天装戦隊ゴセイジャー
   EpicX-2「M・エクスタシー」

≪1≫
陽の光届かぬ海底にそびえる巨城……機械要塞ターミネルの作戦司令室は、今日に限っては強烈な照明が、とある機械兵士=マトロイドを照らしていた。
「うぐっ! あっ・ああっ・あああああっ!!」
全身に巻きついた電磁ムチが放つ100万ボルトの電流をその身に受け、苦痛に満ちた悲鳴を上げるのは、マトリンティスの第一秘書、エージェントのメタルアリス。
女性型マトロイドとして作られた彼女の姿は外敵を威圧する迫力を持ちながら、しかし、柔らかくしなやかなボディラインを保っていた。
「お、お許しを……ひゃあっ! か、閣下! どうかっ・ああんっ・お許しをぉ……!」
痛みに全身を震わせる彼女の姿は、どこか官能的だ。
「成功率99・9パーセントの作戦に出向きながら、奴隷にした人間が1人しかいないとは、一体どういうことなのだ!?」
彼女の視線の先にいる、重厚な鎧に包まれた10サイのロボゴーグは手にした遠隔装置で電磁ムチの威力を上げ、怒気を露にして問いかける。
「ふぐっ! んんっ・あああっ! あ、あの少年はっ・護星天使たちと深い関係を持っていますっ! か、彼を餌に護星天使をおびきだせばっ……か、閣下の野望はぁっ・ああんっ!!」
日夜行われる閣下からの仕置き。
これまで、ただただ彼女の痛覚回路を刺激し、士気を高めるだけだったこの<儀式>……
――ま、まさか……これが……
……薄暗い作戦司令室で、スポットライトのように自分だけが照らされ、誇り高きマトロイドとして恥ずべき処置を施され、その様子を完成したばかりのマトロイドたちに見つめられるという……この<儀式>。
――に、人間の言う……マゾヒズム?
メタルアリスは、少しだけ肉体的刺激を与えられて喜ぶ人間・望の気持ちが分かるような気がした。
――い、今頃アイツは私の与えたミッションを遂行して……
「よろしい。その作戦の続行を許可しよう。だが、まだお仕置きは終わっていないのだ! よいかメタリアリス!!」
その理不尽な言葉にも抵抗することはなく、メタルアリスは押し寄せる苦痛と快楽に身を委ねていた。
「ああんっ! あああああっ!!」

≪2≫
心身共に発達途中の子供は、些細な物事にさえ多大な影響を受ける。
その影響が大きければ大きいほど、その子供の人格は変化を遂げるのだ。
「…………」
今、望は人通りの多い駅前の商店街を歩いていた。
意味もなくぶらついているのではない。
彼の履いたジーンズのポケットには、ガラス玉のような大きさと形、それに透き通った輝きを持った球体が、いくつも入っていた。

――いいこと? これはロボゴーグ様が開発した小型爆弾サイナマイト。これを街中に人知れず設置することが、お前の最初のミッションよ――

つい三十分ほど前、書店のトイレから出る直前にメタルアリスに手渡された爆弾を見て望は年不相応な笑みを浮かべる。
最早、彼の心に躊躇や罪悪感といった感情は無い。
性欲――。言葉にすれば短いこの欲求が、純真無垢なはずだった少年・天知望の全てだ。
ぽい、と茂みに爆弾を投げ捨てるように設置する。続いてゴミ箱、道端、ポストの中へと次々と設置。
実に容易いミッションだった。
望は昂ぶる気持ちを抑えきれず「ふふっ」と笑い声を漏らす。
作戦を説明したあとにメタルアリスが言った言葉が忘れられないのだ。

――私は過程より結果を重んじているの。望、あなたが頑張れば……ふふふ、それ相応の対価を与えてあげるわ。

あの、やや低めの……しかし魅力的な声を聞くだけで、望の下半身はびくんっと反応してしまう。
――メタルアリス様の言う対価とは一体なんだろう?
思う存分におち○ちんを触ることを許可してくれるのだろうか?
それとも、メタルアリス様のしなやかな指先で、甘美な刺激をおち○ちんに与えてくれるのだろうか?
「はぁ、はぁ、はぁ……」
無意識にポケットに手を入れると、望はポケットが空になっていたことに気づいた。
最初のミッションは、メタルアリスの言う通り何の問題もなく完了した。
――ああっ、早く来て……来てくださいっ……
望はきょろきょろと懇願するように辺りを見回す。
相も変わらず町行く女性の肉体をチェックしつつ、何よりも彼はメタルアリスの姿を探していた。
ついさっき生まれて始めての射精――精通を終えたばかりだというのに、望の陰部は衣類の下で窮屈そうに自己主張を初めていたのだ。
――と、その時。
「きゃあああああああああああッ!!!」
うら若い乙女が、年老いた男性が、若い青年が……即ち、辺りを行き交う人々が一斉に悲鳴をあげた。
「えっ?」
望は何かの気配を感じ、ふと背後を振り返る。
「望……どうやら最初のミッションは無事完了したようね?」
やや低めの、サディスティックな声。
機械仕掛けのアンドロイドなはずなのに、やけに女性的なシルエット。
「ああっ、メタルアリス様ぁ!」
望はこの町で唯一、メタルアリスの出現を心から喜んでいた。
「素晴らしいわ、望。あなたは人間の中で、かなり優秀な部類に入るわね……」
紺色の指先を望の頬に添え、メタルアリスは望を讃えた。そして、
「聞きなさい人間ども! お前たちが一歩でも動けば、この街の至る所に設置した爆弾が爆発するわ。それが嫌なら、そのまま大人しくしていることね!」
辺りにいる人間ひとりひとりの姿を観察し、メタルアリスはそう命令した。
恐怖心にさいなまれ、辺りの人間はまるで時が止まったかのようにぴたりと静止した。
静寂と緊張が支配する、奇妙な昼下がり……。
「あなたの働きぶりを考慮して、対価をあげる……」
言い終えぬうちに、メタルアリスは望のジーンズのボタンを開け、するすると降ろす。
えっ……と、困惑する望を見てメタルアリスは「ふふふっ」と笑いをこぼした。
「精通を経験した今、普通の手淫では満足できないんじゃなくって? ここなら……」
不意に左右に首を傾けたメタルアリスの視線の先には、先ほどランジェリーショップで望を訝しげに見つめていた若い二人組みの女性の姿があった。
「たくさんの女性に見てもらえるわ。望のいやらしい姿を……」
ささやくように言うと、メタリアリスはブリーフ越しに望の盛り上がった性器をつうっと指でなぞらえた。
その滑らかな動きに、望は「ひああっ……」と押し殺したように、しかし、耐え難い快楽に対しての喘ぎを漏らした。
「これは対価……あなたへのご褒美よ? あなたが拒否すれば、私は問題なくって――」
「や、やだっ! メタルアリスさまぁ……今ここで……ご褒美……欲しい、です……」
満足したように頷くと、メタルアリスは望のブリーフに手をかけた。

≪3≫
無数の爆弾が設置された、昼下がりの商店街。
一歩も動いてはならぬという命令に従い、のべ40名ほどの通行人が静止した大通りの中心……そこに、下半身を露出させた少年と一体の女性型アンドロイドの姿が。
そう、それは……余りにも異常な光景だった。
「ふふふふ。ひどく硬直しているのね、あなたのおち○ちん」
メタルアリスは望の下半身に手を伸ばすと、ひどく嬉しそうに言った。
「ご、ご褒美がっ……楽しみっ・だったからっ……!」
つんつんっ、とペニスを突くメタルアリス。
ただそれだけのことで、敏感な望は喘ぎを漏らし続ける。
ふと周りを見回すと、通行人の人々の視線が自分に向いていた。
微妙に距離が離れているせいで、望とメタルアリスの会話は聞こえていないのだろう……ほとんどの人たちは、望に対し哀れむような表情を取っていた。
恐怖の侵略者に無理矢理イタズラされている、可愛そうな少年――彼らの気持ちとしては、そんなところだ。
「んんんっ!」
快楽に身を震わせながら、心中で望は思った。
――違うのに……爆弾を置いたのも、こんなエッチなことされてるのもっ……全部全部、ボクがやりたかったことなのにっ……
「やっぱり、私の計算は正しかったわ。あなたはマゾヒズムの性質を持っているのね。大衆の面前でおち○ちんをいじられて喜んでいるなんて」
「ああっ、や、でもっ……恥ずかしいよぉぉ……」
頬を赤く染め、明らかに嬉しそうな口調で望は感想を漏らす。
恥ずかしい。
性を覚えたばかりの望にとって、こんな場所で、みんなに見られながらおち○ちんをイジられるなんて……。そしてなにより、望は「恥ずかしい」が嫌いじゃないのだ。
もう一度周囲を見回す。
――と、皆が哀れむような視線を望に送る中、二人組みのOLだけが少しばかり妙な顔つきで望を見ていた。
時折、ひそひそ声で何かを話し、明らかに怪訝な表情を取ったりしている。
先ほどランジェリーショップの時と同じような顔つきだ。
その二人組は、延々とひそひそ声で何かを話している。
「……んんっ!」
長身な女性と、やや小柄な女性。
2人ともシックな黒のスーツにタイトなスカート姿。
茶色く染色した髪を肩まで伸ばす細身な……しかし下半身には程よく肉の付いた長身の女性はスカートの丈が明らかに短く、そよ風でも吹いてくれればパンティが露見してしまいそうな服装。
顔つきからは明らかにサディストの雰囲気が感じられ、それだけで望のペニスは怠惰なエキスを垂れ流してしまう。
小柄な女性はどこか人形のように整った顔立ちで、一見すれば大人しそうな雰囲気。
しかしその険しい表情からは、望には想像できないほどの裏が見え隠れしている。
――何を、話しているんだろう?
望は彼女たちに話しかけたい衝動にかられた。
――お、お姉さんっ、聞いて……ボク、おち○ちんイジイジして欲しくて爆弾をばらまいたのっ。ボク、エッチで変態で、とってもいけない子なの。今すっごい楽しいのっ……!もっとボクを見てっ……変態なボクを見てぇ!――
どくんっ。心中で叫ぶだけでペニスが大きくなっていく。
彼女たちの会話が気になる……
そんな疑問を、望はさらなる性的な興奮へと変換したのだ。

「ねぇお姉さま。あの子って確か――」
「ええ。さっきランジェリーショップの前でウロウロしていた子ね……下着のカタログを手に取ろうとしたり躊躇ったり……」
「私、なんだか薄気味悪いですわ。その子供が今、あんなコトをされているなんて。ただの偶然には思えない。やだっ……! あの子、私たちをジロジロ見てる……」
「手でも振ってあげたら喜ぶんじゃないかしら? 私の経験上、男なんて子供も大人も少なからず変態よ?」
「やだ……あの子、こちらを見てニヤニヤしていますわ。ホンっト気持ち悪い……チッ」
「抑えなさい。この世界では、私たちは単なる一般人……出すぎたマネをするもんじゃないわ」

望の耳に次々と響く2人組みの女性の声。
不意に正面でペニスを扱きつづけるメタルアリスを見ると、彼女は「ふふふ」とほくそ笑み、
「あなたの望んだものよ? あそこにいるお姉さんたちの会話を録音・再生してあげたわ。よかったわねぇ、望。あんな綺麗なお姉さんたちに変態だの気持ち悪いだの罵られて……」
言葉を発しつつも、メタルアリスは決して手の動きを止めない。
否、以前にも増して手の動きが激しくなっている。
快楽の絶頂を間近に控えたことは、もはや明らかであった。
「ほら、宣言してみなさい。今度は私一人にではなく、この町にいる人間ども――つまりはあのお姉さんたちに……お前の気持ちをっ」
「あっ! いいっ……んんっ! い、いやぁ……」
「いや? いい加減、本音と建前を分けるのはおやめ! お前の気持ちは、私に搭載されたコンピューターで全てお見通しなの。ほら、宣言なさい! 私の奴隷になったことを……おち○ちんに刺激が欲しくて、爆弾をばら撒いたことをっ!!」
ヒステリックなメタルアリスの叫びが、望の聴覚を……否、身体全体を激しく揺さぶる。
――もう、止められない。
「お、お姉さぁぁんっ!! そこのっ……綺麗なお姉さんたちぃぃ! 聞いてぇぇ!!」
快楽に溺れながら必死に叫ぶ姿に、あの姉妹と思しき2人組はもちろん、街中の人間が望に注目した。
「ボクッ……おち○ちんイジイジだいちゅきなのぉぉ! だからっ・ああんっ・爆弾ボクがばら撒いたのっ……アリスお姉たまにイジイジして欲しくて、爆弾ばらまいちゃったっのぉぉっ……!」
街中の人々の顔色が、一斉に変わっていく。
困惑、憐れみ、そして……憎悪へと。

「ふざけるなっ!」
「このクソガキィ!」
「早くこっから出てけぇ!!」
「そんな理由で死にたくないよぉぉ!!」

逞しい男性が、老人が、幼い少女たちが……一斉に望を罵倒する。
ただ2人……あの姉妹を除いて。
妹は驚きと苛立ちを込めた視線を……
姉は軽蔑と……そして口元だけを歪めた、不敵な笑顔を……それぞれ望に向けたのだ。
「ボク変態なんですぅ! オッパイっ、オマタっ、お尻にあんよ……全部ちゅき! お姉さぁん……ぱ、パンチュ見せてぇ! 見せないと爆弾ドカンしちゃうよぉ! パンチュ見せてよぉ! お姉さんの着けてるエッチなパンチュ見ながら気持ちよくなりたいのぉ!」
その異常とも言える性への執着。
それをストレートに……しかも、人命を天秤にかけてまで求める望の姿を遠巻きに見ていた長身の姉は「はぁ」と軽く溜息をついた。まるで、爆弾など興味が無いかのように……
そして……
「ああっ・んっ! お……」
……一切の躊躇いもなく、その女性はタイトなミニスカートを捲りあげた。
途端、露になる彼女の下着……。
まるで真夜中の花畑のような、繊細な刺繍の入った黒地のパンティ。
それを包みこむ薄いパンティストッキングは光沢をギラリギラギラと放ち、あろうことか彼女はその場でくるりと1回転した。
「おぱんちゅぅぅ!! エッチな、お尻が丸見えっ……!!」
正しくT字に彼女のヒップを包むそれは、明らかにティーバック。
肉付きの良い、しかし怠惰を感じさせぬヒップライン。
あまりに自然な彼女の立ち振る舞いは、望でなくとも溜息が――あるいは唾液が――漏れるほどだ。
その間も、メタルアリスは献身的に望のペニスを扱き続ける。
そして――
「いっ・いやっ・いっ・いいぃぃぃぃぃぃ!!!」
――絶叫と共に、望は絶頂を迎えた。
白濁液を放出し、力なくその場に座り込む望。
「はぁ…はぁ……」
ふと、さっきのお姉さんたちがいた所を見ると、彼女たちの姿は消えていた。
――この状況で、メタルアリス様の言いつけを破るなんて!
彼女たちは一体何者なのだろうか?
望がそんな疑問を頭に浮かべた、まさにその直後――
「の、望ぅぅ!!」
1人の女性の声が、望の名を呼んだ。
懸命さと健気さが伝わる叫び。そう、その声の主は――
「も、モネっ……」
下半身から精液を垂れ流していることも忘れ、望は声の響いた方向を見やった。
黒の短パンから露出した健康的な脚。
華奢でありながらもジャケットを羽織っていても分かるほど、胸にはほどよい膨らみが。
水気を多く含んだ大地のように、茶色いボブショートの髪型。
くりくりとした瞳に、しかし戦士としての闘志を宿したランディック族の護星天使・モネがそこにいた。
「ふふふふっ」
望とモネの間を遮るように、メタルアリスがモネの前に立ちはだかった。
「護星天使のお嬢ちゃん。他の坊やたちはどうしたのかしら?」
「メタルアリス!?」
「まっ、いいわ。今日はあなた1人をたっぷりと可愛がってあげる……」
明らかに相手を挑発するようなメタルアリスの口調。
モネは望の『あられもない』姿を見て、怒りを露にする。
「一体……望に何をしたのっ!?」
「さぁ、何をしたのかしら……というより、何を『してあげた』のかしらねぇ……ふふっ、全く検討もつかないわぁ」
頬を赤く染め、小刻みに身体を震わせる望が目に入る……。

――何か、酷いことをされたに違いない。素直で、友達思いで、いつも私達を励ましてくれる可愛い望……それなのに、今日は学校から帰ってきたから様子がおかしかった。きっとマトリンティスに酷い目に合わされていたんだ。許せない。許せない。許せない……。

モネは、かっと目を見開いた。
「メタルアリス、絶対に許さないッ!」
そして……
「チェンジカード・セット! 天装ッ!!」
……天装術を具現化する解放機・テンソウダーへチェンジカードをセットする。
刹那、星を守護する聖なる力が白い羽……続いて黄色い光となり、彼女を包み込む。
全身がキツく締め付けられるような、独特の高揚感……今、ランディック族のモネは悪しき魂に天罰を下す護星天使のひとり、ゴセイイエローへと天装を遂げた。
「芽萌のランディックパワーッ、ゴセイイエローッ!!」
優美な獣の如きポーズを取り、臨戦態勢に入る。
「はぁッ!」
刹那のうちに敵との間合いを取り、拳を、蹴りを、健気にメタルアリスへ放つゴセイイエロー。
「ふんっ……!」
メタルアリスはいとも容易く、それも間一髪で攻撃を回避する。
まるで戦うために造られた人造兵器であることを誇示するかのように。
「甘いわね、ゴセイイエロー!」
鋭い手刀をゴセイイエローの腹部に叩き込む。
「うぅぅぅっ!!」
ぐにゅっと柔らかい……スーツ越しの肌の感触がメタルアリスの掌に伝わった。
苦痛に悶え、その場に跪くゴセイイエロー。
「身長160。バスト74にウェスト53ヒップ87……」
メタルアリスは、彼女を見下ろしてそう呟いた。
この戦いにおいて、メタルアリスはただゴセイイエローと戦っていたわけではない。
ゴセイイエローの……否、モネの身体データを計測し、なおかつ彼女の肌の弾力性も測定していたのだ。
「ふふっ。胸が小ぶりな割に、ちょっとお尻がだらしないんじゃなくって?」
その性的な挑発に、ゴセイイエローは乗ってしまう。
「うるさいっ! アンタみたいなヤツに――」
地面を蹴り上げ、すぐさま立ち上がるゴセイイエロー。
そのまま真っ直ぐにその拳をメタルアリスの顔面に向ける……
「えっ?」
……だが、ゴセイイエローの拳は虚しく中空を突くばかり。
今、メタルアリスはその場にしゃがんで……
「あらあら……随分と体臭のレベルがキツいのね」
……ゴセイイエローのスカートをぺろりとめくっていた。
「トレーニングもいいけれど、女性として少しは身だしなみを気にしたらいかがかしら?」
モネのデリケートゾーンを覆うスーツ……。そこに滲み出した汗の匂いは、確かに「キツ」かった。
「え、エッチ! ヘンタイ!!」
その幼い罵倒を聞いたメタルアリスは「ふふっ」と笑うと、すぐさま後退した。
そして望の傍らに立つと、
「ゴセイイエロー! ここでこれ以上戦うつもりはないわ。F地区ポイントB-12の廃屋……そこへ1時間後に来なさい。そうしないと、望とは二度と会えなくってよ?」
そう言うと、メタルアリスは望と共に姿を消した。
マトリンティスが持つ、空間転移装置を起動させたのだ。
「望……」
既に誰もいない場所を見つめ、モネはぽつりと呟いた。
――あたしが、助けなきゃ!
必ずマトリンティスの手から、望を助け出す……。
それが、護星天使の使命。
そして、大切な友達を守りたいという、モネの決意。
「よしっ……」
今、モネは歩きだした。
その先に、どんな未来が待っているかも知らずに……。

つづく