- 真夏の夜の悪い夢 中篇 -

「う、ううん…!はっ、こ、ここは?」
意識を取り戻しゆっくりと目を開けるあきら。そして周りの風景を観察して自分がどこにいるのかを確認しようとする。
(ここは…さっきの森?…確かわたしはあの怪しげな“紳士”の背中で気を失って…それより近くには誰もいないみたいね…あの男はアテにならないし、やっぱり自分で脱出方法を考えないと)
辺りを見渡し特に変な様子がないことを確認すると、あきらは意を決して自身の身体を動かし行動を起こそうとする。だが、その時彼女は自身の手足が何かにくくりつけられ動かせない事に気づく。
(!…うっ?何これ?か、身体が動かない…)
自身の身体の様子を見渡したあきらは、水平に伸ばした両腕の手首、地面に真っ直ぐ伸ばしていた足のロングブーツにそれぞれピアノ線で背後の柱のような物に縛り付けられていることを確認する。
はたから見たあきらは十字の木柱に身体をT字の状態でピアノ線で固定され、磔にされていた。
(くっ…こんなもの…?うっ、ぐっ…?ぜ、全然外せる様子がないわ…た、ただのピアノ線のはずなのに…どうして?)
全身に力を込め自身を拘束しているピアノ線を振りほどこうとするあきら。だが彼女は十字の柱にくくりつけられた身体を空しくもだえさせるだけだった。
「“森の奥深く磔にされている桃色の女戦士”か…美しい、美しいよ…フフフフッ、お目覚めのようだね、桃井あきら、いやデンジピンクよ」
そこへ霧の中からあきらが助けた“あの紳士”が不気味な笑みを浮かべながら現れる。
「!お、おまえは?さっきの…わたしをこんな風にしたのもおまえってわけね…何でこんなことするのよ?」
霧の中から現れた男を見て驚嘆の声を上げるあきら。それと同時に“ああやっぱりね”という覚めた思いも密かに感じていた。
「なぜこんなことをするかって?…カンタンなことだよ、オレがあのベーダーとかいうヤツらに貴様らデンジマンの抹殺を依頼されたからさ…そして貴様はそんなオレの罠にまんまと堕ちたってわけだ、ククククッ」
(くっ…やっぱりこの男はベーダーと繋がってたっていうの?)目の前の男を睨みつけながら、しかし心の中では苦虫をつぶしているあきら。その男はさらにしゃべり続ける。
「…それと貴様はこんなことも思ってるんじゃないか?“なぜこんなただのピアノ線が外せないのか?”ってな、ククククッ」
そんな男の言う事にもあきらは何も答えない。ただ相変わらずじっとその男を睨みつけているだけだ。
「あくまでだんまりか…まぁいい。特別に教えてやろう…オレはちょっとした呪術を使えてね…細胞や血液、汗を採取した相手の自律神経をコントロールしてそいつの意識を自在に操ることができるのさ」
自分の能力についてその男は自慢げに語り始めた。男の話はさらに続く。
「…そして背中に貴様をおぶったオレは貴様の“汗”を採取してその意識を奪ったってわけさ、ククククッ」
(くっ…だからあんなに強引だったの?わたしに近づいてそれを採取するために…)
男の説明を一通り聞いても相変わらず表面上は平静を取り繕っているあきら。だが内心はその悔しさを押し殺し歯噛みしていた。
「…そういうわけで今の貴様は赤子のような力しかないってことさ…おっと、そういえば自己紹介がまだだったな…“紳士”である自分が“レディ”に対して失礼なことをしてたな、フフフフッ」
そんなことを言いながらその男は磔にされているあきらに向かってつかつかと歩いてくる。
「フンッ、わたしにこんなことしといて今更何が紳士よ、笑わせないで」
その男から出た“紳士”という言葉に蔑みの言葉を浴びせるあきら。ゴキキッ。そんな彼女へ男は右の拳を固めあきらの左の頬をおもいっきり殴りつける。
「っ…う…ぐっ…」
顔面を強打されたあきらは懸命に呻き声を押し殺している。
「…フン、口の減らない女だ…まぁいい。オレの名は“デリンジャー”、闇の世界じゃ少しは名の通った呪術師でね…明度の土産に覚えておいてもらうと光栄だがな、ククククッ」
誇らしげに自己紹介するデリンジャー。だがあきらもそんな彼のおしゃべりをおとなしく聞いているつもりはなかった。生身の身体で力が出ないのなら“デンジピンク”に変身すれば…彼女はそのように考えるとすぐに行動を起こす。
「デンジスパーク!!…えっ?な、何で…どうして変身できないの?…!はっ」(ない?わたしの“デンジリング”がないわ…どうして??)
デンジマンへ変身できない事にとまどうあきら。その時彼女は左の薬指に身につけていたはずのデンジリングがそこにない事に気づく。そんなあきらを見てデリンジャーが不敵な笑みを浮かべて彼女に“ある物”を見せつけてくる。
「フフフフッ、お探し物はこれかね?お嬢さん」
「な…そ、それはわたしのデンジリング…どうしておまえが?それ以前にわたしたちが身につけているデンジリングは普通の人間には外せないはず、なのにどうして?」
デリンジャーが差し出してきた物を見て驚くあきら。そして“なぜ自分の元からデンジリングが取られているのか?”という疑問がふつふつと湧いてくる。
「フフフッ、確かにコイツは簡単には外せなかったよ…だがオレの呪術で少し細工をしたらいとも簡単に貴様から取り上げる事ができたってわけさ、ククククッ」
勝ち誇ったように言うデリンジャー。
「…というわけだ。これがなければ貴様はデンジピンクに変身する事はできまい?だがこの“指輪”を取り戻すにはそこから動いてオレを倒すしかないってわけだ…だが貴様は力が出なくてその拘束から抜け出す事ができない、さあ、困ったな、ククククッ」
(くっ…)
今度は露骨に顔を歪めて悔しがるあきら。そんな彼女の元へデリンジャーがさらに近づいてくる。
「それにしても、だ…」
「な、何よ一体…あっ!?」
さわっ…そしてあきらの目の前まできたデリンジャーはいきなり彼女の左のふくらみへ自身の右手を触れさせてきたのだ。突然の思わぬ彼の行動に身体が反応し思わず声を上げてしまうあきら。
スゥーッ…デリンジャーのその手はあきらの左胸から腰のくびれのラインへと辿っていき、さらにそこからピンクのミニに包まれた彼女のボリューム感のある魅惑的なヒップ、ムチッとした肉付きのいい太腿へと身体のラインをなぞるように動いていく。
「やっ…ちょっ、な、何すんのよ、いきなり」
「ふむ…中々すばらしい体つきだ…やつらの作った資料もまんざらデタラメではなさそうだな」
そんなことを言いデリンジャーはおもむろに自分のスーツのポケットの中から一枚のA4サイズの紙を取り出す。
「見てみろ…これはあいつらベーダーが作り上げた貴様らデンジマンの資料だ。しかも中々よくできているぞ、コイツは…ククククッ」
そう言うとデリンジャーはその紙を見せつけるようにあきらの顔の前につきつける。くっ…彼女はその紙から顔をそむけよく見ようとはしなかったが、自分たちデンジマン5人の写真が写っていたのがあきらにはチラッと見えた。
「…当然貴様のことも書かれてあるぞ、こんな感じにだ。『デンジピンク、本名桃井あきら、身長165cm、体重50kg、スリーサイズは上から84・60・88…」
「な、何でベーダーがそんなことまで知ってんのよ!や、やめなさいっ…もう読まないで、読まないでよ!」
頬を朱に染め森に響き渡るような大きな声で抗議するあきら。さらに髪を振り乱し、彼の言葉を遮るようにかぶりを振っている。だがデリンジャーはそんな彼女に構う事なく手にしている資料を淡々と読み上げている。
「…容姿端麗、スポーツ万能にして頭脳明晰』…中々いいことを書いてあるじゃないか、何を嫌がることがある、ククククッ」
彼は手にしていた資料をスーツのポケットにしまい込みながら改めてしみじみと語り始めた。
「それにしても…オレが最初この仕事を引き受けた時は“あまりうま味がない”と思ったんだがな…だがオレは途中でその認識を改めたよ、なぜなら…」
そう言うとデリンジャーはあきらの顔に触れるほど近づき彼女の顔をマジマジと覗き込む。
「それは依頼された抹殺のターゲットの中に貴様のような“いい女”がいたからさ。殺しの仕事をしながら貴様のような若くていい女を弄ぶ事ができるんだからな、ククククッ」
(くっ…)
迫ってくるデリンジャーのニヤけた顔から少しでも離れようとし顔をそむけるあきら。だが彼は彼女のアゴを左手で掴むと自分へクイッと向かせ、さらにミニスカートから伸びるムッチリした太腿へ右手を伸ばしその感触を確かめるようにすりすりとさすっている。
「…これから楽しい事をして遊ぼうというんだ、そんなに嫌がる事ないんじゃないのか?ククククッ」
「!…勝手な事言わないで!…それにさっきからその薄汚い手で馴れ馴れしく触らないでよっ」
ぺっ。そう一気にまくしたてるとあきらはデリンジャーの顔へ唾を吐きつける。右手でその顔にかかった唾を拭う彼。してやったりの表情を浮かべるあきら。
「くっ……ほぉ、どこまでも気の強い女だ。だがそれもどこまで続くかな?…その気の強い女ほど汚し膜って泣かせるのが快感なんだよ、ククククッ、ククククククッ」
(う…ぐ、ぐっ)
ゾクッ…狂気を帯びたデリンジャーの笑みに全身に鳥肌が立つような寒気を感じたあきら。彼女のささやかな抵抗があきらの溜飲を下げたと思ったのもつかの間、そんな半端な抵抗が彼の巧みに覆い隠していた本性を暴いてしまったようだ。
「…オレはプロだからな、引き受けた仕事はキッチリやる、だがその前に…貴様のその肢体でたっぷり楽しませてもらおうか。なにぶん、最近若くて活きのいい女とは縁遠い生活をしてるものでね、ククククッ」
するとデリンジャーはその場にいきなりしゃがみ込む。ヒラリ…そしておもむろにあきらのそのピンクのミニスカートをめくり上げ、その下に隠れていた薄い桃色の下着をじろじろと覗き込んだ。
「やっ!?ちょっ、な、何すんのよ…み、見ないで、見ないでよっ」
「ほぉ、上着だけでなく下着も“ピンク”とはな、中々そそらせるじゃないか…だがこれは見せパンだな、せっかくこんな丈の短いスカートを履いているんだ…もう少しいい下着を履いてもらわないと男としては困るんだがな、ククククッ」
そう言うとデリンジャーはそのピンクの下着で覆われたあきらの股間をパン、パンと軽くはたき始めた。
「きゃっ…あん…ちょっ…な、なにすんの、あっ、あん」
ふむ、反応もいい…ますます弄り甲斐がありそうだよ、くくくくっ」
そう言うとデリンジャーはあきらのミニスカートから手を離し、その場にスクッと立ち上がる。そして彼はあきらのピンクの服の上から彼女の左胸を自分の右手でわしづかみにし、扇を描くように右へ左へとその手を動かし始めた。
「くっ、今度はな、やっ!?…ちょっ、あっ、あん」
「ん?妙に柔らかいな?…なんだ、おまえブラはしてないのか?ベーダーのあの資料によるとそれなりに胸はあるようだが…戦闘などで激しく動いたときに乳がぼよんぼよん動いて気にならないのか?ククククッ」
くっ…そんなデリンジャーの言葉にも顔を真っ赤にして何も言い返せないあきら。ビリリリッ…さらに彼は彼女の胸を弄んでいた手でそのままあきらのそのピンクの上着を力任せに腹部へ引きちぎる。
「きゃああ!」
プルンッ。身につけていたピンクの上着を引き裂かれたあきらの上半身…前をはだけさせたあきらの身体から彼女の色白の肌と胸のふくらみが顔を覗かせている。
はだけたあきらの胸元と引きちぎったピンクの布の切れ端を見てデリンジャーが呟く。
「ん、なんだ?キャミソール…そういうことか、ククククッ」
何か意味ありげな笑みを浮かべながら、再びあきらの顔の間近へと迫っていくデリンジャー。ぐっ…恥じらいからすっかり頬を朱に染め上げた彼女はその迫ってくる彼の顔から少しでも離れるように自身の顔をそむけようとする。
だがそんな彼女をあざ笑うかのようにデリンジャーは右手であきらのアゴを掴み彼女の顔を自分の方へとクイッと向かせる。
「その必死で強がっている表情(かお)もたまらないな…しかし見れば見るほど魅力的な娘だ…これほどの女には滅多にお目にかかることはできないよ、ククククッ」
あきらの顔を間近で覗き込んでいたデリンジャーが舌なめずりしながら言う。
「くっ…そ、それ以上近づかないで!」
デリンジャーを射るような鋭い視線で貫き、相変わらず表面上は強気な態度を取り続けているあきら。だがその顔は赤く染まり、睨みつけていた瞳にも涙を潤ませている。
「おや?そのキレイな口元に血がついているではないか…ではオレが麗しきレディのためにきれいにしてやろう、ククククッ」
「べ、別にいいわよ!…!?」(えっ??)
そう言うとデリンジャーはあきらのその薄い朱唇をスッと奪い取る。意表をつくデリンジャーの行動に驚き、カッと眼を見開いている彼女。
さらに彼は空いていた左手であきらの腰に手を回す。そして彼女の身体を自分へ密着するくらいにグイッと引き寄せる。
ススススッ…そこから彼は彼女の尻へ手をズラしていき、さらにあきらのミニスカートの中にその手を忍び込ませ、そのボリューム感のある彼女のヒップをドーナツ状に撫で回し始めた。
「うっ…ん、んぐっ、んぐっ」
だがデリンジャーの彼女に対する責めはまだまだ終わらない…今度はアゴを掴んでいた右手をはだけた胸元へ伸ばし、その手の平であきらの左胸を押し付け始めたのだ。
彼女の左乳首を右手の親指で押さえつけるように、他の4本の指で彼女の胸を鷲掴みにするようにあきらの乳房を扇を描くように右へ左へグリグリとまわし始めた。
「ん、んぐっ…んぐっ、んぐっ」(くっ…こ、こんな…いやっ…いやあぁ!)
度重なる彼女への辱め…精一杯瞼を閉じたあきらの瞳からは、一筋の屈辱の涙が頬を伝っていく。
(こ、こんな…何でわたしがこんなヤツに…)
あきらに降りかかる数々の恥辱…デンジマンとなって、いや今まで生きていた中で受けた初めての屈辱に彼女の瞳からは悔し涙が止まらない。
だが一方であきらの中には冷静な思考を巡らせている自分がいた。陵辱を受ける中でも彼女は懸命に反撃の機会を窺っていたのである。
(でも…でもコイツはわたしの自律神経を操ってるって言ってたわ…ならその意識が違う所に向けば…だから耐えていればチャンスは必ず来るはず…ならそれまでは耐える、耐えて見せるわ)
その身をデリンジャーに捧げながらも彼女はまだ戦にを失ってはいなかった。
どんな苦境に立たされても最適な判断を下せる頭脳、強靭な精神力がデンジピンクの、桃井あきらの最大の武器であった。
「ぷはーっ…へへっ、中々の味わいだったよ、ククククッ」
「ケホッ、ケホッ…ぐ、ぐっ」
しばらくの間あきらの口内を味わっていたデリンジャー。そこから開放され必死にむせかえっている彼女。
その瞳には涙を潤ませ、幾ばくかはその頬へと零れ落ちている。だがデリンジャーを睨みつけるあきらのその目はまだ光を失ってはいない。
「ほぉ、まだやる気なのか?面白い、その気の強さ、ますます気に入ったよ…まぁオレもまだ貴様には愉しませてもらうつもりだがな、ククククッ、ククククククッ」
そう言うとデリンジャーはあきらへの愛撫を再開する。右手は剥き出しになった彼女の左胸を、左手は正面から彼女の股間をまさぐっている。
「そらっ、そらっ…くくっ、くくくっ、ククククククッ」
「あっ、あん…ああっ…あぁぁあん…はあぁぁあん」(負けない…わたしはこんなことには絶対に負けないっ)
デリンジャーの愛撫にひたすら喘ぎ声を上げているあきら。だが彼女は感じて声を上げているわけではなかった。
何とも言えない嫌悪感をまぎらわすために、そして彼の意識を自分への欲望へ向けるために…ギリギリの精神状態であきらは虎視眈々と反撃の機会を窺っている。
今、あきらには彼女自身の戦士として、デンジマンとしての本当の真価が問われていた…。
-続く-