- 捕獲されたヒロインたち 脱出、そして…… -
「はぁ、はぁ…」「はぁ、はぁ、はぁ…」
いずこかの研究所のような建物の中…幅3m程のその廊下を四人の若い女が懸命に駆けていた。
一人は抜群のプロポーションの身体を鮮やかなピンクの衣装で包んだ女性、桃井あきら。もう一人は知的で清楚な雰囲気を醸し出している全身白の衣装で身を固めた女性、渚さやか。
更にはサラサラした長い黒髪の持ち主、あどけない顔立ちの少女、大河冴。そして、黄色いスーツを身にまとっている宇宙警察の女刑事、デカイエローこと礼紋茉莉花・ジャスミンである。
ジャスミンを除いた三人は、宇宙警察に死の商人と呼ばれていた男、デストレーダーに突然さらわれてしまい、彼のこの秘密のアジトに捉えられていた。
そこにこのアジトに潜入してきた宇宙警察の女刑事、ジャスミンにあきらたち三人は解放された…今、彼女たち四人はこの建物から逃げ出すため、ジャスミンの案内に従い出口に向かい懸命に駆けていたのである。
「はぁ、はぁ…まだ少しあるかな?よし…みんな、頑張って!」
呼吸の乱れる中、他の三人を懸命に励ますジャスミン。
「はぁ、はぁ、はぁ…!…ジャスミンさん、あれは?」
前方に何かいる事を確認したあきらが立ち止まり、その方向を指差してジャスミンに問いかける。
彼女たちの前にゾロゾロと現れる全身トゲだらけの機械人間のような集団…その数約15体といった感じだ。
更に反対側からも同じようなヤツらが同じような数だけ現れる。彼女たちは狭い廊下の両サイドから挟み撃ちされたような形になってしまった。
「!…みんな!こっちからも現れたわ。ジャスミンさん、コイツら一体何者なんです?」
「…メカ人間イガイガ君。別名イーガロイドよ」
さやかがあきらとは反対側を指差して叫ぶ。ジャスミンがそれに反応してポツリ呟いた。
…もしかして逆なんじゃないの?…彼女たちはみな一様にそう思ったが何も言わない、だんまりである。何故ならジャスミンはそういう女(ひと)、あきらたち三人は無理やりそう納得していたからだ。
「イガイガ君大集合!…コイツら、わたしたちを捕らえにきたのね。あの“ひょっとこ君”に操られてね」
「じゃあ、この変なトゲトゲしたヤツら、わたしたちの敵って事ですか?」
チッ…迫りくるイーガロイドたちを見て思わず舌打ちをしてしまうジャスミン。そんな彼女に彼らの正体を問う冴。
じわじわと近づいてくるイーガロイドたち。彼女たちは完全に逃げ場を失ってしまっていた。そんな中、ジャスミンはこの状況をどう打開するか懸命に考えていた。
一体一体はそれほど大した事はないんだけど…一人で、それも民間人を守りながら相手するには数が多すぎる…でもやるっきゃない、ドーンといってみるしかない…か。心の中でそう呟きながらジャスミンはDリボルバーを構え、あきらたち三人をかばうようにして前に出た。
「みんな!壁を背にしてわたしの後ろにさがって!…少し数は多いけどコイツらはわたしが何とかするから」
右手にDリボルバーを手にしていたジャスミンが、あきらたち三人をかばうように左腕を前に出して彼女たちにそのような指示を送る。
「大丈夫です。わたしたちも戦います、ジャスミンさん…二人とも!いくわよ!」
「OK!」
えっ!?…あっけに取られるジャスミンを尻目に、あきらのその号令と共に彼女たち三人が一斉に駆け出した。あきらとさやかが今まで進んできたイーガロイドの集団の方向へ、一方の冴がその反対方向に、である。
「いくわよ!はあああっ!……デンジスパーク!!」
駆け出したあきらの身体がその叫び声と共に淡い虹色の光に包まれる。中からジャスミンと同じようなゴーグルアイのマスクをかぶった全身タイツのようなスーツを身にまとった戦士、デンジピンクが現れる。ただ、ジャスミンと違ってその全身は黄色ではなく“ピンク色”であった。
「はああああぁ!!」
短剣のようなナイフ、デンジスティックを手に気合十分でイーガロイドの集団に猛烈な勢いで突っ込んでいくデンジピンクに変身した桃井あきら。
「あたしたちはそう簡単には負けない!…レッツ!チェンジ!!」
あきらと共にイーガロイドの集団に突っ込んでいたさやかが途中で立ち止まり、左腕のチェンジブレスを頭上にかかげ、叫び声と共にしゃがんでそこから伸び挙がるようなポーズを取る。
すると彼女の身体が淡く白い光に包まれる。中からジャスミンやあきらと同じような格好の戦士、チェンジマーメイドが現れる。ただ彼女はジャスミンの“黄色”やあきらの“ピンク色”と違い、その全身はよどみのない“白”に覆われていた。
「あなたたちの好きなようにはさせない!…これでも食らいなさい!」
ガチャ。ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ…チェンジソードをガンモードにしたチェンジマーメイド・渚さやかが、先に突っ込んでいたデンジピンク・桃井あきらの後方から援護するようにイーガロイドの集団に光線を乱射する。
「おまえたちなんかケチョンケチョンにやっつけてやるんだから!…ガオアクセス!はぁ!!」
一方、あきらたちとは反対方向に突っ込んでいた冴が走りながら携帯電話のような物、“Gフォン”を取り出し、それを頭上にかかげて叫ぶ。
すると彼女の身体が淡く白い光に包まれる。そして中からあきらたちと同じような格好の白い戦士、麗しの白虎ことガオホワイトが現れた。
いくよ、イガイガ君!はあああああぁ!」
ジャスミンの言葉遣いが少しうつってしまった冴が右手にタイガーバトンを手にイーガロイドの群れへ猛然と突っ込んでいく。
ウソ!?…この人たち、わたしと同じような“女戦士”だったんだ…そんな彼女たちの様子をジャスミンはあっけにとられながら見ていた。
「えいっ!やあっ!とうっ!…」
ビシュッ、ビシュッ…チェンジソードから放たれる光線を乱射するさやかに後方支援を受けるような形で、デンジスティックを手にあきらがイーガロイドたちを華麗に切り捨てていく。
「えいっ!やあっ!…はあああああぁ!」
その一方、一人イーガロイドの群れに飛び込んでいた冴がタイガーバトンを手に孤軍奮闘していた。
はぁ、はぁ…コイツら、一体一体は大した強さじゃないけど…数だけはやっかいだわ。ちょっと一人じゃキツかったかな?……その奮戦していた冴もさすがに疲れの色が色濃く見え始めていた…そしてその間隙を縫うようにイーガロイドの一体が冴の後ろから襲い掛かってきた。
「この小娘がぁ!死ねええぇぇぇ!!」
「!…冴ちゃん!後ろ、危ない!」
単身、敵軍の中に飛び込んでいた冴を気遣うように、時折彼女の様子を伺っていたさやかが不意に叫ぶ。
「えっ!?……い、いやあああぁぁぁ!!」
冴ちゃん!……くっ!?」
思わぬ所からの攻撃に大きな悲鳴を上げる冴。その様子に気づいていたさやかがあわてて自身の獲物、チェンジソードをそちらに向けて彼女を助けようとする。しかし、さやかの必死のその行動もタイミング的に間に合いそうにない。
「ダメ!間に合わない!……冴ちゃん!!」
やられる!…ビシュッ!……えっ??…ドサッ。冴がその攻撃を食らう覚悟をした瞬間、襲い掛かってきたイーガロイドは冴の前に力なく崩れ落ちた。一瞬、何が起きたのか分からずとまどう冴。
それは、彼女たちの様子をあっけにとられて見ていたジャスミンのDリボルバーから放たれた光線だった。
「…わたしが後ろから援護するから。だから安心して戦って…冴さん、いや冴ちゃん♪」
「ジャスミンさん!…ハイ!ありがとうございます!」
Dリボルバーを討ったポーズで構え、そう冴に言うジャスミン。それに明るく受け応えする冴。
「ジャスミンさん!……あっちはあの二人に任せておけば大丈夫そうね。よし…それじゃこっちも負けないようにやるわよ!あきら!」
「OK!…いくわよ!やあああぁ!!」
後ろへの気兼ねがなくなり、精神的に楽になったさやかが今まで以上に伸び伸びと戦う事を宣言し、あきらにも呼びかける。あきらもそれに応えるように気合を入れなおす。
「えいっ!たあっ!…やああああっ!」
ビシュッ、ビシュッ…後方からの援護を受けた冴が今までより余裕のある戦いを見せる。ジャスミンがその彼女を後方から的確に援護、フォローしていく。
「やあっ!とうっ!…えぇい!」
ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ…こちら、あきらとさやかの方も負けてはいない。あきらが先程までよりも華麗に立ち回り、そんな彼女をさやかが後方から抜群のタイミングとコンビネーションで援護していく。
「やああああっ!!」
バキィッ…そして最後の一体になったイーガロイドに冴の懇親のタイガーバトンが炸裂する。勢いよく吹き飛ばされるイガだらけのそのメカ人間。
「ふぅ……やったぁ!わたしにかかればざっとこんなモンね♪」「…んもう、調子いいんだから…でもよかった。みんな無事だったようだし…」
目の前の敵を全滅させた事で無邪気にはしゃぐ冴。その様子をあきれるように見ているさやか。だが内心彼女はその冴が無事だった事に一番喜んでいるのかもしれない。さやかはその冴の危機一髪のピンチを救ったジャスミンの方に視線を送る。
「…ありがとう。助かったわ。それにしてもあなたたちがわたしと同じような戦士だったなんて…」
「ゴメンなさい。さっき打ち合わせをしてたのに…一番大事な事を言い忘れてたなんて。別に隠してたわけじゃないんですけど…」
あきらたちの隠されていた思わぬ能力(チカラ)に驚いているジャスミン。そんな彼女に申し訳なさそうにわびるあきら。
「OK牧場OK牧場!別にそんな事いいわよ。それに結果的にだいぶ助かっちゃったし…ねぇ、それよりもお願いがあるんだけど…あなたたちのその能力(チカラ)、これからもアテにしてもいいかな?」
そのあきらに右手でVサインを作って応えるジャスミン。もちろん彼女に初めからそんな事を咎めるつもりはさらさらない。それよりも彼女はあきらたち三人を“戦力”としてアテにしたいらしい…ジャスミンは悪戯っぽい笑み(マスクで表情そのものは見えないが)を浮かべ、あきらたちに懇願する。
「今更何言ってるんですか?全然構わないですよ!…ねぇ?あきらさん、さやかさん」
この中で一番年下と思われる冴が『当然』と言わんばかりに言う。もちろんあきらとさやかもそれに異存があるわけもなかった。二人も当然のように力強くそれに頷く。
「39!いや、サンキュー。ありがとう、みんな…それともう一つだけお願いがあるんだけど…わたしに対してもっとフランクに接してくれないかな?だいたいわたしたち、もう仲間、“対等”のパートナーなんだし…ね♪」
再びジャスミンが悪戯っぽい笑みを浮かべ、両手を合わせてあきらたち三人にお願いする。お願いされた彼女たちはジャスミンのそんな様子がたまらなく可笑しかったようだ。
「プッ…そうね。分かったわ。じゃっ、改めてヨロシクね♪ジャスミン」
右手を差し伸べ、硬い握手を求めるあきらとさやか。ジャスミンもそれに快く応じ、二人と硬い握手をかわす。
「え、えっと…さっきはどうもありがとうございました!ジャスミンさん」
モジモジしながら少しバツが悪そうにジャスミンに挨拶する冴。どうやらさっきの事が負い目になってるらしい。
「もう!さーえーちゃーん。もっとくだけた感じで!ってお願いしたでしょ?…さもないとわたしも“冴さん”って呼んじゃうぞ♪……まぁ冴ちゃんは年下だし“おねえさん”とか呼んでくれなきゃいいかな?」
またしても悪戯っぽい笑みを浮かべ、冴の顔(実際にはマスクに覆われてその表情を伺う事はできないが)を覗き込むジャスミン。
「…ハイ!分かりました。ジャスミン“おねえさま”♪…えへへっ」
そんな冴が顔を覗き込まれていたジャスミンに、悪戯っぽい笑みを浮かべて切り返した。それがジャスミンにはたまらなく可笑しかったらしい。
「もう!さーえーちーゃーん……プッ…クックックッ…アハハッ、ハハハッ、ハハハハハハハッ」
「アハハッ、ハハハハハハッ…」「うふふっ…」
そんな冴を見てジャスミンが吹き出して笑う。それにつられるようにして冴も笑った。そしてそれを傍らで見ていたあきらとさやかも…無機質なコンクリートの建物の中に四人の女戦士の楽しそうな笑い声が響く。だがそれはこの時だけのものなのかもしれない。彼女たちにはこの後過酷な運命が待っているのだから…。
ジーッ…そしてその様子を“例の”虫型小型カメラがまたしてもとらえていた。当然のように“あの男”がそこから彼女たちのその様子を窺っていたのである。
「クククッ…美しき“女の友情”というヤツか…フンッ、実にくだらんな。まぁ、せいぜい今のウチニそんな“友情ごっこ”を楽しんでおくのだな。しばらくしたらもうそんな事はできなくなるのだ…“一緒に近く”にはいられるかもしれないがな、クククッ、ククククククッ」
何も焼き付けられてない、一枚のCD-ROMを手に取って眺めながらデストレーダーが気味悪く笑う。そんな彼は彼女たちに対して一体何をたくらんでいるのだろうか…?
***********
…其の後、お互いの能力(チカラ)と友情を確かめ合った四人の女戦士たちはひたすら出口へと突き進んでいく。
出口へと向かう中、それを妨害するように彼女たちには前後から先程のイーガロイドたちと同じようなメカ人間の集団が襲い掛かってきていた。
だが彼女たちは“急増チーム”とは思えないほどの抜群のコンビネーションとチームワークの良さで、襲い掛かってきたメカ人間たちを蹴散らしていく。
「えぇい!とおっ!…やああぁ!!」「やあっ!とうっ!…えぇい!!」
彼女たちの進行方向には前衛としてデンジスティックを手にしたあきらと、タイガーバトンを手にした冴がイーガロイドたちに接近戦を挑んでいた。
「Great!…二人とも、その調子その調子!なかなかいい仕事するじゃない♪」
ビシュッ、ビシュッ…そして、Dリボルバーを手にしていたジャスミンがその二人を後方から援護するように彼女たちをフォローしていく。
「あなたたちみたいなメカ人間にやられるほどあたしは弱くないわ!…このぉ!」
ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ…そして三人の反対側には殿(しんがり)としてさやかがガンモードにしたチェンジソードを手に光線を乱射していた。
襲い掛かってくるイーガロイドたちを次々と蹴散らし、出口へとまっしぐらに進んでいくジャスミンたち四人。まさに破竹の勢いである。
「やあっ!えぇい!……!…ジャスミンさん、あの光?」
「パンパかパーん♪…ついに出口にたどり着いたかな?」
警戒にイーガロイドたちを蹴散らしていた冴が100m程先に見える光を指差して叫んだ。ジャスミンがそれに応えるように呟く。どうやらようやく出口にたどり着いたらしい。
「…じゃあ、コイツらをさっさと全滅させて早く脱出しましょう!」
一番後ろでチェンジソードを乱射していたさやかがそのように叫ぶ。苦しかった彼女たちの決死の脱走劇もようやく終わろうとしていた。
ドサッ、ドサッ…そして彼女たちに襲い掛かってきたイーガロイドたちはあえなく全滅した。後に残るのはトゲだらけのメカ人間の残骸ばかりである。
「ふぅ…これで邪魔するヤツらはいなくなったわ。さぁみんな、早く外に出ましょう!」
あきらのその声と共に彼女たちは建物の外へと出て行く…そしてそこはどこかの深い森の中のようだった。そしてそこは数m先も見えない程の濃い霧で覆われていた。
「うわ、物凄い霧……これじゃ何も見えないよ」「ホント…これじゃどっちに行けばいいか全然分からないわ」
「…ちょっと待ってて。今何とかするから…」
周りが全然確認できないような物凄い霧を目の前にして、冴がたまらず声を上げる。そんな霧を見てあきらもさすがに途方に暮れていた。そんな状況を何とか打破するためにジャスミンが何か準備をしていた。
「SWATモード!オン!」
その掛け声と共にジャスミンはSWATモードに移行する。こうする事で彼女は通常レベルまで視界を維持する事ができるのだ。
さて…この周りはどうなっているかなっと♪……!…SWATモードのジャスミンが周囲を見渡していると、10m程離れたところにニヤリと嫌な笑みを浮かべていたデストレーダーが彼女の視界に入ってきた。そして彼はカラーボールのような黄色いボールを自分たちの頭上に向かっておもむろに放り投げた。
…もしかして最初から待ち伏せしてた!?…く、くっ!?…そのひょっとこの面を見てジャスミンの背中は凍りつく。
「みんな!早くバラバラに逃げて!…早く!!」
「??…いきなりどうしたんですか?ジャスミンさ…!…きゃあ!?」「!…あぁん!?…イヤッ、何よ、コレ!?」
バサッ!…しかしその時にはもう遅かった。固まって動いていた彼女たちの頭上へ、デストレーダーから投げられた黄色いカラーボールのようなものから、黄色いビーム状の光の網が覆いかぶさってきたのだ。その光の網を浴びた冴が、さやかが…次々とその網に絡め取られていく。
「しまっ…ぐ、ぐっ!?……こんなもの!……うっ、くっ!?」「…何よ、コレ、ネバネバしてて…キモチ悪い!」
網目が10平方センチメートル程のその光の網は、かなりの粘り気を帯びていて四人の女戦士たちにネバネバとまとわりついていく。
その光の網がジャスミンに、そしてあきらにも覆いかぶさる。彼女たちは完全にその網に絡め取られてしまった。
「フフフッ…“決死の逃避行”、ご苦労さん…まさに“一網打尽”というヤツだな、ククククッ…実際に会うのは初めてだったな、女戦士の諸君、ククククッ」
「ひょっとこ君!…ぐ、ぐっ!?」
その光の網に絡め取られたジャスミンたちの下へ、不気味で陰湿な笑みを浮かべていたデストレーダーがゆっくりと近づいていく。その光の網に絡め取られ、地を這いつくばっていたジャスミンが苦々しい目でその男を睨みつけていた。
「クククッ…どうだね、その光の網の味は?…ネバネバして中々のものだろう?クククッ、ククククククッ」
ぐ、ぐっ!?…広さ20平方メートルはあろうかという投網のようなその光の網に絡め取られ、地べたに這わされた四人の女戦士たち。その彼女たちを見てデストレーダーが勝ち誇ったような冷たい笑みと視線を送る。
「…そいつは元々“対スペシャルポリス用”に作らせたのだがな…調べていく内におまえたちのような特殊スーツの戦士にも効果が大いにあるという事が分かった。だから今回おまえたちにコイツを使わせてもらった…どうだ?コイツの味は?…ククククッ」
「ぐ、ぐっ!?…な、何よ、こんなもの!……く、くっ!?ち、力が…力が入らないわ?…な、何で…何でなの?」
「!…これよ!この“光の網”があたしたちの力を吸い取ってるんだわ!」
光の網についてとつとつと説明し始めるデストレーダー。あくまでその光の網に抗うように身体をもがかせるあきら。だが彼女が幾ら力を込めても身体に力が入らない。同じように隣でもがいていたさやかがその原因がこの光の網にあると喝破する。
「ご名答!…その通り、見事だ。データ以上に頭が切れるんじゃないのか?渚さやか、ククククッ…確かにその光の網はおまえたちのパワーを吸い取っている。おまえたちの身体に絡み付いている“それ”がネバネバとまとわりついているだろう?それは“そいつ”がおまえたちのスーツのパワーを吸い取ってるのだ。まぁ言い換えればおまえたちのスーツの力を食べてるって事だ」
光の網の作用を見破ったさやかの頭脳を褒め称えるデストレーダー。彼の話は更に続く。
「…おまえたちのそのスーツは細かい所はともかく、大概は同じような構造で出来ている。そしてそれはすなわちその女刑事、スペシャルポリス共が使っているその“デカスーツ”とかいうヤツと同じような構造のものだ。それにしても…厄介で目障りな宇宙警察どものために作らせた“コイツ”がまさかこんな事に役に立つとはねぇ…まったく人生とは分からないものだよ、クククッ、ククククククッ、ハーッハッハッハッハッ…!」
ぐ、ぐっ!?…な、何てこと。コイツはわたしたちが思っていたよりも宇宙警察の事、そしてわたしたちの事についてずっとよく調べていた。そしてわたしたちの事はほとんど丸裸にされていた?…その上で必死に逃げ出していたわたしたちを泳がせて遊んでいたって事??ぐ、ぐっ!?
更にその光の網について詳しく話し出すデストレーダー。その話は彼女たちがまとっている特殊スーツにまで及ぶ。そして一通り話し終えた彼は高らかに笑った…そんな憎むべき目の前の男に完全に踊らされていた事にジャスミンは歯噛みしていた。
「ああっ!……ぐ、ぐっ!?…ひ、卑怯よ!こんな事しないで正々堂々勝負しなさいよ!」
光の網にもだえ苦しむ冴が負け犬の遠吠えのような事を叫ぶ。
「正々堂々?…フフフッ、とんだ甘ちゃんだな?…戦いとは生きるか死ぬかだ。おまえの言うような“武士道精神”などはこれっぽっちも存在しないのだ、空手少女の大河冴よ、ククククッ」
ぐ、ぐっ…デストレーダーは冴のその遠吠えも一笑にふす。そして彼に軽くあしらわれた冴がある事に気づく。
「!?…みんな見て!…光の網が!?…何だかドンドン膨れ上がってる?」
刻々と変化する光の網の様子に冴がうろたえたような口調で叫ぶ。
「…それは“そいつ”がおまえたちのパワーを吸い取って膨張しているからだ。そしてもう少ししたらその光の網は色を変化させて最終局面に入るだろう…クククッ、ククククククッ」
「What??…何?最終局面って何なのよ!?答えなさいよ!」
「フフフッ…それは自分たちの身体で確かめるんだな。いまいましいスペシャルポリスの女刑事さんよ、クククッ、ククククククッ、ハーッハッハッハッハッ!」
陰湿な笑みを浮かべるデストレーダーが四人の女戦士たちに意味深な言葉を言い放つ。一体それが何であるのか?…もがき苦しみながら、ジャスミンはそれが何であるのか懸命に問いただそうとする。が、彼はまったく取り合おうとしない。ただ自分たち自身で確かめろというだけだ…そんな中でも状況は刻々と変化していく。
「!…みんな見て!…網の色が?黄色い網の色が…だんだん虹色になっていくわ!?」
「もしかして…これが…この現象が最終局面になる前ぶれって事なの!?」
虹色に変わっていく光の網の様子を見て絶叫するあきら。同じように叫んでいながら、的確にそれを分析するさやか。
「何なのよ、コレ?一体何が始まるっていうの?」
「What happen!?…何かとんでもない事が起きる前ぶれ!?」
刻一刻と状態を変化させていく光の網に対し、不安げに絶叫する冴。ジャスミンはそんな状況に何かとてつもなく嫌な予感を感じていた。
「!見て!…光の網が…網がドンドン膨らんでいくわ!…一体何が始まるの!?」
「クククッ…いよいよフィナーレだ。巨大な光の柱に飲み込まれるがいい!」
細いジェット風船のようにドンドンと膨らんでいく光の網目を見てヒステリックな絶叫を上げるあきら。光の網の膨張による一連の終幕を感じ取り、全ての終焉を宣言するデストレーダー。
「…何?…爆発す…!?…き、きゃああああぁぁぁぁ…あああぁぁぁ!!」「いやあああぁぁぁ…あああぁぁぁ!!」「うわあああぁぁぁ…あああぁぁぁ!!」
ドオォーン!!…そして時間一杯になった時限爆弾が爆発するように、極限まで膨張した光の網から同じような広さ、天高く昇るような高さのまばゆい光の柱が立ち昇る。
そして何か言おうとしていたジャスミンが、更には他の三人も…四人の女戦士たちは甲高い、悲痛な叫び声と共にその光の柱に飲み込まれてしまった。
- 以下 捕獲されたヒロインたち 失われた能力(チカラ)、立ちふさがる強姦魔へ続く -