(3) Third Battle
ぽちゃん
ぽちゃん。水の音。
う・・・
ここは、何処?
いったいどれだけの時間が経ったの?
髪の毛。
マスク、外されちゃったの?
もういや、こんな無様な姿。
勇介、丈、コロン。
早く助けて。ここから出して。このままだと私、殺される。

ライブマンの女リーダー・ブルードルフィンは激戦の末ビアスに捕まり、拷問され、ぼんやりと部屋の片隅に縛られていた。
やがて意識が戻って自分のおかれた状況を認識する。
「いやあああああ!」
うつぶせで、手と足を荒縄で固定され、その先に輪を作り首を通す。さらに乳房をぐるりと縛り、首を縛った縄と結ばれていた。
「なによこれ、酷すぎる!」
それを手を縛った縄と結び、その上足首を縛った縄と股間の局部を痛めつけている縄と結ぶ。
つまりひっくり返った亀のようになってしまい、どうにも身動きが取れない。
「う、ぐっぐ」ぎちぎち。「あああ、痛い!」
動けば痛む。その痛みで横に転がる。転がったらなかなか起き上がれない。
(このままだと私の胸が、局部が、壊れちゃう!なんとかしなきゃ)
痛みをこらえて再び体を動かす。
「うううう」
亀のような無様の姿で動くには、訳がある。
体を流れる血管が人体構造上ありえない海老反りで圧迫されるので、全身、特に手や足に血が流れず、心臓付近で滞ってしまうからだ。
溜まった血液は心臓の動きを止めてしまう。それだけでなく体液が脳までいかないので意識が朦朧とし始め、やがて死に至る。
江戸時代この責めを「海老責め」といい、こうして放置されただけで罪人が死んでいったと聞く。
(私もそうなるの?)
ブルードルフィンは恐怖の中、自身の意識を失わぬよう、わざと暴れて自分を痛めつけた。
そうして少しでも体に血液を供給しようとした。
確かに血の巡りはあるのだがそれも一時的。縛られている限り頭はぼんやりし続ける。
(これじゃ何も変わらない。縄を解いてもらわなきゃ、誰かに助けてもらわなきゃ、どうしようもないわ。でも、痛い、痛いんだけど、何なのこの気持ちよさ。縛られているのが、ああん、気持ちいい、堪らないわ!もっと、お願い)
もっと深刻な事に、痛めつけられ苦しい意識の中、ブルードルフィンの本能は「痛めつけられる快感」に目覚めつつあった・・・。
(そんなはずはない。私は正義なのよ、いくら縛られているからって・・・有り得ないわそんなこと!私はビアスを、ボルトを倒す為ここにいるのよ。だから勇介、丈、コロン、みんな早く私を助けて!そして軽蔑しないで・・・。)
本人は亀になった今、頭の中を整理するのに必死であった。

もがいていたので気がつかなかったが、いつの間にかそこにビアスがいた。
「愚か者めが、そうしていると縄がほどけると思ったか?」
ひとしきり笑うと、ビアスはリモコンを取り出し、ボタンを押した。
あれだけ固くきつく縛っていた縄があっけなく外れた。
自由を得た手足が勢いよく放り出され、圧迫された胃の中から胃液が飛び出した。
そして、意識はあるが動けなくなった。
滞っていた血液が全身に堰を切られた川の水のように動き出したからだ。
いくらビアスが罵倒して殴っても蹴りを入れても動かなかった。
だが彼女はこのとき自分に起こった事態を知らなかった。