天装戦隊ゴセイジャー
   EpicX-3「スレイヴ・モネ」

≪1≫
市街地から少しばかり離れた郊外に、ぽつんと建っている工場跡地。
「……」
その工場へ一歩一歩、近づく女性の姿が……。
強い陽射しを受け、チャコールグレイにきらめく彼女のボブショートの髪、黒の短パンから露出したやや色黒の脚が魅力的だった。
「……望、絶対に助けてあげるから」
そして、今日の陽射しよりも力強い輝きを瞳に宿して、彼女=ゴセイイエロー・モネは伽藍(がらんどう)の工場の中へ足を踏み入れた。
途端、作為的とも思える冷たい風が彼女の首筋を伝う。
「……っ!」
ぞくりと背筋に悪寒が走る。しかし、彼女はそれさえも振り切って、
「メタルアリス! 望を返して!!」
ぶぅぅん……というコンピュータの起動音がどこからともなく聞こえた。
次の瞬間、モネの背後に何者かの気配が。
「よく来たわねゴセイイエロー。その勇気だけは褒めてあげるわ」
振り返ると、わずかな距離を置いた先にメタルアリス……そして、その傍らには望の姿が。
幸い、望の身体に傷をつけられた形跡は無い。
市街地の時のように、下半身を無理矢理露出させられたりもしていない。
――下半身……露出……?
モネは先刻まで望が「辱め」を受けていたことを思い返し、激昂した。
沸々と燃え立つ怒り。そして……
「チェンジカード・セット! 天装ッ!!」
……モネはテンソウダーを取り出し、チェンジカードをセットする。
刹那、純白の翼と輝ける光が彼女を包み込み――
「芽萌のランディックパワー・ゴセイイエローッ!」
力強い宣言と共に、モネは戦う姿へと生まれ変わる。
小柄ながら、既に成人女性と変わらぬ健康的な体にピタリと張り付く小金と純白のスーツが彼女のボディラインを強調させる。
……そんな彼女の姿を、少しばかり遠い距離から見つめる幼い瞳。
その瞳が、今、欲望一色に染まっていることを彼女はまだ知らない……。

≪2≫
「やあッ!」
ゴセイイエローが、メタルアリスに向かって跳躍する。
スカートが捲れることなど意にも介さず、左右の太ももを大胆に開脚しながら……。
「たあッ!」
着地したゴセイイエローが、メタルアリスの顔面目がけて大振りのパンチを見舞う。
その際に脇の下からダラダラとだらしなく垂れ流れる汗のことなど、気にもせず……。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ゴセイイエローの……否、モネの姿をその目に焼きつけ、望は盛り上がる下半身を抑えられなかった。
「………」
仇敵と戦っているにも関わらず、今のゴセイイエロー=モネはどこか愉しそうに……例えるならば<踊って>いるようだった。
薄皮一枚身にまとい、羞恥も忘れ踊り狂う淫乱な踊り子……。
「う、うぅぅぅ!」
望の陰部が、更なる勃起を続けていく。
――ああっ! モネぇ……なんでモネはそんなにエッチなのぉ!?
ゴセイイエローが股を広げ、攻撃を繰り出す。
メタルアリスが避ける。
ゴセイイエローが腕を振り上げ、汗まみれの拳を放つ。
メタルアリスが交わす。
自分を救おうと戦っているモネを、望がいやらしい目で見続けていた、次の瞬間……
「はっ!」
……ゴセイイエローの拳が、メタルアリスの左胸に命中した。
「んああっ……!!」
ばきんっ。乾いた衝突音と共に、メタルアリスがその場に跪く。
――まずい。
このままでは、大好きなモネの肉体を見つめていられなくなる……
自分に淫乱なご褒美をくれるメタルアリス様が、やられてしまう……
「これで終わりよ、メタルアリス!」
ゴセイイエローの手刀が、メタルアリスの後頭部に振り下ろされそうとした……その直前。
「や、やめてぇぇぇッ!!!」
望の悲痛な叫びが、工場の中へ喧しく響き渡った。

≪3≫
唐突に響く望の叫び声。
ゴセイイエローの拳はメタルアリスの頭上でぴたりと動きを止めた。
「の、望……どうして?」
望の顔を直視して問いかける。
外見から察するに、何か彼の身に危険が起きたわけではないらしい。
では……一体なぜ?
「ふんっ!」
それが、一瞬というにはあまりに長い「隙」であることをメタルアリスは見逃さなかった。
地面を蹴り上げ、その勢いを利用してゴセイイエローの背後に周る。
「い、いやっ! んんっ!!」
背後からゴセイイエローの首に己の二の腕を引っ掛け、ぐいぐいと締め付けるメタルアリス。
「ううう……っ! なんで……!?」
手を前方へ伸ばし、何かを求めるようなポーズを取るゴセイイエローの視線は、真っ直ぐに望を見つめていた。
「だ、だって……」
当の本人は、戸惑っているような表情で下半身をもぞもぞと動かしている。
「……暴力は、いけないこと……だし……」
「えっ?」
モネは考えもしなかった。
幼い望の瞳には、自分たちの星を護る戦いが「暴力」として映っていたなんて……。
「ゴセイイエロー、我がマトリンティス帝国の多くの同胞がお前たちによって殺された。お前たちが護ろうとする人間社会の規則に置き換えれば、これは立派な<殺人>よ……」
「なっ……何ですって?!」
「凶悪な犯罪者には、死をもって償い……いえ、それよりも辛い「奴隷」として扱って差し上げるわ。ふふふ、そうすればアナタの罪を許してもよくってよ?」
「ふ、ふざけ……ないでっ! マトリンティス帝国は……これまで多くの人々を――」
ぐいっ。
ゴセイイエローの首を締めつけている二の腕に、メタルアリスは一層の力を加えた。
「が……がはっ!」
自由に息ができない。
思うように言葉が発せない。
徐々に、顔面に熱が、そして冷気が交互に押し寄せる。
不愉快なんて表現では生易しいほどの苦痛に、モネは「がはがは」と聞き苦しい息を吐くばかり。
「強情なお嬢ちゃんだこと……なら、これならどうかしら?」
ゴセイイエローの首を締め付ける力が緩んだと思うと、刹那のうちに吹き荒れる疾風。
「えっ!?」
モネが気づいたとき、メタルアリスは望の対面に佇んでいた。
右手に出刃包丁を握り締め、その切っ先を望の愛くるしい顔面に向けながら……。
「の、望ぅぅぅ!!」
マトリンティスの高度な技術力によって生み出される兵器を用いれば、人間など一瞬で消滅させられる。それなのに……否、「だからこそ」メタルアリスは市販の出刃包丁を使っているのだろうか。
――どこまで卑劣なの、メタルアリス!?
「さぁ、ゴセイイエロー……早く決断しなければ、このカワイイ望くんの顔に傷がつくことになるわよ?」
最早、モネに選択の余地はなかった。
「いいわ……」
護星天使として人を、望を助けられるなら……
「アナタの、奴隷になるわ」
後悔はない……。
「奴隷として口の利き方がなってないわねぇ。はい、もう一度」
自分には仲間がいる。
「……あなたの……奴隷にしてください……」
共に悪しき魂に天罰を下す、五人の仲間。
ゴセイジャーがいる限り、この地上をマトリンティスに渡しはしない……!
モネは強い決意と共に頭を下げ、己が「奴隷」であることを宣言した。
「ふふふっ。ははははははは! ふふふふふふ」
どこかヒステリックなメタルアリスの笑い声が響く。
――と、その時。

「あはっ、あはっ、あははははっ! や、やったぁ!」

彼女の笑い声に混じり、やや甲高い少年のような笑い声が……
「えっ?」
モネは戸惑った。
――誰? 誰が笑っているの?
「ふふっ、ミッション成功よ」
――メタルアリスに、仲間が……!?
「は、はい! メタルアリス様ぁ」
――こんな可愛い声をした子が、メタルアリスの……マトリンティスの仲間!? 
「さぁ、新たなミッションのスタートよ。というより、ご褒美かしらね?」
モネは戸惑いを振り払う。
戦いに<迷い>は禁物。自分は猪突猛進がモットーのランディック族ではないか。
――早くメタルアリスと「その仲間」から、望を護らなきゃ!
モネ=ゴセイイエローは、ずっと下げていた頭をぐっと上げた。
「望っ! 危ないわ、早く逃げ――」
……それは、一瞬の出来事だった。
「きゃっ!!」
モネが言葉を言い終えぬうちに、彼女の体に突進してきた<何か>。
その<何か>は、小さな身体を駆使して、自分を押し倒し、歓喜の声をあげた。
獣(けだもの)の如く……。
「うぅぅぅっ……! は、離れなさいっ!」
時既に遅く、獣は自分の上半身に馬乗りになっていた。
そして、モネがその正体を暴こうとカッと目を見開いた、次の瞬間――
「う……うそ?」
「えへへっ。ぐへへへっ、うふっ、ぐふっ、ぐふふふ……」
目の焦点は定まらず、鼻の穴はぐひぐひと蠢き、半開きになった口からは「はぁはぁ」と生々しい吐息を漏らし続ける。
可愛らしい小さな身体に不釣合いな、醜い表情。
だが、いくら醜くともその顔、その姿は――
「の、望……!?」
「……奴隷の時間は始まっているのよ、ゴセイイエロー。せいぜい悪夢を楽しみなさい!」
悪夢。
モネにとって、ゴセイジャーにとって、この地上に生きる罪無き人々にとって、悪夢と呼ぶに相応しい刻が、始まりを告げた。

≪4≫
女性的なボディラインを強調する、黄金色の衣をまとった小柄な戦士が押し倒されている。
「や、やだっ! 望っ!」
青年と呼ぶにはまだまだ幼い男の子が、馬乗りの状態で戦士を押し倒している。
まだ大して筋肉もついていない両腕で、その戦士の肩をがっしりと掴んで離さない。
「離して……離してッ!」
男の子は戦士の声など耳に届いていない様子で、その年に似つかわしくない下卑た表情を浮かべ「ぐひぐひ」と奇声を上げている。
「どうして……一体何があったの、望!?」
黄金色の戦士=モネが問いかけに、望が答えることはない。
目が泳ぎ気味だった彼の眼が、不意にゴセイイエローの胸部に止まった。
そして……小ぶりながらもオンナを感じさせるその二つの膨らみに、そうっと手を伸ばした。
むにゅっ。むにゅむにゅむにゅ――。
「あはっ・あはははっ! おっぱい……おっぱいぃぃ」
わなわなと震える両手で、しかし、望は執拗にゴセイイエローの胸を揉みしだく。
「いやっ」「やめっ」とゴセイイエローの仮面の下、モネの嫌悪に満ちた声が届くたび、望は「うひっ」「ぐへっ」と、まるで猿のように耳障りな反応を示す。
「の、望っ!! あたしよ、モネよ! 分からないの!?」
モネは、悲鳴にも似た叫びで望に呼びかける。
だが、彼女の耳に届いたのは、忌むべき仇敵の声だった。
「随分と思考レベルが低いのね、ゴセイイエロー。望は分かっているに決まっているでしょう?」
「えっ……?」
――分かっている? じゃあ、望はどうしてこんなことをっ……!?
モネに考える隙を与えているかのように、背後から優雅ともいえる足音を立ててメタルアリスが近づいてくる。
モネの傍で立ち止まったメタルアリスは、囁くような甘い声を出す。
それは彼女に搭載された録音機能によって再生される、先刻までのメタルアリスと望の会話だった。

『望、ゴセイイエローをここに呼び出したら、何がしたいの?』
『もっ、モネの体を……触りたいですっ! おっぱい、お尻、あんよ、それをね、ボクのおて手でベタベタモミモミして、モネが嫌がる声を聞きたいですっ! あ、あと、ボクの大きくなっちゃうオチンチンを、モネのお口の中に入れたいですっ、メタルアリス様ぁ』
『あら、それじゃあ望は変態ね?』
『だっ、だって……モネが悪いんですっ! モネがボクの家でお洋服着替えしたりするから、ボク、エッチな気持ちになっちゃったんです!!』
『じゃあゴセイイエローは悪者なのね。そのせいで望は、町行く女の人をエッチな目で見たり、ランジェリーショップの前でウロウロしたり、エッチな本を盗んで……うふふっ、我がマトリンティス帝国に忠誠を誓い、町に爆弾まで設置したんですものね』
『そうですっ! ゴセイイエローは……悪者ですっ! ボクが……ぐへへ、天罰を下さないとぉぉ!!』

――放心。
今、モネの心の状態を一言で言い表すなら、これ以上似つかわしい言葉はない。
「…………」
全ては自分のせいだった。
自分が不用意に居間で着替えをしてしまったがために、望は性的な興奮を覚え……悪事に加担してしまったのだ。
「どうしたの? お前の力を持ってすれば、その体勢から望を投げ飛ばすことぐらい容易いはずよ? まあ、その場合望の身体はバラバラになってしまうでしょうけど。それに……ふふふふっ」
メタルアリスは、そこで言葉を止めた。
だが、モネには分かる。憎むべき仇敵が、何を言いたいのか。
モネは、既に奴隷へと成り下がった。
その自分が何らかの抵抗を見せれば、それ相応の報復があるはずだ。
護星天使である自分が、愛する町を護らなければ……
大切な仲間である自分が、愛する望を救わなければ……
ゴセイイエローは、すっと全身の力を抜いた。
そして――
「ほ、ほらっ……おいで、望。あたしの体……い、いっぱ~い触っていいんだからね♪」
――精一杯、モネは「女」を演じた。
「ひひっ!」
モネの言葉が合図であるかのように、望は彼女に覆いかぶさった。
衣類越しに勃起したペニスを、バカみたいにゴセイイエローの純白の太ももに何度も擦り付ける。
その、やけに生暖かい感触だけが彼女の太ももを支配していく。
「や、やだ望ったら、あたしの太ももにおちんちんばっか擦り付けて~」
耐えなきゃ――。
モネは、執拗に擦り付けられるペニスの感触をその太ももに感じながら、それでも心を乱さなかった。
「ば、バカぁ、え……エッチだな~。女の子の体が大好きだなんて~」
かつて、マスターヘッドから人間界について説明を受けた際に知った知識の数々。
その1つに、人間の性行為の趣向について……という項目があった。
――人間は、生殖機能を一種の欲望として捉えている。しかし、一度『射精』をした場合、その欲望は一般的には急激に減る――
モネは、その情報に一縷の望みを持っていた。
望が自分の体を使い射精を終え、自我を取り戻した際に説得する。
そうすれば、きっと……。

≪5≫
モネと出会ったのは、今から8ヶ月ほど前のことだった。
護星天使なんて、ただの子供だましの嘘だと思っていたけど、その後立て続けに起きた嘘みたいな現実の連続、そしてアラタやモネたちが自分の家に居候するようになってから、ようやく現実を見つめることが出来た。
みんなは、ヒーローなんだ……と。
そして、その非・現実的なみんなの中で、特に自分と仲良く一緒にいてくれたのが、モネだった。
嫌味のない茶色いボブショートの髪の毛。化粧っ気の薄い、幼い顔つき。くだらないことで怒ったり、笑ったりできる子供っぽい性格。
そんなモネのことが……望は好きだった。
恋心というにはまだ幼い、淡い気持ち……
「ぐへっ。ぐへへへへへっ」
……それが、今、開花した。
人として道を外した、限りなく誤った方向で。
「むちゅっ・ぶちゅぶちゅっ!」
望は、黄金色の光沢がまぶしいモネ=ゴセイイエローの胸の谷間に舌を這わせた。
舌の上に、塩気と酸味が広がる。
――これが、ずっと憧れてた……モネのっ・味っ……
「…………んんっ」
先ほどまで、モネは誰かの台詞をなぞるようにわざとらしいほど明るく言葉を発していた。
「……いやっ」
仮面に隠されたモネの表情を覗うことはできない。
だが、今この瞬間、時折漏れるモネの苦痛を耐えるかのような喘ぎこそ、望の下半身を一層刺激するのだった。
「ぐへへへへっ」
望の唾液とスーツに滲んだ半透明の汗が、彼女の胸にだらだらと滴っていた。
以前にもモネのトレーニングしている姿を何度か目にしたことがある。
しかし、それとは明らかに種類の違う汗の滴り方だった……。
――もっとモネを……嗅ぎたいっ、舐めたいっ……汚したいよぉぉっ!!
そんな望の視界に、ぴたりと閉じられたゴセイイエローの両脚が映る。
「や、やだなぁ……お、おっぱいはもう飽きちゃったのかし……ら?」
返答もせず、左右の太ももの間へと手を伸ばす。
そして、ぐいぐいっと、強引に彼女の股を開こうと力を入れる。
「や、めてよぉっ……エッチなんだからぁ」
だが、望は返答もなく……ただ一心不乱にゴセイイエローの股を開かせようとする。
「ダメだよ……やめてよ……望…………望ぅぅッ!!!」
それは、本心から望に助けを乞う声。
それは、本心から望を救うための声。
切羽詰った彼女の言葉を聞き、望ははじめて「人らしい」言葉を利いた。
「うるさいな、早く股を開いてよ……オチ○チン、こすりつけたいんだよっ!」
そして、望は彼女の返答も聞かずに己のズボンとパンツを脱ぎ、彼女のゴセイスーツに覆われた秘部へペニスを叩きつけた。
「やああっ! やめて、やめてぇ! 汚い……汚いよぉぉ!」
「あははははは!! そんなこと言わないでよぉ! モネぇ、ボクのオチ○チン、こんなに固くなってるんだよぉ!? ぐへっ・ぐへへへへっ!! 気持ちよくしてよぉぉ!!」
モネの動きがぴたりと止まった。
絶望。望にはまだ、その言葉の意味さえも分からなかったが、モネが<そういう状態>だということを本能的に察知した。
「あはっ! ぐへっ! うっ……うぅぅ」
来た……ついに、あの、快感が。
「い、いいひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!」
――どくどくっ。
燃え上がるように熱くなった望のペニスから、溢れ出る大量の精液。
白濁色のそれが、ゴセイイエローのデリケートゾーンを汚す。
それはまるで、地球を守る正義のヒロインが寝そべったまま<失禁>してしまったかのように、卑猥な光景だった。
しかし、勇敢な仮面に覆われたその素顔は……真っ直ぐに望を見据えていた。
モネはまだ、希望を失ってはいなかったのだ。

≪6≫
臭い。
どんなに激しいトレーニングの後でも流したことの無い大量の汗と生臭い望の精液
が、ゴセイイエローとなって鋭くなったモネの嗅覚を刺激した。
顔面を異常なまでに紅揚させ、息づかいの荒くなった望が目の前に控えているこ
とも相まって……ひどく不快だった。
だが、モネは懸命に望へ呼びかける。
「望……」
過度なストレスと疲労のためか、思うように舌が回らない。
「あたしは……あなたの……」
それでも、モネは懸命に言葉を紡いだ。
≪友達でしょ?だから、こんなことしちゃダメ・・・≫――そう続くはずの彼女の
言葉を、 望が遮る。
落ち着きを取り戻し、満面の笑みを添えながら……。
「うん。モネは僕の友達で、初恋の人で……」
心底嬉しそうに、望は言葉を続けた。

「……奴隷、ねぇ、そうでしょ?」

「……ッ!」
モネは戦慄した。
これまで望にされたことに対して。
これまで自分がしてきたことに対して。
そして……射精を終えて、正気を取り戻した望の「言葉」に対して。
それらがモネにとって、ただただ……怖かった。
「い、いやあぁぁぁッ!」
仰向けに横たわっていたモネが、必死に姿勢を立て直した。
獣の如き四つん這いの姿勢で、モネ……否、ゴセイイエローは望に背を向ける。
「あはははははっ」
ランディック族としての戦士の本能が、必死に彼女に命じる。
逃げろ、にげろ、ニゲロ……。
「いやだっ……いやだッ!!」
地面にはいつくばり、必死にこの場から離れようとする。
「待ってよぉ。まだモネにはオチンチンにチュウもしてもらってないんだよ?」
――イヤだ、聞きたくない! 怖い……怖い! あの子、おかしいっ!!
ここにいるのは、自分の知っていたあの可愛い望ではない。
異常な性癖に目覚め自分の肉体を狙っている醜いマトリンティスの手先なのだ。
――アラタ、ハイド、エリ……
モネの脳裏に、頼れる仲間たちの顔が次々と浮かんでくる。
「怖いよぉ! 助けてお兄ちゃぁん!!」
限りなく絶叫に近い悲鳴。
今、彼女の助けを求める叫びを聞き入れる者は……
「わがままだなぁ。じゃあモネは友達で初恋の人で、奴隷で……あと、妹にしてあげる」
……望以外、いるはずもなかった。
「ふふふっ、上出来よ。望」
メタルアリスの高笑いと望への賛辞が遠くから響く。
「まだまだですよぉ。わがままな奴隷にはやっぱりこれを使わないと……」
続いて、すぐ背後から望の声が。
――えっ? うしろ……?
……おそるおそる、モネは四つん這いの姿勢のまま背後を振り返った。
すぐ後ろに、歪んだ笑みを浮かべて片手に注射器を持った望がいた。
あれだけ必死に逃げていたことなど、全く意味を成さなかったということだ。
「い、いやっ・・いやぁぁ」
・・モネの絶叫が途絶えた。
まるで一時停止のスイッチを捻ったかのように。そのモネの首筋には、あの注射
器の太く不気味な針が、深々と刺さっていた・・。
「お楽しみはこれからだあ・・うへへ、可愛い可愛い・・僕だけのモネっ♪」

≪7≫
アンチゴセイヴィールス――。
それは、マトリンティス帝国が科学の粋を集めて完成させた対ゴセイジャー用細
菌兵器。この細菌を体内に打ち込まれた護星天使は、著しく身体機能が低下し、
チェンジカードを用いての変身をはじめ、天装術の具現化を最低水準にまで下げられてしまう……
「な、に……こ、れ!?」
……先刻の注射に関しての、メタルアリスの懇切丁寧な説明など、もはやモネの耳には入らない。
全身を悪寒が襲い、筋肉が硬直を始めている……。
「から、だ、おかしい……!!」
変化はそれだけではない。
モネの全身にぴたりと張り付くゴセイスーツ……その強度が、確実に下がっている。天装術の力が低下したこの黄金色のスーツは、モネの若々しいボディラインを強調させる卑猥な衣服としての機能しか果たさなくなっているのだ。
「ぐひゃひゃ、モネぇ……そんな格好でお尻を突き出しちゃってぇ♪ ほーんと、エッチな奴隷だなぁ」
望は満面の笑みを浮かべつつ、モネを指さす。
そう、今のモネ=ゴセイイエローは限りなく屈辱的なポーズを取らされていた。
四つん這いのまま、やや汗がスーツに滲んだヒップを望に向ける。
「んんっ……なに……する、の!?」
だが、モネはこの卑猥なポーズをとり続けなければならない。
硬直した筋肉は、もはや彼女に体勢を変える力さえ残させはしなかったのだ。
「ああ、汗がびっちょびちょだぁ」
望はゴセイイエローに近づき、彼女のヒップへと顔……正確には鼻……を近づけた。
「うひゃあ、臭い♪ いくら奴隷だって、こんな汗びっちょびちょのスーツなんて脱ぎた
いよね!」
「い……いやぁッ!!」
モネのいやがる声を、むしろ楽しむように聞いていた望はその細い腕でゴセイイエローのスカートをぺろりとめくりあげた。
汗が飛沫となって飛び散る。続いて、眼前に広がる光景に望は感嘆の声を漏らした。
「うわあ……♪ 見てぇメタルアリス様ぁ! モ、モネの……奴隷のお尻だよぉぉ!!」
純白のスーツは大量の汗でチェック柄のパンティがくっきりと透けてしまい、均一の取れたモネのヒップを恥ずかしげもなく露見させている。
「まあ、なんて下品で不潔なお尻なのかしら? 望……そんな下品な服なんて、今すぐ剥ぎとりなさい!」
「は、はいっ!!」
力強く頷く。そして、望はゴセイイエローのヒップを覆うまるで厚手のパンストのような外見・強度のスーツに手をかけた……。
「へ、へん……たいぃ……っ!」
望は両手をヒップの左右に置き、丁寧にスーツだけつまみ上げ……
「やめ……てえぇ」
……豪快に左右へ引きちぎった。
「ひゃはは! や、やったぁぁぁ!!」
「ううっ……ううっ……」
今・・護星天使として地球を護る、その証が引き裂かれた。
完全な敗北。その信じがたい現実を前に、モネは泣いた。
嗚咽混じりに泣きじゃくるモネの姿は、もはやレイプされた直後の可憐な少女と表現して差し支えない。
「あれぇ? パンツはもっとびしょびしょだ……なんだよ、汚いなぁッ!!」
独り言のように呟くと、望はモネの硬直した体のことなど意にも介さず、モネの下半身を覆う最後の1枚――すなわちイエローのチェック柄のパンティに手をかけ、
「ぎゃぁぁっ……!!」
強引に彼女の体からはぎ取った。
パンティの生地に一切のほつれやちぎれが無かったのは、望なりの彼女への配慮なのだろうか?
「えへへぇ、モネのパンツも~らい♪」
否、違う。
あろうことか、望は四つん這いの姿勢を保ったままのモネの対面に立つと……
「うわあ・・ピチピチ・・はちきれそうだぁ♪」
……これまで露出させていた下半身に、何のためらいなくモネのパンティを穿いたのだ。
小さなモネのパンティは、望の興奮をはじめた下半身を窮屈そうに、そして卑猥に包み込んでいた。
「えへへへ……モネぇ、これでずっと、何があっても一緒だよぉ♪」
そう囁いて、望――否、<変態>はわずかに身を屈め、最早ゴセイイエローと呼ぶにはあまりに瑣末な姿のモネ……その仮面に覆われた頭部をこつんと小突いた。
途端、出来の悪いガラス細工のようにその場に砕け落ちるゴセイイエローの仮面。
露になったモネの素顔。
額にはじんわりと汗を浮かべ、髪の毛も同じく大量の汗でぐっしょりと濡れていた。
顔には既に生気が感じられず、どこか人形めいた愛らしさと不気味さを兼ね備えていた。
そんな、モネの半開きになった口内目がけ――
「ほらっ、ほらっ!! 美味しいだろぅ、モネ! ああ……スゴいよ、モネのお口の中に、ボクのオチンチンが入ってるぅぅぅ!!」
――可愛らしい柄のパンティからはみ出した陰部を、無理矢理押し込めた。
じゅぼっ・じゅる・じゅるるるっ――。
「がはっ・ごほっ!! や、や……だぁ……」
拒絶の声さえも、もはや、おぼつかなかった。
望の陰部を拒否するほどの力さえ残っていない。
生々しい匂いを放つ「それ」を、モネは望の腰の動きに併せて咥えつづけるしかなかったのだ。
「ああっ……いいっ! いいっ!! またイク! ぼく、またお漏らししちゃうぅ!!」
伽藍だったはずの工場に、この上なくエネルギッシュな雄叫びが響く。
そして、飽きることなく望は果てた。
「はぁ……はぁ…………」
1日の間に、何度も射精を行ったためだろうか?
望の体を、唐突に疲労が襲う。
そして……望は、その場にばたんっと豪快な物音を立てて倒れこんだ。
「…………」
程なくして、モネも同じように倒れこむ。
例え全身の筋肉が硬直していても――
身体を少し動かすだけで激しい苦痛に見舞われても――
もう、彼女には関係ない。
モネは眠るしかなかった。
この先、終わることない悪夢を見せ続けられる……という現実を、彼女の理性が受け入れられなかったのだ。
悪夢のようなこの出来事が真実なら、せめて、夢の中へ逃げ込もう。
それが奴隷と化したモネが出来る、唯一の抗いだったのだ。
「あらあら……バカみたいに気持ちよくなったら、もう眠っちゃったのね。ふふふっ、まあいいわ。私の立てた計画は、順調そのもの……。これからが、本当に楽しみだわ」
夢の世界へと旅立った2人を前に、メタルアリスはそんな独り言を呟いた。

≪8≫
――ここはどこ? 私……だぁれ?
深く暗く、そして不衛生な……まるで豚小屋のような部屋で、その少女はそんな疑問を抱いた。
随分と昔から、自分はここにいる。
多分、これからも……ずっとここにいる。
ここは暗くて、臭くて、汚い。
でも、なんだか身体に力が入らない……ムリに力を入れようとすると、なぜだか体のあちこちがギシギシ痛む。
だから、自分はこの部屋から出ることは出来ない。
裸電球1つだけの、頼りない灯りに照らされたこの部屋を……。
――でも、別にいいや……
自分が何者か分からない以上、この部屋を出ても宛ては無い。
だから、ここにいよう。
「…………」
両脚と両腕……否、今の彼女の中では4本の「足」で、この部屋の中で大人しくしていることが、一番マシな生活に思えた。
そういえば、昔誰かが「お前は人間じゃない。奴隷だ。獣(けだもの)だ」とか自分に言っていた気がする。
そうだ。自分は醜い獣だ。だから、4本の足を使っているんだ。
「……」
ぐぅ、と腹の音が鳴った。
――早く、ご飯の時間にならないかなぁ……。
少女は、食事の時間がなにより大好きだった。
自由を失った彼女の、唯一の愉しみ。それは、1日に6回は運ばれてくる、あの美味しい美味しいご飯だった。
ご主人様と呼ばれる男の子が運んでくる、あの甘くてとろけるようなご飯……早く欲しい。
そうだ。
欲しいときは、こう言えって教わったんだ。
「…………」
少女は、たった一人の部屋の中、恥ずかし気もなく叫ぶ。
「ご主人さまぁ!! この奴隷に、おちんちんくださ~い!! もう我慢できないのぉ♪」
こうすれば、ご主人様が美味しいおちんちんを恵んでくれる。
がちゃり。
部屋の鍵が開き、ご主人様が大きなおちんちんをさらけ出したまま、姿を現した。
「全く、どうしようもないなぁ……モネは」
そうだ、自分はモネって名前だったんだ。
今更ながら、そんなことを思いだす。
「……?」
でも、そんなことより、ご主人様が後ろに引き連れた奇妙な人間の方が気になった。
――あのちょっと恥ずかしいピンクの衣装とお面をつけた人……誰だろう?
不審がるモネと対照的に、そのピンクの衣装の人間――女の子――は、疲れきった……だが、どこか助けを求めるような口調で話しかけてきた。
「も、モネっ!! ねぇ聞いて! あたしよ、エリよっ! ねえ、大変なの! あなたがいなくなってから、マトリンティスが地上に総攻撃をかけてきて、それで……」
その必死な呼びかけを聞きながら、モネは思った。
――きぃきぃきぃきぃうるさいな。あたしはご飯の時間なのよ……。
正しく獣のように全裸のモネが、望の下半身に猫のように擦り寄って行く。
「ご主人さまぁ……おちんちん、いただきまぁす」
そう言って、ペロペロとご主人様=望の一物を頬張った。
「い、いやだっ! 何やってるのよモネ!? やめなよ!! 汚いよ!!」
「どう、モネ? ボクのオチンチン、美味しい??」
「はいっ・とっても……甘くてっ・苦くてっ・生臭くって…………美味しいれすぅ♪」
「よしよし。もっとペロペロしたら、もっと美味しいミルクが出てくるからね。僕は優しいだろ?」
そう言って、望はまるでペットに行うような仕草でモネの頭を撫でた。
「おちんぽミルクぅ……だいひゅきぃぃ♪」
心底嬉しそうな声を上げるモネを見て、エリ=ゴセイピンクは絶望のあまりその場に座り込んだ。
「やだ……こんなのやだよ……2人とも、普通に戻ってよぉぉっ!!」
すると、下卑た望の笑い声がエリの悲鳴をかき消した。
「大丈夫だよ。3日もいれば、すぐエリもモネみたいになれるさ……♪ ボクのオチンチンを美味しい美味しいと言って、嬉しそうにパクパクしちゃう変態な護星天使にね」
「……望、あなた一体……」
呆然とするゴセイピンクを、険しい表情でにらみつけ、望は怒鳴るように宣言した。
「口の利き方に気をつけろっ! ボクはお前たちの主人であり、マトリンティスの次期幹部候補……天知望だっ!!」
「はふっ・むにゅ・ぶちゅっ♪ 望さまぁ……ステキぃぃ……」
薄暗い牢獄。一心不乱に望の陰部を咥えつづけるモネ。
マトリンティス帝国による、地上への総攻撃。
「………………」
いつか、自分もモネみたいになってしまうのだろうか……?
この牢獄の新しい奴隷=エリは、ただただ絶望するしかないことを悟った。