- 緑の洗脳!!恐怖の黒十字戦隊 不思議な夢の中での出来事 -

(ここは?…ここは一体どこなのかしら?それにわたしは何故こんな所に…??)
その意識が深い深い闇へと沈んでいく中。その時ペギーは不思議な夢を見ていた。
その深い森に立ち並ぶ木々の隙間から、わずかにこぼれてくる木漏れ日だけが照らす、どこかの薄暗い森の奥深く。その森の中に明らかに不自然な形で切り開かれた10メートル四方の"お花畑”がある。
更に不思議な事にペギーはその不自然な光景を、まるで幽体離脱でもして第三者の立場から俯瞰するような形で見ていたのだ。
(??…あのお花畑に女の人が倒れているわ!?…でもこんな所に一体誰なのかしら?)
その時、ペギーはその花畑に誰か若い女性が、その鮮やかに咲き乱れる花々に囲まれるよう横たわっているところを発見した。ペギーがその女性へ更に視線を向けていくと…彼女はそのあお向けに倒れていた女性を見て驚愕する。
(!?…これは…??もしかしてこの人…わ、わたしなの??)
その女性がハーフの日本人である事を示すかのような、特徴的な整った顔立ち。そしてそこから伸びる長い黒髪。
無地の白いTシャツに覆われていた、やや細身ながらも女性らしい丸みと柔らかさ、肉付のよさを感じる事ができる魅惑的な肢体。その上から軽く羽織っていた袖のないレザーのジャケット。
目にもまぶしい鮮やかな黄色いホットパンツ。更にはそこからスラリと伸びる肉付のいい脚線美に、その脚に程好いアクセントになっていた白いロングブーツ。
自身のお腹の上で両手を組み、花たちに囲まれおだやかな表情であお向けに横たわっている若い美女。その彼女はスイス人の父と日本人の母を持つハーフにしてゴレンジャーの紅一点、まぎれもなくモモレンジャーことペギー松山その人であった。
(この女(ひと)って!?…この人、間違いなくわたしだわ。でも何でわたしが倒れているわたし自身を見ているの?一体どういう事なの??)
10メートル四方の花畑の中央であお向けに横たわっている“ペギー松山”。その“ペギー松山”をまるで第三者の立場から俯瞰するような形で自分自身が客観的に見ているのだ。そのどうにも説明のつかない、何とも摩訶不思議な光景にペギーの頭は混乱するばかりである。
パッカ、パッカ、パッカ…。
(!?…馬の蹄の音??もしかして誰か来るの?でもこんな所に一体誰が…?)
やがて花畑に横たわっていた“ペギー松山”を見つめるペギーの右の方、すなわちあお向けに横たわる“ペギー松山”の足がある方角の森から、複数の馬の蹄の音が聞こえてくる。ペギーがその蹄の音が聞こえてくる方へ視線を向けてみると…。

「…殿下。まだこのような事を続けられるおつもりなのですか?」
「当たり前ではないか、じぃ。“あの花壇”はわたしの大切な生きがいだからな」
「…しかし殿下。あのような花壇であればお屋敷の庭園でおやりになればよろしいのではないかと…」
「だがじぃ。屋敷で花いじりなどしておったら家の他の者どもが何かとうるさいに決まっているではないか?『家の跡目を継ぐ男子たる者が花いじりなど何と女々しい事を!』と言われるに決まっておる。特に我が王家はやたら世間への対面を気にする者が多いからな…」
「まぁ…確かに左様でございますが…」
轡を並べて歩いていた毛並みが雪のように真っ白な白馬と黒鹿毛の馬。その馬上で何か話している二人の男たち。ペギーは馬上のその二人の男たちを見て面食らってしまう。
(何、この人たち!?…殿下?それにじぃって…?言葉遣いといい、立派な身なりといい、乗っている白い馬といい…まるで御伽噺に出てくる白馬の王子様と執事のおじいさんみたいじゃない?)
白馬に乗っていた殿下と呼ばれていた男。その中世ヨーロッパの王族を思わせるような立派な身なりといい、言葉遣いといい見るからに高貴な身分の人間のようである。
だがお忍びで身分を隠しているためなのか、頭部全体を鉄仮面のような兜で覆い隠していたため、その顔立ちや表情をうかがい知る事はできない。
更にはその殿下と呼ばれていた男と話していた白髪の多く混じった初老の男。“じぃ”と呼ばれていたその男はどうやらその殿下と呼ばれていた男の執事のような存在らしい。
(!?な、何でこんな人たちが急に??…わ、わたしはついさっきまで黒十字軍と戦っていたはずなのに…それなのにどうして…?)
それまでペギーは黒十字軍と激しい戦いを繰り広げていた。その自分にはあまりにそぐわないシチュエーション。眼前に広がる花畑といい、目の前にいる男たちといい-。ペギーが混乱するのは無理からぬ事であった。
(そ、それじゃ…こ、この人たちの周りにいる兵隊さんみたいな人たちは…も、もしかしてこの殿下って人のお付の兵士??)
ペギーのその創造はほぼ当たっていた。その二人の男たちの周りにいた何人かの兵士のような男たち。
その二頭の馬の周りには計6人の兵士がいた。二人の馬を引いていた兵士がそれぞれの馬に一人ずつ。
残りの4人はその殿下と呼ばれていた男や執事のような男を守るために付いていた、いわば護衛の兵士である。槍を手にしていた彼らは二頭の馬を囲むように位置をとり、怪しい者を二人に近づけないよう、周囲を警戒していた。

「!?…殿下!何者かが殿下の花壇に倒れております!」
しばらくして…護衛に付いていた兵士の一人が殿下と呼ばれていた男に報告する。どうやら花畑に横たわっていたペギーの姿を見つけたらしい。
「何だと!?わたしの大事な花壇に勝手に踏み入るなど…一体何者だ?……よし!近づいてその不届き者が一体何者か、わたし自ら確かめてやろうではないか…」
そう言い、“殿下”は乗っていた馬から降り、花畑の真ん中で横たわっていた“ペギー松山”の下へ近づいていく。
「…何だこの娘は?…じぃ!何でこのような娘が我が花壇の中に倒れておるのだ??」
「はて…何故でございましょうな?」
自分の花壇に横たわる若い娘“ペギー松山”の姿を見てさすがに驚いている“殿下”。その多少取り乱している彼とは対照的に、ほとんど表情を変えずに相づちを打つ白髪混じりの初老の男。
「えぇい!……おい、誰か!この娘の息がまだあるのかどうか調べてみよ!大至急だ!」
「はっ!」
やや苛立ちを見せる“殿下”の命令を受けたお付の兵士の一人が、花畑に倒れていた“ペギー松山”の顔に近づき、彼女の呼吸の有無を調べる。
「……殿下!この娘、まだ息はあるようでございます!」
「うむ。…とするとこの娘は眠っているだけ、というわけか?だとしても何故この娘はわたしの花壇などに眠っておるのだ?」
倒れていたペギーを調べていた兵士が、まだ彼女の息がある事を“殿下”へ報告する。恐らく目の前に横たわっている“ペギー松山”は眠っているだけ、と彼は結論づけた。しかし自ら出したその結論に殿下と呼ばれていた男の頭は更に混乱するばかりである。
「恐れながら殿下。…この娘は“眠り姫”ではないのでしょうか?」
「眠り姫だと?…ではじぃ。じぃはこの娘が古よりの逸話として語られているあの眠り姫だと申すのか?」
「いかにも…この娘、いや“このお方”、見たところ中々お美しゅうございます。しかもこのような場所で眠りにつかれておられるのです。このように我々とは明らかに違う奇妙な服を着ている事といい…恐らくは間違いないかと…」
“眠れるペギー松山”の姿を見て、突然古の逸話を持ち出す白髪混じりの執事。しかも彼はかなり大真面目にそう考えているようだ。
「なるほど…確かにこの娘、ただの町娘にしては中々に美しい、というより雰囲気を感じる。じぃの推測はあながち間違いではないのかもしれぬな…」
“殿下”もその執事の言葉に同調する。だが実際問題として、ペギーは確かに美人である事に間違いはないのであるが“とびきりの美人”“絶世の美女”という類の娘ではなかった。
それでも二人がペギーを見てそのように感じたのは、彼女がゴレンジャーの一員としてこれまで激戦を戦い抜いてきた事。何よりペギーが元々持ち合わせていた美貌とその過酷な経験から自然と得ていた“女戦士としての風格”が、彼女から漂ってくる“普通ではない”雰囲気として二人の男たちに感じさせていたのかもしれない。
その一方、意識だけが宙にあり、第三者のような形で二人が会話する様子を俯瞰するように見ていたペギー。自分自身がそのように言われ、彼女はどのように思っていたかと言うと…。
(あら?わたしがお美しいだなんて…この二人、中々お上手ね♪…それによく見たら今のわたし、たくさんのお花たちに囲まれて…まるで眠れる森の美女って感じかしら?うふっ♪)
自分の容姿をおだてられ、その上逸話まで持ち出されてペギーもまんざら悪い気はしていないようだ。多くの花たちに囲まれて眠っている“自分”の姿を見て、彼女はそのシチュエーションにうっとりしている。

「で、じぃ。この娘がその“眠り姫”だとしてこれから何とする?幾ら何でもこの娘をこのまま放っておくわけにはいかぬであろう?しかしこのまま屋敷に連れて帰るわけにもいかぬ。一体どうするつもりなのだ?」
「殿下。それについてなのですが…大事なお話がございます」
「??何だじぃ?いきなり改まって…一体どうしたのだ?」
自分の花壇に横たわる“ペギー松山”の扱いについて“殿下”が白髪混じりの執事に相談すると…その初老の男は意外な反応を返してきた。
「殿下。その“眠り姫”の言い伝えにはこのようにございます。『いずこかの森の奥深く。そこには多くの花たちに囲まれて美しい娘がおりました。しかしその娘は不思議な事にその花々に囲まれて何故か眠り続けているのです…」
その白髪混じりの執事は“眠り姫”の言い伝えについて、とつとつと言葉をつむぎ始めた。
「人々はその美しい娘を様々な方法で眠りから目覚めさせようと試みました。しかし人々はどうしてもその娘を眠りから覚ます事ができないでおりました。いかようにしても眠りから目覚めさせる事ができない娘。やがて人々はその娘の名を“眠り姫”と名づけました…」
“眠り姫”の言い伝えを淡々とつむいでいく初老の執事。その執事の話は更に続く。
「そしてしばらく経ったある日。その“眠り姫”の前をとある王家の王子様が通りかかったのです。その王子様は“眠り姫”のあまりの美しい寝顔にみそれられてしまいました…」
やがてその執事の話は核心へと向かっていく。そんな彼の話を“殿下”も固唾を呑んで聞いていた。
「そして“眠り姫”の美しさにみそれられた王子様は、とある行動をなされました。王子様は何と“眠り姫”と口付けを交わされたのです。更に驚くべき事に、人々が何をしても目覚めなかった“眠り姫”が何と目を覚まされたのです。その王子様からの口付けをお待ちになられていたように“眠り姫”はお目覚めになられたのです。…やがて“眠り姫”は自分を長い長い眠りから目覚めさせてくれたその王子様といつまでも幸せに暮らしました』と…」
「…つまりじぃ。じぃはわたしがこの娘と口付けを交わしてこの娘の目を覚まさせよ、と言っておるのか?」
(ぇ?えっ??ち、ちょっとちょっと!?な、何でいきなりそういう話になるのよ!ね、執事さん。別にあなたはそうしろなんて一言も言ってないでしょ?ねぇ執事さん。ねぇってば!?)
執事のその話を聞いての“殿下”の意外な反応。その彼のあまりの話の飛躍ぶりに、彼らの様子を俯瞰するように見ていたペギーはさすがにあわてふためく。
それもそのはずである。このままではペギーは見ず知らずの男に自分の唇を奪い取られかねないのだ。あせる彼女は自らの声が届くわけもない、目の前にいる初老の男へ必死にわめき散らす。
「…左様でございます、殿下。殿下は由緒正しき我が王家の正当な後継者。つまり殿下はこの古の逸話に置き換えるならば“王子様”と見る事もできるかと存じます。それならば、もしやこの娘も殿下の口付けで目を覚ますのではないのかと…」
(!?ウ、ウソ?ウソでしょ?ち、ちょっと執事さん。あなたまで何でそうなるのよ!ちょっと!わたしが眠り姫なわけなんかないでしょ?ねぇ、二人とも!お願いだから考え直してよ!)
だがその初老の執事が見せた反応は彼女の期待にまったく添わないものだった。益々悪い方へと進んでいく事態。ペギーは更にあせりを募らせていくばかりである。
「うむ。なるほど…わかった。じぃの言う事、一度はやってみる価値はあるやもしれぬ」
執事の唱える説にそう納得し、“殿下”はあお向けに横たわる“ペギー松山”の右脇に立つ。
「…おい、誰か!しばらくの間、コイツを預かっておいてくれないか?」
「はっ!…かしこまりました、殿下」
そう言って“殿下”は自分の頭部を覆い隠していた鉄仮面のような兜を脱ぎ、近くにいたお付の兵士の一人に預ける。
兜を脱いだ“殿下”から栗色の髪をした青年と思われる男の姿が現れる。しかし彼らを俯瞰するように眺めていたペギーの方角からは背を向けていたため、彼女が一番知りたかったはずであろう、彼の顔立ち、その表情は相変わらずうかがい知る事はできない。
ザッ。
そして“殿下”は花畑に横たわる“ペギー松山”の傍で片ひざをつき、彼女の頭を抱え上げて自分の顔へ更に近づける。
「それにしてもこの娘…近くで見てもやはり美しい。それにこのおなごから漂ってくる雰囲気はやはり只者ではない。…待っておれよ娘。いや“眠り姫”よ。必ずやわたしが目覚めさせてやるからな」
そう呟いて一つ大きく息を吸い込み、“殿下”は抱えあげていた“ペギー松山”の顔へ自分の顔をゆっくりと近づけていく。“その瞬間”は刻一刻と迫ってきていた。
(ち、ちょっと!?な、何でこうなるのよ!?…そ、そうだわ!?せめてわたしとキスしようとしてるこの人がどんな顔しているのか見ておかなきゃ!どうせならいい男に唇を奪われたいわよ!)
“殿下”の様子を俯瞰するようにうかがっていたペギーもあせるばかりでもう手のほどこしようがない。もはや観念した彼女は、せめて自分の唇を奪い取ろうとしている“殿下”がどんな男か、その顔を確かめようと彼の正面へ回り込もうとしている。
(…それにしても王家の殿下、か。どうせなら気品のある素敵なお方がいいわよねぇ。うふふふっ♪)
もう自らの運命は変えられないと開き直ったペギー。彼女は『王家の殿下』という言葉の響きに思いをはせ、これから自分の唇を奪い取らんとしている男の容姿に何故か胸躍らせている。
そして“殿下”の正面へと回りこんだペギー。彼女のお目当てである王家の“殿下”は今まさに頭を抱えあげていた“ペギー松山”と唇を重ね合わせようとしているところだった。
(…よし!この角度なら“あのお方”のお顔が拝めるわ。一体どんな素敵な方なのかしらん♪…うふふふっ)
だがペギーがお目当てのその“王家の殿下”の顔を拝むことはなかった。彼女の視界は暗転し、その意識は漆黒の闇へと再び沈んでいく…。
***********************
(う、うう…こ、ここは?そ、それにあの“殿下”は…?)
やがてペギーは意識を取り戻した。しかしそこは何も見えないいっさいの闇の中。当然、彼女が心待ちにしていた“殿下”の姿もそこには無い。
(!?…うっ、うっ、う、ううぅ……な、何!?も、もしかしてわたし今、誰かにキスされてるの??で、でも一体誰が…?)
意識を取り戻したペギーは、その口の中を何者かに舌を入れられてるような感覚を覚えていた。
それが何者であるのか、ペギーにはもちろん分からない。だがこれまでの経緯から考えて彼女にはとある期待が膨らんでいく。
(!?も、もしかしてあの“殿下”ってお方なのかしら?……うっ!?うっ…そ、それにしてもあのお方、物凄く乱暴に舌を入れてくるのね。そ、それにこの入れてくる舌、妙に鉄っぽい味がするような…)
自分の唇を奪っているのはもしかしてあの“殿下”では?-。ペギーはそんな淡い期待を膨らませていく。
しかし自分の口内へ入れられてくるその舌はいかにも強引だ。それは濃厚なディープキスをお互いに胆嚢しているというよりは、舌を強引にねじ込みペギーの口内を蹂躙しているといったような感じ、舌を入れてる方が一方的に愉しんでいるような感じでさえある。それは王子様のやさしい口付けといったようなものとはとても思えない。
(うっ、うぐっ!?う、うぐっ……や、やっぱり何か変だわ!?こんなのあのお方なわけ……そ、そうよ!相手が誰だか確認できれば…)
唇を奪われているペギー自身もやはり何かおかしいと感じているようだ。彼女は意を決して目の前の“王子様”が何者であるのか、その瞳を開いて確認しようとする。
!!
意を決して両の瞳をこじ開けたペギー。しかしその“王子様”がいるはずの眼前には驚くべき顔があったのだ。
灰色の全身タイツのようなもので覆われたその頭。ニヤニヤと、あからさまに下卑た笑みを浮かべているその醜い表情。
そこにある顔はペギーが待ち焦がれていた“王子様”でも何でもない。彼女が“ヘンタイ”と忌み嫌い、さっきから“女”としてのペギーをしつこく付け狙う最凶最悪の仮面怪人、あのナイフ仮面であった。
「!!…う、うぐぅ!?う、うぐっ!?うぐぐぐぐぐぅ!?」
(な、何してんのよ、このヘンタイ!そ、その薄汚い顔をさっさと離しなさいよ!それにあんたみたいなヘンタイとキスだなんて…汚らわしい!離せ!離して…イ、イヤッ…)
自分と口付けを交わしていた相手があの醜い仮面怪人だと分かり、ペギーのその美貌はみるみる青ざめていく。
ムギュッ、ムギュッ、ムギュゥ…。
しかもそのどさくさにまぎれてヤツはペギーの両胸も弄んでいる。ナイフ仮面の手でモミモミと揉みほぐされるふくよかな乳房。
イ、イヤッ、イヤッ…は、離せ!離しなさい!汚らわしい!汚らわしい!…イ、イヤッ…イヤッ、イヤッ-。カッと目を見開き、思いがけず感情が高ぶっていたペギーは徐々にその瞳を潤ませていく。頭の中で目の前の“ヘンタイ”を何度も何度も罵りながら、ペギーは自身の両手で目の前でニヤついている刃物の仮面怪人を必死に押しのけようとしている。
おっ!?キヒヒヒッ…-。そしてそんなペギーにどうやら先程から彼女の口内をたっぷり愉しんでいるナイフ仮面も気付いたようだ。ヤツの目の前にいる女戦士は涙目の瞳を懸命につぶり、両の手でナイフ仮面をグイグイと押して目の前の“ヘンタイ”を必死に押しのけようとしている。
「…ぷはーっ…キヒヒヒッ、やっと目覚めてくれたぜぇ。やっぱ“王子様”のチューの効き目はバッチリだなぁ?キーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ」
そしてペギーが自分へ必死に抗う様子を確認したナイフ仮面は、それに合わせるように自分との接吻から彼女を開放してやった。
眼前でその美貌をこわばらせ、瞳を弱々しく潤ませているペギーをニタニタと見つめているナイフ仮面。口元に付いていた二人の唾液を右手でグイィとぬぐっているヤツは、目の前の生意気な小娘を征服した事への快感に酔いしれている。
「…ケホッ、ケホッ、ケホッ…ぐ、ぐっ!?ふ、ふざけないで!な、何が…何が王子様よ!だ、誰があんたなんかと…よ、よくも乙女の大事な唇を…ゆ、許せない!絶対許せないわ!」
キッ!
顔をこわばらせながらも、両手で汚された口元を押さえながら目の前の強姦魔を強気にキッと睨みつけるペギー。“王子様”どころかこんな“ヘンタイ”に唇を奪い取られ、彼女はその屈辱に怒りと憤りでわなわなと打ち震えている。
その一方でペギーは無力な自分にも許せなかった。目の前の“ヘンタイ”に彼女は戦士としてはまるで相手にされていない。
その上ペギーは女としての自分はいいように弄ばれ続け、その肢体は狂気の仮面怪人によってほぼ無抵抗に汚されていく。女戦士として何もできない無力な自分への悔しさと憤り-。彼女の瞳に浮かぶ涙にはそんな意味もあったのだろう。
そしてこの時、興奮して頭に血が上っていたペギーは気が付いていなかった。先程まであれほど痛めつけられていた自分の身体に苦痛や疲労がほとんど残っていない事を。そしてそれがヤツらの差し金である事も。
ほんの少しの間、夢の中にいざなわれ恥辱まみれの生き地獄から逃れる事ができていたペギー。だがそれも“王子様”いや“ヘンタイ”との口付けによって彼女は再び現実の世界に引きずり出されてしまう。
恥辱まみれの生き地獄から逃れ、ひと時の安息の時間を手に仕掛けていたペギー。しかし結局彼女はまた恥辱の海にあえなく投げ出されてしまうのである…。
- 以下 緑の洗脳!!恐怖の黒十字戦隊 屈辱と恥辱の続きへ続く -