- 真夏の夜の悪い夢 後編(桃井あきら視点) -
…あれからわたしは一体どれくらいこの男に弄ばれていたのだろう。
恐らく実際の時間ではそれほどの時は経っていないのでしょうね。でもわたしの中では永遠のような長い時間、この男の慰み者にされているような気がしたものだわ。
それに長い間、男に弄ばれわたしの身に付けていた服はそれはもう、見る影もない状態になっていた。
わたしが上半身に身に付けていたピンクの上着とその下に着ていた無地の白いTシャツは、もう既に原型をとどめていなかったもの。ピンクの上着と白いTシャツが覆い隠していた、わたしの肌はすっかりあらわになっていたわ。
そしてわたしの下半身。上と違い、わたしの下半身はまだ無事と言えるような状態だったのかもしれないわね。
だってわたしのピンクのミニはまだほとんど無事だったし、下着の上に重ねて履いていたアンスコもまだこの男に剥かれてはいなかったから。
でもわたしの股間はもうぐっしょり濡れていた。この男による散々の『愛撫』によってすっかり濡れていたわ。もうごまかすことができないくらいにね。
だけどわたしは男の愛撫、いえ陵辱に決して感じているつもりはなかったの。決して快感なんて感じてないつもりだったわ。
でもわたしの股間は濡れている。ぐっしょり濡れていたの。
わたしは頭ではこの男に抗っていた。件名に抗っていたわ。だけど体はしっかりとこの男の陵辱に反応してしまっていたの。悔しいけど…。
「…そろそろいくか、へへへへっ」
そう言って男はついに履いていたズボンを、パンツを脱ぎ捨て始めたわ。
ぐっ……こ、こうなってしまう前に何とかしたかったのに…-。わたしは男のその姿を苦々しく見ていた。いえ、正確には見たくなくても目に入ってしまっていたの。
やがて姿を現す男の醜い一物。見たくなくても嫌でもわたしの視界に入ってくるそのドス黒い物体。
…ゴクン。
決して見たくないそれを見て、いえ視界に入れてしまってわたしは思わず生唾を飲んでしまったわ。それにわたしの体が自然とこわばっていくのが、緊張していくのが嫌でも分かってしまったの。
イヤだ、それだけは絶対に…うっ、くっ…ぐ、ぐっ-。ついにその瞬間がやってきてしまう。
そう思ってしまったわたしは自然と体が動いていたの。うっ、くっ、うっ-。ここから逃げ出したくて、件名にもがいていたわ。例えそれが無駄なことだと分かっていてもね。
確かにわたしはさっき覚悟を決めた。何があっても絶対にあきらめないと心に誓ったわ。
だけどわたしは一方で『こうなる』前に何とかできると思っていた。思っているところがあったの。だから目前に迫る残酷な現実を目の当たりにして、わたしは心の動揺を抑えることができなくなっていたわ。
やがて男の手がわたしのスカートの中に侵入してきて-イ、イヤ…-。すっかりおびえ始めたわたしをよそに男はわたしの下着に手を掛けたかと思うと…
ビリリッ!
「きゃあぁ…ぐ、ぐっ」
男はそれを一気に、無慈悲に引きちぎってきたわ。何のためらいもなくね。
男の手に握られているわたしが履いていたピンクのアンスコとベージュのショーツの一部。ついに無残に破り捨てられてしまったわたしの下着。
それは所詮気休め程度の防壁だったのかもしれない。あまりに脆弱な防波堤だったのかもしれない。
イ、イヤ…-。でも『それ』すらも無くなってしまったことで、わたしの『大事な場所』とこの男とを遮る防壁は完全に取り払われてしまったの。わたしの濡れた股間に冷たく触れてくる外気の感覚が嫌でもそれを知らしめてきていたわ。
イヤ……やめて……こ、こないで…-。やがて迫ってくるそれ。生まれたままの下半身をあらわにし、その中心に鎮座する一物を手に男は無慈悲に迫ってきたわ。
「や、やめて…もう…やめ…てっ」
わたしは必死に男へ哀願した。男の『それ』だけはどうしても受け入れたくなくて懸命に哀願したわ。
だけどこの下種な男がわたしのそんなものを受け入れてくれるわけないこともわたしは知っている。だってこの男がわたしから受け入れてくれるものは、もうこの時に至ってはたった一つしか無かったのだから。
やがて男は『それ』をわたしから受け取りに、いえ『強奪』しにわたしへ迫ってくるわ。己の股間に鎮座しているドス黒い物体を手にね。
イ、イヤ……こ、こ、こないで…-。でもそんな想いとは裏腹にわたしの『アソコ』は男のそれを受け入れる体勢はもう十分だった。イチイチ目で確認しなくても済むくらい、わたしの股間はもうぐっしょり濡れていたんですもの。
そして男の一物はあっさりとわたしのアソコへ入ってしまったの。何の抵抗もなく男のそれを受け入れてしまったの。
「ああぁ、ああああぁ、ああああああぁぁぁ!!」
わたしは耐え難い嫌悪感に何を考えるでもなく声を上げていた。獣のようにひたすら絶叫したの。森全体に響き渡るかのように、ひたすら叫び続けたわ。
でもそれはこの男に対する『芝居』の要素なんて全然なかった。今の自分が置かれている状況を嫌悪する心からの叫び声だったんですもの。またそうでもしない限りわたしは発狂してしまいそうだったわ。
本来、男と女による体の交わりは人間に与えられた最高の快楽の一つ。わたしだって年頃の女の子なんですもの。その経験はもちろん何度かあったわ。
特にわたしがデンジピンクとなる直前、大好きだったテニスの高山コーチと肌を重ね合わせた一夜。あの夜のことは絶対に忘れない。あの感覚は今でも鮮明に覚えているわ。
でも翻って今のこの感覚は何?高山コーチと体を重ね合わせたあの夜の時と同じことをしているはずなのにこの不快な感じは何なの?不快感しか感じられないのはどうしてなの?
こ、こんな…こんな事って…いやっ、いやあぁ-。だってこの時のわたしには屈辱感しか感じられなかったんですもの。ただこの男になす術もなく犯されているという嫌悪感しか感じてなかったんですもの。
そこには男女が体を重ねあうことで感じるはずのエクスタシーなんて何一つなかったわ。あるのはこんな男にいいように弄ばれているという屈辱と嫌悪。
あるのはそんな何もできない自分への無力感-。次から次へと湧き出てくるマイナスの感情にわたしの瞳からはとめどなく悔し涙が溢れ出て着ていたわ。
でも今のわたしはもうテニスの世界チャンピオンを夢見る普通の女の子じゃない。悪のベーダー一族と戦うデンジマンの女戦士デンジピンクなのよ。
今わたしが置かれている状況は確かに女としてのわたしには屈辱そのものだわ。でも逆にこの状況が、この男にとって至福を感じているはずのこの状況が戦士としてのわたしにチャンスをもたらしてくれるかもしれない。
そうよ!わたしは絶対にあきらめない……あきらめてたまるもんですか!-。男からの陵辱に懸命に耐え、屈辱の悔し涙をとめどなく流していた、まさにその時だったわ。わたしにわずかな希望の光が差し込んできたのは!
!!
…ち、力が!?か、体に力が、力が入るわ!-。そうだったの!わたしの体に力が入るようになってきたの!
恐らくこの男がわたしを犯すことに夢中になっていたからなのでしょうね。夢中になって腰を振るあまり、わたしはこの男の自立神経を制御するという戒めから逃れることができたんじゃないかしら。
だけどこれで本当に反撃のチャンスが出てきたかもしれない。しかもこの男はわたしを犯すことに夢中になっているあまり、そのことには全く気づいていないようだわ。
だったらわたしもこのことをこの男に気づかせないような努力をしないと…うっ、くっ、うっ-。そう思いながらわたしは懸命にもがいた。いえ、この男の腰振りの動きに合わせるように色っぽく、考えられる限り官能的にこの身をもだえさせたわ。相変わらず獣のような叫び声を上げ続けながら。
「う…へへっ、いよいよだな…いくぜ、いくぜっ、くククッ、ククククククッ」
だけどわたしのそんな努力は徒労に終わってしまうのかもしれない。わたしがこの戒めから逃れることがかなう前に、どうやらこの男が快楽の絶頂を迎えてしまうかもしれないからなの。
「うああぁ…ああああぁぁぁ!」
くっ…な、中に出されるのだけは…お、お願い!何とか間に合って-。わたしは祈った。そのことをただただ祈ったわ。
わたしは相変わらず獣のように叫び続けている。だけどそれは今までのものとは根本的に違う叫び声。それは祈りの感情がこもった心からの叫びだったわ。
!!
その甲斐合ってか、わたしは徐々に拘束が緩んできていることを感じていた。わたしを束縛していた忌まわしきピアノ線が緩んできていたことを感じ取っていたわ。
くっ、痛っ!?…て、手首が、手首が…-。だけどその度に手首が拘束していたピアノ線と擦れてわたしに激しい激痛を与えてくるの。
でもだからといってここで迂闊に声を漏らすわけにはいかないわ。今がわたしにとって勝負どころ。ここが生きるか死ぬかの分岐店なんだから!
手首から全身へと駆け巡る激痛をこらえ、わたしは懸命に手足を動かし続けたわ。この男との『行為』に感じもだえているようなフリを装いながらね。
!!
や、やったわ!!-。そしてわたしのその努力がついに報われたの!わたしを緊縛していた手足のピアノ線をようやくほどくことができたのよ!
「やああ!」
「ぐふぅっ」
そしてわたしはすぐさま反撃に出たわ。まずはわたしとの『行為』に夢中になっているこの男のみぞおち目掛けて渾身の膝蹴りを叩き込む。男はたまらず後方へよろめいていったわ。汚らわしい白い液体を撒き散らしながらね。
でもまだよ!この身を汚された乙女の怒り!これでも食らいなさい!!-。だけどこんなもので済ますつもりなんてわたしには毛頭ないわ。この男にはこれまで散々いいように弄ばれてきたんですもの。
はぁぁぁぁぁぁ!!-。わたしはのけぞっている男のみぞおち目掛けて一心不乱にボディーブローを打ち込んだわ。これまでの鬱憤を晴らすようにね。
…いける!このまま一気にこの男を!-。男に対して初めて厚生に立っているという優越感。この状況がわたしに気持ちの高ぶりを、妙な高揚感を与えてくれていたわ。
「やあああっ!!」
さらにわたしはその気持ちの高ぶりのまま、男の顔面目掛けて渾身の右ハイキックを繰り出したの。この一撃で勝負を決めるつもりでね。
ガシッ。
「あっ…く、くぅ」
だけどそのわたしの渾身の蹴りは男の顔面には決まらなかった。わたしの必殺の右ハイキックは男の左手によって軽々と受け止められてしまったの。
し、しまっ-。わたしはまたしても自分の迂闊さを悔いたわ。気持ちの高ぶりのまま、勢いのまま男の顔面目掛けて大降りの技を食らわせようとしていた自分の迂闊さを。
この男はずっとこの時を狙っていたのよ。調子に乗ったわたしが大降りの技で勝負を決めに来るこの時を。
そもそもわたしだってあんな目に遭いながら冷静に反撃のチャンスをじっとうかがっていたんですもの。目の前のこの男が逆にそれをしようとしていたとしても全然おかしくないわ。
そんなことは少し冷静になって考えればすぐに分かりそうなもの。でもこの時のわたしにはそれが分からなかった。この男に対して初めて厚生に出ているという優越感が、気持ちの高ぶりがわたしから冷静な判断を奪っていたんだわ。
「このアマァ…まだそんな事をする気力が残っていたとはな…気が強いのはいいが、はねっかえりすぎるのも困りもんなんだよっ、くぉらぁっ」
でもそんなことは後の祭り。わたしがそのことに気づいた時にはもう全てが手遅れだったわ。
ガッ-。わたしの渾身の右ハイキックを左手で受け止めたこの男は、空いていた右手でわたしの左肩を掴んできたの。そしてそのままわたしを地面へ向けて押し倒してきたわ。
「あっ…き、きゃあああぁぁぁ!…あうっ」
男に背中から押し倒されたまらずあお向けに倒れこむわたし。さらに男はすかさず倒れたわたしを馬乗りにして既にはだけていた左胸を鷲掴みにしてきたのよ。
「あっ、あん…くっ、このぉ」
だけどわたしだってこのままむざむざこの男にやられるわけにはいかない。わたしはやっと自由になった右手でこの男の顔面に平手打ちを食らわしてやったわ!
パシッィ。
よし、手ごたえアリ!-。その乾いた音と共にわたしの右手に感じる会心の手ごたえ。その瞬間、わたしは心の中でほくそ笑んだわ。
…えっ!?-。だけどわたしに思いっきり顔を張られたはずの男はビクともしていなかった。その瞬間、本当にほくそ笑むことになったのは平手打ちを食らわしたわたしではなく、平手打ちを食らったはずのこの男だったのよ。
「えっ?…な、何で?」
男のその表情を見てわたしは狼狽した。だってわたしの会心の平手打ちは完璧に決まっているはずなのにこの男は平気な顔をしていたんですもの。もうわたしには何がなんだか分からなかったわ。
「フフフッ、さっき貴様の唇を奪った時に口元についていた血を採っておいてよかったよ…二度とあんな奇跡は起きないからな、桃井あきら、いやデンジピンクよ、ククククッ」
くっ…また自律神経を奪われたっていうの?…そんな…-。だけどそれがどういうことなのか、わたしはすぐに理解させられることになってしまうの。わたしはまたしてもこの男に自律神経を支配されてしまったのだと。
「そういうことだ…だからまたさっきの続きをやらせてもらう、先程は思わぬ抵抗をされてしまったからな、ククククッ」
そう言って男はまた自分のものに手をかけてわたしのアソコに近づいてきたわ。今度こそ、わたしとの『行為』を完遂するために。
くっ…こ、こないで、こないでぇ!この、この、このっ、このぉ!
バシッバシッ、バシッバシッ、バシッバシッ、バシッバシッ!
でもわたしだって男のそんなものをやすやすと受け入れたくはないもの。だから必死に抵抗した。これ以上ないくらい卑猥な表情のこの男の顔面を懸命に殴りつけたわ。
だけどそうやって男の顔を殴りつける度にわたしには残酷な現実ばかりが突きつけられてくるの。もう今のわたしにはこの下種な男に抵抗する手段なんて何一つ残っていないんだって。
「クククッ、ムダだよ…それにしてもデンジピンクも遂にオレのものだ…正義のヒロインが悪者に犯されるというのはどういう気分かね?クククッ、ククククククッ」
ぐっ…も、もうダメなの?何か手はないの?もうどうしようもないの?-。それでもわたしは必死にあがいたわ。この男に抵抗する手段を懸命に考えたわ。
だけどそれはもう全てが徒労だった。今のわたしは何をしても、何を考えても気が焦るばかりで何一つ有効な手立てなんて浮かんでこなかったもの。そしてそうやっている間にも男の一物がわたしのアソコに刻一刻と迫ってくるわ。
ウ、ウソよ…こんなのウソよ!イ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤッ、イヤァァァ!-。でもわたしにはもう何もできない。ひたすら頭を振って、イヤイヤをして、ただただパニックを起こすことくらいしかできなかったわ。
やがて男の一物はあっさりとわたしのアソコへハマっていってしまったの。でもわたしはそれを見てもどうすることもできなかった。ただ黙って、男のそれを受け入れることしかできなかったわ。絶望の二文字と共にね。
「へへっ、いいぜ、いいぜぇ…今度こそ貴様の“女”を奪ってやるよ、クククッ、ククククククッ」
「ああぁ、ああああぁ…ああああぁぁぁぁ!!」
ああ…や、やられる…ダ、ダメ、やめてっ、やめてぇぇぇ-。男の歓喜の言葉が聞こえる。男の一物の感覚がわたしのアソコを通じてわたしの中へしみわたっていく。
この時わたしはひたすら絶叫していたわ。なす術もなく男に挿入され全てに絶望して。
さっきまでのわたしは男に弄ばれながらもその理性はギリギリのところでどうにか保っていたわ。例え崖っぷちまで、土俵の徳俵にまで追い詰められていてもこの男に何とか反撃をしようと懸命に戦っていたわ。
だけど今のわたしにそうすることなんてもうできなかった。何もすることができず、ただただ無抵抗のままこの男に犯されるだけ。
そうよ。デンジピンクこと桃井あきらはたった今死んだわ。無残に戦いに敗れてね。
でもその戦いに敗れた相手はわたしたちデンジマンの宿敵、ベーダー一族じゃない。相手はただの人間の男。そんなただの人間の男になす術もなくレイプされてわたしは死んでいくの。
いえ、正確にはそうじゃないわね。確かに戦士としてのデンジピンクはたった今死んだわ。でもその正体であるわたしはまだまだ死ねない。
そうよ。死ぬことさえも許されない。簡単に死んでこの男から逃げることなんてできない。だってこの下種な男による永遠のような陵辱地獄がわたしを待っているんですもの。
あぁ…わたしは……わた…し…は…-。薄れゆく意識の中、わたしの瞳には深緑の森だけが映っていたわ。わたしをひたすら犯し続けるこの男の歓喜の声をバックミュージックにして…。
-完-