(2)second bettle
ライブマンとボルトの戦闘が始まって随分過ぎた。
そのボルトの本拠地であるヅノーベースの下の下。機関室に程近い部屋。
その部屋のドアを開けたのは、ボルトの首領、ビアス。
足をつかまれスカート丸出しのあられもない姿で引きずられたのは、ライブマンの女リーダー、ブルードルフィン。
片足を掴まれているため酷い姿になっている。
意識もどこかへ行っている。
ビアスは引きずったブルードルフィンを部屋に蹴りこみ、その身体を蹴り上げた。
動かなかった。
また蹴った。
動かない。
股間をヒールで思いっきり踏んでやった。
ピクリと反応したが、意識は飛んだまま。
ビアスはニヤリと笑い、今度は腕を掴んだ。そして部屋の片隅にあるロッカーから何か器具を持ち出し、ブルードルフィンの身体に装着しはじめた。

部屋には手枷足枷のついた大の字の形をした手術台が真ん中にあり、そのほか鞭やら荒縄やら電気ショック部品やら、古今東西思いつく限りの拷問道具。
大広間から遠いこの部屋は、ビアスが作った拷問部屋のようだ。
なにぶん世間から見れば立派なカルト集団、内部の規律を乱す者の為に、こういった部屋があるのだ。

部屋の手術台の横、そこにブルードルフィンは吊るされていた。
スカイダイビングでパラシュートを取り付ける際に使う紐のような器具をつけられ、そのあまった紐の部分は天井の鉄骨に結ばれている。
器具は両方の乳房をまたぐように、股間の部分を締め付けるように付けられていた。
乳房をまたいだ紐はまた、首に巻きつき適度に締め上げている。首を動かせば殺さない程度に絞められるようだ。
腰や、下半身もまた然り。そのうえ太ももにも紐が取り付けられている。
ビアスは実際にスカイダイビングで使われるものよりも紐の太さを細くして、ブルードルフィン自身の体重で一層彼女の身体に痛みを与えられるようにしている。
つまり動けば痛みが走るし、動かなくても身体に負担がかかるという訳だ。
ビアスの手にはリモコンがあり、どうやらそのリモコンを調節することにより紐の締め具合を調節できるらしい。
マスクはうなだれており、まだ気絶しているようだ。
ライブスーツは全身くまなく汚れてはいるけれど、ビアスの攻撃に耐え抜いてみせた。
ビアスはそれが癪だった。
実は特攻前、ライブマンはボルト対策として、ライブスーツを強化し出撃していた。
さらにその下に防護用の全身タイツを着用していた。
そのため、最小限の被害で済んだ。
だがスーツは頑丈でも、肉体と頭部と精神はビアスの本気の拳と蹴りには耐えられなかった。
(そろそろ起こすか。まあそのまま起きなくともよいが)
ビアスはリモコンのスイッチを押した。
ぎち、ぎちぎちぎち。
「くっ・・・」
それまでブルードルフィンの身体を緩く締め付けていた紐が、音をたてて締め上げはじめた。

「あ・・・」「あふん・・・・」「あ・・・あ。」
意識はないようだが、動くと縛られている胸や股間に痛みが走り、それから逃れようと無意識下にもがいている。
口から自然に呻き声が出る。
それはせつなく、また哀切を伴っており、(本人は望んではいないが)「お願いですからビアス様助けてください」と言っているようであった。
ビアスは満足し、なお締め付ける。
「あ・・・う、あ。」「ああ???んんん・・・」「ぐぐぐ・・・うう」
首の紐が息をさせず、叫びを上げさせない。助けを呼ぶことができない。
彼岸に行かないで済むギリギリのところで息ができるのだ。
両胸は締め上げられ球体となり、乳首がぽっかり浮かび立っていた。
それをビアスは興味深そうに、
もみっ、もみっ、
と揉んだ。
適度に柔らかく弾力もあり、思ったより大きくはないが掴みやすく形もよかった。
ビアスは嬉しがったが、ブルードルフィンはマスクの下で顔を赤らめ泣いていた。
こんな醜態、仲間には見せられない。
局部のポケットは痛みと、それによる快感ですでに熱くなっていた。
体重で痛みが来るようぶら下げた以上、手でポケットの感触を楽しむことは出来ないが、
その欲求不満をビアスは「股間も感じているであろう?この売女めが」と言葉にぶつけた。
紐がギチギチと音を立ててライブスーツと身体を死なないよう徐々に痛めつける。
締め付ける。痛めつける。
絞める。痛めつける。
絞める。
痛めつける。
絞。痛。絞。痛。
絞。痛。
絞。
朦朧としていたブルードルフィンの意識が戻り始めた。
だが声が上げられない。
「かは・・・か・・・・かうう」
(勇介、丈、コロン、みんな助けて!)
力一杯叫んだ声が、うめき声にしかならない。
無駄と知りつつも自由な手足を動かしてみる。何も変わらず締め付けが酷くなるだけだ。
「ははは、愚かなり。実によきかな。己の無知を知るが良い。」
「ぎぎぎ・・・あ・・・ぐかっか」
(助けて、たすけてえええ!!!)
ビアスは鞭を持ち、ブルードルフィンの身体を打ち出した。
ピシッ、ピシッ!容赦なく叩く。
そのたびブルードルフィンはせめてもの抵抗、身体を海老のようにくねらせ、首がそのたび絞まっても暴れて逃れようとする。
そうすればこの痛みから解放される気がしたのだ。
だがビアスには嫌々をしているように見えて、自信のサドをくすぐられる。
(そうか、そんなに嫌なのか?ならもっとしてやろう。気持ちいいだろう?)
笑いながら叩きまくる。
叩きまくる。
叩く。
叩。
叩。
叩。
ブルードルフィンに切断された頭脳たちは、地球の愚かな人類どもを洗脳するのに必要な道具だった。
長年集めたその道具をこの、せいぜい世間で頭がいいと持てはやされているだけの女に破壊された。
例え集めるにしても、かなりの労力と時間を必要とする。
そのために集めた幹部たちは、ライブマンに敗北した。
全て、すべて、水の泡だ。
許せるものか。ゆるせるものか。ユルセナイ。タダコロスダケジャオワレナイ。
シンダホウガマシトオモエル、ゴウモンヲぷれぜんとシテヤル。

ビアスはひたすらブルードルフィンを叩き続けた。

さて、ブルードルフィン。
あまりの激痛とビアスの執念(の一部)を感じ取って、
(これはもう、気絶したほうがいい。その方が楽だわ)
そう思い、力んでいた身体の力を抜いた。
そうして、いつもとは逆に逆らわず、意識を飛ばすように努めた。
だが攻撃は止まず、苦痛が続く。
「ううっ!くううっ!」
首の紐が絞まったままなので悲鳴も出せない。唸るばかりだ。
気絶をしようとした、と書いた。
実際はずいぶん前から気を失うのと覚めるのとを繰り替えしていたのだ。
そのために尿便を失禁し、床に雫が落ちているのだが、本人は気付いていない。
意識がぼんやりしている為だ。
乳首だって感じ始めている。
器具の締め付けと鞭の痛みで不随意運動を身体が忘れているだけで、もしこれが終われば大量の尿便と乳液が出るだろう。
だがブルードルフィンはそんなことどうだって良くなっている。
とにかく早く、この痛みから解放されたいのだ。
そしてブルードルフィンにとって不都合なことに、マゼンダと対峙したときに染み込んだ媚薬がライブスーツに残っており、汗とともに染み出していた。
そしてこれがビアスのサドと本能を刺激していたのだ。
恐ろしいことにビアスのほうも無意識だ。無意識で叩いているのだ。
「う・・・あ・・・ひゃ・・・ひゃふ・・・へ・・・て・・・・」
助けて、と言いたかったのか。
こうして拷問は続いた。

その頃ヅノーベースでは。
ボルトはガーノイド・ガッシュを中心に戦闘兵が頑張り、その上ガッシュが退治した頭脳獣のサンプルを復活させたため、レッドファルコン達4人は、通信が途絶えさらわれた(と思われる)ブルードルフィンの救援に行きたかったが、前を阻まれそれどころではなくなっていた。

拷問は続いていた。
さすがのビアスも疲れて、肩で息をし始めた。
ふと、ブルードルフィンを見る。
また首がかしげていた。
体がだらり、と下がっていた。
失禁もしたのか、少し臭った。
どうやら彼女の念願通り、意識が遠くへ飛んでくれたようだ。
「まさか、死んではいまいな」
これからだからな、とビアスはひとりごちた。
ブルードルフィンの首筋に手を当ててみる。
まだ、鼓動を行っている。
肩がリズムよく揺れている。
生きている。
ライブスーツもまだ持っている。
今度はさすがに全身に血の跡がついているが。
彼女にとって不幸なのか幸せなのか。
手足は力なくぶらさがり、
イルカの絵が描かれているスーツには乳液の跡が2本くっきりと。
股間は尿便でびしょびしょ。足元は水溜りと化している。
ビアスはブルードルフィンの戒めを外し、床に下ろした。
ドカドサ、ビシャ。
下ろされた音と、床の汚物が跳ねた音。
完全に動かなくなった彼女を蹴り上げ、マスクを毟り取った。
汗と涎と汚物で、鼻が曲がりそうな臭気。
マスクにはそれらがこびりつき、
(汚らわしい!)
とばかりに、ビアスは無造作にマスクを放り捨てた。
そして彼は、「疲れた、少し休もう」と呟き、部屋を後にした。

しばらくして。
ブルードルフィン、岬めぐみの目が開いた。
意識が戻った。
自分の姿を見る。酷いものだ。
特別に強化したライブスーツも汚物と媚薬に塗れ、
鞭で叩かれ続けたせいであちこち黒く、
それ以上に体はあちこち痛みに軋み、
意識は戻ったが、時々飛んでしまう。
這いずってしか動けなかった。
普段リーダーとして厳しくライブマンのぼんくら達を統率している身としては、誰にも見られたくない、はしたない、姿。
「情けない・・・。」
泣きたかったが、泣くのは後にした。
それよりも、やっておくべきことがあった。
ブルードルフィンは放り捨てられたマスクにつけられた、自分から見て左側のイヤリングを毟り取った。
その左のイヤリングは、外すとある命令をライブマンの基地・グラントータスにいるロボット・コロンに伝えるようになっている。
「もうひとつのロボ・ライブボクサーに搭乗し、自分たち諸共ヅノーベースに攻撃を加えて欲しい」というものだ。
もちろんそれは、レッドファルコンたちにも伝わるようになっている。
自分たちも攻撃されるとなると、ライブマンの戦意を萎えさせる危険がある為、最後の最後、奥の手として用意していたものだ。

「みんなごめんね、こんなに早くこの手を使うことになって。私、捕らわれたけど頑張るから」
再び薄れ行く意識の中、ブルードルフィンは仲間たちに謝った。
それを思うと、何だか急に楽になった。
足が立てなくなり、
膝が崩れ落ちた。
顔を守ろうと、無意識に手が前に出た。
片方のイヤリングがなくなったマスクが、零れ落ちた。
うつぶせに倒れ、動かなくなった。
目の前がまた、暗くなる。

再び部屋に入ってきたビアスは、ブルードルフィンが動いているのを不審に思った。
だが頭が入り口の方向を向いて失神しているのを見て、
(逃げようとしたのであろう。全く、私と幹部以外の人間がドアノブに触れると電流が走るというのに。愚かな女だ)
と、考えた。
さっきまでついていたマスクのイヤリングが取れているのを見ても、
(取れているな)
としか、認識しなかった。
だがブルードルフィンの顔がなぜか静かに笑っているのを見て、
(そうか、まだ耐えられるのか。楽しみだ)
と思ってしまった。
「私も貴様を苦しめたい。その程度で心臓が止まるようでは殺しがいがない。たっぷり苦しめないと満足できぬわ」
そう言って一度噛み殺そうとした笑いを噛み殺せず、気が狂ったかと思うくらいの大声で、叫ぶように笑う。笑う。笑う。

ひとしきり笑った後、ビアスは物言わぬブルードルフィンの体を手術台の隣に置かれた水槽につけた。
これはライブスーツの痛みを直すためであった。完全ではないが体のダメージも受けた3分の1程度なら癒せる。
黒こげ傷ついたままでは面白くない。彼、ビアスはそう思っていた。
それでは拷問が楽しくないと。
水槽に横たわり、少しずつ直っていくブルードルフィンのライブスーツ。
それを見ながら、ビアスは次はどんな拷問で楽しもうかと考えていた。