裏切り!戻れない世界・・・《1》
 「ウワァァーーーー!!」
スーツから火花を散らし、メガレッド・メガブラックの姿が宙を舞う。-ドサッ-二人の戦士は背中から地面に打ち付けられ、その元へ仲間達が駆け寄った。
 
 ネジレ反応を確認し駆けつけたメガレンジャー五人をネジレジアの幹部達が急襲したのはほんのわずか前のことだった。レッドとブラックにユガンテが、ブルーにギレールが、そしてイエローとピンクにシボレナがそれぞれ襲いかかる。ネジレジアの幹部達の力に押され劣勢になる中で、ピンクとイエローは抜群のコンビネーションでシボレナを追い込んだ。メガスナイパーを構えてシボレナを追いつめるピンクとイエロー。銃口を向けられ、後ずさるシボレナの背中が太い樹の幹に触れ、シボレナの逃げ場が無くなる。その時。シボレナがピンクとイエローを見やり、口元に薄ら笑いを浮かべた。その瞬間だった。
 「キャーーーッッ!!」
ピンクとイエローの悲鳴が森に響き渡る。二人の背後、土中から突如姿を現したネジレ獣が鞭のような触手を振るい二人の女戦士を振り払うと、今度はその触手をピンクとイエローの身体に巻き付け、絡め取った。
 「これで形勢逆転ねぇ!」
シボレナが冷徹な笑みをを浮かべる。
 「そうは行くかよ!!」
その声と同時に、空中から閃光がネジレ獣に向かって放たれた。そして、メガレッドに気を取られたユガンテの一瞬の隙をついて今度はメガブラックがネジレ獣にメガスナイパーを放った。その狙いは正確にネジレ獣の触手を打ち抜く。
 「グガガァァァァーーーー!!」
ネジレ獣はその閃光の持つ破壊力に叫び声をあげると、ピンクとイエローに絡みついた触手をほどきながら、二人の身体を空高くへ投げ出した。それと同時に、メガブルーはギレールの肩を踏み台にして大きくジャンプするとピンクの身体を抱きかかえる。そしてブラックとレッドも宙高く舞うイエローの身体を受け止めようと地面を蹴り上げ、手を伸ばした。あと10㎝。しかし、二人の手がイエローに届くよりわずかに早く、ユガンテの剣が二人のスーツを切り裂き、宙を彷徨うイエローの身体を再びネジレ獣の触手が絡み取った。

 そして今、目の前にはユガンテ・ギレール・シボレナがメガイエローへの道を塞ぐようにレッド達の目の前に立ちはだかり、
 「くぅぅぅ・・・・・・。」
その後ろには、触手で全身を締め上げられ、小さな呻き声をあげるメガイエローの姿があった。
 「ちくしょう・・・。千里・・・。」
レッドとブラックが両脚に力を込めて立ち上がり、戦闘態勢を整える。すると、それに呼応するようにユガンテが剣を構え、四人のメガレンジャーに向けて真一文字にその剣を振るった。
 「ふんっ!!」
空を切る剣の軌道から放たれる強力なレーザーの衝撃波が四人のスーツを切り裂き、火花が飛び散ると、四人はガックリと膝から崩れ落ちていく。
 「ち、ちさとぉ~。」
腹這いになりながら、メガピンクがその手をメガイエローに向けてのばす。それを見やりながら、シボレナは一人触手に拘束されるイエローに近づくとそのマスクの顎先に右手をやった。
 「情けない仲間達ね。ホントに可哀想・・・。さぁ、あいつらに最期のサヨナラは済んだかしら?」
 バイザーの下から千里はシボレナを睨み付ける。しかし、そんなことは構いもせずシボレナは左手を目の前にかざすと、指先に力を込めながら、ヨロヨロと立ち上がったレッド達の方を振り返ると、
 「この女は預かって行くわ!!」
と言い放ち、光を蓄えたその左手を拘束する触手の隙間からイエローの腹部に押しつけた。 「アアァァァァーーーーーー!!」
マスクの下から上がる悲鳴と共に、イエローの身体のあちこちで小爆発が起きる。
 「千里ーーーーッッ!!」
イエローを助け出そうとレッド達が駆け出すが、ダメージの大きいその身体ではユガンテ・ギレールをはね除ける事など出来ず、逆にいとも容易く振り払われてしまう。
 「アアァ・・・ぁぁ・・・・・・。」
-ガクンッ-イエローの首が力無く下がる。
 「クソーーー!!!」
それをユガンテ達の肩越しに見たレッド達が立ち上がる。が、ユガンテが2発目の斬撃をそこに加えると、再びレッド達の身体に爆炎があがる。
 「ち・・・千里・・・・・・。」
スーツから吹き出す煙と火花の向こうに消えていくユガンテ達。そして、消えていくメガイエローの姿。
 「サヨナラ・・・。」
霞行く姿の中で、シボレナは小さく残された戦士達に言い放った。

「ゥゥ・・・クゥゥッッ・・・。」
-ガクンッ- 
 赤・白・青・緑、、、無数の配線が張り巡らされた椅子に、千里は学生服のまま深く腰掛けていた。意識は無い。頭にはヘッドギアが着けられ、そこからも無数の配線が伸びている。両手両脚はしっかり椅子に固定されている。先程まで電流を流されていたせいで額からは大粒の汗が噴き出し、白いブラウスもべっちょりと汗ばんでいる。
-コツ、コツ-靴音を響かせながら、薄明かりしかない部屋の隅から白衣の男が近づき、その周りにはドクター・ヒネラー以下のネジレジアの幹部達が集まっていた。
白衣の男はまず注射器を取り出すと、垂れ下がった千里の髪を掻き上げ彼女の耳に掛けた。汗ばんだ首筋。白い肌にうっすらと、美しく浮かぶ血管に向けて、男は注射針を差し込むと、その内容物を千里の身体にそそぎ込んだ。
 「ウウッッ・・・。」
千里が小さく声を上げる。そして、ゆっくりと千里はその瞼を開けた。視点は定まっておらず、虚ろなまま。その瞳に白衣の男はまぶしいほどのライトを当てながら瞳孔を覗き込む。だが、千里は目をつむることも無く視線は宙を彷徨ったままでいる。
 「成功です・・・。」
白衣の男はニヤリと口元を弛めると、手足の拘束を解き、下を向いていた千里の首を持ち上げてやり、ヒネラー達にメガイエローのその素顔を拝ませた。
 「お前はメガイエローだな?」
男は千里に問いかける。それに対し、千里の唇がゆっくりと動き始めるのをヒネラー達は凝視していた。
 「・・・ぁ・・・は・・・ぁい。・・・わたし・・・は・・・め・が・・・いぇろぉ・・・です・・・。」
夢遊病者のような表情で千里は質問に答える。
 「よし・・・。」
ヒネラーは小さく呟く。それを聞き、白衣の男は千里に語りかける。
 「お前の名前は何というんだね・・・?」
 「わ・たし・・は・・・めが・・いえろー。」
千里が答える。
 「メガイエローはお前が変身した時の名前だろう?そうじゃない・・・今の姿の・・・変身する前のお前の名前を私は教えて欲しいんだ・・・。名前は何と言うんだね??」
あてが外れた千里の答えに慌てもせず、男はゆっくりと話しかける。
 「わたし・・・の・なまえ・・・は・・・じょう・が・さき・・・ちさ・・・とです。」 「そうか、千里というんだな・・・。では、千里。メガイエローに変身できるかい?」まだ瞳が宙を彷徨う千里に向けて、男は注文する。
 「はい・・・でき・・・ます。」
千里は答えると、男の命ずるままに動く。
 「いんす・とーる・・・めが・・れんじゃー・・・。」
左手のデジタイザーに手を当て千里が呟くと、その身体が黄色い光に包まれて、ネジレジアの憎き敵の一人である黄色い女戦士が姿を現した。
 「素晴らしい・・・完璧だ・・・。では、後は作戦通りだ・・・頼んだぞ。」
ヒネラーは満足げな表情を浮かべると、一人部屋を去っていった。
 「よし・・・。では、変身を解除してもらおうか・・・?」
 「はい・・・。」
千里は頷くと変身を解除する。
 「さぁ・・・千里くん。お前は今からいくつかの拷問を受ける事になっている・・・。お前はまず悲鳴をあげるんだ。だが・・・決して、仲間に救けを求めるんじゃぁないぞ。わかったね?」
男は理不尽な要求を千里に突きつける。が、千里は、
 「わかりました」
と、深く首を縦に振った。
 「では、拷問の間へ向かいましょう。」
男が千里の手を引き、千里はゆっくりと椅子から立ち上がり、歩き始める。ユガンテが重たい扉を開くと、男は千里を連れて部屋に入り、その奥に鎖で吊された鉄パイプに千里の両腕を真一文字にして拘束すると、
 「では、私はこの辺で・・・。次の作戦の準備に取りかかりますので・・・。」
と、言い残して拷問の間を後にしていった。

 「ちくしょう!!何とかなんねぇのかよ、オッサン!!」
健太は学生服を脱ぎ捨てると、汗を拭う久保田博士に大声で噛みついた。
 「判ってる!!我々も総力を挙げて千里君の行方を探してるんだ!!・・・だから・・・もうしばらく待ってくれ・・・。」
久保田博士の目にうっすらと涙がにじむ。
 「待ってる暇なんてねぇんだよ!!」
健太が握り拳を振り降ろそうとしたとき、-ぱしっ-耕一郎がその手首を掴んだ。
 「何すんだよ!!」
耕一郎にまで健太は捲し立てるような口調で突っかかる。
 「今ここで博士を殴っても何もかわらんだろう!?博士を殴ったら千里が還ってくるのか?」
冷静な口調で耕一郎が健太を諭すと、
 「そりゃそうだけどよぉ・・・だからって、千里を見捨てろっていうのかよ!!?」
と、健太は言葉を返す。
 「見捨てる何て誰もいってないだろ!!ネジレ次元に連れ去られていたとしたら・・・千里の居場所を探すのはそう簡単じゃない・・・。ですよね・・・?博士?」
 「確かに・・・。だが・・・不可能ではない・・・。各地で見られるネジレ反応の僅かな隙間からなら割り出しは可能なんだ!!だから・・・今しばらく時間をくれ・・・。」 久保田博士が大きく頭を下げる。
 「千里・・・。」
みくが両指をからめて、祈るように小さく呟き、その横でみくの肩を叩くと瞬は黙って踵を返す。
 「ちょ・・・どこ行くのよ!?」
歩き出そうとした瞬の手首をみくは掴むと、突然の行為に驚きながら瞬に問いかける。
 「だからって、ここにいたんじゃ何にも始まらないだろ?」
そう言うと、瞬はみくの手をほどき歩き始める。
 「瞬!!お前ってやつは・・・!!」
健太は瞬に駆け寄り、瞬の手をいきなり握りしめた。
 「耕一郎、俺達は何か手がかりがないか探しに行ってくる。お前はここに残って、博士に協力してくれ。」
瞬は冷静に耕一郎に話すと、右手の親指を突き立てた。
 「えー、私も行くよ!!」
みくも瞬の方へと駆け出す。が、瞬は両手を前につきだし、「来るな」とアピールすると、 「みくは連絡役を頼む。今度ばかりは危険な臭いがプンプンするからな。」
と、笑って見せた。ぷくっとみくは膨れながら頷く。
 「瞬、健太を頼んだぞ!!」
耕一郎の呼びかけに応え、二人が走り出そうとしたその時だった。
-パシッ-  急に停電が起こると、メガボイジャー内の巨大なメインディスプレイだけが光を放ち、映像が流れはじめる。
 「千里ーーーーッッ!!!」
そこに映ったのは、両腕を鉄パイプに拘束され宙吊りになったままでギレールに鞭打たれる千里の姿だった。
 「アァアァァァーーーーーッッッ!!」
千里の悲鳴が響き渡った。最早ブラウスとスカートはビリビリに裂き刻まれ、素肌を露わにしている太股には無数の鞭の痕が残っている。すると、シボレナが千里の横に立つと、千里の顎先を掴みながら、モニターに向かって話し始めた。
 「さすが、メガレンジャーね!?これだけ鞭打たれても何も吐かないなんて・・・。だから・・・もう無駄なことは事はやめようと思うの・・・。」  
健太は拳を固め、みくは瀕死の千里の姿を直視できずに、顔を両手で覆った。シボレナは続ける。
 「明日・・・この女を殺してあげる!!しかも、お前達が見ている目の前で公開処刑にしてあげるわ!!」
 そう言うと、シボレナは手にした5㎝はあろう銀色に輝く針を、千里の左胸の膨らみを掴み、持ち上げると荒々しく突き刺した。
 「クゥゥーーァァアアアァァァーーーー!!!」
千里の顔が歪み、甲高い悲鳴があがる。すると、2本・3本とシボレナは千里の乳房に針を突き刺しながら、話を続ける。
 「時間は明日の正午・・・場所は私とバラネジレがいた教会・・・。正午の鐘が鳴ると同時に処刑を始めるからね!!もしこの女を救いたいなら・・・いや、城ヶ崎千里の最期を見届けたいなら、処刑場所に乗り込んでくる事ね!」
 「もちろん行ってやるよ!!」
健太がはやる気持ちを抑えきれずに、モニターに向かって吐き捨てる。だが、その言葉はモニターの向こうには聞こえない。
 「さぁ、言いたいことはある?」
シボレナは千里の顔がモニターに映るように顔を掴み、モニターには今までの知的な雰囲気を醸し出す美少女とはうって変わった、苦悶の表情を見せる千里の顔がアップになって映し出される。
 「みんなっ!!来ちゃダメよ!!・・・ァアアァッ!!これは罠よ!!・・アアッッ!」 「黙れッ!!」
シボレナが手にした最後の1本の針を千里の首筋に突き刺した。
 「アァァッッッッッーーーーーーー!!」
アップになったままで千里が大きく口を開いて悲鳴をあげる。そして、気がつくとギレールが鞭を置いて千里のすぐ横に立って、いきり勃つ異形の者の男根に右手をあてがっていた。モニターに映っていた千里のアップがスッと引いて、全体が見えるようになる。するとシボレナは千里の左足の太股に手をやり、その足を大きく力任せに上に持ち上げる。まくれ上がった千里のスカートの下から、白いパンティーが姿を現し、その横には自らの男根をさするギレールの姿があった。
 「おい・・・!!まさかっ!!?」
 「千里っ!!」
モニターを見ながら、こみ上げる怒りと驚きに健太達が次々に声を上げる。
 「良かったわね!?死ぬ前にオンナになることができて・・・。ギレールはかなりのサディストだから容赦はしないわよ!!」
 シボレナが言い終わると同時に下がっていた千里の右足をギレールが持ち上げると、千里の茂みとその奥を覆い隠す白い布切れを、思い切りギレールは破り取り、その巨根を千里の胎内に勢いよく押し込んだ。
 「ァァアアーーーァーーー!!ィヤァーーーー!!!・・・ぁぁん・・・ぁあぁ・・・!ャァ・・・イヤァァァーーーーッッア・・・アアアァァァーーーーーッッ!!!」
太股に力を込めようとしても鞭打たれた痛みが邪魔をして、力が入らない。
 「サヨナラ、メガイエロー・・・。そしてサヨナラ、メガレンジャー・・・。明日がお前達の最期の日だよ!!」
シボレナの言葉を残しながら最後にモニターに映し出されたのは、ギレールによって身体を貫かれる痛みに叫び声をあげながら悶え苦しむ千里の顔だった。うっすらと涙を流し、声を張り上げるたび大きく開く口元からは大量の涎が溢れ流れていた。
 「くそっ!!ちくしょーーっ!!!」
拳を階段の手すりに叩き付け健太は声を荒げた。仲間が犯されていく、処女を奪われていく瞬間を見せつけられ、言葉を放つ事すら出来ない四人の内に、静かな怒りがこみ上げていた。しかし・・・誰も気づいていなかった。苦悶する千里の表情の一瞬に悦楽の表情が見られたことを。