストを身に着けた肉付きの良い太腿、履いていた白いロングブーツが印象的な女性である。
「はぁ、はぁ…」
そしてもう一人の女の名は渚さやか。半袖のスーツ、丈の短いミニスカート、そしてロングブーツ、身に着けている物全てが“白”といういでたち…その身なりから知性的、清楚な雰囲気を醸し出していた女性である。
二人ともいずれ劣らぬ美女であり、このような薄暗い森の中を必死の形相で走っているのは一見あまりに不似合いに見える。だが彼女たちはただ走っていたわけではなく“ある男”の手から逃げていたのだ。あきらとさやかは死の商人、“デストレーダー”を名乗るその男のために捕らわれの身になっていた。
彼の秘密のアジトに捕らわれていた彼女たちはそこに忍び込んできた宇宙警察の女刑事、デカイエローこと礼紋茉莉花・ジャスミンに助けられそこから逃げ出す事に成功した。だが脱出直後に現れたメバ星人・“ライム”のために彼女たちは二手に分断させられてしまったのだ。
そこで彼女たちは、ジャスミンが一本の大きな木にあらかじめつけておいたという“目印”に向かい、その場所で再び合流を目指す事にした。今、あきらとさやかはその“目印”を目指し賢明に駆けていたのである。
「はぁ、はぁ…さやか!そろそろ一息つきましょうよ…それにそろそろジャスミンが言ってた“目印”のある所なんじゃないかしら?」
「はぁ、はぁ……そうね。そうしましょう…それに少し息も整えたいし…」
その言葉と共に二人は走るのを止め、その場に立ち止まる。そして両手を膝頭についてぜぇ、ぜぇと激しく息をし、呼吸を整えていた。
はぁ、はぁ…ピッ。…ふぅ、どうやらブレスレーザー一発ぐらいは打てそうね……両膝に手を付いていたさやかが、左腕のチェンジブレスのスイッチを入れる。どうも彼女はチェンジブレスがどのぐらい動くかを確認しているらしい。
「はぁ、はぁ……さやか、何してるの?変身ブレスのスイッチなんか入れて…わたしたち、もう変身できなくなっちゃったんじゃ…」
「うん、ちょっとね…“コレ”、チェンジブレスがどのぐらい動くか確認したかっただけ……このチェンジブレスは変身するための道具ってだけじゃなくて、威力は大した事はないんだけどレーザーみたいなもので攻撃したりする事もできるの」
左腕に身に付けていたチェンジブレスを見やりながらさやかが言う。へぇ…さやかのその言葉に興味津々な様子のあきら。
「…それにほら、あたしたち、もう変身できなくなっちゃったでしょ?だから武器になるような物は少しでも欲しいなぁって…」
「ふーん…さやか、あなたってホントにマメなのねぇ…ねえ、“軍人さん”ってみんなそうなわけ?」
「ううん、そんな事ないわよ…あたしと同じチェンジマンの同じぐらいの年の女の子は、もっと大雑把であまり細かい事を気にするようなタイプじゃなかったし…」
あきらのその問いかけに、チェンジマンでの同僚の女戦士を引き合いに出し否定するさやか。そして彼女はその“同僚の女戦士”、一番の親友にして最良のパートナーの事を思い出しクスリと笑みを浮かべる。さやかは不意に思い出した、“その彼女”の自分とはあまりに対称的な性格を改めて確認し、それが妙に可笑しかったようだ。
「ふふっ…じゃあやっぱりさやかが特別なんだ?…幾らなんでもキッチリし過ぎてるものねぇ…」
そんなさやかを見てあきらが意地悪い笑みを浮かべた。ムッ…さやかはそんなあきらの態度が気にいらないらしくむくれたような表情をする。
「…それよりジャスミンがつけた“目印”を早くさがしましょ?…ひょっとしたらあの二人はもうそこに来てるのかもしれないし…」「ええ。そうね」
少しの雑談を終えたあきらとさやかは、二人左右それぞれに分かれてジャスミンが“白いチョーク”のようなものでつけた目印をそれぞれ探し始めた。
…数分間、彼女たちはその目印を探し続ける。が、一向に見つかる様子がない。もちろん、再会への淡い期待を抱いていたジャスミンたちの姿も見つけられなかった。
「ねぇ、さやか。ホントにこっちの方向で合ってたわけ?」
近くに立ち並ぶ木々の幹を調べながら、あきらが不安げな声でさやかに問いかける。
「…おかしいわねぇ…ジャスミンが言ってた通りなら確かにこの辺で合ってると思うんだけど……そういえばあの二人、ジャスミンと冴ちゃん、無事だといいんだけど…」
あきらとは反対側の木々を調べていたさやかが、話題をそらすように離れ離れになってしまった仲間を心配するような事を呟く。だがそれは話をそらすためというよりは彼女の本心が思わずポロッと出てしまっただけの事であろう。
「…あの二人ならきっと大丈夫よ。何よりあっちにはジャスミンがいるんだもの。彼女は本当に凄い刑事だと思う…だから何も心配する事ないわ」
「うん…確かにそうよね」
ジャスミンたちを心配するさやかの呟きに『きっと問題ないわよ』と言った感じの言葉を返すあきら。その彼女から返ってきた言葉はジャスミンへの信頼に満ち溢れたものだった。さやかもそれに頷くように相槌を打つ。
「でも彼女って不思議な女(ひと)よねぇ…あの独特のセンスは本当にどこで身に着けたのかしら?」
プッ、そうね……どうもあきらはジャスミンのあの言葉遣いを始めとする独特のセンスが不思議でたまらないらしい。そのジャスミンの“例のセンス”を改めて思い浮かべ思わず吹き出してしまうさやか。
「…さぁ、早くジャスミンの言ってた目印を見つけましょう。グズグズしてると“あのバケモノ”に見つかっちゃうかもしれないし……!…もしかして…コレ…じゃないかしら?」
再びジャスミンがつけた目印を探し始めるさやか。その時、彼女は太さ約6、70cmの大木、自分の背丈の高さぐらいの位置に何か白いものが書いてある事に気付く。
それは10cm大の大きさで書かれた白い文字だった。その文字は“SPD”と書かれている。恐らくこれがジャスミンのつけた目印なのだろう…それを見てさやかはそう確信する。
「…“SPD”って…“スペシャル・ポリス・デカレンジャー”の事よね?…そうよ。きっとこれに違いないわ!…とうとう見つけたのね……でもここにジャスミンたちがいないって事は、まだあの二人はここに来てないって事なのかしら…?」
そう、みたいね……探していた目印を遂に見つけ出した事でパァッと明るい笑顔になるあきら。だがその表情はすぐに曇り、ジャスミンたちがいない事への疑問の言葉と渋面へと変わってしまう。その事はさやかも少し拍子抜けしてしまったようだ。
「…でもジャスミンが言ってた目印はこれでまず間違いないわ…その内ジャスミンたちもきっと来るはずよ。それまでは“あのバケモノ”に見つからないように物陰にでも隠れてあの二人を待ちましょうよ、さやか」
うん…そうね……とりあえず、あきらはしばらくこの辺りで木の陰に身を隠してジャスミンたちを待とうと言い、さやかもそれに同調する。
ガサッ……その時、彼女たちの後方で何かが動くような音がした。ジャスミン!?……その物音に気付いたさやかが後ろを振り返ろうとすると…シュルシュルシュル…えっ!?……ビシッ!ビシッ!……その時、二本の触手のようなものがそれぞれ彼女たちの背後から腰周りに巻きついてきた。
「きゃあ!?ちょっと、何よコレ?」突然巻きついてきたその触手のようなものに驚愕の声を上げるあきら。
「…この半透明で緑色の触手のようなもの…!……まさか!?」
その半透明で緑色の触手のようなものにさやかは見覚えがあった。それもあまり思い出したくない、忌まわしきものとして、だ。
「ふへへへへへっ…遂に見つけたぜぇ、カワイ子ちゃんたちよぉ……これからたっぷりかわいがってやるからなぁ、ふへへへへへっ」
その触手は霧の向こう側、数十M先から伸びて彼女たちの身体を捕らえていた。そして濃い霧のため姿形はよく見えないが、霧の無効から発せられる声のトーン、その口ぶり、下卑た笑いから、あきらたちはそれはあの緑色のバケモノ、メバ星人・ライムであることがすぐにわかった。更にその話しぶりからこのバケモノは、先程あきらとさやかを苦しめたライムが分裂して誕生した生命体、ライムAであろうと言う事も。
やがてそのライムAがのっしのっしと彼女たちに近づいていき、濃霧の中からその姿が徐々に現れる。そして彼女たちを絡め取っていた触手のようなものはライムAの両腕だった。ライムAの左腕がさやかの身体を、右腕があきらの身体をそれぞれ絡め取っている。
「ふへへへへへっ…久しぶりだなぁ、カワイ子ちゃんたちよぉ…あ?さっき遊んだばっかだったなぁ…そんなわけでまたオレと楽しく遊んでくれよぉ、ふへへっ、ふへへへへっ、ふへへへへへへへっ」
「く、くっ!?…こ、こんな…ぐ、ぐっ…!?」「ぐ、ぐっ!?…う、迂闊だったわ…あのバケモノの接近に気付いてなかったなんて…」
二人の数m手前まで近づいてきたライムAが絡め取った彼女たちを見て舌なめずりして言う。その絡め取られていたあきらとさやかは自分たちの腰周りに巻きついていたライムAのそれぞれの腕から懸命に脱出しようと試みている。
ギュゥッ、ギュゥッ…ああっ!?ああああぁ!……しかしそんな彼女たちをあざ笑うかのようにあきらたちに巻き付いていたライムAの両腕は彼女たちの身体を徐々にキツく絞め上げていく。
「ふへへへへっ…あんたらの力じゃ何してもムダだぜぇ。所詮は“ただのカワイ子ちゃんたち”だからなぁ、ふへへへへっ……さぁて、これから一人ずつゆっくりとかわいがってやるからなぁ、ふへへへへへっ……あらよっと」
「!…き、きゃあああぁぁぁ…!」「いやああぁぁぁ!!」
ブンッ!…そしてライムAが絡め取っていた彼女たちをそれぞれ別の方向へ思い切り放り投げた。あきらを右の大木の方へ、さやかを自分の体の方へ、である。
「…あああぁぁぁ……ああぅ!?」
ズボボッ!…そして、ライムAの体に向かって勢いよく放り投げられたさやかは、彼の胸板に頭から猛然とぶつかってしまい、そのまま彼女の身体は腰あたりまでモロにめり込んでしまう。
「…いらっしゃ~い、白いカワイ子ちゃん♪…それにしてもあんた、いいケツ持ってんじゃねぇかぁ?ふへへへへへっ」
「!…んん、んん、んん~…」
下卑た笑い声を上げながら、らいむAは自分の体にめり込んでいるさやかの白いミニスカの中に右手を突っ込む。そして白いアンスコに包まれたボリューム感たっぷりの彼女のヒップをドーナツ状に撫で回していく。ライムAがその魅惑的な尻を愛撫するたびに、地面から少しだけ離れていたさやかの健康的な色白の両脚が、それを嫌がるように何もない宙をバタバタと蹴り上げる。
「…いやああぁぁぁ…あぁん!!」
ドスンッ!…一方、太さ5、60cm程の大木に放り投げられたあきらは、その木の幹に背中から勢いよく叩きつけられてしまう。シュルシュルシュル…ビシィッ!……そして間髪いれずにライムAの右脚が彼女の身体へと伸びていき、あきらの身体と彼女を叩き付けたすぐ後ろにあるその木の幹を繋ぎ止めるように巻きつき、あきらの身体を束縛してしまう。
「ううぅ…!…ぐ、ぐっ!?…な、何…よ、こんな…もの……!…ああっ!?さ、さやかっ、さやかぁ!!」
大木に勢いよく叩きつけられた痛みにもだえる間もなく、あきらの身体に巻きついてきたライムAの右脚。ぐ、ぐっ…巻きついてきたそれを必死に外そうとしているあきら…だがその彼女の視界にさやかがライムAにいいように弄ばれている光景が飛び込んできた…悲痛な声で緑色のバケモノの虜になっている仲間の名を絶叫するあきら。
「んん~、んんん、んん~…」
「さやか!…ぐ、ぐぅ!?…さやかっ!さやかぁぁ!!」
「ふへへへへっ、あんたとは後でゆっくりと遊んでやるからなぁ。だからちょ~っと待っててくれよなぁ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ、ふへへへへへへっ」
左足だけで器用に立っていたライムaが、自分の体にめり込んでいたさやかのボリューム感たっぷりのヒップを、気持ちよさそうに撫で回している。それを嫌がるように必死に両脚をバタつかせているさやか。そんな彼女が緑色のバケモノにいいように弄ばれる光景を、あきらはそれを見ながらただ仲間の名を絶叫する事しかできなかった。
「…ふへへへへっ、このまま“このかわいいお尻”で遊んでいてもいいんだがなぁ…でもそれじゃつまんねぇから少し違った形で遊んでやるよぉ、ふへへっ、ふへへへへへっ」
ズブッ…そう言うとライムaは自分の体にめり込んでいたさやかの身体を、彼女に巻きつけていた左腕で自分の体から引き抜き、そのままさやかを自分の顔の高さぐらいに持ち上げてしまった。更に自分の2M前方へと晒すようにかかげてしまう。
「…ぷはっ…ケホッ、ケホッ…ぐ、ぐっ!?」
「さやか!?さやかっ!……ぐ、ぐっ!?…おまえ、さやかをどうするつもりなのよ!?」
「…それはこれからやる事を見てれば分かるぜぇ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ、ふへへへへへっ」
ゴソゴソ…下卑た笑みを浮かべながら、いつの間にかライムaは自分の体から黄色いカラーボールのような物を取り出す。そして、そのボールの中心には“稲妻”のような模様が施されていた。
「ふへへっ、これはダンナにもらった“楽しい玩具”でなぁ…早速これで白いカワイ子ちゃんと遊ばせて貰うぜぇ、ふへへへへへへっ……よっと!」
ポイッ…彼は取り出した黄色いボールをさやか目掛けておもむろに放り投げた。ベチャッ…彼女の胸元に当たり、思い切り物にぶつけたトマトのようにつぶれたそのボールは、黄色い微粒子へと変化しさやかの身体の周りへと霧散していく。
「!?…い、一体何なのよ!?……!…き、きゃあああぁぁぁ!!」
「ああっ!?さやか!?さやか!……おまえ、一体さやかに何したのよ!?」
その黄色いボールを当てられたさやかが、いきなり苦悶の表情を浮かべ甲高い悲鳴を上げ始める。突然の彼女の変化に何が起こったか分からずとまどいの色が隠せないあきら。
「ふへへへっ…今白いカワイ子ちゃんにぶつけたボールは当てた物に一分間高圧電流が流れるのだぁ…どうだ?楽しい玩具だろぉ?ふへへっ、ふへへへへへっ」
「そんな!?…さやか!さやか!さやかーっ!!」
「あああぁぁぁ!…いやああぁぁぁ!!」
さやかに目掛けて投げた“あのボール”には、当たった物に一分間高圧電流を流す効果があるという。前進に容赦なく流れる強烈な電撃にただただ甲高い悲鳴を上げ続けるさやか。あきらはその光景をただ見ている事しかできない。
「…更にこんな事してみたらどうかなぁ?ふへへへへっ」
さやかの胸元をいやらしく見つめるライムAが、おもむろに自分の右手を強烈な電撃に苦しみ悶える彼女の左胸へと伸ばしていき…ムギュッ。その左乳房を白いスーツの上から力強く鷲掴みにし、その柔らかい感触を確かめるようにその乳房をグリグリと弄んでいく。
「!…や、やめ…あああぁぁぁ!あああぁぁぁ!!」
「ふへへへっ…それほどデカくはねぇがあんたもいいおっぱい持ってんじゃねぇか?白いカワイ子ちゃんよぉ、ふへへっ、ふへへへへへっ」
「ああぁぁっ!…な、何す…!…あああぁ!あああああぁぁぁ!!」
「さやか!?さやかぁ!……や、やめて!やめなさいよ!…もうさやかを放してぇ!!」
さやかに流れる電撃をものともせず恍惚な表情で彼女の左乳房を揉みほぐしているライムA。胸をいじられているさやかからは電撃による甲高い悲鳴の中に時々喘ぎ声のような甘い吐息が混ざるようになる。その眼前のさやかに繰り広げられている数々の責めを、あきらは悲しい声で絶叫しながらただ見ている事しかできなかった。
「…そろそろ一分だなぁ、ふへへへへへっ」「あああぁぁぁ!…あああああぁぁぁぁ!!」
さやかの身体に強烈な電撃が流れてから一分が経った頃…パチパチ、パチ…パ…チ……彼女の身体に流れていた強烈な電撃が止む。代わりにさやかの身体にはかすかな火花が飛び散るような音がしていた。
「…ぁ…ぁ……ぁ……」
ガクンッ。そして強力な高圧電流を浴び続けたさやかが身体をビクン、ビクンと痙攣させ、ついには頭を下に力無く垂れて気を失ってしまった。
「ふへへへっ、もうおしまいかぁ?ふへへへへへっ」
「さやか!?…さやか!さやかぁぁ!!」
シュルシュルシュル…ライムAが意識がなくなったさやかから彼女の身体を絡め取っていた自分の左腕を抜き取っていく。その意識の無いさやかを見て、悲痛な声で彼女の名をひたすら叫び続けるあきら。
ドサッ。そしてライムAの左腕の支えが無くなったさやかの身体はそのまま力無く地面へドサリとうつぶせに倒れてしまう。
「…さやか!さやか!……よ、よくも…よくもさやかを…!」
「ふへへへっ、他人の事より自分の心配をしたらどうなんだぁ?ピンクのカワイ子ちゃんよぉ、ふへへへへへへっ」
ぐ、ぐっ…仲間の女戦士の無残な姿を目の当たりにし、彼女をそのような姿にしたライムAへの怒りを露にするあきら。だがもちろん彼はそのような事を意に介するはずがなく相変わらず下卑た笑みを浮かべている。
シュルシュルシュル…そしてライムAはあきらの身体とそのすぐ後ろの木に巻きついていた右足を自分の方へ戻していき、それと入れ替えるように自分の左腕をあきらとその木へと巻きつけていく。
「ふへへへへっ…お待たせしたなぁ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ…これからゆっくりと遊んでやるからなぁ、ふへへっ、ふへへへへへへへっ」
さやかを戦闘不能に追いやったライムAがその標的を遂にあきらへと向け、ゆっくり、のっしのっしと彼女へ近づいていく。
ぐ、ぐっ…自分へ近づいてくる醜い緑色のバケモノに、あきらは少しも怯む様子を見せず、強気に鋭く睨みつけている。だがその内心は目の前の強姦魔への“女”としての恐怖に徐々に蝕まれていた。
「ふへへへっ…これからそのかわいい顔がどんな風に変わっていくのか…じっくりと楽しませてもらうぜぇ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ、ふへへへへへっ」
あきらへと更に近づいてきたライムAが、自分の醜い顔を彼女の目の前約20cmまで近づけていき、あきらの凛々しい顔を見ながら舌なめずりして言う。ぐ、ぐっ!?…あきらはその醜悪な緑色の顔を避けるように右の方へと顔を背けていく。
あっ!?…しかしそんな彼女をあざ笑うかのようにライムAが自分の右手であきらの左乳房を鷲掴みにしてきたのだ。ライムAの右手に力強く揉みほぐされるあきらのその乳房。
「あっ!?あんっ……ぐ、ぐっ…な、何するのよ!?」
「ふへへへっ…あの白いカワイ子ちゃんもいいおっぱい持ってたが、あんたのおっぱいもやっぱりいいぜぇ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ、ふへへへへへっ」
ぐ、ぐっ!?こ、この……あきらの乳房を弄ぶライムAのその表情は恍惚そのものだ。どうやら彼は彼女の胸が相当気にいったらしい…そのあきらはそむけていた顔を再びライムAの方へ戻し、だらしなくニヤけた彼の顔を鋭く睨みつけている。そして気の強いあきらがこのまま黙ってるわけもなく、彼女はささやかな抵抗を見せる。
ペッ…あきらは目の前の醜悪な顔に思い切り唾を吐きつけたのだ。ライムAの右目の下辺りに見事に命中する吐きつけられたその唾…右手を弄んでいた左胸から離し、その手でかかった唾をグイッと拭い取るライムA。その様子を見て、してやったりの表情を浮かべるあきら。
あっ!?…ぐ、ぐっ……そのささやかな抵抗を受けたライムAが彼女の下アゴを掴み、更に自分の顔へと近づけていく。
「…やってくれたなぁ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ…!…そうだなぁ、あんたとは少し趣向を変えて遊んでやるぜぇ、ふへっ、ふへへへへっ、ふへへへへへっ」
ニヤリと陰湿な笑みを浮かべ、目の前のあきらの顔を覗き込むライムA。その表情は今までで一番、それでいてどこまでも深く暗い、じめじめしたものだった。ぐ、ぐっ…相変わらず強気な表情を崩していないあきらだが、その内心は徐々に恐怖に蝕まれ始め、こらえきれなくなっていた瞳がだんだんと潤んできていた。
*************
「…うっ…くっ…あっ!?ぐぅ…」
しばらくして…あきらは地面から高さ5m程の木の枝から逆さ釣りにされていた。そしてその“木”とはジャスミンのつけた目印のある大木である。
彼女はライムAの体の一部から作り出されたロープのようなもので両手を後ろ手にされ、両脚を真っ直ぐ伸ばして揃えさせられている。そしてその足先の白いロングブーツにこれまた彼の体の一部から作り出したロープのようなもので束縛され、更にそこから2m程上にある太い木の枝からあきらの身体は逆さ釣りにされていた。
「…うっ、くっ…あっ!?…ぐ、ぐぅ…」
そんな状態からでもあきらは何とか脱出を試みている。だがそんな彼女がいくらもがいてみても動かないその身体を蓑虫のように悶えさせる事が関の山だった。
そしてあきらの身体は逆さ釣りにされていたため、彼女のピンクのミニスカートが引力に逆らえず桃色の花びらが咲くようにゆっくりと外側へと開いていく。普段はそのミニスカが覆い隠している彼女の股間が…ピンクのアンスコが徐々に露になっていく。
「あっ!?…う、ぐぅ…うっ、くっ…あっ!?…」
それに気付いたあきらが頬を朱に染め上げ羞恥に身もだえる。だが今の彼女は両手を完全に束縛され自分の手で垂れ下がるミニスカを抑える事はできない。彼女がもだえ上半身を動かすたびにピンクのミニスカは逆にドンドンとめくれていってしまう。
仕方なくあきらは重力に逆らえず徐々に垂れ下がる自分のミニスカを、自分のへそを見るようにして懸命に上半身を起こして押さえつけようとしている。だがそんな彼女の努力もただ身体を無理やり起こすだけで、あきらのピンクのミニスカは無常にもだんだんと垂れ下がっていく。
しかも無理矢理何度も上半身を前にかがめたため、白いキャミソールが徐々にずり落ち、彼女の色白の柔肌とほどよく引き締まった腹筋がだんだんと顔を覗かせていく。ピンクの上着はマントのように完全に垂れ下がりむなしくヒラヒラとたなびいてしまっていた。
「あっ!?…く、くっ…あっ!?う、ううぅ…」
手足を縛られて蓑虫のような状態のあきらの身悶えは更に激しくなっていく。徐々にずり落ち始めたキャミソールの隙間からベージュ色のブラが少しずつ顔を覗かせていく。
しかもそのブラはストラップレスのためにだんだん下にずり落ち始め、ブラが覆い隠していた彼女のアンダーバストは徐々に露になり始めていた。それでもあきらは身体をいやらしくくねらせ抵抗の真似事のようなことをする事しかできない。
「ふへへへへへっ…随分と楽しそうじゃねぇかぁ?ピンクのカワイ子ちゃんよぉ…オレもぜひ混ぜてくれよなぁ、ふへへへへへっ」
そう言うとライムAは例によって自分の体の一部を切り取り、長さ50cmぐらいの指し棒のようなものを作り出す。そして右手にそれを持ち露になっていた彼女のピンクのアンスコに包まれていた股間をツン、ツンとつつき始めた。
「あっ!?…や、やめ…あっ、あんっ…や、やめなさ……あぁん…」
「ふへへへへっ…とてもいい感じだぜぇ、ピンクのカワイ子ちゃんよぉ…ほれっ、ほれっ、ほれぇっ、ふへへへへへっ」
「…あっ、あんっ…あ!?…あっ、あぁん…」
恍惚な表情を浮かべあきらの股間を楽しげにつつくライムA。おかげで彼女の身悶えは羞恥心に狂わんばかりに更に激しくなっていく。またずり落ち始めていたあきらのストラップレスのブラジャーは更にずり落ちていき、もう少しで彼女の乳輪がブラのカップからはみ出すところまできていた。
そしてあきらのそんな様子をライムAも感づいていた。彼は下へ下へとめくれ垂れ下がっていたピンクの上着の隙間から彼女の胸元を覗き込み、あきらの下着が明らかにずれてきている事に気付く。
「なんだぁ?ピンクのカワイ子ちゃん、ブラがずれてきてるぜぇ、ふへへへへへへっ……!…そうかぁ、肩ヒモがないからずれてきてるのかぁ?…ここまでずれたんだったらもう取っちまってもいいんじゃねぇかぁ?ふへへへへへっ」
バスとのふくらみから明らかにずれ始めていたあきらのベージュ職のブラを見て、ライムAはニヤリと妖しい笑みを浮かべ…ピッ。彼は今まであきらの股間をつついていた“指し棒”を彼女の胸の谷間に向ける。グィッ…そしてほどよくふくらんだバスとを包み込んでいたブラジャーの左右のカップの間にあるベルトにその“指し棒”を引っ掛け、そのブラを力で強引に引き剥がそうとする。
「!…あっ!?…な、何するの!?や、やめて!その棒で何するつもりなのよ?…や、やめて、いやっ、いやぁ!」
「ふへへへへっ…“それ”がそんな中途半端にずれてるんならオレがいっそ取っちまおうってわけだぁ…どうだ、いい考えだろぉ、ふへへっ、ふへへへへへっ」
「そ、そんな!?やめて、やめて!…イヤ、イヤッ!イヤァぁ!」
そのライムAが言い放った言葉を耳にし、羞恥に激しく身悶えるあきら。必死に上半身を動かして抵抗のようなものを試みる彼女だが、カップの間のベルトに差し込まれていた“指し棒”がテコの支点のようになってしまい、ベージュ職のブラを返って自ら外す動きを進めてしまう。
「ふへへへっ、もう少しで外れるんじゃねぇかぁ?ほうれ、ほうれ、ほうれぃ…ふへへへへへっ」
グイ、グイッ…ライムAは容赦なくあきらのブラをカップの間に差し込んでいた“指し棒”でグイグイと引っ張っていく。ブチ…ブチ……力任せに引っ張られたブラのホックが徐々に引きちぎれるような音が聞こえてくる。
「!…いやあぁ!やめて、やめて!ほんとにちぎれちゃう…やめて、やめて!お願い、もうやめてぇぇ!!」
顔を羞恥で真っ赤に染め、今にも泣き出しそうな甲高い悲鳴を上げ続けるあきら。グチ…ブチブチ…ブチブチブチ!……そしてブラジャーのホックが引きちぎれる音が徐々に、ハッキリと分かるようになっていく。
ブチンッ!…そしてそのベージュ職のブラはあきらの身体から完全に引き剥かれてしまう。!?…う、ううぅ……いとも簡単に下着を剥かれてしまいうなだれているあきら。
そしてそのブラを剥き取ったライムAは、だらしなく顔をニヤつかせながら“指し棒”の先端に引っ掛けていたあきらのベージュ職のブラジャーをじろじろと観察している。
「ふへへへっ…そんないやらしいおっぱい持ってる割には随分と色気のねぇ下着をつけてるんだなぁ?ふへへへへへっ」
「ぐ、ぐっ……あっ!?…あっ、あんっ…や、やめ…あっ、あぁんっ……イヤッ、イヤァ!」
ムギュッ。ライムAは完全に露出させたあきらの左胸を鷲掴みにし、マシュマロのように柔らかいその乳房の感触を楽しむようにしてグリグリと弄んでいく。
「ふへへへへっ…“直”に触るピンクちゃんのおっぱいはまた格別だぜぇ、ふへへへへへへっ」
「…あっ!?あんっ…な、何す…あぁん…あっ!?…イヤッ、イヤァ、イヤァ!」
恍惚な笑みを浮かべ気持ちよさそうにあきらの左胸を弄ぶライムA。性感を責められている彼女はただただ喘ぐ事しかできない。
「…ついでにこっちでも遊んでやるぜぇ…ほうれ、ほうれ、ほうれぃ…ふへへへへへっ」
「!?…イ、イヤッ…そ、そんなトコ…あっ、あぁん…いやぁ、いやぁ!」
あきらの左胸の感触を楽しんでいたライムAが、右手に手にしていた“指し棒”に引っかかっていたあきらのブラを無造作にポイッと投げ捨てる。そしてその“指し棒”で再びピンクのアンスコに包まれていた彼女の股間をツン、ツンとつつき始めた。彼がその棒で股間をつつくたびに、それに反応するようにあきらが甘い吐息のようなものを漏らし、彼女の股間から脚の付け根の辺りがビクン、ビクンと反応する。
ジーッ…そしてその様子をまたしても例の虫型小型カメラがとらえていた。更にはその小型カメラがとらえていた映像はやはり“あの男”の下へと送られていたのである。
**********
『!?…イ、イヤッ…そ、そんなトコ…あっ、あぁん…いやぁ、いやぁ!』
「ククククッ、ライムのヤツ…なかなかいいものを提供してくれるじゃないか?…“あっち”の方の映像として残しておくには随分と素晴らしいものだ、ククククッ、ククククククッ」
例のモニタールームでソファーチェアーに深く腰掛けていたデストレーダーが、モニターの画面に映り羞恥に悶えるあきらの様子を見ながら不気味で陰湿な笑みを浮かべている。
ん?…何打、あれは?……その時、彼はモニターの端の方で何か白いものが動いていることに気付く。目をこらしてそれをよく見てみると……それは先程ライムAが戦闘不能に追い込んだはずの女戦士、渚さやかだった。
「ほぉ…あれは渚さやかじゃないか?まだ動けたのか?……どうやらライムの方に何かしようとしてるようだな……まぁ“この事”を“アイツ”に連絡してやる事は簡単だが…このまま泳がせてやるのも面白そうだ、クククッ、ククククククッ」
モニターの中でヨレヨレと動くさやかの様子に気付きながらデストレーダーはあえてそれを放っておく事にした。もちろんこの事の一部始終を観察されている事など彼女たちは知る由もない。
************
「…ぐ、ぐっ……う、ううぅ…」
うつぶせに転がされていたさやかが、目の前であきらを弄ぶライムAに気付かれないように、激しい痛みが蝕んでいる身体を懸命に動かして何かをしようとしている。
ジュッ…そしてさやかは履いていた左足の白いロングブーツのジッパーを下ろし、その自分のロングブーツの中から何か物を取り出す。それは小型の折りたたみ式ナイフだった。
はぁ…はぁ……ま、待ってて、あきら…今からあたしが……先程取り出した折りたたみ式ナイフを右手にさやかは眼前で羞恥に身悶えているあきらに何かをしようとしていた。
「…あっ、あんっ…イヤッ、イヤァ!やめて!お願いやめて!もうやめてぇ…!」
「ふへへへへへっ、まぁそんな事言わないでまだまだオレと楽しんでくれよぉ…なぁ、ピンクのカワイ子ちゃん、ふへへっ、ふへへっ、ふへへへへへっ」
ああ…こ、こんな…こんなことって……!…さやか!?…あれ、さやかなの!?…よかった。無事だったのね?……ヨレヨレと動くさやかの様子に気付いていたのはデストレーダーだけではなかった。羞恥に悶え苦しむあきらの目にもその様子は飛び込んできていたのだ。
さやか!?…もしかしてこっちに何かしようとしてるの?…ぐ、ぐっ!?……なら“あのバケモノ”の意識をなるべくこっちに向けておかないと……さやかの意図をそう感じ取ったあきらがライムAの注意を更に自分へ向けようとする。
「…あぁん…あっ、あんっ…あぁん、あぁん…」
「ふへへへへっ…そんなに激しく喘いじまって…あんた、正義の女戦士なんだろぉ?それがこんなに淫乱だったとはなぁ?ふへへへへへっ」
…そうよ…わたしはおまえの『責め』に感じているのよ……だからもっと…もっとわたしを弄びなさい!……ライムAの注意を引き付けるために、あえて今までよりも激しく喘ぐあきら。そうとは知らずにそんな様子の彼女を見て気をよくしているライムA。
「…ほうれ、ほうれ、ほうれぃ…ふへへへへへっ……んあ??」
ライムAが気分よくあきらを弄んでいると……ビュン!ブチンッ!……足先からあきらを逆さ釣りにしていたロープのようなライムAの体の一部が、飛んできた“刃物”のような物で切断されてしまう。それは先程激しい痛みをおして、ヨレヨレと起き上がっていたさやかが投げた小型の折りたたみ式のナイフだった。
ああぅ!…く、くっ…自分を逆さ釣りにしていた足先のロープが切れた事で、支えを失ったあきらは地面へと自由落下してしまう。手足を縛られまともに受身が取れない彼女は頭部を打たないように背面から落ちたため、肺から酸素が搾り出されるくらいに背中を強打してしまう。
ぐ、ぐっ!?…ゴロゴロゴロ……しかしあきらは背中を強打した痛みを懸命にこらえ、芋虫のように転がってライムAとの間合いを必死に離そうとする。
んあ!?…逆さ釣りにしていたあきらが突然いなくなり、何が起こったか分からずとまどうライムA。しばらくして…ようやく自体を飲み込めた彼が突然視界から姿を消した彼女を探し始める。
そして彼はようやくあきらの姿を見つけ出す。だが彼女は地面を転がって既にライムAから十数メートル間合いを離していた。
んあ??…そして驚くべき事にその傍らには先程自分が戦闘不能に追い込んだはずのさやかの姿があった。更に彼女は相変わらず手足を縛られ自由に身動きが取れないあきらに何かをしようとしている。
ブチンッ。ブチンッ…そしてそのあきらに寄り添っていたさやかが、右足のロングブーツから新たに取り出した小型のナイフであきらの手足を縛っていたロープを…ライムAの体の断片を切断する。自分の手足を束縛していたライムAの作り出したロープから開放されたあきらは身体の自由を完全に取り戻した。
「く、くっ……ありがとう、さやか」「何だぁ??…どこにそんなモン隠し持ってたんだぁ?それ以前に白いカワイ子ちゃん、完全にダウンしてたんじゃなかったのかぁ!?」
完全に手足の自由を取り戻したあきらはすぐさまスクッと立ち上がり、さやかの方を軽く一瞥する。思いがけず復活したさやかを見てさすがに驚いているライムA。と同時に彼女が小型のナイフとは言えまだ武器を隠し持っていた事に一番仰天しているようだ。
「うふふっ♪…甘いわね。アースフォースを浴びたあたしの回復力を見くびりすぎなんじゃなくて?それに…かわいくオシャレして色んな所に武器を隠しておくのは女戦士のたしなみってヤツよ」
手にしていた小型の折りたたみ式ナイフを取り出した、自分の白いロングブーツを見て得意げに言うさやか。
「…で、でもオレのドロドロした体で作ったロープが何でそんなちっこいナイフなんかで切れたんだぁ?」
「ふふっ…このナイフを小さいからって甘くみない事ね…“コレ”、小さい割には切れ味は抜群なんだから」
でもホントは2、3回物を切るとすぐ刃がダメになっちゃうから、コレ、あまり使いたくはないんだけどね……誇らしげにライムAの疑問をサラリと切り返すさやか。だがその余裕な態度とは裏腹に、彼女は心の中ではペロッと舌を出してそのナイフの致命的な欠点を思い浮かべていた。
「でも…そんな事してあがいてもカワイ子ちゃんたちの命が少し伸びただけだからなぁ…また楽しく遊んでやるぜぇ、ふへっ、ふへへっ、ふへへへへへへっ」
「く、くっ!?…た、確かにそうだわ。このまま戦ってもわたしたちの勝ち目は限りなくゼロに近い…さやか、どうする…?」
さやかの復活にはさすがに驚いていたライムAだが、すぐに余裕を取り戻し再び下卑た笑みを浮かべた“強姦魔”の顔に戻る。ライムAのその変化を敏感に感じ取ったあきらも雰囲気的に追い詰められたように感じてしまい、思わず隣にいたさやかを見てしまう。
「…確かにコイツとあたしたちがまともに戦っても勝ち目は薄いわ…でもただ逃げるだけじゃダメ。あのバケモノの足止めをするくらいダメージを与えてそれからじゃないと…」
…でも今のあたしたちにはそれすらも難しいわ。本当にどうすれば…?…!…もしかして…“あそこ”があのバケモノの弱点なんじゃ…正直言って確信は持てないけど…でも今のあたしたちはそんな事は言ってられない!……よしっ!……目の前の緑色の醜いバケモノをじっと観察していたさやかはとある部分がこのバケモノのウィークポイントでは?と思うようになる。
だが彼女はその推理に確信が持てているわけではない。普段のさやかなら“リスクの高さ”を考慮してその時点で行動を踏みとどまるはずだった。だが今の彼女たちはかなり追い詰められている。ある程度の危険を冒してもやってみる価値はあるわ……そう感じていたさやかはその“ひらめき”に賭けてみる事にした。
(あきら、ちょっといいかしら?…一つ試してみたい事があるの)(さやか!?…何かいい考えがあるの?)
近くにいたあきらとさやかが何かひそひそと話し始めた。
(…あのバケモノ、もしかして“あそこ”が弱点なんじゃないかしら?…正直言って確信は持てないんだけど……でもあのバケモノの“あそこ”だけ明らかに体の作りが違うわ……だからやってみる価値はあると思うの)
ヒソヒソ…さやかがライムAの体の“ある部分”に視線を送りながら、小声で何かあきらに話を持ちかけている。
(なるほど、確かにそうね…やってみる価値はあるかも……わかったわ、さやか。それ、やってみましょう)
(ありがとう、あきら……で、あたしがあのバケモノの注意を引き付けるから…あきらはその隙に“これ”を使ってアイツの“あそこ”を攻撃して…)(さやか!?でもこれが無くなるとさやかの武器が…)
(大丈夫よ。あたしには“これ”があるから…ね)
さやかの対ライムAの作戦を聞いてみて、あきらも彼女のその“ひらめき”に賭けてみる事にした。そしてさやかは自分が右手に手にしていたナイフをあきらの左手に乗せ、それでヤツに攻撃して欲しいという。
しかしそれじゃさやか自身の武器がなくなるんじゃ…?……その心配も左腕のチェンジブレスを見やりながら、さやかは笑顔であきらを説得する。ここで先程さやかがチェンジブレスの動作確認をしていた事が活きていた。
(決まりね…この作戦、もし上手くいかなかったらあたしたちは今度こそ本当にあのバケモノにやられてしまうと思うわ……でもやるしかない。せめて悔いを残さないようにしましょう。あきら)(さやか!…ええ、そうね)
「それじゃいくわよ、あきら!……はあああああっ」
覚悟を決めたあきらとさやか。そしてさやかが気合を込めてライムAへ猛然と突っ込んでいく。
「んあ?いきなり突っ込んできただぁ?…まぁ飛んで火にいる夏の虫だなぁ、ふへへへへへっ」
バシバシバシバシ…さやかはライムAの胸板に一心不乱に左右のワンツーパンチを叩き込んでいく。しかしさやかのそのような軽い打撃は当然ライムAには効かない。だが、もちろんさやかもその事は織り込み済みだ。
ええぇぇい!……そして彼女は突然何を思ったのか、彼の体に抱きつきその身体をベアハッグのように絞め上げようとする。だがライムAと比べて明らかに非力なさやかの腕力、更に彼女とライムAには歴然とした体格差が横たわっているのだ。さやかのそのような行動も特徴的な彼女の声がむなしく響き渡るだけだった。
「何打ぁ?ふへへへへへっ…かわいいもんだなぁ、白いカワイ子ちゃん…どれ、オレが本当の“ベアハッグ”ってのを教えてやるぜぇ、ふへへへへへへっ」
ガシィッ!……案の定、逆にさやかはいとも簡単にベアハッグ状態にされてしまう。ギュゥッ、ギュゥッ……そしてさやかを抱きかかえたライムAは彼女の身体をギリギリと絞め上げていく。
「ああっ!?…ああっ、ああぁ!ああああぁぁぁぁ!」
「ふへへへへへっ…これが本当の“ベアハッグ”ってもんだぜぇ…分かるかぁ、白いカワイ子ちゃんよぉ、ふへっ、ふへへへへへへっ」
ライムAの思うがままにベアハッグにされてしまうさやか。だがここまでも彼女の書いたシナリオ通りだった。彼の注意を引き付け、かつヤツの両手の動きを自分へ向ける事……これがさやかの立てた作戦だった。後はこの隙を利用してあきらがライムAの“弱点”をつくだけなのだが…。
「やああああっ!!」
その時、忽然とライムAの視界から姿を消していたあきらが彼の右斜め後ろから彼の頭部目掛けて猛然と襲い掛かる。んあ?不意打ちを食らうような形になってしまったライムA。だが彼女たちの攻撃など所詮は大した事はない…ある意味、そうタカをくくっていた彼はそのあきらの不意打ちにも特に何も対応しなかった。
やああああっ!……そんなライムAの行動に構わず彼の頭部に襲い掛かるあきら。ブシュッ!ぐああああっ!……そして彼女が手にしていたさやかから受け取ったナイフがライムAの右目に炸裂する…そう、さやかは“目”がこのバケモノの“弱点”であると考えたのだ。
このバケモノの“目”は明らかに体の他の部分とは作りが違う。だからそこなら自分たちの攻撃でも十分なダメージを与える事ができるはず……さやかはそのように考え、実際にその目論見は見事に当たった。激しい痛みにあきらのナイフに刺された右目を右手で押さえているライムA。
「やった!さやかの思った通りだったわ!」思った以上の結果が得られた事に喜ぶあきら。
チャンス!今だわ!……ライムAが右手で右目を押さえた事で彼のベアハッグから解放されたさやかが、すかさず彼に抱きかかえられていた腕からスルリと抜け、後方へ一回二回と転がり間合いを取って、左腕のチェンジブレスに右手を添える。そして彼女はライムAの左目に狙いを定めて左腕のブレスを彼に向ける。
「ブレスレーザー!」
ピッ。ぐあああっ…さやかのチェンジブレスからレーザーのようなものが発射され、ライムAの左目を攻撃する。ブレスレーザーに焼かれてしまった左目を左手で抑え、激痛から懸命に耐えているライムA。
「やった!…上手くいったわ、さやか!」「うん。さぁ、今の内に早くあのバケモノから逃げましょう!」「ええ、そうね!」
ダッ!…ライムAの“両目”をつぶしたあきらとさやかはこの隙にどこか遠くへ逃げようとする。ここまではさやかの目論見どおり、彼女たちは追跡者からの逃亡に成功するかに見えた。
しかし霧深い森の中へ姿を消そうとしていたあきらたちにとって信じられない事が……シュルシュルシュル…えっ!?…ビシィッ!ビシィッ!…あっ!?しまっ……触手のようなものがあきらとさやかの身体を絡め取ってきたのだ。見覚えのある半透明で緑色の物体…恐らくそれはライムAの両腕なのだろう。驚くべき事にライムAはあきらたちに受けたダメージからすぐに立ち直り、再び彼女たちにその毒牙を向けてきたのだ。
「…よぉくもやってくれたなぁ?カワイ子ちゃんたちよぉ…このお返しは利子をつけてキッチリ返させてもらうからなぁ、ふへへへっ、ふへへへへへへっ」
「…そ、そんな…確かにあのバケモノにダメージは与えたはずなのに…!…ああっ、あああぁ!」「ぐ、ぐっ!?…こ、こんな…こんなことって…!…ああっ、あああぁ!あああぁぁ!!」
両目に攻撃を受けたライムAからは今までの余裕の下卑た笑みが消え、明らかに怒り狂い目を血走らせて彼女たちの身体を絡め取っている。ギリ、ギリ、ギリ…ああっ!?あああぁ!……右腕にさやかの身体を、左腕にあきらを捕らえていたライムAは容赦なく彼女たちの身体を絞め上げていく。
「…ふへへへへっ、まだまだいくぜぇ…人間ヌンチャクなんてのはどうだぁ?ふへへへへへっ……ほうれぃ!…オラ、オラ、オラ、オラァ…ふへへへへへっ」
「ああっ!?…き、きゃあぁぁ…あああぁぁ!」「ああぁぁ…いやああぁぁぁ!!」
ビュン、ビュン、ビュン、ビュン……ライムAは数Mほど伸ばしていた自分の左右の腕を彼女たちの身体を鎖鎌の分銅のようにしてブンブンと振り回している。身体を強引に振り回され何もスルことができずただただ悲鳴を上げ続けているあきらとさやか。
「ふへへへへっ…このままどこまでも飛ばしてやるぜぇ!…ほうれぇぇ!!」
「!…きゃあぁぁ…いやあぁぁぁ!!」「ああぁぁぁ…あああぁぁぁ!!」
ビューん、ビューん…ヌンチャクのように強引に身体を振り回されていた彼女たちは、そのままの勢いで左右それぞれに投げ飛ばされてしまった。しかも彼女たちは今までのように途中、木にぶつかって止まる事もなく霧深い森の中をどこまでも飛んでいく…。
「ふへへへへっ…またオレの体を分裂させてこのままあのカワイ子ちゃんたちをいただいちゃうぜぇ、ふへへっ、ふへへへへへっ」
『待て!ライムよ…分裂はしなくてもいい』
んあ?…再び体を分裂させて、ライムAが今まさに左右それぞれに投げ飛ばしたあきらとさやかを追撃しようとしていた時…二度(にたび)、彼の耳元についていた通信機からデストレーダーが話しかけてきた。彼はライムAに“分裂する必要はない”という。
「んあ?…この声は…ダンナですかい?分裂しないでいいってどういう事ですかい?…ふへへへへっ」
『まぁ聞け…桃井あきらの方はわたしがカタをつける…おまえはそのまま渚さやかの方を片付けてもらいたいのだ…クククッ、ククククククッ』
「??…どうしてピンクのカワイ子ちゃんだけダンナがやるんですかい?…オレは両方ともいただきたいですぜぇ、ふへへっ、ふへへへへへっ」
デストレーダーから聞こえる通信によると…桃井あきらは彼が自分で蹴りをつけるという。だがライムAにはその意図がまったく分からない。その疑問を取り払うようにデストレーダーがライムAに更に語りかけてきた。
『…あの女はわたしに随分噛み付いてきていたからな…アレが“商品”になる前にわたしとの“力の差”というものを思い知らせてやろうと思ったのでな。それに…たまには運動しておかないといけないと思ったのだよ、クククッ、ククククククッ』
「…そういう事ですかい?…じゃあ、他ならぬダンナの頼みだ。別にいいですぜぇ、ふへへへへへっ」
やっとデストレーダーの意図が分かったライムA。彼は雇い主であるデストレーダーの頼みを快く了承する。
『…なら決まりだ。おまえはこのまま渚さやかを襲うがいい…そして今度こそは“本気”を出して構わんぞ。もうそろそろ“ゲーム”を楽しむのも飽きてきたからな、ククククッ』
「…わかりやした。ふへへへへっ…白いカワイ子ちゅわん♪…ふへへへっ、ふへへへへへっ」
ドドドドドッ……デストレーダーとの話をつけたライムAが、霧深い森の奥深くに投げ飛ばしたさやかの方へ一目散に走り出した…。
- 以下 捕獲されたヒロインたち 白虎の空手少女と不思議少女へ続く -