「黒い怨念!!美術館の罠」

「たまに美術館に来るのもいいわね・・・気分がリフレッシュできるわ。」都内の美術館でペギー松山は休日を楽しんでいた。黒十字軍が滅亡し、数カ月にわたる残党処理も済んで治安が回復したことからゴレンジャーに長期休暇が与えられた。

ペギー松山は順路にしたがって鑑賞していた。児童作品に表情が緩む。「よかったわ・・・平和が戻って・・・。」ペギーは更に美術館の奥へと進んだ。

「期間限定の特別展?何かしら・・・パンフレットや案内にはなかったけど・・・でもせっかく来たんだから行って見ようかな。」ペギーはやや下り気味のスロープを数十m進んだ。

「あら、ここから は動く歩道なのね。御親切だわ。」ペギーは動く歩道に移動を任せながら鑑賞することにした。改修中の他の美術館から借りている作品が十数点続いた。その後の作品にペギーの表情が変わった。

【題名:イーグル北海道支部全滅】
かつてペギーが所属していたイーグル北海道支部がヒスイ仮面率いる黒十字軍に壊滅された場面が精巧な人形によって再現されていた。既に殺された同僚や部下、上官等が血まみれになっておりリアルに描写されている。
瀕死の重傷を負いながら起き上がろうとするペギー松山の頭部をヒスイ仮面が踏みつけている場面が印象的であった。

ペギーに戦慄が走った。「これは・・・・どういうこと・・・・・」当時の悪夢が降りかか った。恐怖に脚が震える。「いやよ・・・もう思い出したくもないわ・・・」動く歩道は次の場面にペギーを導く。

【モモレンジャー、オオカミ女へ】
三日月仮面に少女を人質に取られ、なす術なくゾルダーに羽交い絞めされたモモレンジャー。抵抗できず、白衣の男がモモレンジャーの左腕に注射を刺し赤い液が注入されている。注入後モモレンジャーが苦しみ、もがいている様子が生々しく展示されている。

「あの時は必死だったわ・・・でも注射はされていない、どうしてこんなことが・・・・」ペギーは異様な雰囲気に包まれていることがわかった。「これは・・・・罠?・・・でも誰が・・・何のために・・・・」不安で足が動かない。

【ペギー松山、処刑施行!!!】
翼仮面の卑劣な罠にはまりモモレンジャーはゾルダーの網の中で必死にもがいていた。
磔にされたペギー松山は血祭りにされており、翼仮面の槍が喉元に食い込んでいた。更にゾルダーの短剣が数本胸元に刺さっている。

「嘘だわ・・・こんなの嘘よ!!あの時は確かに覚悟を決めたけど・・・。もう、いや!!引き返すわ」ペギーは歩道の逆行を試みたが突風が吹きつけられバランスを崩した。とても引き返せる状況にない。「見たくない・・・こんなの見たくない・・・」今度は進行方向にむかって一気に走りだそうとすると天井から冷気が降 りてきた。黒いホットパンツの大腿部に鳥肌が立った。「寒い・・・そんな・・・足が・・・動かない・・・とうして・・・」足元をみると白いブーツの足首に黒い拘束帯がしっかりと巻かれていた。「・・・これは・・・いつの間に・・・」もう逃げられない。

【ペギー松山・・・溺死】
鏡仮面の罠にはまった水着姿のペギー松山はプールの底に力尽きてぐったりと沈んでいる。

「これは・・・あの時の・・・・苦しかった・・・」ペギーは悪夢のような光景を見るしかなかった。

【八ツ目ショックを受けたモモレンジャー】
八ツ目仮面は倒れたモモレンジャーを踏みつけとどめを刺そうとしている。踏みつけられているモモレンジャーのヘ ルメットには亀裂が入っていた。

「・・・・・・」ペギーはもう言葉が出なかった。下手に動くと何をされるかわからない。

【金縛りのペギー松山】
捕らわれたペギーが洗脳室で鉄カゴ仮面に催眠光線を浴びせられ続けていた。

その催眠光線が動く歩道のペギーにも浴びせられた。

「これは・・・まさか・・・しまった・・・あの時と同じ・・・身体が・・・動かない・・・」ペギーは歩道上棒立ちとなった。剣ザメ仮面・蛇女仮面等にやられている自分の姿を見ながら徐々に死の恐怖に包まれる。「私・・・このまま・・・どうなるの・・・?」

【処刑】

そこには小さな丘にただ足台の付い た大きな十字架があ るだけであった。どう見てもペギー松山用に作成された処刑用の十字架である。足首の拘束帯が外れ動く歩道が止まった。
「そんな・・・足が・・・」ペギーの身体は意志に反しはゆっくりと十字架に向かう。身体が思うように動かない。
十字架が少し下がりペギーは十字架を背にして足台に両足首を揃えると両手を水平に広げる。
金属音が鳴り手足・腰に鎖が自動的にしっかりと幾重に巻かれた。ペギーを捕えた十字架が数10cm程上がった。もう助かる術はない。

「ペギー松山、ようこそ死の美術館へ」白衣を着た男たちが十字架下に集まった。リーダーと思われる男が磔にされたペギーの両頬を鷲掴みして、じっくりと全身を撫で回す。

「いやよ・ ・・ やめて・・・。」死の恐怖にペギーの身体が小刻みに震えた。

「いい身体だ・・・モモレンジャーこと、ペギー松山・・・」執拗に上半身を楽しんだ男は更にホットパンツ下の大腿部から縛られた白いブーツまでをしっかりと愛撫する。「心配するな・・・殺しはしない・・・。まずは作品として客に楽しんでもらわないとな・・・」男はドアを開けて待機者の入室を促した。

「ペギー松山、いいザマだ・・・フフフ・・・このままレイプして殺そうか・・・・」多くの男たちが十字架上のペギーの姿を楽しみ、嘲笑する。ペギーの身体に緊張が走る。「心配するな。手を触れるなと言われているのでな。」ゾルダーが混じっており明らかに黒十字軍の残党であった。

「言い忘れたが、我らは黒十字軍の科学班・・・基地が総攻撃された時は偶然他の大学研究室に身を隠していた。黒十字軍滅亡後、表立った行動を控えてじっくりとイーグルに対する計画をたてていたのだ。多くの暴力団と手を組みながらイーグル壊滅計画を立てている。ゴレンジャーは5人揃うと無敵だが・・・・個々の力には限りがある。特にペギー松山・・・貴様は女で単独行動が多い。貴様を捕獲すれば、ゴレンジャーの殆どの必殺技を防ぐことができる。これ以上の獲物はなかったな・・・」

「どうなるの・・・私・・・・・」ペギーは恐怖で全身冷や汗に包まれた。銃を頭上から突き付けられており下手な動きはできない。動く以前に催眠光線の効果としっかりと巻き付けられた鎖がペギーの動きを封じている。

「よし、次の作戦開始だ。ここを引き払うぞ!!」リーダーの男が命令するとペギーは催眠ガスを浴びせられ、気を失った。十字架ごとカバーを掛けられるとトラックに積まれて長時間の輸送後、残党たちの秘密基地と思われる地下室に運ばれた。カバーが外されて再び十字架が立てられた。十字架上のペギーの意識が戻った。「ここは・・・?」

「ペギー、見るがいい・・・これが総統の墓場だ。」ペギーの十字架の正面には無数のロウソクが立ち並ぶ大 きな墓が あった。ペギーの到着にロウソクの炎が一段と燃え上がる。「ほほう・・総統もお喜びのよう だな・・・」リーダーの男は微笑を浮かべた。

「黒十字軍・・・・全滅していなかったのね・・・・・」ペギーは十字架上ぐったりと力尽きた。

「ペギー、貴様は殺しはせぬが総統の永遠の生贄となってもらう。」男は大きな光線銃をペギーに向けた。「これから貴様を人形化する・・・永遠の眠りに就いてもらう・・・その姿、その若さ、その美しさが永久保存される。貴様はその状態で総統の怒りを鎮めるがよい・・・」男は光線銃の引き金を引いた。

「うわーっ!!!」光線を全身に浴びた十字架上のペギーが激しく悶える。「あああ・・・・うううううっ・・・・」徐々に動きが鈍くなりペギーの意識も徐々に遠のいていく。

「あ ああ・・・・・」ペギーは意識を失い身体の動きが完全に止まった。光線銃は更にペギーに浴びせられペギーの人形化を進めていく。1時間後男はペギー松山が人形となったことを確認し光線銃を止めた。十字架上少し姿勢が崩れたペギーの身体を修正し鎖を締め直した。そして再度光線銃をペギーに浴びせて仕上げにかかった。

「フフフ・・・ついに完成だ・・・まさに芸術的だ・・・・素晴らしい・・・・いい光景だ・・・・イーグルのどんな技術を持ってしてもペギーを元に戻すには相当の時間が必要となる。」男は人形化されたペギー松山の十字架磔をじっくりと鑑賞した。十字架上伸びた手足にしっかりと鎖が巻かれたペギー松山は眼を閉じて処刑を待つ姿となっていた。残党たちはペ ギーの処刑執行をいつでもできるように体制を整えた。捕えたペギーを人質にしてより多くの譲歩をイー グルから得るためであった。

黒十字軍の 残党たちは更に全国の暴力団と手を組み復活への組織化を着々と進めていた。ペギーを罠に陥れた美術館もイーグルに恨みを持つ暴力団が企画・実行したものであった。人形化されたペギーの未来は誰も知る由がない。