天装戦隊ゴセイジャー
   EpicX-1「セクシャル・アリス」

≪1≫
深く暗い海の底に潜む、この海底よりも深く暗い野望……。
かつて存在した高度な科学力を持った某・古代文明の遺産とも言えるロボットたちの暮らす国家――機械禦鏖帝国マトリンティスが、この海底には存在していた。
マトリンティスの皇帝、10サイのロボゴーグの第一秘書であるエージェントのメタルA(アリス)が、深い海の底から地上へと姿を現した。
ロボゴーグが開発した人造人間=マトロイドながら、<女性>として作られた彼女は、鋭角で冷たい光を宿した瞳と、陶器のようにつるりとした光沢を持つボディ……そして、ロボゴーグの嗜好によるものか、柔軟な素材を用いて造られた胸と尻、そして太ももが印象的だ。
「……」
とある港へ降り立った彼女は、一飛びで遥か彼方にそびえる高層ビルへと跳躍した。
地上50メートルの高さから見下ろす現代の文明は、彼女の瞳にはあまりにも陳腐に映る。
こんな世界、侵略・統治することなど本来ならば容易いことだ。
だが……
「くっ、忌わしきは護星天使……」
……マトリンティスの目的は、地球を守護する五人の天使たちによってことごとく粉砕されてきた。
――これ以上、ロボゴーグ様のお手を煩わせるわけには行かない……
内に秘めた情熱を沸々と燃やす彼女の視界に、1人の少年の姿が入る。
昼下がりの町を、どこか奇妙な様子で歩いている少年――
「ん? あの子供……。ふふふっ、そういうことね」
現代の地球の科学力を遥かに超えたテクノロジーが組み込まれた彼女にとって、あの少年が誰かを認識することは勿論、心拍数や身体変化、そして表情から彼が何を考えているのかまでお見通しだった。
「今回の作戦成功率、99.9パーセント……といったところかしら?」

≪2≫
時間は今から三十分ほど前に遡る。
都心からほど近い場所に位置する、広大な研究施設――天知天文研究所。
この施設の所有者である天知博士のひとり息子、小学生の望が足早にこの研究所にやって来た。……と、いうのもこの施設は研究所と自宅が兼用されており、望は父親とひょんなことから知り合った地球を守る天使、ゴセイジャーの五人と一緒に暮らしているのだ。
「はぁ、はぁ、ただいまーっ」
今日は臨時の保護者会が開かれたため、下校時刻がいつもより早くなった。
いつもより長く友達とサッカーが出来る。ゲームが出来る。――少年として健全な楽しみに心を躍らす彼の口調と足取りは、いつもより軽い。
廊下を抜け、いつもみんなが使っているリビング兼研究室へ足を踏み入れようとすると、望の耳がとある声を捉えた。
「んんっ……はっ、んんっ……はっ」
苦痛に悶えるような、しかしどこか気持ちよさそうな女の人の声。
「えっ?」
一体誰だろう? 純粋な好奇心から、望は少しだけ開いたままのドアの隙間から、部屋の中を見やった。
そこにいたのは、モネだった。
いつものように黄色いジャケットに黒のショートパンツを穿いた彼女が地面に仰向けになり、上体を何度も何度も上下させている。
そう、単なる筋力トレーニングだ。
何も不思議なことは無い。まして、こんなドアの隙間から泥棒のように部屋の様子を覗う必要など、全く無いのだ。
――な、なんだよ……
「んんっ……あっ、んんっ……んっ」
徐々に苦しそうになるモネの声、表情。
やや赤みを帯びた頬と、ショートパンツから伸びた太ももに滲む汗。
苦しいはずのトレーニングを、それでも健気に続ける彼女の姿。
「うっ……」
望は、自分の中の<何か>が変わったことを自覚した。
全身を迸る衝撃。つづいて、下半身――つまり<お○んちん>に感じる違和感。
なぜか、モネの姿を見ているとお○んちんが大きくなっている……。
発作的に、望は辺りを見回した。
買い物にでも出かけているのだろうか――モネ以外のみんなの姿は見当たらない。
つまり、今、この家には自分とモネしかいない……ということだ。
「だ、ダメだ」
自分に言い聞かせるように、望は小声でつぶやいた。
今、自分がやろうとしたこと……それが望にとっては、とてつもなく<いけないこと>に思えてしまう。
「…………」
昨日、友達の家でゲームをしている最中にある男の子が望にぼそりと言ったことが、もう一度、彼の頭を過ぎる。
『ケンタの兄ちゃんから聞いたんだけど、エロいこと考えながらち○こ触ると、スゲー気持ちイイらしいんだぜ? 大人はみーんなそれを<秘密の遊び>にしてるんだって』
それを聞いた望は『うわっ、なんか気持ち悪いよ』と嫌悪を込めた台詞を吐き、すぐさまゲームを再開した。
そう、その時は、まるで興味が無かった。
友達と、ゲームと、サッカーと、お父さん、それにアラタたち五人がいてくれれば、望は他に何もいらない、そう思っていたからだ。
……少なくとも、昨日までは。
「……はぁ、はぁ」
ぐんぐんと大きくなっていく望のおち○ちん。
昨日までただおしっこをするだけだったここが、まるで「触れ触れ」と促しているようだ。
「…………」
触ってみたい。だけど、触れない。
望がそのジレンマに悩んでいた、その時――。
「ふぅ」
モネがトレーニングを終えて、その場で立ち上がった。
そして――
「シャワー、シャワーっと」
そう言って、あろうことかその場でジャケット、シャツ、そしてショートパンツを脱ぎ捨てたのだ。
黄色いチェックのブラに、同系色のショーツ。
まだ少女と呼んで差し支えない彼女の肉体は、しかし……小学生の望には、あまりにも刺激的だった。
――も、もう……だ、めっ・だ!
発作的に、望は己のおち○ちん……否、ペニスに手を伸ばした。
途端、彼の体に迸る衝撃。
「あああっ!」
精通には程遠い刺激であるものの、望はあまりの気持ちよさに声をあげてしまう。
「誰っ!?」
刹那、モネの瞳が戦士のそれへと変わり、ドアの隙間から覗く影に向けられた。
「う、うわっ! ご……ごめん、なさい」
「えっ? なんだぁ、望かぁ」
相手が望と分かるや否や、モネはさっきまでの穏やかな表情を取り戻した。
……それが、あまりにも気まずかった。
望は考える暇もなく玄関に向かって走りだした。
「え? ちょ、ちょっと望!」
突然のことに困惑しながらも、モネは望を追いかけてくる。
今、彼女とこれ以上一緒にはいられない。
――……一緒にいたら、絶対、ボクはおかしくなるっ
それが、望はなにより怖かった。
研究所を飛び出し、近くにかかる橋に差し掛かった頃、自分を呼ぶモネの声が一層大きくなってくる。
普段から鍛えているモネが望に追いつくのに、さして時間はかからなかったということだ。
「ちょっと、望ってば!」
やや苛立った口調で、モネは望の右手を掴んだ。
「はぁ、はぁ……あっ、だ、ダメっ!」
望はすぐさまその手を払う。
「……触らないで」
――それは、ボクがさっきまでおち○ちんを触っていた手なんだ。だから、汚いんだ。ゴメンなさい、触らないで。
望は、素直にそう言いたかった。
だが、言えない。言えるわけが無い。
そんなことを言えば、間違いなくモネは自分を軽蔑する。
「な、なんでいきなり逃げたの?」
一切の事情が分からないのだろう、モネが純粋な疑問をぶつけてくる。
「う、うるさいなっ! 放っておいてよ!」
「えっ?」
「ボク、モネのこと……」
「…………」
「大っきらいなんだからっ!!」
「……の、望」
罵声を浴びせた自分を見つめる、モネの哀しそうな瞳。
「…………」
それでも、望は1人になりたかった。
駅前の方に歩みを進める望の後姿を、モネは力なく見つめることしかできなかった……。

≪3≫
「…………」
自分は<おかしく>なったんだ。
駅前の商店街を歩きながら、望は思った。
さっきから、自分は町行く人々の――女性のことばかり見ている。
ただなんとなく見ているのではない。意識的に、卑屈に、そして卑猥に……彼女たちを見ている。そして、どうしようもなくペ○スが大きくなって……それが、嫌じゃないのだ。
「ああっ……」
金髪の女子高生のミニスカートから伸びる太もも。
「はああっ……」
やや年を重ねつつも美しい人妻の胸の谷間。
町にいる、全ての美麗な女性たちの姿が、望の股間を刺激する。
どくっ、どくっ。ケガをしているわけでもないのに、やけに熱くなっている。
興奮が、ペニスが、収まらない。
「あっ……ああっ!」
しまいには、駅前に店を構えるランジェリーショップの入り口に張られたポスターに映る、下着姿の外国人の姿にさえ、声をあげてしまう。
――この人……こんな恥ずかしい格好してるのに……わ、笑ってるぅ……
望の関心が、完全に<女性>という存在そのものに集中していく。
他のものは、もう、どーでもいい。サッカーも、ゲームも、アラタたちも……。
女の人がいい。
女の人の裸が見たい。裸を見ながら、おち○ちんを触りたい――。
「……!」
ふとランジェリーショップの入り口に、ポスターと同じ表紙の冊子が置かれていることに気づく。
<ご自由にどうぞ>と書かれたその冊子から、望は目が離せない。
ふとガラス張りの店内に目を向けると、下着をあれこれと見定めていた買い物途中のOL風の女性二人組が、こちらを見つめている。
好奇と不審感を露にした表情で。
「ひっ……」
つい身じろいでしまう。
――きっとあのお姉さんたちは、ボクのことを変態だと思ってるんだ……
自分のおち○ちんのことは、絶対に人にばれるわけにはいかない。
――欲しい、欲しい、欲しいのにっ……!
意を決し、望はその冊子に手を伸ばした。
「ちょっと君?」
突然の呼びかけに、ビクンと身体が震え、手が止まる。
おそるおそる振り返り、声の主の姿を見ると望の体はまたも激しく震えた。
すらりとした長身の女性が、望を見下ろしている。
「あっ……」
真っ黒い、艶のあるストレートの髪。
アイラインが飾る鋭い目つき、すぅっと通った鼻筋……昨日までなら「綺麗で怖いお姉さん」とでも思っていただろう、大人の女性の顔。
更に彼女の服装が、望の欲望を更に刺激する。
上半身にぴたりと張り付いたレザーのジャケットは中央のジッパーが半分ほど開かれ、胸の谷間をこれでもかと見せ付けてくる。
おまけに同じくレザーのミニスカートは、明らかに丈が足らず、望の位置からは時折ワインレッドの色彩を施されたパンティが見え隠れする。
しかし、そんなことを意にも介さず彼女は、
「どうしてそんなのが欲しいの? それ、女の人の下着が載ってるカタログよ? 君、まだ子供……小学生でしょう? しかも、どうみても女の子じゃないわ」
「あ、いや、えっとっ……」
「ママに頼まれたの? 違うの?」
「えっと……ご、ごめんなさいっ!!」
謝る理由も分からぬまま望は頭を下げ、その場から急いで離れた。
少しばかり距離を置いた後、その女性のことを振り返ると……彼女はまだ自分を見つめていた。
氷のように鋭い目つきに、わずかに唇を歪めるだけの微笑みを添えながら。

≪4≫
「はぁ……はぁ……」
既に、望の性欲は臨界点を越えようとしていた。
――早くっ、おち○ちん触りたいっ……
そんな彼の瞳に、一軒の大型書店が目に入る。
入り口から店内の様子を覗うと、昼下がりということもあってか客の姿は疎ら。
望は、あることを思いついた。
そして、意を決するように店内へと足を踏み入れたのだ。
「…………」
店内に陳列された雑誌のスペースを、几帳面に確認していく。
スポーツ、ファッション、ホビー、週刊誌、そして――
――ああっ! み、見つけたっ……
望は、成人向けのアダルト雑誌のコーナーで心を躍らせつつ、歩みを止めた。
ビニルで包装された雑誌の表紙には、さっきの<お姉さん>のようにレザーのジャケットに身を包んだ女性が、股を広げてこちらを見つめている。
刹那、彼はその雑誌を手に取り――大型書店に設置された障害者用のトイレへと足を向けた。
――万引き。
これが犯罪であると、望は重々に承知していた。
それでも、彼は自分を止められなかった。
「はぁ……はぁ……」
ビニルを剥ぎ取り、ズボンを下ろし、彼はページをパラパラとめくる。
「ああっ!」
あれほど望んでいた女性の裸、卑猥な格好、淫乱な表情が、そこにはあった。
彼は狂ったように己のペニスに手を伸ばし、むにゅむにゅと揉み始めた。
快感。
それも、今まで感じたことがないほどの衝撃が延々と望の体を、心を支配する。
……望は、幸せだった。
だが、その時……。
「ぼく……あなたのしていることは、人間たちの常識から言えば、立派なルール違反。犯罪よ?」
突然、彼の背後から女性の声が響く。
完全個室なはずのこの部屋に……
「えっ!?」
……振り返ると、そこにはさっきのレザー姿の<お姉さん>が立っていた。
「いけない子。性器を露出させ、勃起させてしまうなんて……」
「あ、あの……えっと……」
望が何を言えばいいか戸惑う時、唐突に――
「うわー、こーんなエッチな本盗んじゃうなんて、望って最低。サイテー」
――<お姉さん>の声が、モネのそれへと変わる。
「もう、こんな気持ち悪い子と一緒に住めないっ。みんな、この研究所から出よーよー」
何が起きているのだ? この女性は、一体?
悩んでいると、彼女は薄暗いオーラへ包まれ真の姿を現した。
全身鋼鉄の、しかし艶めかしい女性型マトロイド――メタルアリスへと。
「うわぁ!?」
「ふふふ。あなたのだーいすきなゴセイイエローは、あなたの本性を知ったら、きっとこう思うでしょうね」
「そ、そんなことっ……!」
突然の出来事に戸惑いながらも、必死で反論しようとする。
それでも、<そんなこと無い>とは言えない。
誰でも、こんな自分の姿を見たら軽蔑して、気味悪がってしまうはずだ。
「随分と成長が早いのね。最も、私のデータによると身長や体重は小学生の平均以下だけど……ふふふっ。そういう子供を、人間社会ではマセガキと言うのよ」
怖い。目の前にアラタたちが戦っていた悪の怪人がいるというだけで、望は恐ろしくてしょうがなかった。
「う、うるさいっ。お前なんかにガキって呼ばれるほど――」
健気に勇気を奮いたたせ、望は食ってかかる。だが……
「お前?」
望の言葉を反芻するメタルアリスは、唐突に望の下半身へぐいっと手を伸ばした。
むにゅ。ぐにゅぐにゅ……ぐにゅ!
「誰に向かって喋っているか、自覚なさい。子供のクセに性に目覚めたマセガキが!」
喋っている間も、メタルアリスは手の動きを止めない。
望のようにペニスをいじることにためらいの無いメタルアリスの動きは……性を覚えたばかりの望には……あまりにも…………
――きっ、気持ちいいっ……!!
「うああああ。や、やめろぉ」
女の子のように情けない声を出す望を見て、メタルアリスは冷たい笑い声を上げる。
「ふふふっ。この私に……エージェントのメタルアリス様に忠誠を誓いなさい。そうすれば、ほらほらほらっ」
ぐにゅ!! ……メタルアリスの手の動きが、より一層激しくなる。
継続し、肥大化する快感に望の声は震え続ける。
「や……やめて…………」
「んんっ?」
「やめてっ……くださいメタルアリス様ぁ。変なおちっこっ……で、ちゃうぅぅ!!」
「口の利き方は覚えたようね? でも、ホントにやめてほしいのかしら? こんなに大きくしちゃって。私は機械……お前がどんなに変態なマセガキだろうと、一向に構わなくてよ? ほら、ホントの気持ちを言ってみなさい。こんな本を盗んでまで、お前がしたかったことを!」
「……ふ、ふあああっ! もっと……もっと苛めてくださいぃぃ!! お○んちん気持ちイイの、大好きぃぃ!!!」
「ふふふ。忠誠を誓いなさい。私の奴隷になる……私のためになんでもするとね……!」
忠誠を誓う。奴隷になる。
それは即ち、自らも悪人になるということだ。
そんなこといけない。できない。頭で分かっている。分かっているのに……
「ボクは、メタルアリス様に忠誠を誓いますっ……あなたのために、なんでもいたしますっ!!」
むにゅっ! ぐにゅっ! ぐにゅぐにゅぐにゅっ……!!
メタルアリスは高笑いと共に手の動きを早め、そして――――
「あああああああああああああっっ!!」
――――快感のあまり望は射精……即ち、精通を終えた。
「はぁ……はぁ……」
あまりの気持ちよさに、望はその場に跪いた。
「ほら、望……立ちなさい。任務よ」
「はぁ、はぁ」
「もし任務に成功したら、あなたの大好きなゴセイイエローを……好きなようにさせてあげるわ」
「ゴセイイエローを……好きな、ように?」
「やるの? やらないの? ほら、あなたのお口で宣言なさい」
メタルアリスが言い終える前に、望は己の気持ちを正直に伝えた。
「ぼ、ボクは……あなたのためなら、なんでもします」
たった一人の少年の中に生まれた欲望。
それが、今、魔手となってゴセイジャーに伸びようとしていた……。