(1)FIRST BATTLE

ライブマン対ボルト、選良主義対良心の決戦はついに最終局面を迎え、幹部の殆どを倒されたボルトは自身の基地であるヅノーベースにてライブマンを迎え撃つことにした。
その挑戦状を送られたライブマン側も断る理由はもちろん無く、ライブロボでヅノーベースへ突撃した。

両軍入り乱れての戦闘。
押し寄せる戦闘員達。ボルト最後の隠し玉・ロボットのガーノイド・ガッシュが指揮を取る。
そのうちライブマンの女リーダー、ブルードルフィンは戦闘から外れ、手筈通りビアスの元へ向かった。

ヅノーベースの大広間。かつてそこには科学アカデミア時代に自分の学友であった幹部がいた。
しかし彼らは頭脳の優秀さに溺れ、人間を捨て世界を征服しようとした。
ライブマンの活躍で、それは皆夢と消えた。そして最後にヅノーベースに残った彼らの頭脳を含む世界の優秀な脳をビアスは集め、世界の王たらんとしている。
ブルードルフィンの役目はその頭脳がある部屋を見つけ破壊すること。
そうしなければ、ビアスの野望は終わらないし、止めを刺すことができない。

ブルードルフィンはライブラスターを抜き、剣モードにして正眼に構える。
と。
光線が発射され彼女を襲う。
光線をかわす。その勢いで身を起こす。再び構える。
いや、構えようとした。
背後に殺気がした。
(ビアス!)
長く追い続けた不倶戴天の敵。
ブルードルフィンは迷わず斬りつける。
が、空を切る。
(気のせい?)
では、なかった。ビアスが誘っていたのだ。
喉に刀が、ぴたり。
と突きつけられた。
(・・・・・・・!!!)
声にもならず、言葉も出ない。
「ブルードルフィン、よく来た。それだけは褒めよう。」
「・・・ビアス!」再び斬りつける。手ごたえは?・・・ない。
「ふふふ、相変わらず短気なようだ。それさえなければ、味方に引き入れようと思っていたのだが。」
「誰が貴方の下などに!私達は生きとし生けるものの味方。貴方方のような、地球を自分の思い通りにしようとする人間の下などにつかないわ!鋭!」
振り返り様、気配を斬る。
しかし、そこにはいない。もしやと後ろを見てみれば、
「ブルードルフィン。思ったより俊敏だな。私よりは遅いが。」
ビアスが、前に立っていた。
(何故?後ろにいたんじゃないの?)呆然とする。逃げれば良いのか構えるべきかわからない。イルカのマスクの下は脂汗に滲んでいる。
「お前の動きが私によける方向を教える。それだけのことだ。」
言うなり肩筋を斬られる。青いスーツから火花が出る。「うああッ・・・」よろけたところにビアスの突きが入る。 速い!
刀で受けては防ぎきれない。ブルードルフィン、すばやく転がり銃モードにして光線を撃つ。
光線が虚しく壁を打つ。もう一発。これも壁。もう一発。今度は柱。ビアスは縦横無尽に移動し、狙いをつけたところから逃げられてしまう。こっちはただ撃つだけになってしまっている。
「随分撃ったものだ。美しい大広間が穴だらけではないか。お礼はさせて貰おう。」
ビアスの剣から光線が飛ぶ。ブルードルフィンにあたり、腹を折り曲げくの字に吹っ飛ぶ。壁に激突し、頭をモロに打ち脳震盪を起こし立てないでいる。
げほ、げほ。胃の中の物が鼻腔と口から出る。ちょうどそれはマスクに溜まりブルードルフィンにこの上ない不快感をもたらす。
(う・・・うう、立たなくちゃ・・戦わなくちゃ・・・地球のために・・・私はライブマン。ブルードルフィン。)
言い聞かせる。暗示させる。そしてなんとか這いずり回り倒れた柱に身を隠す。
そして取り出すドルフィンアロー。弓術を収めた腕には自身がある。ビアスは気付いていない。一発目で傷をつけ、二発目で仕留める。そうでなくては気持ちが収まらない。
矢をつがえ、発射。一発目はビアスの太ももを射抜く。二発目は胸を射抜いた。
「やった!」
そしてライブラスターを連発して発射。胸、腹、太もも。正中線を狙い撃ち。ビアスもたまらず倒れる。
ブルードルフィンは腕にある通信機でレッドファルコンと連絡を取る。
「こちらブルードルフィン。手筈通りビアスを倒したわ。頭脳部屋の方に向かうわね。」
「わかった。予想以上に戦闘兵が多くててこずっている。討伐次第そちらに向かう。」
連絡後、ブルードルフィンは優秀な頭脳が集められている部屋に向かう。そこには世界の優秀といわれた人間の頭脳だけがあった。その頭脳は輪になっており、中央にある大きな頭脳にコードで結びついている。その中にはあろうことか、自分の学友のものもあった。
ナチスドイツさながらの優生主義極まれり。
ブルードルフィンは直ちに頭脳を繋ぐコードを斬っていった。これなら頭脳が悪用されることはない。世界のためにそうあるべきなのだ。人類の平和のために優秀な謎脳を役立てる。そのために自分達は存在している。彼女はそうあるべきと思っている。
(自分の私利私欲に悪用するなんてとんでもない!)ブルードルフィンがすべてのコードを叩き切ったその時!
「よくも、やってくれたな!」憤怒のビアスがそこにいた。
「ビアス・・・どうして!攻撃で倒れていたんじゃなかったの!?」
「これがあるからな」マントを翻らせ見せたのは防弾チョッキ。それも凹んではいるが大事なさそうである。ただし、傷口に血は滲んでいた。
傷つけられた身体とプライド。研究品を破壊された怒り。余裕なんぞどこへやら。ビアスの顔面は青筋だらけ。
歴戦の女、ブルードルフィンも震え上がった。戦闘を重ねたから分かる「恐れ」。マスクの下は上着とグローブ、ブーツの色並みに青ざめていた。
ビアスが動く。ブルードルフィンも構える。
ビアスはブルードルフィンの身構えた上からパンチを入れる。
未体験の痛みにブルードルフィンの構えが解ける。腹部にパンチが入る。マスクの中に電流が走る。マスク越しにフックが入ったのだ。たまらず頭が上を向く。
そこにアッパーカット。脳が揺らされ神経が混乱し倒れられない。身体が内股にカクカク揺れる。
テンプルにパンチが入る。胸にストレートが入る。腹部にもう一発。倒れない限り終わらない。
殴る。蹴る。殴る。蹴る。
殴る。蹴る。殴る。蹴る。
殴る。蹴る。
殴。蹴。
殴。

やがて殴り疲れたか、ビアスは肩で息をし始めた。さすがに疲れたようだ。
(小物にむきになってしまったわ・・まあいい、これから死んだほうがマシという目に合わせてくれる。)
自分の研究を破壊した女は倒れている。あのコードは脳味噌の延命装置でもあったのだ。その機能が止まってしまい使い物にならなくなった。ただ殺すだけでは済まさない。
ブルードルフィンはもうピクリとも動かない。しかしマスクもスーツも原型を保っている。
それがさらに怒りに火をつけた。
「許さぬ・・・許さぬぞ・・・簡単には殺さぬ!」
ビアスはブーツを乱暴に掴むと、大広間へ引きずり出し、縛り始めた。
「めぐみ・・・どうした?!」
通信が繋がらないことを不審に思ったレッドファルコンの声が聞こえる。
このあとどうなるかはまだビアス意外誰も知らない。