- 電撃戦隊チェンジマン外伝 白き人魚と蘇った宇宙獣士vol.1 -

…ここは日本、とある採石場、そこには不気味にうごめく数十体の青い人型のような生物がいた。
だがその容姿はとても人とは言えないものであった。ミイラを思わせるようなグロテスクな青い顔、金髪に悪魔のようにピンととがった耳、口に生え揃う歯は鋭くとがり、先が二つに分かれた長い舌が蛇のように動いていた。
大星団ゴズマの下級戦闘員“ヒドラー兵”である。
「ギゲゲゲゲゲ」
ジャリ、ジャリ、地面の小石を踏みしめる音が広大な採石場にこだましていた。気味悪くうめいているヒドラー兵たち。
「ギゲゲゲゲ、ギゲゲゲゲゲ」
その様子を物陰からこっそり眺めている若い女性がいた。
「ヒドラー兵があんなに…ゴズマめ…一体何を企んでるの?」
彼女の名前は渚さやか。年の頃は20歳くらいだろうか。身の丈はやや細身、平均的な日本人女性のそれでややカールがかったセミロングの黒髪を肩あたりまで伸ばしなびかせている。
知性を感じさせるその顔立ち、白いスーツに白いミニスカート、そして白いブーツ、全身を“白”のカラーでまとめたそのいでたちは清楚な彼女の雰囲気をかもしだしていた。
そしてそのミニスカートからスラリと伸びている健康的な太腿は透き通るような白さ、ムチッとした質感を誇っていた。
彼女は地球を宇宙の未知の生物の侵略から守っている“地球守備隊”の一員であった。
その中でもさやかは“電撃戦隊”と呼ばれる特殊部隊の一人として、別名“チェンジマン”と言われていた5人しかいない精鋭中の精鋭として活躍していた。
日本各地に発生したヒドラー兵の反応を調査するためにチェンジマンたちはそれぞれの発生地点へ飛び散っていった。そしてこの採石場はさやかが調査することになったのである。
(とにかくみんなに連絡しないと…)
その左腕のチェンジブレスを口元に当て、仲間に連絡しようとしたその時、背後からさやかに襲い掛かる一つの影が…。
さやかの後方からひたひたと忍び寄っていた一体のヒドラー兵が彼女に向かって体ごとダイブしてきたのだ。
「ギゲゲゲゲゲゲゲゲッ」
「何!?…きゃっ!?」
すっかり不意をつかれてしまったさやか、だが彼女もそれを横に飛びのいてかわす。その勢いでうつぶせに地面に這い蹲るヒドラー兵。
「ギゲゲ、ギゲゲゲゲゲ」
「ヒドラー兵、いつの間に?…」
突然現れた敵に対して身構えるさやか。ムクッと起き上がり瞬く間に彼女に襲い掛かるヒドラー兵。
「ギゲゲゲゲゲゲ」
「やあっ!」
そこへミニスカートからスラリと伸びたさやかの右のハイキックがヒドラー兵の顔面に炸裂する。
脚を振り上げた拍子に彼女のミニスカートから覗く白いアンダースコートがまぶしい。
「ギゲゲェ」
蹴られた衝撃で青緑の液体を撒き散らしながら吹き飛んでいくヒドラー兵。
(ふぅ…それにしても迂闊だったわ…後ろにもいたなんて…)
ヒドラー兵を倒し一息つくさやか。だが、今の騒ぎで目の前にいたヒドラー兵の集団に自分の存在を気づかれてしまったようだ。
「ギゲゲゲ」「ギゲゲゲゲゲ」
さやかにわらわらと近づいてくるヒドラー兵の集団。
「ああん、もう…見つかっちゃったじゃない…しょうがないわね…あたし一人でも何とか片付けてやるわ」
そう言ってさやかは数十体のヒドラー兵の群れの中へとその身を投じていった。
*************
「やあっ!えいっ!とおっ!…」
右から襲い掛かってくるヒドラー兵に右のハイキックをおみまいし、左からくるそれには腕に組み付き後ろへ投げ飛ばす。
襲い掛かってくるヒドラー兵をいとも簡単に次々と蹴散らしていくさやか。
だが、彼女に襲い掛かっているヒドラー兵も下級戦闘員とはいえ常人では相手にならないほどの強さを誇っている。
しかし“アースフォース”を浴び、超人的なパワーを手に入れたさやかには敵ではなかった。
それでもこの数が相手、一対数十の戦いである。物量で攻めてくる相手にさやかの体力は徐々にだが確実に奪われていく。
「はぁ、はぁ、はぁ(あと少し…)」
それでもさやかの獅子奮迅の戦いで残りはヒドラー兵数対というところまできた。
だが奪われた体力と“目の前の敵はあと少し”という安心感が、彼女の集中力をそぎ一瞬のスきを作ってしまう。
その一瞬のスキをついて一体のヒドラー兵がさやかの背後から抱きつくように組みついてきた。左腕でさやかの細い首を絞めにかかるヒドラー兵。
「ギゲゲ、ギゲゲゲゲ」
「えっ、何!?…ぐっ…しまった」
ヒドラー兵に組み付かれ動きが完全に止まってしまったさやか。その彼女に向かって残りのヒドラー兵もわらわらと寄ってくる。
首を絞められている腕を懸命に引き剥がそうとし、必死でヒドラー兵の束縛を振りほどこうとするさやか。だがそれよりも早くヒドラー兵の次の魔の手が彼女を襲う。
「ギゲ、ギゲゲ、ギゲゲゲゲゲ」
ヒドラー兵がさやかの右胸を触ってきたのだ。その鋭いかぎづめのような右手が彼女の白いスーツの上からその柔らかなふくらみをなぞるように触れていく。
「!…きゃっ!?いやっ!…どこ触ってんのよ、このっ」
ガンッ!さやかの恥じらいの肘打ちがヒドラー兵の体にヒットする。それを食らいひるんだ隙に首を絞めていた腕を剥がし、胸を触っていた逆の腕を自身の両手で掴み背負い投げのようにヒドラー兵を投げ飛ばす。
「やあああぁ!」
投げ飛ばされたヒドラー兵が残りのそれを巻き込み同時に蹴散らしていく。
「ギゲ、ギゲゲ…ゲ…」
投げ飛ばされあおむけにダウンした残りのヒドラー兵が弱々しくうめき声を上げ絶命する。それと共にその死骸は消滅しいずこかへ霧散していく。
「ったく…いやらしいわね…」
その特徴的な声をやや上ずらせさやかが呟く。その表情は頬を朱に染めすっかり蒸気してしまっていた。
(ふぅ…終わった…のね?…でも…でも、まだ何かあるはず…宇宙獣士は?宇宙獣士はどこ?)
一通り戦いは終わったが、さやかはまだ緊張を解かず辺りをきょろきょろ見渡し何かを探している。
彼女は下級戦闘員ヒドラー兵を操っているはずの“宇宙獣士”を探していた。しばらく辺りを見渡し様子を窺っているさやか。
ビシュッゥ!そこへさやかに向かって怪光線、猛スピードの閃光が襲ってきた。
「きゃぁ!?」
横へ転がりそれをかろうじてかわすさやか。その光が放たれた方向へ振り向く彼女。より一層の緊張が彼女に走る。
(いる…やっぱりまだ何かいるわ…)「誰?…そこにいるのはわかっているわ…出てきなさい!」
その光の放たれた場所に向かって叫ぶさやか。その丘の頂上へ一つの人影が。
「おーっほっほっほっほっ、よくかわしたわねぇ」
そこから現れたのは肌の露出が激しく派手ないでたちの銀髪の女性だった。
「おまえは?…アハメス!…まさかあなたが…」
大星団ゴズマの幹部“女王アハメス”。元アマゾ星の女王でその派手ないでたち、高飛車な態度、自在にムチを操る様はまさに“女王様”であった。
さやかもヒドラー兵の大群を見てから、何者かがそれを指揮しているというのはある程度予測をしていた。
だが、幹部クラスがその役割を果たしていたことに彼女は驚きを禁じえない。
「アハメス…ゴズマの大幹部であるあなた自ら出てくるなんて…この作戦はゴズマにとってよっぽど重要なものみたいね」
頭脳明晰な彼女はそのように考える。だが、その作戦の予想もし得ない内容を聞いてさやかは驚愕する。
「当然重要よ。なんたって“渚さやか捕獲作戦”だもの。おーっほっほっほっほっ」
「あたしを…捕獲?…何故あたしを捕らえる必要があるのよっ」
さやかにとっては当然の疑問である。何故ゴズマが自分を捕らえる必要があるのか?彼女にはその理由がまったく分からなかった。
「うふふふふふ、それはおまえたちチェンジマンの力の源、“アースフォース”を分析するためよ。そのためにはサンプルが必要でしょ?」
不敵な笑みを浮かべアハメスの話は続く。
「そしてその対象として一番都合がいいのは直接戦闘において一番非力な渚さやか・チェンジマーメイド、おまえってわけよ」
さらにアハメスの話は続く。
「そして数箇所にヒドラー兵を派遣したのはおまえたちをバラバラにし渚さやか、おまえを一人にするための罠だったってわけさ、分かったかい?…おーっほっほっほっほっ」
(罠!?…あたしはハメられたの?)
ゴズマの狙いが自分だったことを知り、その作戦にまんまとハマってしまったことにあせるさやか。
(くっ、とにかくみんなに連絡しなきゃ…)
左腕のチェンジブレスを口元に当て、急いで仲間に連絡しようとするさやか。ザザーッ。しかしその通信機からは砂嵐のような雑音しか聞こえず、仲間への連絡はできなかった。
(??…連絡が取れない…なんで?)
仲間への通信ができないことでさらにあせりがつのるさやか。
「ムダだよ、この辺り一帯には改良型ハードウォールで妨害電波と結界を貼ってあるからねぇ。どんな通信もできないよ、おーっほっほっほっほっ」
(ハードウォール!?…くっ…やっかいなものを貼られたものね)
“ハードウォール”それは“スーパーパワー”を利用したほとんどの攻撃を無効化する万能な結界である。
以前にそれと対峙したことのあるさやかはその恐ろしさを実感していた。その時は自分たちの攻撃はまるで通じず、5人の力を合わせた“強化型パワーバズーカ”で何とか退けたのだった。
アハメスはそれに電波をジャミングする効果を加えたようであった。
“スーパーパワー”とは“リゲルオーラ”という光を浴びたものが享受することができる超絶なパワーのことである。
(一人でハードウォールを脱出するのはほぼ不可能だわ…打つ手なし…か…こんなことになるならみんなにさっき連絡するべきだったかな?)
頭上の青空を見上げそんな思いにふけるさやか。アハメスは自身がいた丘の頂上からふわりと飛び降りさやかに向かってツカツカと歩いていく。
「でもただ捕まえるだけじゃつまんないからねぇ…おまえには“ある宇宙獣士”と戦ってもらうわよ…おほほほほほっ」
そう言うとアハメスは転移の術でとある宇宙獣士を召還する。そしてさやかはその宇宙獣士の姿を見て驚愕の表情を浮かべる。
「!!…お、おまえは…」
「グフォフォフォフォフォ、久しぶりだな、渚さやか…」
機会で加工したような声のその宇宙獣士が言う。
「お、おまえは…まさか…マーゾ!?…あなたは確かあたしたちが倒したはず、何で…?」
さやかの目の前にいる宇宙獣士の名はマーゾ。つる草と蔦がからみ人型のような形をしている植物型の宇宙獣士である。
だがその目の前の宇宙獣士はさやかたちの手で一度死んだはずだった。そいつが元通りの姿で目の前に現れたことに彼女は驚愕している。
「グフォフォフォフォ、驚いているようだな…オレ様は蘇ったのさ、偉大なるアハメス様の手によってな」
(蘇った?…まさか…なんで…そんなこと…)
目の前の宇宙獣士が蘇ったという事実が未だに信じられないさやか。
「うふふふふふっ、死んだ生物を蘇生させることなどギョダーイ星の下等生物でもできること、スーパーパワーを手に入れたあたしには造作もないことだわ、おーっほっほっほっほっ」
その様子を傍らで見ていたアハメスがさも当然と言わんばかりに高笑いする。
(そんなことアハメスが…でも…あり得ることかもしれない…)
アマゾ星人のアハメスは元々強靭な生命力を誇っていた。リゲルオーラを浴びたアハメスがその力をさらに高めたのかも知れない、さやかはそのように推理する。
(でも、もしそれが事実だとしたら…その再生能力で今まであたしたちが倒した宇宙獣士を復活させたら…)
蘇った宇宙獣士の大群が襲ってくる図を想像して…さやかは戦慄する。
「そういうことだからおまえにはこのマーゾと戦ってもらうわ…殺さない程度に痛めつけるなら何も問題ないものねぇ、あたしもおまえが苦しみにもだえている哀れな姿を見たいもの、渚さやか、おーっほっほっほっほっ」
高らかに哄笑するアハメス。そんな彼女にさやかは鋭い眼光でキッと睨みつける。
「…そんなにあなたの思い通りにはいかせないわ!…いくわ、返信よ!」
そう言うとさやかはチェンジブレスを身につけた左腕を上にかかげポーズを取る。そのまま両腕を回し膝を折ってしゃがみこむ。そしてそこから伸び上がって高らかに宣言する。
「レッツ!チェンジ!!」
その叫びと共にさやかの身体は白くまばゆい光に包まれる。そしてしばらくしてそこから現れたのはフェイスマスクをかぶり、全身を光沢のある純白のスーツに覆われたさやかの姿であった。
アースフォースの力によって“チェンジスーツ”を身に纏った戦士・“チェンジマーメイド”である。
東部のマスクには彼女のシンボルである人魚のエンブレムが輝き、そのピッタリしたスーツはB80・W55・H83の彼女のしなやかな身体を引き立てていた。
その白いスーツに所々入ったピンクのラインは女性らしさを強調し、特に股間からヒップにかけてのハイレグのラインは彼女の長い美脚を際立たせていた。